木幡弘道の発言 (本会議)

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○木幡弘道君 私は、ただいま委員長より報告のありました主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案に、民主党を代表し、反対の立場から討論を行います。(拍手)
 今回の関税化に踏み切る決定はいかにも唐突でありました。世界的規模での人口の増大と、それに伴う慢性的食料危機が叫ばれる中で、我が国の基礎的食料の稲作の将来を決定づける極めて重要な方針を、ほんのわずかの期間で決めたことに驚きを隠すことができません。かつて、英知を結集して七年にも及ぶ交渉の末、特例措置に踏み切ったときのことを思えば、今回の関税化の選択は、我が国農業の将来にとって、果たしてその責任を持つことができるのかという不安を抱かざるを得ないのであります。
 牛肉の関税化決定と、その後の関税率の引き下げ、それに続く我が国畜産業の衰退の例を見るまでもなく、いまだ体力のつかない我が国農業、とりわけ稲作の現状を見るとき、牛肉の二の舞になるのではなかろうかという、極めて大きな不安を抱くのは私一人ではないはずであります。
 五年前のウルグアイ・ラウンド交渉の際の輸出国側による例外なき関税化の主張は、次期交渉に至るまでの間国際世論の大きな趨勢になるであろうことは、国民のだれしもが予想し得たことでありました。その意味では、今次の関税化への決定は、その基本を否定するものではありませんが、受け入れの前提となる内政における不備と怠慢を続けたままで、到底これに賛成することができません。
 すなわち、五年前に容易に予測することができた次期交渉の関税化への道を考えたとき、その対策として、国内生産基盤の強化並びに生産性の向上を図るため、ウルグアイ・ラウンド対策費六兆百億円をそれが施策の推進に投入することを決定したのであります。
 しかしながら、この五年間を振り返れば、ウルグアイ・ラウンド対策費は単に既成の公共事業に予算を上乗せするという形で進められ、優良農地の保全や担い手の確保、農家負債対策といった緊急措置には力点を置かず、なおかつ生産基盤の整備に至っては、ほんの微々たる成果しか上がっていないのが現実であります。
 この現状を見据えたとき、我が国稲作の現場における生産性が五年前の交渉のときと何ら変わることのない状況の中で関税化に踏み切ることは、恐れを知らない無責任なかけと言わざるを得ないのであります。ウルグアイ・ラウンド対策費の総括を行い、その上で、我が国農業の体質強化に向けた政策と予算的な裏づけを示し、これを担保した上で、初めて関税化を受け入れることが可能になるのであります。
 さらに、国民への米の安定供給を確保するために何らの国内対策もない中で関税化に移行すれば、将来展望を失った離農がますます加速しかねず、その結果、国内における輸入米の比重がさらに増大することが十分予想されるのであります。冷害や国際紛争などの要因で米の需給が逼迫する事態も予想されます。そもそも、現時点でも世界の米の貿易量は生産量のわずか五%前後にすぎないことを考えれば、さきに申し上げた緊急事態において、輸入量をふやして対応できるというほど楽観的な状況ではないのであります。
 すなわち、一億二千万国民の主食は、食料安保の見地からも、また稲作及び農村の持つ多面的機能という見地からも、それぞれの国が国境措置を認めるという交渉を強力にかつ粘り強く主張することが極めて重要であります。
 委員会の審議では、このような生産者や消費者のそれぞれの立場の不安は払拭されませんでした。特に生産現場では、この関税率がいずれはなし崩し的に下がり、十分な安定対策を打たれないまま、我が国の農業の基盤が根底から崩壊するのではないかという不安と不信が日を追って募っておるのが現実であります。まさに、これらの不安と不信を払拭するために、国民合意のための十分な時間をかけて決定をすべきではなかったのかと残念でなりません。
 おおよそ議会制民主主義の我が国にあって、我が国農業の根幹とも言える稲作の極めて重大な国境措置にかかわる決定を、自由民主党一党と農林水産省と上部系統農協団体の三者による短期間の合意によってこれを断行することは、まさに驚愕の一語に尽きると言わざるを得ません。現時点での関税化受け入れは余りにも拙速であると言わざるを得ませんし、農家や消費者の不安を払拭するためにも、国内農業政策の根本的改革をまず行うべきであります。
 今国会で農業の憲法とも言える新農業基本法の審議が予定されており、この審議の中で、今後の我が国の農業の方向と制度のあり方、さらには次期WTO農業交渉について、広範な議論が展開されることになります。その議論を経た後、関税化の受け入れについて検討をするというのが当然の道筋であり、国民、とりわけ生産現場の農業従事者の不安を払拭し、一方、安全で安定した国内産食料を望む消費者の不安をも払拭した後、関税化受け入れを決定するのが正論であります。
 以上申し上げた立場から、民主党は、本法案に反対の立場をとらざるを得ません。日本の農業の現状を見据え、さらに将来に希望を抱ける農政の確立のためにも、本法案における我が党の立場に他党の皆様方の勇気ある賛同をいただくことを希望しつつ、反対討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 114505254X01619990317_019

発言者: 木幡弘道

speaker_id: 22586

日付: 1999-03-17

院: 衆議院

会議名: 本会議