長谷川道郎の発言 (災害対策特別委員会)

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○長谷川道郎君 派遣報告を申し上げます。
 去る九月八日、海野委員長、本岡理事、市川委員、田村委員、脇委員、藤井委員、和田委員丁渡辺委員、大沢委員、大渕委員、阿曽田委員、そして私長谷川の十二名は、栃木県及び福島県における平成十年八月豪雨による被害の実情を調査してまいりましたので、その概要を御報告申し上げます。
 なお、岩城議員、太田議員、国井議員、矢野議員が委員外議員として参加されましたことを申し添えさせていただきます。
 本年は、エルニーニョ現象が終息したものの、世界的に天候が不順で、我が国においても、東北、北陸地方において梅雨明け宣言が行われず、また発生した台風の数も例年に比べ極端に少ないなど、いわゆる異常気象が顕著な状況にあります。
 このような中で、八月上旬には、日本海中部から新潟県付近に延びた梅雨前線の活動によって、新潟県を中心に、羽越豪雨の記録を超えるほどの大雨となり、人的、物的被害が生じております。また、八月末には、日本付近に停滞している前線に台風四号の影響で南から暖かく湿った空気が入り込み、前線が活発化し、栃木県と福島県の県境付近を初めとして、各地で記録的な集中豪雨が発生いたしました。
 この八月末豪雨による被害は、死者・行方不明者二十二名、床上、床下浸水を含む住家被害約一万四千棟、主要河川のはんらんによる浸水面積八千ヘクタール以上、土砂崩落、橋梁損壊等による道路の通行どめが六百四十五カ所、土砂災害ニ百九十六件といった極めて甚大なものとなっております。
 私たち派遣委員は、特に被害の大きかった栃木県北及び福島県南の地域について調査を行い、まず宇都宮市から自衛隊のヘリコプターに搭乗し両県の被災現場を視察いたしました。
 上空から俯瞰した被災現場は極めて広域的で、河川の流量は平常に戻りつつあるものの、依然として河川のはんらんによる堤防の決壊や橋梁、家屋の流失、農地被害などが顕著に見受けられ、そこここに流木、家屋の残骸が散乱する状況でありました。特に、福島県南の地域では、勾配が緩やかな里山が多数土砂崩れを起こし、山肌をむき出しにしている極めて異常な状況が特徴的でありました。
 その後、福島空港に着陸して福島県南地域に移動し、県の白河合同庁舎において、佐藤知事など関係者から、福島県の被害の概況及び要望を伺いました。
 まず、福島県全体の被害状況でありますが、先月二十六日の降り始めから今月一日までの間に西白河郡西郷村において総雨量千二百六十九ミリ、最大時間雨量九十ミリが記録されるなど、短期間で断続的な豪雨があったとのことであります。このため、社会福祉施設「太陽の国」での土砂災害などによって死者が十一名、また住家被害約四千世帯、水田、畑の冠水被害面積三千二百八十九ヘクタール、道路の通行どめ約四百カ所、阿武隈川、堀川等のはんらんによる河川被害二十九カ所などの多大な被害が発生し、被害額は、七日現在、農林水産業関係で百四十三億円、河川、道路などの公共土木施設関係で二百四十八億円を超えており、今後の調査により増加する見通しとのことでありました。
 福島県での今次災害の特徴として、「太陽の国」の裏山を初め、予想もしない普通の山が各所で崩れたことが挙げられるとのことであります。また、全県世帯数の六%に当たる延べ四万世帯が避難指示や避難勧告を受け、その避難誘導あるいは災害応急対策は、阿武隈川がはんらんした昭和六十一年の八・五水害の教訓を生かし、おおむね円滑に行い得たとのことでありました。さらに、今後の課題として、内水の排除対策が挙げられるとのことであり、また住家の主要構造部に被害がなくても、全家財が流失した場合や床下浸水で土台がえぐられた場合などの住家被害認定基準について、一定の基準が必要であろうとのことでありました。
 また、激甚災害の指定、被災者生活再建支援法の趣旨を踏まえた予算措置、被災農地や公共土木施設等の早期復旧のための特段の配慮、「太陽の国」の早期復旧と他施設への一時入所等のための措置制度の弾力的運用、中小企業者への金融支援策、災害対策経費に関する財源措置などについて、県及び県議会から要望がありました。
 次いで、西郷村の「太陽の国」被災現場を視察いたしました。
 「太陽の国」は、特養老人ホーム、精神薄弱者更生施設等から成る総合社会福祉施設で、県が整備を進め、約八百五十人が入所しております。八月二十七日午前五時ごろ、折からの豪雨により、施設の一つである救護施設「からまつ荘」裏の五十メーターほどの山の斜面が、避難勧告が行われないまま崩落し、土石流が同荘を襲い、入所者のうち五名の方が土砂に埋まり、あるいは押し流され、亡くなられたのであります。土石流が発生した裏山は、沢もなく傾斜度も低いため、危険箇所に指定されておらず、土石流発生も予想できなかったとのことでありました。亡くなられた方々の居室跡に実際に入り、そこから今は沢となった土石流の発生箇所を視察いたしましたが、現場は、発災後十日以上経過した今も、室内に泥が残り、極めて悲惨な状況であり、土石流の発生時のありさまはいかばかりかと身の引き締まる思いがいたした次第であります。
 現在、「太陽の国」の各施設のうち使用できない施設の入所者は全員自宅や他施設に移っておりますが、一時帰省された三百五十人に上る入所者の扱いなど、今後取り組むべき課題は少なくないと実感いたしました。県は、九月補正予算で応急仮設施設を建設するなど、復旧作業を早急に進めたいとのことであります。
 次に、白河市内において県管理の一級河川堀川のはんらん箇所を視察いたしました。
 堀川は、阿武隈川への合流部付近において八月二十七日など二度にわたりはんらんし、堀川右岸の約三百五十メーターが破堤、浸水家屋四百七十七戸の被害を生じたのであります。視察時は、堤防に土のうを敷き詰め、仮の締め切りを行っている状況でありました。破堤は河川未改修箇所で発生したのでありますが、河川改修が行われている部分では越水はあっても堤防自体は残っておる例が多いことを見ても、河川改修の必要性について認識を新たにした次第であります。
 次いで、栃木県に移動し、黒磯市役所において渡辺知事など関係者から栃木県の被害の概況及び要望を伺いました。
 まず、栃木県全体の被害状況でありますが、那須町では、八月二十七日の一日間で八月平均降水量の二倍以上に当たる六百七ミリ、二十七日から三十日までの間に年間降水量の三分の二に当たる千二百ミリを超える雨量を記録するなど、県北地域を中心に豪雨に見舞われました。
 そのため、予想をはるかに超える膨大な水量が短期間のうちに余笹川、黒川等に流入して水位が上昇し、通常二、三十メートルの川幅が三百メートルに広がるなどの状況となり、河川流域の農地、樹木等が流失し、橋梁が損壊するなど、未曾有の大災害となったことが栃木県における今次災害の最大の特徴であるとのことでありました。
 主な被害は、死者・行方不明者七名、住家被害約二千七百棟、避難者数四千百二十六名、八日現在で依然避難所におられる方が約七十名、橋梁被害は二十八カ所、道路の通行どめ八十八カ所、堤防決壊千九十九カ所などの状況であり、被害額は、七日現在で、農林業関係が約二百億円、公共土木施設関係が三百七十億円、今後の調査により増加する見込みとのことであります。
 なお、被災時の連絡体制について、県と市町村を結ぶ連絡網は機能したものの、市町村と住民を結ぶ連絡網はサイレン等が雨音のため聞こえなかったなど、反省すべき点があると認識しているとのことでありました。
 また、激甚災害の指定や災害査定の早期実施、災害救助費に係る国庫負担、被災農家の経営再建に対する助成措置、地方交付税・災害復旧事業債、被災者生活再建支援金に相当する程度の支援措置などについて、県から国に対し特段の配慮を求める旨の要望がありました。
 さらに、黒磯市長及び那須町長から、避難勧告に関し適切な判断が行い得るよう、時間雨量等の情報を地元自治体へ通報する体制の確立、同一流域における激甚災害の一体的適用、町道等の復旧のための助成などについて要望がなされました。
 次いで、那須町において、国道四号余笹橋の被災現場を視察いたしました。
 この余笹橋は、余笹川にかかる約五十五メートルの建設省直轄の橋梁ですが、八月二十七日午前、余笹川上流からの流木が橋脚に滞留して中央部の流れを阻害し、橋の両サイドに向けて水流が変化したため、福島側の橋梁の取りつけ部が流失し、国道四号が不通となる被害が発生いたしました。
 被災現場には、地下タンクもろとも流失した橋のたもとのガソリンスタンドの残骸が残ったままで、自然の力の恐ろしさをいや応なしに見せつけておりました。
 視察時には、建設省が備蓄資材を利用して短期間のうちに応急橋を設置し、車両が通行できる状況に至っていましたが、本格復旧までにはさらに時間がかかるとのことでありました。
 次に、那須町の寺子乙字下川地区の農業被災現場を視察いたしました。
 同地区は、余笹川のはんらんにより、川沿いの水田が途中からざっくりと切り取られ河原となり、残った水田の部分にも土砂が流れ込み、稲が無残にしおれており、農地等の復旧のため、今後多大の労力と時日を要すると思われる状況でありました。
 次に、黒磯市の寺子字寺子地区において集落被災現場を視察いたしました。
 同地区は、同じく余笹川のはんらんにより、全半壊、床上浸水等で住家二十一棟が被害を受けた集落地区で、視察した家屋の中には、主要構造部が残るものの、内装や家財がことごとく流失し、使用にたえがたいと思われる状況も見受けられました。しかしながら、当該家屋は現行制度上、単に床上浸水と認定されることとなり、住家被害の認定基準のあり方について検討の余地があるのではないかとのことでありました。
 以上が調査の概要であります。
 最後に、復旧作業等でお忙しい中、調査に御協力をいただきました方々に厚く御礼を申し上げるとともに、被災地の一日も早い復興を心からお祈り申し上げまして、御報告を終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 長谷川道郎

speaker_id: 14138

日付: 1998-09-11

院: 参議院

会議名: 災害対策特別委員会