西元徹也の発言 (日米防衛協力のための指針に関する特別委員会)

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○西元参考人 おはようございます。
 本日は、私のような未熟者を、二十一世紀にわたる我が国の安全保障上極めて重要な意義を持っております本特別委員会に御招致賜り、かつ意見を申し述べる機会を与えていただきましたこと、まことに光栄に存じております。私は、三年前まで自衛隊の部隊運用と日米防衛協力の現場に携わっておりましたので、実行機関の立場に立って意見を申し述べることをお許し賜りたいと存じます。
 まず最初に、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの策定の背景となるものについて、私見を述べさせていただきたいと思います。
 ことしは、一九八九年にベルリンの壁が実質的に崩壊してからちょうど十年目に当たります。
 一九九七年、すなわち二年前の十二月二十日付イギリスのエコノミスト誌は、一九八九年に冷戦が終結したとき半世紀に及ぶ確実性の時代は去った、冷戦という凍りつくような清冽さは濃霧に覆われた先行き不透明な平和に道を譲った、四十年間ずっと動かずにいた世界はベルリンの壁崩壊から八年間動き続けている、このように述べておりますが、この認識は、基本的に今日も変わっていないと承知いたしております。
 もう少し敷衍いたしますと、冷戦終結後、国交の正常化や新たな国交の樹立、あるいは、各国の相互交流あるいは相互依存関係の深まり、また、全世界的には国連、我がアジア太平洋地域にはASEANリージョナルフォーラムといったような地域の安定を目指す多国間の協調的な機構の発展、充実といったような好ましい傾向が見られる反面におきまして、民族、宗教、領土、資源などをめぐる地域紛争発生の危険、あるいは、最近特に指摘されております大量破壊兵器とその運搬手段でありますミサイルの拡散の危険、また、テロ、麻薬、海賊行為、隠密不法行動あるいはコントロールできない難民の発生、流入といったような危険など、さまざまな危険や脅威が存在し、情勢は依然として不透明、不確実でございます。
 このような安全保障環境の中で、我が国に直接的にあるいは間接的にどのような危険が及ぶ可能性があるかということを考察いたしてみますと、我が国に対するハイインテンシティーからローインテンシティーの全スペクトラムにわたる各種の直接的な武力攻撃、あるいは、場合によっては周辺事態から我が国に波及するテロ、隠密不法侵入、あるいは不法行為、各種の破壊活動、避難民の流入、あるいはゲリラ、コマンドー攻撃、場合によっては弾道ミサイル攻撃あるいはその恫喝といったようなことが考えられ、また、我が国の海上、航空交通路に対する妨害、重要資源へのアクセスへの妨害、あるいは海外に居留する我が国民の生命財産への危険といったようなさまざまな危険が想定をされます。
 このような情勢の中におきまして、地球の陸地面積のわずか〇・二五%という狭い国土の中に一億二千八百万の人口を抱える資源小国たる我が国が、今までと同様に貿易立国を選択し、将来にわたって安定と繁栄を維持していくとすれば、自国の平和と安全の確保、絶え間ない技術革新、あるいは自由貿易体制の維持といったような基本的な要件に加え、資源への安定的なアクセス、海外市場の安定的な確保、あるいは貿易のための各種経路の安定的な確保といったようなことは我が国の平和と安全と繁栄にとって極めて重要なものであり、この地域、ひいては世界のそれは我が国のそれに直接直結している、こう申しても差し支えないと思います。
 以上のような情勢と条件の中におきまして、アジア太平洋地域におけるASEAN地域フォーラムあるいは全世界的な国連、いずれも、現状及び見通し得る将来において、政治、外交的な話し合いで解決できない安全保障問題の解決には依然として一定の限界があることは確かでございまして、これに我が国の安全保障のすべてをゆだねるというわけにはなかなかまいらないのではないかと考えております。
 したがって、私たちは、私が今さら申し上げるまでもなく、オープンな自由民主主義、自由貿易体制を維持し、経済的な相互依存関係が最も深く、しかも、自由、平等、人権といったようなさまざまな価値観を共有するアメリカとの日米安全保障体制を選択したわけでありまして、日米安全保障体制の意義と役割がアジア太平洋地域の平和と安定の維持へ貢献するといったような観点からも、その機能の充実強化を図ることが極めて重要と考えております。
 次に、ガイドラインの基本的な考え方について若干申し述べさせていただきます。
 ガイドラインの具体的内容は、第一に、平素から行う協力、第二に、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動など、第三に、周辺事態における協力ということから成ることは、諸先生方もう先刻御承知のとおりでございまして、これについて細部を申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、そのガイドラインがどのような基本的な考え方を持っているかということについての私見を申し述べさせていただきたいと思います。
 私は、ガイドラインの基本的な考え方は、第一に、環境整備すなわち平和建設と危機の予防、第二に、危機の抑止、危機の拡大防止あるいは危機の回避といったようなこと、そして第三に、我が国に対する武力攻撃を抑止すること、そして、万々が一我が国が武力攻撃を受けるような事態には早期にこれを排除し収拾をすること、このようなことにあると考えております。
 すなわち、ガイドラインは、一九九五年十一月二十八日の閣議決定によります防衛大綱の基本的な考え方にのっとり、冷戦終結後の新たな時代に対応して、二十一世紀にわたり我が国の平和と安定と繁栄を確保するとともに、この地域、ひいては世界の平和と安定の維持に貢献するために、平常時における平和建設や危機の予防、あるいは、事態の発生が予想される場合における事態発生の未然防止、これを重視する、いわば危機管理型の安全保障、防衛政策を具体化したものであり、特定の国や地域を対象として、それへの対応を考えたものでもなく、ましてや、我が国がアメリカと結託して、我が国の政治的、軍事的な進出を意図しているというようなものでは絶対にあり得ないというぐあいに考えております。
 最後に、以上申し述べました意義を有しておりますガイドラインの実効性を確保するための措置と、それについての若干の要望を申し述べさせていただきたいと思います。
 この際、大変僣越でございますが、これらの整備について、特に次のような諸点に御留意を願えれば大変ありがたいと存じます。
 その一つ目は、我が国の安全保障政策目標、安全保障政策遂行の枠組み、安全保障政策目標達成の度合い、さらに日米の緊密な共同行動実施の可能性といったことを総合的に検討していただきたいということであります。
 失礼でございますが、要するに、単に手段だけではなくして、政策遂行の枠組みを考慮した手段とその結果、安全保障目標の達成の度合いや、日米安全保障体制の信頼性の向上といったようなことをどう調和するかという観点に立った御論議をぜひお願いしたいと考えております。
 二つ目は、危機の特性に応ずるタイムリーな措置を可能とする枠組みへの配慮でございます。
 申し上げるまでもなく、危機事態における情勢は、一般に情勢の急変や停滞の繰り返しでございまして、変転きわまりなく、タイムリーな措置をとることを可能とする枠組みの構築は極めて重要であって、そのための配慮をぜひお願いしたいと考えております。
 三つ目は、国、政府、地方自治体の総合力をもって対応し得る体制の確立ということでございます。
 冒頭に申し述べました、冷戦終結後の複雑多様な各種の危険や脅威に適時適切に対応するためには、地方自治体を含む国、政府の総合力をもって対応することが不可欠でございまして、そのことによって事態を早期に収拾することを可能とし、結果として我が国への影響を最小限に食いとめることになるのではないかと考えます。
 四つ目は、自衛隊、警察、海上保安庁あるいはその他の実行機関の立場に立った措置への配慮を願いたいということでございます。
 言うまでもなく、国や政府の政策は実行機関の第一線の要員の行動によって初めて達成されるわけでございまして、これらの隊員が政策遂行の枠組みを遵守しつつ、しかもその人たちの安全を確保する、この二つのことをどう調和するかという配慮は非常に大切なのではないかと考えております。
 五つ目は、実行機関にとっての準備の重要性への理解をお願いしたいということでございます。
 実行機関が政府の命令に基づき遅滞なく万全の行動を実施するためには、その諸活動における先行性、並行性あるいは完全性といったようなことが重要でございまして、事前における十分な準備の実施は不可欠でございます。
 第二は、ただいま要望を申し述べました国内法制などの整備に続いて次のような措置をお願いしたいということであります。
 一つ目は、計画体系の確立と各種実行計画の作成という問題でございます。
 この点に関しまして、災害対策基本法に基づく国全体としての自然あるいは人為災害への対応はその一つのモデルではないかと考えます。すなわち、中央防災会議の防災基本計画を受けて、関係行政機関は防災業務計画を、地方自治体などは地域防災計画を作成し、さらに、その下部の国の出先機関、自衛隊の部隊あるいは市町村は地域の特性に応じたそれぞれの計画を作成します。そして、それらの計画は、すべてのレベルにおいて相互にすり合わせが行われ、事態が発生した場合の迅速的確な対応を可能とするばかりでなく、そのための訓練の実施の準拠ともなっております。
 周辺事態につきましては、一九九七年九月二十九日の閣議決定によりまして、このような体制を確立するということが決定されていると承知いたしておりますので、そのことを強く期待いたしたいと存じます。
 ただ、我が国有事という最も厳しい事態にこのような体制が全く欠落しているということも諸先生方ぜひ御認識いただきたいと存じております。
 二つ目は、各種行動における行動基準、いわゆるROEの制定でございます。
 我が国の特性から、諸先生方の現在の審議の焦点になっております各種行動につきましては、政策遂行の枠組みの遵守ということと部隊、隊員の安全の確保ということをどう調和するかといった、いわゆる行動基準の制定をし、政治の責任において実行機関に示し、実行機関が迷うことなく的確な行動ができるような配慮をぜひお願いしたいと考えております。これは必ずしも国会のお仕事ではないかもしれませんが、先生方にもぜひ御理解を賜りたいと思います。
 お手元の資料にあります三つ目と四つ目は、ガイドラインの中に書いてあることでございますので、時間の都合上省略させていただきます。
 最後に、もう一点申し上げておきたいと思いますが、先生方の議論では、周辺事態が我が国へ波及するというおそれがあるということの御論議がなされている。我が国に波及するとすれば、その事態によっては明らかに我が国有事となります。したがって、我が国有事においてどのように対応するのかということを、国民の皆様の御理解を粘り強く得ながら、将来ぜひ御検討をいただきたい、このように切に願う次第でございます。
 終わりに、我が国の安全保障をただいま申し述べました新しい現実と二十一世紀の課題に対応できるようにするためには、この法案の成立は非常に重要な意義を持っていると思います。ぜひとも早期の成立をお願いしたいと思います。
 以上をもって私の意見陳述を終わらせていただきます。失礼なことがあったかと存じますが、どうかお許しをいただきたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 西元徹也

speaker_id: 3603

日付: 1999-04-07

院: 衆議院

会議名: 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会