恒松制治の発言 (行政改革に関する特別委員会公聴会)

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○恒松公述人 恒松でございます。
 ただいま西尾公述人のお話を聞いておりまして、大変なこれまでの御苦労があったということを痛切に感じました。しかし、私は、一財政学を勉強している者の立場から、今度の一括法案に対して若干意見を申し上げたいと思っております。
 最初に、昭和二十四年、ここで申し上げるまでもないことでございますが、いわゆるシャウプ勧告なるものが出ました。これは、日本の国の財政及び税制の将来に関する大きな指針を示したものであると評価されておりますが、しかし、一方では、地方自治というものがいかに大切であるかということをも十分に示したものとして、私は受けとめております。
 このシャウプ勧告が出ましてから五十年、財政学を通じて、現実の行政の仕組みがいかに地方自治にとって形ばかりのものであるかということに大きな関心を抱いて、分析をしてまいりました。ついには、現実の地方行政に携わりもいたしました。そうした経験の中から、今回の地方分権関係法案について意見を申し上げます。何とぞ御理解をいただきたいと存じます。
 まず最初に、このたびの分権法案の中で大きな問題は、機関委任事務の廃止ということでございます。これはもう、私は、もとより長年の念願であり、大賛成でございます。
 もちろん、これは、政党政派を超えて推進すべき地方の問題でございます。分権推進委員会が最初の勧告で勇断を持って指摘されました。それは、国と地方、あるいは中央政府と地方政府と呼んでもいいと思いますけれども、上下、主従の関係であってはならないということであります。それを、行政制度として長く続いた機関委任事務制度というものを全廃することによって実現しようとしたことは、私は、大変大きな功績であり、すばらしい勧告であったと思っております。ただ単に、行政の事務を中央と地方とでどう分け合うかということではなくて、地方自治の確立とか、あるいは地方自治の成熟への道としてあるということを、十分に審議の過程できわめていただきたいと念願するわけでございます。
 こちらに参るに当たりまして、膨大な参考資料をいただきました。よく広辞苑二冊分という表現がされておりますけれども、いやいや、もっとたくさんの資料を送っていただきました。見ただけで勉強する意欲を失いました。申しわけございませんけれども、今やそういう気力もございませんでしたので、幾つかの点に絞って、感じていることを申し上げたいと存じます。
 一つは、機関委任事務というものが廃止されまして、それにかわるものとして、法定受託事務という制度が導入されました。
 これは、行政制度上、あるいは法律的にも、どういう問題があるか私はよくわかりませんけれども、確かに、制度的には大きな変化でありましょう。しかし、私ども一般の外側から見ておる者にとりましては、この制度が変わることによって、実質的に何がどう変わるかという点は必ずしも明らかでないというふうに思っております。
 もとより、地方団体を国の機関として考えるということの誤りを是正した点は評価すべきではございますが、この法律の中にもありますように、国が本来果たすべき役割を地方団体に行わせるシステムというものは、機関委任事務の場合と変わってはおりません。自治体の行うサービスは自治体が主体的に実施するという、自治の理念に必ずしも沿ったものだとは言えないと私は思っております。国の果たすべき役割は国自身がやった方が責任の所在がはっきりしていいというのが、私は、年来の主張でございます。
 それから第二番目に、これに関連いたしまして、自治事務に対する国の関与がこの法律の中でも色濃く残っているということであります。
 今までスムーズに行われてきた行政を、全部根底からひっくり返すということは現実的には難しいことではありますけれども、自治事務に対する是正の要求措置というものが余りにも多いということに気がつきます。言いかえれば、自治事務は自治事務として地方自治体がやるんだけれども、それに対して、国の立場から、間違っていることがあれば是正の要求ができるということであります。これをやっていけば、地方自治というものは一体いかになるだろうということを心配するわけでございます。
 もちろん、この問題は、ただ法律上の字句の問題ではなくて、具体的にどう運用されるかということにかかっている問題であります。しかし、そうではありますけれども、地域住民の責任で実施されるべきことに国が関与するということは、決して望ましいことではございません。こういう制度が残りますと、明治以来続いたいわば中央集権的な仕組みというものを根本から直していく、そして地方自治の確立に資するということには、どうもほど遠いような感じがいたします。
 それから第三番目に、これは地方自治体の議会に関する問題でございますけれども、地方自治体の議会の機能は、地方自治にとって極めて重要でございます。したがって、議員の定数とか議会運営の仕方については、地方議会の条例で定めるのが本来のあり方だと思っております。
 ところが、これを法律で統一的に定めるべきだというのが今回の法律でございますけれども、それはやはり本当ではないと私は思っております。それは、多分に地方自治体に対する不信感のあらわれと言えるかもしれませんけれども、自分たちの自治体を信ずるか信じないかは、住民自身が決めることであって、中央政府が決めることではないというのが私の基本的な考え方でございます。
 最後に、都道府県の性格についてであります。
 資料がたくさんございましたけれども、法律案の提案理由説明の第二番目のところに、こういうくだりがございます。「法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。」こういうふうに提案理由の説明に書いてあります。
 ここでは、これをそのまますんなりと読めば、地方公共団体は市町村であり、この市町村に対する国または都道府県の関与ということの表現は、国と、いわば中央政府と、都道府県が一体のものとして位置づけられているように私は受けとめたわけでございます。言いかえれば、都道府県というのは国と一体のものだ、都道府県の自治ということは一体どこにあるのかということが私には疑問に思えました。
 現実に、皆様方も御存じのように、都道府県は市町村にとってはお上的な存在であり、お上意識が色濃く残っております。自治体としての意識が必ずしも十分に練れているとは思えません。地方自治の上で、都道府県をもし自治体と定義づけるならば、一体それをどういうふうな姿に位置づけるかということをやはり明確にすべきだというふうに私は思っております。
 以上、若干気のついた点をかなり漠然と申し上げましたけれども、最後につけ加えさせていただきます。
 地方分権というのは、中央の権限をできるだけ地方自治体に移すということに重点が置かれているようでありますけれども、私はそうだとは思いません。地方自治体が住民とともに行政サービスを行う場合に、大切なことは、権限の量の大小ではないということであります。権限が大きいからそれだけ地方分権が進んだということではなくて、たとえ権限の量は少なくても、その行政に自主性が尊重されることの方がより大切だと思っております。
 言いかえれば、地方自治体の権限がたとえ小さくても、それを自分たちの、地域住民の主体性、自主性によって行っていくということの方が地方自治にとっては非常に大切だ、こういうふうに私は感じております。そういう点も含めて、皆様方の慎重な御論議をお願い申し上げたいと思います。
 なお、つけ加えて申し上げます。
 長い間の中央集権体制を根本的に改めようとする大事な法律案であります。そして、このたびの法律の改正は、将来の地方自治に対する一つの出発点だということであります。したがって、それほど重要な出発点になる法律案でございますので、ちょっと申し上げにくいことではございますけれども、今国会で成立させるというふうな意気込みも大事ではございますけれども、そういうことではなくて、ゆっくり時間をかけて、そして国民の納得が得られるように御審議をいただきたい、これが私の最後のお願いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上で終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 114504279X00119990607_004

発言者: 恒松制治

speaker_id: 12396

日付: 1999-06-07

院: 衆議院

会議名: 行政改革に関する特別委員会公聴会