椎名素夫の発言 (本会議)
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○椎名素夫君 私は、参議院の会同僚諸君のお薦めを得て、総理の施政方針演説について質問をいたします。
総理は、御自身をボキャ貧と謙遜しておられるように伺っておりますが、施政方針演説を伺う限り、このような形容は全く当てはまらない、この演説にかける総理の意気込みも十分伝わり、立派なものであったと考えております。
しかしながら、一国の経営は善意や熱意などだけでできるものではありません。政治において最も大切なことは、冷静な事実の分析に基づく行動であり、その行動による結果に対して責任をとるということであります。総理がいたずらな悲観主義を排し、建設的な楽観主義を唱えておられることには全く同感でありますが、今大事なのは、具体的な政策の方向がそれを裏打ちするものでなければならないということであります。
そこで、総理の見事な文学的表現はありがたく胸におさめ、無味乾燥な言葉で幾つかの点についてお尋ねをいたしたいと思います。時間が限られておりますし、大づかみの話になることを御勘弁願いたいと思います。
政府は、経済再生を至上課題として、大規模な財政出動により平成十一年度中に〇・五%の経済成長の実現を目指しています。しかしながら、〇・五%成長を回復できたとしても、今のままの経済構造では、その後自律的にプラス成長が続くという見通しはないのが実情ではないでしょうか。
今回、緊急の大型財政出動を行うことはやむを得ない措置でありましょう。しかし、これに伴う赤字国債発行の急増は、国内の金利上昇を招き、また資金の海外大量流出のリスクも指摘されているところであって、今後繰り返して続けられるものではありません。赤字財政に頼らない構造改革が急速かつ抜本的に行われないと、日本経済は政策の選択肢を失った状態で低迷を続けてしまうことになると考えます。
総理は、平成十一年度に景気が回復すれば、その後は自律的な成長軌道に乗るとお考えなのでしょうか。また、自律的な成長が継続しない場合には、その後も赤字財政を拡大されるおつもりなのでしょうか。御所見をお聞かせください。
構造改革という観点から、経済戦略会議の中間取りまとめというものを見ますと、日本の経済社会構造のゆがみを的確に指摘し、各分野の抜本的な構造改革の方向を率直に示唆しています。
他方、これと現実の対策と照合してみますと、痛みのない従来型予算措置の増額だけが先行して、痛みを伴う構造改革とその実行に不可欠なセーフティーネットへの対応がおくれておるように思います。いわゆるデフレギャップに着目いたしますと、需要を引き上げるべき部分と過剰能力を削減すべき部分、この二つがあるかと思いますが、この二つの間のめり張りがはっきりしていない。
一例を挙げますと、つい二、三日前にアメリカの大統領が年頭教書の演説をいたしました。その中で、日本からの鉄鋼輸出を非常に激しく攻撃をしております。こういう例は、まさにこのめり張りをどうしておくかという問題でありまして、これをきっちりしておかなければならないと思うわけであります。
また、小さな政府の実現についても、特殊法人など政府関係機関のスリム化、抜本的な規制緩和、地方分権等の動きは極めて緩慢な状況にとどまっていると言わざるを得ない状況にあります。
的確な政策のメニューが示されても、実際の予算、政策への反映がつまみ食いになってしまっては、中間報告が危惧している日本経済の長期停滞シナリオが現実になってしまいます。これからの運び方について、総理のお考えをお伺いいたします。
さて、根本的な経済構造改革を進めるには、今日の経済低迷をもたらした原因と責任を過去にまでさかのぼって明らかにしなければならない。そうでなければ国民及び国際社会の理解と協力は得られません。その意味では、バブル経済とその崩壊を引き起こした不公正な経済構造の最も重大な部分についての認識が欠落していると考えますので、この点について指摘したいと思います。
バブル経済を生んだ最大の要因は、もちろん御承知のように土地に対する膨大な投機であり、これは悪名高い日本のいわゆる土地本位制の終着点とも言えるわけであります。そしてその背後には、固定資産税が人為的に極端な低水準に抑制されてきたという事実があるというのが私の認識であります。
数字を御紹介したいと思います。
東京オリンピックが開催された一九六四年の地価公示価格の総額は五十六兆円弱でありました。しかし、バブル最盛期の一九九一年度にはこれが二千百九十兆円に達した。この間に日本は高度成長を達成しているわけですが、そのGNPの二倍以上のスピードで急上昇をしたわけです。ところが、この間、本来ならば本則で一・四%の固定資産税の実効税率は、人為的、政策的に十分の一の水準に抑えられ続けてきた。これが土地の上昇を生み、また実効税率を実際に上げるということを困難にしたという悪いスパイラルになりました。
特に、バブル期の一九八六年から八九年までの四年間、土地資産の増加分が千百三十兆円に達しましたが、これはアメリカの国土の三倍近い、異常としか言いようのない高騰でありました。ちなみに、この四年間にGNPの総額は千五百兆円であった。これに対して約二〇%、三百十兆円の税収が上げられていますが、このうち土地の固定資産税から上がったものが八兆五千億円、税収のわずか三%にすぎない。
この四年間の土地の値上がりによる資産形成額の千百三十兆円、これを普通の経済活動で積み上げると仮定いたします。仮に企業収益及び家計所得の二〇%がこの資産形成額に回ったということにいたしますと、逆算するとこの間に五千六百兆円の所得が必要であったということになりますが、これに対して納められた税金が十兆円に満たないという計算になります。
この過程で、大きな土地を保有する少数の個人と企業及び金融機関は、極めて低い税負担で、その所得や収益とは比較にならないほどの資産を形成することになりました。その一方で、大土地所有とは無縁の大多数の勤労者が税金の大半を負担した上に、高い住宅取得のためにローンを負担し、さらに、コスト後払いとも言うべき賃金体系と相まって、国民全般の購買力を大きく抑制することになりました。また、高地価は公共事業のコストを通じて税負担の増加をもたらし、その他の分野でも我が国の高コスト構造の基本要因となったわけです。
土地にまつわるゆがんだ資源配分は、国際経済との関係においてもさまざまな弊害をもたらしました。長期間にわたって抑制された内需は輸出主導型の経済構造を生み、貿易摩擦や円レートの過度の上昇を招いた。また、土地・証券バブルで見せかけの体力が増した企業が国の内外で大規模なエクイティーファイナンスを行い、これが国際金融市場の警戒を招いてBIS規制の強化という形であらわれてきた。他方、このエクイティーファイナンスの片側でありますが、健全な融資先を失った金融機関は住専その他のノンバンクを通じて膨大な土地投機の原資を供給することになります。そしてこれらの債権の多くは、バブルの崩壊に伴って、巨大な不良債権と化して銀行経営を圧迫し、BIS規制の強化と相まって企業への貸し渋りにまで至っているのは御承知のとおりであります。
全体的な観点から見ても、長年にわたる日本のゆがんだ土地税制に基づく含み経営が、特にバブル崩壊後の日本企業及び日本経済全体のアカウンタビリティーの欠如という形で、国際経済での信頼の急速な低下につながっているということは銘記しなければなりません。
このように、長期にわたって固定資産税が国際的に見ても、妥当な水準を大幅に下回った水準でしか徴収されなかったことが、少数の大土地所有者及び企業、金融機関と、一般国民、一般企業との間に大きな資源の不公正配分をもたらし、これがバブル経済とその崩壊に象徴される日本経済の国の内外での苦境の根本要因と言えると思います。
総理は、このゆがんだ資源配分がこれまで放置されてきたことを認識されているでしょうか。もしその認識に立てば、この難局に当たってこれからは、いきなり自己責任だといって政府が責任を放棄するのではなく、新しい経済社会への適切な移行プロセスを明らかにする、そして責任を持ってその実現を図っていくべきだと考えます。この点についての総理の見解をお伺いします。また、徹底的な改革を標榜されている野田自治大臣にもぜひこの点についての御見解を伺いたいと思います。
これから進められる経済構造改革の重要な一環として、三十年以上続いたこのゆがんだ土地税制を一時に是正することは困難であるにしても、その是正を決断し、日本が土地本位制とそれに支えられる不健全な株価形成などから決別する決意を内外に示すことが不可欠であると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
安全保障について一言だけ申し上げます。
この問題は、突き詰めて考えれば、憲法並びに国連と日米同盟との間の関係の二点に絞られるかと思います。仮に、現在のように不明確な点を残したままで緊急事態が起こったとする。そうしますと、そこで国連と日米同盟のどちらに優先度を置くのか、憲法と超法規のどちらを選択するのかなどの極めて難しい選択を即座に行わなければならないという事態に至るおそれがあります。政府は、一体あり得るさまざまなシナリオを本当に考え詰めておられるのでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。
最後に、自民、自由両党の連立について申し上げます。
参議院の選挙がありましたのはついせんだってのことである。その選挙の結果と一体どう関連するのかが極めてわかりにくい今回の連立は、やはり代議制民主主義のルール違反であることだけは指摘しておかなければならないと思います。その上で、筋ばかりに目くじらを立てるのはこの際やめておきましょう。政治で大事なのは結果責任でありまして、新しい内閣の行動を冷静に問うていくべきだと思います。
しかし、考えてみると、この問題は衆議院と直結した政党間の参議院での議席数の優劣が引き金です。私どもは、申しておりますように、数の力をもって衆議院と同質の争いを行うのは参議院の使命ではない。力ではなく、個々の議員の見識と判断という権威をもって、抑制と補完の役割を果たすのが使命であると我々は信じております。
変転する環境の中で、政党間の離合集散はしばらく避けられないでしょう。しかし、その動きに直結して参議院がぐらぐら動くのでは、日本の政治に重心がなくなってしまう。また、参議院の勢力分布に応じていわゆる政局が動くということになると、まさに不安定の増幅になります。
本来の参議院の姿を取り戻すことこそが我々参議院の会の目標であることを改めて表明して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕