桜井徹の発言 (日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会)

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○参考人(桜井徹君) 日本大学商学部の桜井です。
 私の専門分野は安企業論という学問でありまして、ここ数年は日本とドイツにおける国鉄改革の比較研究に従事してきました。その立場から、今回提出されました法案のうち、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律案と一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律案を中心に意見を述べさせていただきます。.まず、今回の法案で国鉄清算事業団の債務を国の一般会計に承継するということが提案されておりますが、これまでの土地売却と株式売却の動向を待って清算事業団のいわゆる国民負担分の処理を決定するという、国鉄改革当時から一昨年ころまでの考え方からすれば前進である。清算事業団の債務は国の債務であるということを明確にされたという意味で、私は大いに評価したいと思っております。
 しかしながら、債務が承継されたことによって生ずる一般会計の負担増を郵便貯金特別会計からの特別繰り入れやたばこ特別税の創設を財源として対処されようとしていることに関しては、次の二点において疑問を持っております。
 まず第一は、国鉄清算事業団の債務を郵便貯金特別会計やたばこ特別税で処理するということについては、私にはその二つの間には論理的な関連性あるいは必然性があるとは思われません。
 第二に、仮にそういう枠組みを認めたとしましても、郵便貯金特別会計特別繰り入れというのは、法案によりますと五年間ということになっておりまして、限定的であります。しかも、それはいずれも主に利子支払いに充当されるにすぎないということでありますので、元本の償還財源についてはほとんど手当てされていないのではないかということで限定的であります。それでは、約二十七・八兆円に膨張いたしました国鉄清算事業団の累積債務の処理財源についてはどう考えるべきだろうかということで、私は三点について述べていきたいと思います。
 第一に、国鉄改革前における国鉄の長期債務発生の責任の所在、第二に国鉄改革、すなわち国鉄分割・民営化時における国鉄長期債務等の配分方法の問題、第三に国鉄清算事業団債務が累積した過程に即して考えていく必要があると思っております。
 時間の関係上、非常にはしょりますが、まず国鉄の長期債務発生の原因については多様でありますが、いわゆる経営欠損の原因の一つが道路整備への重点投資によりモータリゼーションが進んだことを考慮すれば、総合交通行政を前提として、ドイツの国鉄改革で実施されたように揮発油税を引き上げて債務償還の財源にするか、もしくは加藤先生が言われましたように道路財源を圧縮してそれを転用するということが考えられます。
 第二に、国鉄分割・民営化時における国鉄長期債務等の配分方法についてでありますが、今日のJR本州三社の経営成績から見まして、JRが承継した長期債務等が過小ではなかったかという点であります。過小でなかったかどうかについての詳細は省略いたしますが、国鉄長期債務等の配分にかかわって、次の二点はぜひとも述べておいた方がよいと思います。
 一つは、国鉄清算事業団が継承いたしました長期債務等は資金運用部が主に引き受ける、あるいは資金運用部からの借入金がほとんどでありまして、それに対してJR各社が承継いたしました長期債務等は民間借入金がほとんどでありました。バブル経済下における金利低下等でJR各社は低利借りかえが行われた、それに対して国鉄清算事業団は低利借りかえを行えなかった、あるいは行うことができなかったということであります。
 二つ目は、国鉄清算事業団が継承いたしました鉄道債券には、論争があるところでありますが、JR各社による債務保証が設定されていたように思われます。もちろん、今日その多くは借りかえによって国鉄清算事業団債券に置きかえられておりますけれども、そうした債務保証がかつて設定されていたということも考えなければいけません。
 なお、JR各社が、特に本州三社は一部株式上場をしたとはいえ、依然として特別の法律によって設立されている特殊会社であるということもJRへの追加負担を考える際の論拠となるということもつけ加えておきたいと思います。
 最後に、国鉄清算事業団における債務が累積した過程との関連でありますが、累積した最大の要因は、国鉄再建監理委員会の試算では、国民負担分とされた十四・七兆円を三十年で返済するには毎年約一・三兆円の政府助成金が必要とされたのでありますが、その政府助成金が極めて低水準であった、そして財投資金による債務の借りかえが行われたということにあるわけです。
 同時に、額としては少しなのでありますけれども、ぜひとも指摘したいことは、一九九〇年に既設新幹線が九・二兆円で本州三社に譲渡されたわけでありますが、その際生じた譲渡収入が整備新幹線整備費などに充当されて国鉄清算事業団の債務償還には充当されなかった、この点を今日も見直すべきではないだろうかと思っております。
 以上で私の意見を終わりますけれども、最後に、債務処理に直接は関連いたしませんが、先ほど述べました道路財源との関連で述べておきたいことがあります。特に、揮発油税などの自動車関係税を鉄道投資等の公共交通の整備に充当することは、アメリカ、フランス、ドイツあるいはスウェーデンなど多くの国々で実施されております。特にヨーロッパ諸国では、社会的費用の負担の適正化という観点からも、自動車交通を抑制するためにもそういうことが正当化されているということを申し添えて、私の意見を終わります。

発言情報

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発言者: 桜井徹

speaker_id: 7259

日付: 1998-10-13

院: 参議院

会議名: 日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会