池田敦子の発言 (行財政改革・税制等に関する特別委員会)

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○参考人(池田敦子君) 私は、東京・生活者ネットワークの池田敦子と申します。
 本日は、行政改革に関する特別委員会に参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、生活者という立場から、分権、自治の社会が実現することを希望しております。それは、生活の現場にこそ分権がもたらす豊かな自治があらわれなければならないからです。そして、それは住民の自発的活動を促したり、市民の事業を生み出したり、生活の利便性であったりすると思いますが、今日の日本の行き詰まった社会構造を変える、そういうものにならなければいけないと思っております。
 一つの例を申し上げますと、ちょうど十年前になりますが、五十五万筆の都民の署名で東京都知事あてに食品安全条例の制定を求める直接請求が提出されました。私は当時、都議会議員をしておりましたので、議案の審査をする立場にありましたが、この直接請求は分権という視点から大変印象的な問題提起がたくさんございました。
 御承知のとおり、直接請求は地方自治法に位置づけられた市民の条例提案権です。しかし、提案された行政側は、食品の安全の確保は国、厚生大臣の権限にかかわることであり、食品衛生監視などは機関委任事務であるから、自治体で食品安全条例を制定することはできない。そしてまた、行政に対して直接請求で条例を突きつけるということは、生意気な市民であるというような見解が示されました。
 直接請求をした市民たちは、食品衛生法では厚生大臣が食品安全のボタンを握っていることを知っております。しかしなお、食べる側に安全な食べ物を確保するためのボタン、つまり権限を握りたいと考えました。この権利は知る権利であり、選ぶ権利であり、健康を維持する権利です。これは食べ物に関する自己決定の主張であり、分権、自治の主張でありました。
 また、食品行政は幾つもの縦割りの中でばらばらに行われており、行政がお互いを牽制し合い、食品に関するまとまった見解を持っていなかったことが明らかになりました。審議の過程で行政連絡会議が設置されることになりました。また、お互い突出したことをしないように行政間で抑制し合っているような状況もございました。
 同時期に、この食品安全条例は、十三の区市に制定を求める請願が提出されました。区市から東京都への問い合わせが殺到し、食品安全は地方自治体の仕事ではないとの結論を出しました。しかし、この議論の中から、より安全な農産物を推奨するという動きが生まれ、現在、有機農法あるいは有機農産物の基準や流通のガイドラインなどが地方自治体から国へ問題提起をされ、それが実現されるというような事態が実際には起こっております。そして、地方から中央へという流れが生まれたわけです。
 このように、生活の現場にいる市民は、生活のあらゆる場面での安全が確保されることが大切なことであり、そのことが実現される分権を望んでいるのです。生活の課題の解決は、身近な自治体で行われることが大切です。
 ついでに申し上げれば、直接請求は、もっと簡便な市民の条例提案制度に変える条件整備が必要であります。
 分権推進委員会の議論の経過で私が期待いたしましたのは、市民が自治体をつくる、地域が自己決定していくという原理が貫かれることでした。こうした視点での課題は、自治体と自治体、自治体と国が対等な関係に整理され、国の権限が制限されることにあります。中央集権型のシステムの根幹でありました機関委任事務制度を廃止し、その大半を自治事務とした分権推進委員会の勧告は大きく評価できるものでした。
 ところが、そのような分権推進委員会の精力的な議論の結果が法案化される過程で変節し、問題点が多くなってきていると私は思います。そのうちの幾つかについてここでは取り上げさせていただきます。
 最大の問題は、自治体と国は対等であるはずなのに、自治事務になぜ国が口を出していくのでしょうか。その一つが自治事務に対する各大臣の是正要求に改善義務が付されたことです。
 さらに、自治事務の処理が法令に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるとき、各大臣は知事に対して是正を求めることができるとして、都道府県の知事を通して市町村長に是正を求めることができる規定になっております。
 地域の市民による自己責任で行われる自己決定であるはずの自治事務への是正要求は、国の関与を強め、結果的に分権の理念に反する内容ではないでしょうか。是正を求めることができる大臣が総理大臣だけではなく各大臣に広がったことは、現行法より後退してしまったのではないでしょうか。
 東京都では、法律の定めのないお豆腐、中華めんなどについて、消費生活条例に基づく製造年月日の併記表示を義務づけてきました。それは消費者の要望に基づく東京都独自の上乗せ・横出し表示でしたけれども、貿易の国際基準、WTOの絡みで、国の関与により、ことしの三月でその表示は断念せざるを得ない事態になりました。
 このような国の関与は、この法案では分権後も容易に想像できるものであります。その上、都道府県の関与が区市町村にまで及ぶ事態が予想されるこの状況は改善されるべきであると私は考えます。
 もう一つ、都議会に籍を置いた経験から、自治体議会に関する本法案の制約を緩和する必要を感じます。
 自治体議会の議員定数は条例で定めることで十分だと思います。人口に応じた定数の上限を設けたり法定定数を超えた場合の減員の取り決めなどは、地域の有権者である住民が責任を持って決めていけばいいものと考えます。
 自治体議会は二元代表制をとっていることから、首長の権限と議員の権限を対等にすることを法に位置づける必要があります。議長の議会招集権や議会の予算提案権、さらに議会の調査能力を高めるための仕組みなども必要です。むしろ、現行制度が国会の議院内閣制をモデルにしている矛盾を解決すべきです。
 私たちが議員提案で都議会議員の資産公開条例を提案したとき、議会が自治省のモデル条例を国に求めるという事態が起こりました。議会の問題も大きいのですが、一方では、このような親切が自治決定を弱め、国の関与を強める結果になるのではないでしょうか。議会の独立性を高める制度にする必要があります。
 最後に、都市計画審議会への国の関与を抑える必要があることを申し上げたいと思います。
 都市計画決定の手続の中には、現行法でも住民への説明会や公聴会は位置づけられております。しかし、ほとんどの住民は測量とか工事の段階で、つまり計画が決定された後に知ることが多いわけなんです。このことから、最近では住民が計画段階から参加する制度に変えるという要望が強く出ております。都市計画法の改正により、自治体の都市マスタープラン策定におきましては市民の意見の反映を位置づける、そういったことが法的に位置づけられております。
 しかし、今回のこの法案では、都市計画審議会の組織、運営に必要な事項を政令の基準に従った委任条例として規定しています。これは、各自治体が主体的に市民参加による町づくりを進める審議会にしていくことを阻害するおそれがあります。
 市町村都市計画審議会が法的に位置づけられるようになったこの段階で、組織及び運営に関する政令は定める必要はないのではないでしょうか。各自治体で決めることができるのではないでしょうか。
 分権は、役所同士の仕事の割り振りを変えることにとどまっては意味がありません。そういう意味では、分権の実現はスタートについたばかりです。国から都道府県へ、都道府県から区市町村への権限移譲に終わらせず、最終的には一人一人の市民が自己決定権を持ち、政策決定の場にこれまで余り登場することのなかった市民や女性や生活者の姿が見える、そういう分権が必要ではないでしょうか。
 多様な人々の多様な生活の豊かさを住民の共同参画によって実現するには、今後も市民までの分権が実現するまで議論を重ね、努力を続けていただきたいと要望をいたします。
 これで私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 池田敦子

speaker_id: 24395

日付: 1999-07-01

院: 参議院

会議名: 行財政改革・税制等に関する特別委員会