森本敏の発言 (日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会)

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○森本公述人 本委員会に公述人としてお招きをいただき、光栄に存じます。
 御承知のとおり、冷戦後の世界の中で、我々は、冷戦後の国際社会の平和と安定を維持するための新たな秩序をつくるプロセスの中に今日あると思いますが、そのプロセスはこれからまだ相当長く、その間、ヨーロッパにおけるコソボあるいはアジアにおけるいろいろな問題に見られるように、まだまだ道は遠いのではないかと思います。
 一方、このような新たな秩序を維持するまでの間、我々はどういう道を現在選んでいるかというと、言うまでもなく、これは、冷戦時代に構築をした同盟を強化することによってこの冷戦後の世界を乗り切ろうとしているわけで、欧州においては、現在、コソボにおけるNATOの作戦は、まさにNATOが今後五十年生き残れるかどうかという、NATO存続をかけたいわば戦いをやっているのではないかと思います。
 アジアにおいては、言うまでもなく、日米同盟という、冷戦後につくられた、最も確立された信頼性の高い同盟関係をどのようにして強化するかということが、アメリカにとっても日本にとっても、そして広くはアジア太平洋全体の平和と安定のために重要であります。
 したがって、現在本委員会において御審議いただいておるこのガイドライン関係法というものをぜひとも成立させ、日米同盟を強化し、これを、日本の平和と安全のためのみならず、アジア太平洋全体の平和と安全のために役立てるということが不可欠であると考えます。
 限られた時間の中で、この周辺事態安全確保法について、特に法案修正について所信を申し述べたいと思いますが、言うまでもなく、この法案は、ガイドラインに基づく日米防衛協力の実効性を確保するという側面と、もう一つは日本の平和と安全に重要な政策上の指針を与えるという、二つの側面があると思います。
 法をいかにしてつくるかということについては、言うまでもなく、二つの大きな基準があると思います。それは、法の成り立ちから見ていかなる形のものが望ましいのか、特に、立法府と行政府の権限をいかにして調和させ、それぞれの権限を十二分に発揮させるのが望ましいのかという側面と、それからもう一つは、この法によって、政治の実態、この場合は国家の安全保障をいかにして確保するか、そのためにどのような法の枠組みが最も有効で、組織的な機能発揮ができるのかという、いわば法と実態の二つの側面からこの法案修正が議論されるべきであると考えます。
 かかる観点に立って、現在問題になっている幾つかの重要な点について意見を申し述べれば、まず、周辺事態の定義についてはほとんど議論がし尽くされておりますが、この周辺事態の定義というのは、「我が国周辺の地域における」という地域的概念、いわゆる地理的概念と、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」という事態の性格と、二つの面を持っているわけで、どちらかの議論だけを集中的にやるということは、この定義を全体としてとらえることができないのではないかと私は思います。
 言うまでもなく、我が国周辺の地域というものが地球の向こう側まであるはずがなく、したがって、明らかにこの前段の部分は地理的概念を示したものであり、後段の部分は事態の性格に立脚した表現でありますので、この二つをどのように調和させて議論するかということを考えた場合、その行き着く先は、日米安保条約第六条に言う極東並びに極東周辺に発生する事態を、日本が、米国との調整を行いつつ、主体的に判断して認定すべきものであると考えます。
 最も重要な国会承認につきましては、浜谷先生が米国の戦争権限法を例に説いて大変ユニークな、また意味のある卓見を御披露になりましたので、私は結論部分を申し上げたいと思います。
 私の結論は、まず、国会承認すべき内容というか対象は二つです。一つは、領域外における自衛隊の活動、それから、地方公共団体及び国以外の者、すなわち一般の国民が支援、協力する内容。この二つはいわば新しい分野でありまして、これは、憲法を初めいろいろな法に照らして、この際立法府がよく審議する必要があるということであり、したがって、この二つの問題については国会承認の対象とすべきであると思います。
 しかるに、これを事前承認するということについて、私は必ずしも納得しないわけであります。第一に、状況に十分に迅速に対応できないという可能性があるということ。言うまでもなく、周辺事態は突然起こる何らかの不測の事態。六つのケースが現在示されておりますが、そのいずれをとっても、何カ月も前に予期されるなどということがほとんどあり得ないわけでありまして、このような事態に迅速に対応するためには、内閣が内閣総理大臣の権限のもとで必要な認定を行い、措置を実施するということがまずあってしかるべきであると思います。それだけの権限を、自衛法等において内閣総理大臣に自衛隊の最高の指揮監督権を与えているわけでありますから、したがって、ここは、内閣が閣議において決定される内容をまず実行するということが望ましいのではないかと思います。
 その際、すべてのものを事前承認するということになりますと、まさに浜谷先生の御指摘のように、まさに周辺事態が生き物のように変化するときに、基本計画やあるいはいろいろな対応措置が変化するたびに、そのたびに事前の承認をまた国会でとるということであり、それは事態に対応するときに、事態というものに柔軟にかつ迅速に対応できないという可能性が常にあるということなのではないかと思います。
 その際、いかなる期間に事後承認するかということについて、戦争権限法は六十日ということでありますが、これは世界的に活動をする米軍の場合でありまして、我が国の場合、我が国が対応する地域はあくまで周辺事態ということであります。しかしながら、国会が休会になっているという可能性もあり、このようなときに国会を開いてこの重要な問題を審議するためにはどうしても、必要な議員の方々がお集まりになる時間的余裕を一週間と見て、衆参両院一週間ずつ、計三週間というのがこの事後承認の最大見積もられる期間なのではないかと思います。
 もちろん、内閣は、必要な認定を行い、措置を実施した場合はまず速やかに国会に報告を行い、すべての活動が終わった後、事後に再び国会に報告を行うということは、これは当然であると考えます。
 これが国会承認についての私の考え方です。
 以下、細かい幾つかの点について申し述べたいのですが、一つは、捜索救助と船舶検査については、日米安保に基づき米軍に対して行う支援、協力活動と、本来、日米協力には限定されませんが、日本が主体的に行う活動が含まれていると思います。しかるに、この法案はそもそも日米防衛協力を目的としたものである限り、かかる観点から、日米安保の実効性を確保するための法律であるということを明記し、同時に、日米安保に依拠した活動を行うよう規定することが望ましいと考えます。その際、この法律で担保されない活動について、別途の法律でこれを確保するという必要があると考えます。
 また、船舶検査については国連の安保理決議が要るか要らないかという議論がありますが、私は、これは、日本の国内において必要なこの種の活動に多くの国民の皆様に理解と支援を得るためには、経済制裁を科するための国連の安保理決議が必要であると考えます。
 その際、安保理決議がある限り、相手船舶の船長等の同意は法的に見れば不要でありますが、他方において、実施区域が他の国の活動と混交されないよう指定されているということについては、これでは日米防衛協力というものが十分にできない可能性もあり、このところについては改善の余地があるのではないかと考えます。
 地方公共団体及び国以外の者による協力については、この法律に基づく活動のうち地方公共団体や一般国民が対応すべき活動内容について、基本計画の中で、協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項が示されることになっているところでございますけれども、地方公共団体及び一般国民が支援、協力すべき内容が例示されておらないということについては、この法律に基づいていかなる協力が要請され、また求められるのかということが不透明であるという問題があり、この点は、あらかじめこの法律の中で、具体的に何らかの支援分野を例示する必要があるのではないかと考えます。
 武器の使用については、従来から二つの問題が議論されておりますが、一つは、捜索救助及び船舶検査に従事する個々の自衛官が合理的に必要と判断される限度で武器の使用ができるということになっておりますが、この種の活動を行っている者の生命等を防護するための武器の使用というのは、いわば隊員個人の正当防衛及び緊急避難的な活動に限定されるものであり、これではこの種の活動を組織的に行うということは期しがたいと思います。
 その点で、個々の隊員の武器使用というのではなく、自衛隊そのものの活動として、上官の指示もしくは命令に基づく武器の使用という方法でこの法案が修正されるべきであると考えます。
 また、後方地域支援に従事する自衛隊の武器の使用については、この法律の中で限定されていませんので、したがって、これでは実際の状況や活動を考えた場合、必ずしも適切でないと考えます。
 いずれにしても、この種の問題は、もともと、昨年四月の末、閣議で御了解いただいた原案が、何らかの事情により、今日法案を修正する必要があるという状況に至っているわけで、したがって、もともとの成り行きを考えてみますと、この法案そのものを実際に閣議に通す場合、もう少し立法府と行政府で協議があってしかるべきであったのではないかと考えます。この種の最も重要な法案が立法府に十分に協議がなく閣議に通ってしまって、その後で、法案の修正がこのように多大な努力というものを傾注して行わなければならないこと自体、この法案を草案するときのプロセスに立ち返って、いささかの問題があるのではないかと考えるところでございます。
 細かい点については質疑応答のところで述べさせていただくとして、基本的な考え方について申し述べました。
 以上でございます。ありがとうございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 114504964X00119990421_006

発言者: 森本敏

speaker_id: 34495

日付: 1999-04-21

院: 衆議院

会議名: 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会