1998-10-13
参議院
大内力
日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会
大内力の発言 (日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会)
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○参考人(大内力君) 大内でございます。
十分間という大変短い時間でございまして、申し上げたいことはたくさんございますが、とても尽くせませんので、ごく簡単に重要と考えることだけを申し上げて、あと御質問がございましたら補わさせていただきたいと思います。
今回主として申し上げますのは国有林野事業改革のための特別措置法に関してでございますが、この改革案を拝見いたしまして、特に二つの点で大変前進があった、国有林の改革の一歩を踏み出したという感じがいたします。
その一つの点は、国有林の経営管理の方針を林産物の供給に重点を置いたものから公益的機能の維持増進を旨とするものへ転換させるという点でございます。これは御承知のとおり、特に財政上の理由があったわけでございますが、近年、奥山の乱伐、過伐が非常に進んでおりまして、それが国有林の荒廃を招くだけではなくて、環境に大変悪影響を及ぼしているということが言われていたわけでございますので、今回それを改めて森林の持つ公益的な機能を重視して施業を行う、こういうふうに基本的な方針を変更なさったことは大いに評価できることかと思います。
それからもう一つの点は、御承知の累積債務の処理でございますが、三兆八千億という累積債務のうち二兆八千億を一般会計で負担するという形にする。この点は後で申し上げますが、残りの一兆円は問題を残したと思いますけれども、今まで国有林野の運営が累積債務のために足をとられておりまして、いわば借金の利払いをするために木を切っている、それでも追いつかないからまた借金をする、こういう状態であったのを、ともかく解決に一歩近づいたという意味で評価したいと思うわけでございます。
しかし、その他の点につきましてはいろいろ疑問がございまして、たくさん申し上げたい点はございますが、特に重要と思われます四つのことだけを御指摘申し上げまして御考慮を煩わせたいわけでございます。
その一つは、どうも今回の改革の方向を見ておりますと、国有林全体としてだんだんと施業を薄くする、放棄とまでは申しませんけれども、森林の手入れその他を薄くするという方向が選ばれているのではないかという感じがいたします。
これは後で申し上げます人員削減一つを考えましてもそうでございますが、しかしそこに基本的な問題があるわけでございます。もちろん、例えば秋田、青森の県界の白神山地のように貴重な原生林が残されていると言われているところはできるだけ手を加えないで自然状態を維持して生物の多様性等を図る、こういうことは賛成でございます。しかし、そういう限られたところを除きますと、日本の山林というのはもう何千年来人手が加わっておりまして、人工的に整備されてきたものでございまして、本来の意味における原始林とかいうものは日本にはないと言われております。
この人工林はもちろんでございますが、いわゆる天然林と言われるところにおきましてもやはり人が手を加えまして、除伐、間伐、下刈り、枝打ち、あるいは伐採、植栽というような手入れをきちんとやってまいりませんと山が荒れるわけでございまして、今日、日本の山が荒れ果てているというのは、要するにそういうきちんとした手入れが行われていないですべての森林が活力を失ってしまっている、こういう状態になっていることに由来しているわけでございます。
したがって、林産物を採取することを主としないということはそれとして、しかしだから手入れをしないでいいということではございませんで、まずますきちんと手入れをして森林を整備いたしませんと、日本の森林を維持することができないだろうと思います。
これは御承知のとおり、特に今、世界的に大問題になっております温暖化ガスの問題一つを考えましても、空気を浄化いたしまして炭酸ガスの固定を図るという森林の機能は比較的壮年期の活力ある森林だからできることでございまして、森林が高齢化いたしまして古木がふえますとそういう能力は非常に減ってくるわけでございますから、ぜひきちんとした施業を遂行することによって森林の活力を維持していくというふうに考える必要があるのではないかと思います。
それから二番目には、主な事業を民間に委託する、こういうことがうたわれておりますが、これはやや言葉が過ぎるかもしれませんが、我々実情を知っている者から言わせますと、ほとんどナンセンスと言うしかないわけでございます。
と申しますのは、御承知のとおり、民間と申しますと主として言えば森林組合を中心とした作業班でございましょうが、ここはもう高齢化が進み、人口も減りまして、ほとんど機能麻痺に陥っているところが大部分でございます。そのために民有林がほとんど施業放棄の状態になっておりまして、ある意味では国有林以上に荒廃をしている、こういう状態になっております。
ですから、受け皿のないところに民営化を進めるというようなことを言ってみましてもこれは全く空疎でございまして、結果におきましては国有林も施業をしないでますます山を荒らしてしまう、こういう結果になるのではないかということを恐れるわけでございます。
それから三番目に、このことに関連いたしまして、国有林の職員を大幅に削減することによって経営の合理化を図る、こういう思想が、これはもうここ二十年ぐらい国有林改革のところでずっとやってこられたことでございます。
その結果として、かつて九万人近くおりました国有林の職員が今一万五千足らずになっておりまして、しかも伝えられるところによりますと、近く五千人にそれを削るということを林野庁は計画されていると聞いております。五千人なんという人数では、要するに机の前で事務的な処理をする人だけが残りまして、現場で山の世話をする人はほとんどゼロに近くなるということでございまして、ここには決定的な問題があって、国有林を荒らしてしまう以外にはないだろうと思います。今でさえ国有林はもう手不足でほとんど施業ができないというような状態になっているところがたくさんございます。
しかも、これは大変大きな問題を持っておりまして、国有林はただ山の手入れをするだけではなくて、日本の森林経営についての技術、技能を長年にわたって蓄積してきております大きな技能集団でございます。この職員が持っております技能というものを伝承して将来に残していくということなしには将来の林業は成り立たないわけでございまして、そういう意味でも国有林が人減らしをするということは大変大きな問題があると思います。
我々は、むしろ逆に国有林の職員をできるだけ充実して技能を高くすると同時に、先ほど申し上げましたように、民有林の人手不足が非常に著しいわけでございますから、むしろ国有、民有というような垣根を取り外しまして、地域の民有林も含めまして、国有林が相当の責任を持って日本の森林全体の活性化を図る、こういう基本方針を立てるべきではないだろうかというふうに思うわけでございます。
それから最後には、先ほど触れました財務の問題でございます。一般会計で相当の部分を負担されるということは大変結構でございますが、残る一兆円ぐらいをまだ国有林に残しましてそれをだんだんと返していく、こういう形で解決するという案でございます。将来、経済情勢が非常に変わればわかりませんが、少なくとも現状で申します限りは、国有林だけでなく民有林も森林経営というのは今全然赤字でございまして、利益が上がるなんということは望めない状態でございます。
国有林といえども、いかに合理化をしましても、将来とも赤字経営にならざるを得ないということは覚悟しておく必要があると思います。そこへまたその借金の負担を負わせまして、それを年賦で償還していくというようなことになりますと、結局今までと同じことが繰り返される。つまり、その債務の負担に足をとられまして国有林の機能を十分に発揮させることができなくなり、山を荒らしてしまい、しかもまた累積債務が先ほどの加藤さんのお話のような新雪として降り積もっていく、こういう形になって、結局同じことが繰り返されることになるのではないか。
以上の四つの点を大変基本的な疑問と思いましたので、率直に申し上げまして、御参考にしていただきたいと思います。
以上でございます。