樋口廣太郎の発言 (経済・産業委員会)
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○参考人(樋口廣太郎君) アサヒビールの樋口でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、政府提案の産業活力再生特別措置法案につきまして、経済戦略会議の議長並びに産業競争力会議の委員、また、少し前でございますが、ニュービジネス協議会の全国の会長をやりました立場から、所見を申し上げさせていただきたいと思います。
昨年の八月に経済戦略会議が創設された際、私は委員十名の互選をいただきまして議長を拝命したわけでありますが、本年二月、御案内のように、十人の委員の一致した意見といたしまして「日本経済再生への戦略」と題する答申を取りまとめ、総理に御提出いたしました。この答申には合計二百三十四に及ぶ提言が盛り込まれておりますが、産業再生策に関しましては、第四章「活力と国際競争力のある産業の再生」におきまして四十二にわたる提言をさせていただいております。
こうした経緯もございまして、本年三月に通産大臣の御発案による産業競争力会議が創設され、私も経済戦略会議を代表する形で委員に選出されましたのでございます。私自身、経済戦略会議の提言がこのような形で早期に政府、財界を含めて幅広く論議され、具体的な法案の形で御審議されるに至りましたことをまことに喜んでおる次第でございます。
先生方のお手元の資料にあると思いますが、経済・産業委員会調査室の参考資料「経済戦略会議答申に盛り込まれた各種提言に対する政府の検討結果」、その八十四ページにその内容が掲載されておりますのでごらんをいただきたいと思うのでございます。ごらんのように、ほとんどが「実現する方向で検討するもの」というAの評価となっておりまして、一部、税制にかかわる提言が「内容について、よく検討した上で結論を出すもの」とBということもありましたが、これについても今回の法案にかなりのものを盛り込んでいただいているわけでございまして、私といたしましても大変評価している次第でございます。
そこで、改めて産業再生に関する経済戦略会議の論議を御紹介することで、私の基本的な認識、考え方を申し述べたいと存じます。
産業再生にかかわる経済戦略会議の基本的な認識は次の三点でございます。
第一は、経済の再生のためには金融の再生だけではだめで、金融と産業が日本経済を引っ張る車のいわば両輪として活力を取り戻す必要があるという認識であります。
こうした認識から、産業再生に向けたフレームワークといたしまして、第一に過剰設備の処理の支援、第二に成長分野での設備投資の促進、第三に情報化の強力な推進、第四に経営組織の革新の四点を提言させていただきました。
これらの中で、設備廃棄に伴う各種の税制面での支援措置や、デット・エクイティー・スワップの活用、分社化などにかかわる法整備、税制措置などが今回の法案の中に織り込まれております。
こうした措置は、日本企業が不採算事業からの撤退や新規有望ビジネスへの進出などの形で事業構造を再構築するために不可欠の施策であります。我が国では、リストラというと、ともすれば経営体質や財務体質のスリム化、あるいはより直接的には雇用の削減を意図する減量経営と同義と考えられている向きもほんの一部にございますが、リストラとは本来リストラクチャリングの略で、後ろ向きのものだけではなく、前向きの経営戦略展開を含む幅広い言葉でございます。
一部では、御承知のように、過剰債務、過剰設備、さらには過剰雇用の解消策という側面のみが強調されてきておりますが、もちろん、こうした改革はそれぞれの企業みずからが積極的、主体的に取り組んでいかねばならぬものでありまして、政府の役割はそのための環境整備というふうに私どもは認識しておるのでございます。それは本来、くどいようでももう一度繰り返しになりますが、個々の企業の自主的な判断と自己責任を大前提とするものでありまして、政府の措置はあくまで自助努力を円滑にサポートするものと位置づけるべきと思うのでございます。
御案内のように、アメリカの企業が近年目覚ましい躍進を続けている背景には、まず人、物、金の経営資源を最も収益性の高い分野に素早く振り向ける戦略、いわゆるリエンジニアリングやあるいはフォーカシング戦略が奏功したと思われます。
現在、低収益に悩んでおります日本企業に求められていることは、単なる借金の棒引きや過剰設備廃棄、ましてや雇用の削減ということではなく、潜在的な需要、消費者のニーズ、ウオンツに的確に対応した商品・サービスを提供すべく、ニーズのある分野に経営資源を素早く集中し、スピーディーに事業構造の再構築を図ることであります。
その意味で、今回の法案の中に幾つかの重要な税制改正措置が年末改正を待たずに盛り込まれましたことは、産業界の立場からも高く評価させていただきたいと存じます。
戦略会議の基本認識の第二は、新規産業、ベンチャーなどを創出するための起業支援が極めて重要であります。改めて申すまでもなく、我が国の産業が活力を取り戻すためには、既存企業の活性化だけではなく、新たな雇用機会を生み出し、経済の活力の基盤となる新規事業をいかに創出するかが大きなかぎであります。
戦略会議では、このような認識から、起業支援策として、まず税制面からのサポート、二番目に店頭市場の改革などの規制緩和、三番目にマイクロビジネスの育成を目指した創業資金に対する政策融資、事業助成などが必要であると提言いたしました。
今回の法案でも、こうした戦略会議の認識を受ける形で、創業者及び中小企業による新規事業開拓のための支援措置が盛り込まれましたことは、高く評価させていただきたいと思う次第であります。
ただし、戦略会議が提言しております創業者利得の特例、言い直しますと公開三年前から保有していた株式の譲渡益の圧縮であります、の拡充や、エンジェル税制、損失の繰越控除制度の拡充強化、ベンチャーキャピタル支援税制、これは具体的には損失準備金制度の創設などでございますが、税制面でさらに一段の配慮が必要不可欠であり、今回の措置に加えて、年末の税制改正に向けた前向きの御検討を切にお願いしたいのでございます。
戦略会議の基本認識の第三は、二十一世紀を先導する、リードする産業を創出するために、技術開発、人材基盤・知的基盤の整備、規制緩和、国際標準の確保など、あらゆる側面にわたって国家戦略を策定し、大胆に実施していく必要があるということでございます。
今回の法案では、国の委託研究開発にかかわる特許権の扱いの弾力化、すなわち開発者の特許権保有を認めることや、技術移転機関いわゆるTLOの特許料の軽減などの措置が盛り込まれており、評価できると思います。
ただし、あえて言えば、こうした単発の措置ではなく、二十一世紀の日本経済をリードする新たな産業として、例えば情報通信、医療・福祉、バイオ、流通・物流、金融、環境といった戦略産業が自律的に立ち上がるよう、国家的なプロジェクトとして規制、法整備、税制、予算のあらゆる面から総合的かつ戦略的な視点で新規産業創出を図っていくことが極めて重要であると思う次第でございます。
以上、いろいろと申し上げてまいりましたが、今回の法案は、我が国の産業活力の再生と新規産業創出のために極めて重要であり、一刻も早い成立が望まれております。
そして、さらに重要なことは、産業再生策が今回の法案で尽きているわけでは決してございません。さらに第二弾、第三弾として追加策が必要だということでございます。
新しい会社再建制度の導入はもとより、会社分割法制の整備と税制面の手当て、連結納税制度の導入、起業支援税制の拡充、国家的新規産業創出計画の策定など、やるべきことは山積しているのが実情でございます。
議員の先生方におかれましては、このような状況に深い御理解と御尽力を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。