小林節の発言 (内閣委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○小林公述人 まず、結論を先に申し上げますが、私は、今回の法案を歓迎するものでございます。
 前提としまして、世界の常識に照らしまして、すべての国はそれぞれに国旗と国歌が必要不可欠でございまして、それはもちろん、国家という、あるようでないような存在なものでありますけれども、それを象徴的に示す形が必要だということと、それから、たくさんの国民が一つの国家にまとまっていくための連帯のきずなとして歌が有用であるということであります。
 この君が代と日の丸につきましては、私は法律の専門家でございますが、もう既に慣習法として確立しているという認識をしております。ただ、この慣習法というのは、慣習なるがゆえに文章化されておりませんので、その点に関する無理解か、あるいは意図的な反発があるようで、さまざまなトラブルが現に生じております。こういうトラブルをなくすために、六法全書の中にきちんと入れてしまうということは、今の日本の社会状況において大変有効なことであると考えます。
 よく問題になりますのが入学式と卒業式、御案内のとおりでありますけれども、反対する人は法令上根拠がないといういわばうそを申すわけでありますが、それに対して、国旗・国歌が法典に載れば、それを受けて、文部大臣の学校教育法上の権限で、教育内容を決める権限に基づきまして、同法施行規則とか学習指導要領という、要するに法治主義の筋道を通して現場の責任者に国旗・国歌の使用をきちんと命令することができる。そうすると、現場で揺らがないで事が遂行するという大変大きな効果があると考えます。
 もちろん、これについては、日の丸・君が代が憲法違反であるという立場から抵抗もあるのですけれども、それは、これまた法治国家のルールでありまして、最高裁で違憲判決を受けていないものである以上、現時点では有効なものでありますから、それは自分の信条に合わないからといって暴力的に抵抗するというのはただの公務執行妨害でありまして、法治国家の国民のマナーではないと私は思うわけであります。
 もちろん、その内容についてこの際論及せざるを得ないのですけれども、慣習法として確立するという以上は、それが国民生活の中に確立した慣習であるということと、それから慣習たる内容が、現行法令、この場合憲法でありますが、に違反するものでないということであります。
 よく日の丸と君が代が憲法違反という主張があるのですが、日の丸、これは素直にあのデザインを見ていただければ太陽ないしは日の出でありまして、それ自体は我々が最も敬けんな気持ちで見詰める瞬間でありまして、それ自体に反民主制とか軍国主義とかいうものはそもそもないものであります、長い歴史の中でたまたまそういう間違った使われ方があったということは議論の余地ありだと思いますけれども。
 君が代につきましても、これは明治憲法下におきましては、確かに皇国日本であったわけです。それは当時の国体であるわけでありますから、天皇の治世の長きことをというのは当時としては極めて当たり前のことでありまして、それが国民主権国家に変わった今、政府が明確に見解を出して意味を確認、変更しようとしている以上、それはそれで、私の見解ではありませんが、一つの見識であると思っております。つまり、国民主権国家における主権者国民の総意に基づいてその位置にある象徴天皇をいただくこの国日本の永続を願う、これは極めてまともな一つの解釈であると思います。
 もちろん、明治憲法下との関連もあるのですけれども、ただ、君が代というのは、それ以前の、古来さまざまに歌い継がれてまいりました日本の文化の一つのような歌でございますから、その中で、長い歴史の中で一時期いわゆる誤用がなされた、ないしは、当時としては正当な用い方でありますが、そのことをとらえて、それがすべてのように否定するのは私は無理があると思います。
 そういう意味で、大事な点は、今回こうして成文化するに当たって、ここ、すなわち国会、すなわち国民主権国家日本における主権者国民の直接代表たる最高機関国会で有権解釈を定めてしまえばいいわけでありまして、すなわち、附帯決議という方法などもあると思いますけれども、簡単な話は、現にこうして議事録に残っていくことが重要なわけであります。
 つまり、この法案の趣旨説明を政府がなすって、それを国会各院が了承して可決したという事実が議事録に残る以上、この日の丸・君が代の意味はこういう意味なんですということが有権的に決まるわけです。これは最高裁で覆されない限りはそういうものになっていくわけです。そういう手続は、私は大変重要であると思っております。そういう意味でも、今回、改めて日の丸と君が代を国会で審議して形に残すということは、極めて重要であると考えます。
 ちょっとついでに論及いたしますけれども、もちろん戦争責任の話は、これはもうわかりやすい話でありまして、さきの大東亜戦争に日本が入っていったこと、そして、負ける過程までにいろいろなことをしたということについてはいろいろ議論のあるところでありますが、あるとしても、それはむしろ世界史の大きな流れの中で我が民族がいかなる罪を犯したかどうかの問題でありまして、旗とか歌の責任ではそもそもないと私は思うのですね。それに、逆にそういう形で責任を転嫁してしまうことの危険性を私はむしろ感じます。
 それから、これで小中高校の入学式、卒業式で日の丸・君が代が使いやすくなると私どもが申しますと、それすなわち強制である、良心の自由という話が必ず出てまいります。
 ただ一つ、これは二つの強制があるわけで、一つは、現場の責任者である校長、これは公務員、それから、その校長の指揮下に入っている現場の教員にとって強制であるか。これは、公務員として禄をはんでいる以上、公務員は当然国法体系に忠誠を誓って採用されているわけでありまして、また、そうでなければ困るわけでありまして、そういう意味では、有効な法令に基づく指揮命令が上官から来るわけでありますから、それに背く権限はその公務員たる立場にはない。率直に言うと、嫌ならおやめになればいい、あるいは抵抗して処分を受ける、これしか選択肢はないわけであります。これは公務員である以上、強制とは言いません。
 もう一つは、一般市民に対する強制、つまり、きょうは旗日だ、旗を上げろとか、敬礼しろとか、そういうことがあるかないかが問題なわけでありまして、今回の法案はそういうことが全くございませんので、ただ歴史的慣行をここで確認的に、国旗はこれですよ、国歌はこれですよとしたものでありまして、そういう意味では、いかなる国民に対する強制もないですから、憲法上の良心の自由の問題にはそもそもならないわけであります。嫌な人は、そういう儀式に必要上参加するならば、そのとき国旗に向かって敬礼をしないとか、それから、国歌を人が歌っているときに歌わない、口を閉じている、これが本来憲法上の良心の自由。つまり、嫌なことは強制されない。
 ただ、日の丸があって、かつ国歌が歌われている場所に私がいることが嫌だというのは、だからそれを排除するというと、これは大変な問題が起きるわけであります。要するに、私のような国民はどうなるのか。つまり、当然にこういう場には国旗や国歌があってしかるべきと思って行く。そうすると、暴力的にそれが取り払われている。そのこと自体は、私にとって極めて不快で良心に反することでありまして、そういう場にいることを強制されている多数派の良心に対する侵害が起きているわけです。
 これをどう説明するかと申しますと、要するにこれは権利乱用の話でありまして、憲法十九条に良心の自由はあるけれども、同じく十二条に人権の乱用も禁じられているわけでありまして、そういう意味で、私が嫌だからあんたもやめろというような、法令上根拠があるものを排除する、そのたぐいの良心はない。これを良心というならば、それは単に過度な我の張り方でありまして、それすなわち良心の自由の誤用、乱用のたぐいであります。これまでそういう状態があったわけです。
 そういう意味で、これからは、別の言い方をしますと、私どものような静かな多数派が儀式に参加して異様な光景に我慢しないで済む、むしろ多数派国民の良心が解放されることになるわけです。そういう意味でも、私自身も子を持つ親としてそういうところへ出ることがあるわけでありまして、すごくそれは個人としてうれしくも思うわけであります。
 最後にもう一点だけ。
 本来でありましたら、先生方お気づきのとおり、国旗とか国歌というのは、諸国の先例に照らせば、むしろ憲法の中に規定されていてしかるべきことだと思うんですね。つまり、分類すれば、これは法律事項ではなくて憲法事項であると思うんです。
 そういう意味では、最近非常に政治で動くことが多いのですけれども、憲法調査会がとりあえず衆議院に、どうも参議院にもできるようです。まさに国権の最高機関で、憲法改正発議権をお持ちの国会で初めてまともに憲法論議ができる場ができるということは、その中の重要課題の一つとして国旗・国歌の問題もあるわけでありまして、まずは今回は一歩前進ということでございますが、その点にも、一人の国民として、あるいは憲法学者として、期待を表明させていただきます。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 114504914X00119990708_002

発言者: 小林節

speaker_id: 20442

日付: 1999-07-08

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会公聴会