玉置和宏の発言 (日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会)

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○参考人(玉置和宏君) 御紹介いただきました毎日新聞の玉置和宏でございます。
 私は一新聞記者でありますから、本来はメディアを通じて自己の主張をするのが筋でありますが、本日こうした機会を与えていただきましたので、率直に忌憚のない意見を述べさせていただきたいと存じます。
   〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕
 私は、国鉄分割・民営化よりも十年ほど前になりますか、国鉄六分割・民営化へという記事を書いて各方面に大変話題を振りまいたのであります。以来二十年余り、この国鉄の問題あるいはJRの問題にかかわってまいりまして、ずっとこれを見てまいりました。今率直に私は、銀行の不良債権と同じように、銀行の経営者が銀行の不良債権を処理しない、それと同じように、国鉄の債務の問題について政府がずっと目をつぶってきて先送りしてきたなという感じを強くいたします。
 しかし、今般、この委員会で真剣にこの問題を何とか今世紀のうちに解決しなければいけないのだという議員の皆様の真剣な議論、これを伺っておりまして、そういう意味で私も心から敬意を表したいと思っております。
 私は、財政制度審議会という審議会の末席に連なって日本の財政に関心を払っている一人として、国鉄の債務問題というのは実は日本の財政に大変大きな影響を与える重大な問題である、こういうふうに考えております。単に国鉄の民営化問題にとどまらないことだと考えております。その点からも、この一連の審議は極めて重要な意味を持っている、多くの点で私は先生方と考えを同じゅうしているというふうに考えております。
 しかし、今回の清算事業団債務処理法案、これについては私は納得のできない部分がある。これまで衆参両議院の特別委員会で議論されてまいりましたJRの追加負担は私は全く納得できない、こういうふうに考えておるわけであります。この点につきましては、私は新聞のコラム等で私の意見を署名入りで書いてございますが、本日はここで改めてこの点に絞って私の考えを述べさせていただきたい、こういうふうに思います。
 私は日本の経済社会にとって今最も重要なことは自己責任、世界に通用するルールにのっとった企業経営であると考えておりますし、その世界の基準というのは何かというと、それは自己責任の原則であろうかというふうに感ずるわけでございます。
 先週の末にNHK教育テレビの「金曜フォーラム」で、本格化した日本のビッグバンというシンポジウムがございましたが、私はそこでコーディネーターを務めました。このビッグバンのシンポジウムのキーワードは実は自己責任の原則をいかに貫徹していくか、これから生活者も消費者も、もちろん政府も企業もすべて自己責任の原則を貫かなければいけないんだということが結論でございました。私もそのとおりだと思います。
 しかし、この自己責任というのは、どうも海外では原則以前の言葉であるというのが常識でありますが、私はこういう話を聞いたことがあるんです。政府の皆さん、国会の皆さんがここ数年、ワシントンに出かけていってスピーチをなさる、そのときにやたら自己責任という言葉を連発される、こう言うんです。これは向こうの通訳の方がそういうふうにおっしゃっている。ところが、実は英語には自己責任という言葉がない、非常に通訳は困惑しているという半分笑い話のようなことなんですが、どうもこれは事実のようであります。
 つまり、頭の中では自己責任という言葉はそれこそ本当に刻み込まれているわけでありますが、ところがそれが実際の行動に伴っていないのじゃないか、私はどうもそういう気がしてしようがないわけであります。日本ではまだ言葉の上っ面だけが横行しているのではないか、本当に身についているのだろうか。政府みずからが経済の基本的なルールである自己責任の原則を無視し、筋の通らないことをもしやっているとしたら、これは本当に国際社会の笑い話になってしまうのではないかというふうに思うわけでございます。
 かつて、今は亡き金丸信自民党副総裁が、足して二で割るのが政治だという名文句を残されました。その時代から政治は少しも動いていない、少しも変わっていないではないか、自分の責任を他人に押しつけるのではないか。私はこのJR負担の本質的問題はここにあるように考えざるを得ません。
 さて、このJRの追加負担については、昭和六十二年四月で政府から離れ、独立した民間会社になったというふうに、これはもう私が認識するまでもなく周知の事実であります。JR本州三社は株式をワールドワイドに上場しているわけであります。世界の投資家が十数%この株を持っているわけであります。世界のマーケットで売買されているわけであります。
 かつて、このJRの負担について後藤田正晴元副総理がこういうふうに新聞のインタビューでお答えになっておるわけです。政府の負担強制は株主に対する財産権侵害として憲法問題になりはしないか、こういうふうにおっしゃっておりますが、私も全く同感でございます。
 また、今回のJR負担につきましては、JR社員の年金だという理由によると言われておるわけでありますが、これもそもそも昭和六十二年四月に清算事業団とJRで明確に仕分けしておるわけでありますから、これをこの十一年間、政府は問題を先送り先送りして一向に処理しようとしなかった。私は、この問題をいろんなところで書き、いろんなところで申し上げてきたにもかかわらず、今日まで一向にこの処理がなされていない。十一年間処理を先送りして、今またJRとの一種の契約をみずから破棄して、政府の責任が十分に問われない。これは金融問題と同じように私はモラルハザードに陥っているとさえ感じるわけでございます。
 政府あるいはこの法案を提案された皆様方は、玉置は何か誤解しておるのではないか、そういう見方はごく一部ではないかというふうにおっしゃる方があるいはおられるかもしれません。しかし、これは私だけではございませんで、一つの証拠として、私どもの新聞、私の知る限りすべての新聞の社説は、会社の意見を社論として主張している社説を見る限り、このJR負担についてすべてこれはおかしいという主張をしているところであります。もし私だけの主張であれば、そういうことはあり得ないでありましょう。
 日本の新聞だけではございません。御承知のウォール・ストリート・ジャーナルあるいはニューヨーク・タイムズ等、世界でも著名な新聞において、このJR負担は非常におかしい、日本の政府がこういうことを提案しているのはおかしいということを明確に主張しているわけであります。
 私は、こういう世論といいますか主張を全く無視されて、しかも足して二で割って、それで修正案としてもしこれが国会を通るのであれば、恐らく国際的な経済社会から非常な非難を受けるのではないか、日本は本当に法治国家なのかということが改めて問われるのではないかと、こういうふうに考えております。これが本格的処理である、あるいはこれがやむを得ない処理である、こういうふうに主張されるのは筋が違う。これこそ日本が国際社会にも通用するような法律をきちっとつくってもらいたい、それが私の希望でありますので、JRへの追加負担を撤回するという勇断をこの席でお願いしたいわけでございます。
 私は、戦後最大の行政改革、これは国鉄改革だということで、この二十年間ずっと見てまいりました。今はその最後の段階であります。最後の段階でこういう処理をするというのは本当に国際社会からの信用の失墜になる、そういうふうに考えておりますので、ひとつ先生の皆様方にはよろしくお願いをしたいと思います。
 いろいろ僭越なことを申し上げたかもしれませんが、失礼をおわびして、私の意見にかえさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 玉置和宏

speaker_id: 14428

日付: 1998-10-13

院: 参議院

会議名: 日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会