前田肇の発言 (経済・産業委員会)

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○参考人(前田肇君) 前田でございます。
 私は、関西電力で原子力・火力本部長を務めておりますとともに、電力会社のあれであります電気事業連合会の原子力開発対策会議の委員長を務めております。本日は電気事業者の立場として意見を述べさせていただきます。
 お手元に簡単なレジュメをお配りしてございますので、適宜御参照いただきたいと思います。
 私ども電気事業者は、現在五十一基、四千五百万キロワットの原子力発電を行っております。過去三十年、もうそろそろ三十年になりますが、外部に放射能被害を及ぼすような事故を起こすことなく安全に運転してまいっておる、このように考えております。
 そのような中で今回のジェー・シー・オーのウラン加工施設の事故が起こったわけでございまして、原子力発電所など電気事業者の設備で発生したものではございませんが、我が国で初めて一般の人が原子力施設の事故によって放射線を被曝したということ、また住民の方の避難や屋内退避が強いられたといった事故でございまして、同じ原子力に携わる電気事業者としても大変大きな衝撃を受けるとともに、極めて重大な事態だというふうに受けとめております。
 何よりも大きな問題なのは、事故が技術的に予見できなかった、技術的に未知の分野であったというようなことではなく、またうっかりミスといったような原因でもなかった、むしろ組織立って違法なマニュアルを作成し、さらにそれすら守られていなかった、こういう安全意識の欠如が原因であったということが最も大きな問題である、このように考えております。
 また、これまで原子力発電所等の安全運転を地道に積み重ねてまいりまして、営々として培ってまいりました地元や周辺住民の皆さん方との信頼関係、こういったものも損ないかねないものであるということで非常に残念に思っておるところでございます。
 とはいいましても、原子力は、資源小国である我が国にとっては、エネルギーセキュリティーの観点からも、あるいは環境保全という観点からも将来にわたって電源として非常に重要な役割を担うものだと確信しております。したがいまして、今回の事故を契機として、原子力全体にかかわる規制の見直しやあるいは原子力災害対策の仕組みを一刻も早く整備していくということが、国民の皆様の原子力に対する信頼を回復し、今後とも原子力利用を推進していく上で必須である、このように考えておりまして、その意味で今国会におきましてこの関連の二法案の審議が迅速に進められているということに感謝をいたしております。
 さて、今回の事故に対します電気事業者の対応でございますが、まず発生直後は、事故の事態収拾に向けまして、事故発生の翌日以降、自主的に各電力会社から協力を行っております。具体的には、放射線測定や汚染チェック等の要員を最大時で約六百七十人、延べにして約三千人を東海村へ派遣いたしました。また、最大時ではモニタリングカー十一台、サーベイメーター二百四十台を提供したほか、フィルムバッジなども提供してまいりました。
 また、十月四日から十四日にかけて、通産省の御指示によりまして、我々の原子力発電所のマニュアル、手順書につきまして、保安規定に基づいて適切に作成、遵守しているということを再度徹底的に確認いたしました。そして、その確認結果を現地調査によって通産省に改めて確認をいただいております。
 次に、今後の継続的な取り組みといたしましては、原子力の安全確保は各事業者がそれぞれに自己責任を全うしていかなければならないということは言うまでもありませんが、今回の事故を教訓として原子力産業界全体の安全文化を共有し、さらにそれを向上させていくために、電気事業者のみならず、燃料加工メーカー、プラントメーカーあるいは研究機関、こういったものすべて、トータルで三十五機関が参加する新組織、これを我々はニュークリアセイフティーネットワークと名づけておりますが、これを十二月九日、明後日に設立することとしております。
 この組織は、原子力事業者の安全確保と安全文化の普及を目指して、参加する会員間の相互評価、いわゆるピアレビューを実施する、あるいは原子力安全に関する情報交換あるいはヒューマンファクターに関する教育訓練の支援等、こういった活動を行っていくこととしております。こうした活動を通じて、原子力に携わる者同士がイコールパートナーの立場から安全について情報を交換し、あるいは評価し合うことで原子力産業界全体の安全レベルの向上を図っていきたいと考えております。
 次に、今回の法律の制定及び改正に対する電気事業者の対応について述べさせていただきます。
 まず、原子力発電所は、多重防護の思想に基づき何重もの安全対策を施した設計を採用しておりまして、厳重な品質管理体制のもとで建設しております。また、運転開始以降につきましても、ほぼ一年ごとに定期点検を行うほか、保安規定に基づいて厳正な安全管理を実施し、従業員に対しても計画的な教育訓練等により技術的能力や安全意識の維持向上を図っております。
 一方、安全規制といたしましては、設計段階では行政庁と原子力安全委員会のダブルチェックが行われており、また建設、運転段階では行政庁により使用前検査や定期検査、保安規定遵守状況の確認といったようなことが行われ、行政庁の実施するこういった安全規制の状況につきましては原子力安全委員会に適切に報告されていると認識しております。こういった仕組みが有効に機能し、日本の原子力発電所は非常に高い安全レベルを維持しているものと考えております。
 そこで、今回の原子炉等規制法の改正に伴って加工事業者に対して発電所と同様に定期検査が追加されるということになります。また、全原子力事業者に対して保安規定遵守状況に係る検査などが新設されることになります。これにより、原子力全体に対してバランスのとれた安全規制が充実強化されるものと考えております。
 このように、事業者の自主保安と国の安全規制により原子力全体の安全レベルが向上されるものと考えておりますが、万々一の原子力災害が発生した場合のことを考えますと、やはり周辺住民の皆様のみならず多くの方々に多大の御迷惑、御心配をおかけすることになります。このため電気事業者といたしましても、防災対策の充実に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 今回の原子力災害対策特別措置法の制定に伴ってオフサイトセンターの整備や防災専門官の設置等が行われ、原子力災害対策の実効性の向上が図られるものと考えております。我々電気事業者といたしましても、今後とも事業者の基本的責務である安全確保、事故防止に努めることはもちろんでございますが、法律案の精神にのっとって、防災業務計画の作成、防災管理者の設置、防災組織の整備等に取り組むとともに、国と自治体の実施する防災訓練に積極的に参加していきたいと考えております。電気事業者としては、防災対策の実効性をさらに高めるため、今後消防や医療機関等との連携も深めていく必要があると考えており、行政側の御支援をお願いしたいと考えております。
 以上述べましたように、今回の法律の制定及び改正は、原子力の安全性の向上及び国民の原子力に対する安心感の醸成に大きく寄与するものと我々も期待しております。その上で、二、三の点につきまして要望を申し上げたいと思います。
 まず、緊急時の通報や総理大臣が本部長となる国の災害対策本部を設置する基準は、これは政省令で定められることになると思いますが、現場が迷うことのないよう、わかりやすいものにしていただきたいということとともに、事後の風評被害が拡大しないように適切な措置を講じていただきたいと思います。
 また、原子力事業には、電気事業者、再処理事業者あるいは燃料加工メーカーといろいろな事業分野があり、それぞれの事業分野ごとに施設の構造や内包する放射性物質の量、採用されている技術等が異なっており、例えば事故の影響範囲だとかあるいは整備すべき資機材等の詳細につきましても、事業分野ごとの特性に応じて今後検討していただきたいと考えております。
 さらに、安全確保改善提案制度につきましては、悪意による虚偽の申告等により原子力事業者に不利益が生じないよう、適切な運用を要望いたしたいと思います。
 最後に、原子力安全の確保は、設計、建設、運転の各段階を通じて厳正な安全規制と事業者における高い安全文化が相まって達成されるものであります。今回の法律の制定及び改正に当たっては、加工事業者等とも積極的に情報交換を行い、相互に協力して対応してまいりたいと思っております。電気事業者としては、国を初めとする関係当局の御指導を得ながら、原子力に対する国民の皆様の信頼を回復できるよう、最大限の努力をしていく所存でございます。
 以上で私の意見陳述を終わります。

発言情報

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発言者: 前田肇

speaker_id: 30102

日付: 1999-12-07

院: 参議院

会議名: 経済・産業委員会