野口敞也の発言 (経済・産業委員会)
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○参考人(野口敞也君) 連合の副事務局長の野口でございます。
政府の産業活力再生特別措置法案に関しまして意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。また、若干おくれてまいりまして、陳述の順番を変えていただきまして、委員長の御配慮に感謝申し上げたいと思います。
この法案は、御案内のように企業の事業構造の改革あるいは事業革新の活動につきまして、これを事業再構築活動といたしまして、商法上の手続あるいは金融上、税制上の支援を与えることになっております。また同時に、創業者の事業あるいは中小企業の新事業開拓を支援しようというような形でさまざまな政府支援を行う中身になっております。
まず、この法案がこれからの経済あるいは私どもの雇用や生活にどういうような影響を与えていくか、この点について意見を述べさせていただきたいと思います。
御案内のように、現在の経済状況は、一—三月期は前年比GNPの伸び率が一・九%というような状況でありましたが、この四月—六月がどうであったか、あるいはこの夏がどうなるだろうか、大変心配されているところであります。果たして景気の底を打つことができるのか、回復に向かって進んでいくのか、ひとえにこれからの民間の設備投資あるいは個人消費にかかっているというふうに考えております。しかし、現在見るところ、企業の設備投資はなかなか期待できるような状況にございません。そういう意味で、個人消費の行方が大変景気にとっては大きな心配事になっております。
こういう中で、雇用の状況でありますけれども、二年続きのマイナス成長の中で、特にこの九八年度の雇用者数は戦後統計上初めて前年よりも三十九万人減ったというような状況であります。第一次オイルショックのとき、大変な経済低迷がございまして、たくさんの倒産が起こりましたし、失業も高まりました。しかし、あの当時でも雇用は一九七四年度に十三万人ふえております。今回、いかに雇用状況が危機的な水準にあるかということがうかがわれます。
そして、この雇用減は、九八年度におきましては最初は従業員五百人未満の中小企業で起こり始めております。これは一つ重要な点でございますが、これが九九年度に入りますと、大企業、中堅企業に草原の火のように大きく広がっていくわけであります。
その結果、失業率が急激に高まりまして、九八年四月には四・一%と四%台を超えました。残念ながら、この六月には四・九%とさらに最悪の記録を更新しているような状況でございます。景気低迷には消費不振が大きな影響を与えておりますけれども、この消費不振はやはり将来に対する雇用の不安、そしてまた生活の不安が根底にあるということが指摘されておりますし、そのとおりであるだろうというふうに思います。
このような中で、今回、産業の構造転換を促すこの法律が国会の中でかかっているわけであります。確かに、産業の構造転換、とりわけ中小企業の活性化、創業者の育成ということは極めて重要だろうと思います。しかし、この法律の中身を詳しく見ますと、ベンチャー企業の育成あるいは中小企業の新規事業の開拓、こういうような支援策は必ずしも十分であるというふうには考えません。これをもって企業が新たな事業拡大をしていく、あるいは新産業をつくり上げていく、こういう方向で一斉に努力をしていくということは十分に期待できないというふうに考えます。
その反面、私どもが一番大きな問題と考えておりますのは、大手企業を中心にしまして、設備の廃棄あるいは施設の縮小、廃棄、そしてまた企業再編によりますさまざまな事業の縮小を生み出すということであります。特に、この法律自体はこれに対して大きな優遇策を与えているわけであります。先ほど九九年度に大手企業の雇用減というのが非常に目立ってきたと申し上げましたけれども、さらにこの法案の政策の実施によりまして急速にこれを拡大する、雇用不安の引き金になるおそれがあるというふうに考えます。とりわけ、現在、大手のリストラ策が毎日のように新聞をにぎわせております。しかも市場はこの人員削減というのを評価して、削減計画を発表した会社の株価が一遍に引き上がる、このような状況になります。
このような中で法律がリストラ支援策を出すということは、本来であれば自己のリスクと責任において過剰設備については廃棄すべきでありますが、全体がやる中で、みずからの企業経営者の責任というものも感じずに一斉に安易に企業の縮小をやる、同時にまた人員の削減をやるというおそれがあります。赤信号、一緒に渡れば怖くないという言葉がございますけれども、まさにこの心境で、いっときに全体の事業削減、同時に雇用の縮小、こういうことを招くということに対して非常なおそれを持っているわけでございます。したがって、この法律によってさらに景気の回復をおくらせるということにつながる、これに対して大変懸念をしておるところであります。
第二の問題は、そういう意味で、雇用不安、雇用の縮小ということをこの法律の実施に当たっていかにとどめるかということが大きなポイントになるだろうと思います。具体的にこの法案の中身を見ますと、「雇用の安定等に配慮しつつ」と目的の中に書かれておりますが、具体策としましては、事業再構築計画の認定要件としまして第三条六項の六に次のような表現がございます。「当該事業再構築計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と。「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」ということにつきましては、さきの衆議院商工委員会での議論の中でいろいろと内容が明らかにされつつありますけれども、しかし、これをもって失業をとどめるということにはならないというように考えます。とりわけ、第十八条で「その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と。つまり努力義務を定めております。私どもは、この努力義務が遂行されることを期待するものでありますけれども、残念ながらそこに信頼を置くことはできません。それらの意味で、法案の中身については雇用の安定について次のように修正をしていただきたいというふうに考えております。
一つは、三条六項の六の認定要件について、当該事業再構築計画について雇用に影響を生ずる場合には、労使協議を行い労使合意が成立していることということを要件にすべきだというふうに考えます。また、第十八条においても、労働組合もしくは従業員の過半数を代表する者との協議、これを義務規定としていただきたいというふうに考えます。この点についてぜひ御検討を賜りたいというふうに考えます。
さらに、計画の実施経過に当たりまして、雇用にどう影響しているか報告を求めることができるというような規定がございます。これは報告を求めることができるでなくて、きちっと報告を求める、このようにしていただきたいというふうに思います。
第三番目の問題としまして、認定基準そのものについて大変抽象的である、裁量の幅が大きい、私どももそのように考えますけれども、既にさまざまな御議論がなされておりますので、きょうは中身については省略をさせていただきたいと思います。
最後に、一つ新たな法律の策定をこの際お願い申し上げたいと思います。
この法律の中では、分社化あるいは合併あるいは営業譲渡など、さまざまな企業組織の変更が予定されております。同時に現在、法制審議会では新型再建手続法、これに関する取りまとめが行われております。また、法制審議会では商法の改正の中で会社の分割について新たな改正案を次の臨時国会ないし来年の通常国会で提案することが予定されているというふうに聞いております。
こういうような会社の分割あるいは分社化、さらに合併なり企業・事業の譲渡、これらの会社の構造の変革につきましては、従来からあります雇用契約、そしてさまざまな労働条件にかかわります協定、そして労働組合の地位につきまして新たな譲り渡し先にこれらが包括的に移譲されますような法律をぜひつくっていただきたいというふうに考えます。私ども、これは企業組織変更にかかわる労働者の保護法と呼びたいと考えておりますけれども、既にヨーロッパではこれが確立をされております。ぜひ、経産委の先生方の御理解を賜りたいと思います。
終わりに当たりまして、雇用は物ではございません。過剰だからといいまして新しい職の手当てなしに企業の外に排出いたされてはたまったものではございません。とりわけ四十歳以上の人にとりましては、失業は本人にとっても家族にとっても絶望そのものを意味いたします。本法の運用によりまして新たな失業が生じないように、国会の諸先生方、またこれを運用します関係省庁の方々、そして経営者の皆さんに慎重な配慮を心からお願い申し上げまして、陳述を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。