秋元勇巳の発言 (経済・産業委員会)
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○参考人(秋元勇巳君) 御紹介いただきました三菱マテリアル社長の秋元でございます。
私は、当社の子会社でウラン燃料加工業を営みます三菱原子燃料株式会社の社長をも務めさせていただいておりますので、本日は主にウラン燃料加工という立場から意見を申し述べさせていただきたいというふうに思っております。
私、日本の場合、エネルギー資源が非常に乏しい国でございますので、原子力政策の基本でございますが、やはりナショナルセキュリティーというものが非常に大事だろうというふうに思っております。そういう観点からいたしまして、原子力のサイクルの各段階につきましても、極力国内の資本、国内の技術で賄うということが国策の中心になっているというふうに思います。
その一環といたしまして、ウラン燃料加工につきましても、昭和四十年代でございますけれども、そのころの中葉に各加工会社が設立をされました。初めのうちは海外技術に依存する部分もかなり多かったのでございますけれども、それ以来、安全確保に最大の留意を払いながら技術の研さんに励みまして、非常に短い期間の間に世界で最もすぐれたウラン燃料を供給できるようになったというふうに自負をしているわけでございます。
私どもいつも燃料の社員にも言うことなのでありますけれども、この電気の少なくとも一〇%は我々のつくった燃料が支えているんだよということを社員によく言うのでありますけれども、そういう誇りといいますか、ここ二十数年来、核燃料加工に携わる者といたしまして、燃料加工技術、それから安全対策に自信と誇りを持ってやってきたわけでございます。そのやさきの今回のジェー・シー・オーの事故でございまして、我々は一様に同じ事業に携わる者といたしまして大きなショックを受けました。まことに残念でございますし、かつ重大なこととして受けとめております。
特に、今回の事故の場合、従業員に重度の被曝者を出しました。近隣一般の住民の方々への避難の要請あるいは屋内退避の要請というのが行われるなど前例のない大事故でございまして、国内の多くの方々に原子力に対する不信感を招いたのではないかというふうに思っておりますし、世界じゅうの人々に衝撃を与えまして、原子力のみならず日本の産業とか文化とか、そういったものに対する不信感さえ醸成したのではないかという点でもまことに不幸であり、残念な事故であったというふうに思っております。
私ども、改めて資源に乏しい我が国の核燃料サイクルの一環を担うという重大な使命を担っていること、及び一歩誤りますと大きな事故につながる事業を営んでいるということを再認識いたしまして、今後このような事故を再び起こすことが絶対にないように、従来にも増してさらに安全第一の運転管理に努めるべく重大な決意をいたしているところであります。そして、事故直後から実際に具体的な対応をしてまいっております。
そこで、第一に、事故直後にウラン燃料の加工業各社がどのような安全対策をとったかということから御説明を申し上げたいというふうに思います。
まず、事故後に直ちに各社はそれぞれの社内に緊急対策本部を設置して対応に当たりました。そして、各工程を詳細に再チェックいたしまして、臨界管理方式を含む管理状況を確認いたしました。従業員に対する臨時教育をさらに徹底実施いたしました。さらに、加工事業の許可申請書、設計工事認可申請書や、これらの許認可の条件などを再チェックいたしまして、特にマニュアルを含む保安規定の遵守状況が本当にそのとおりになっているかということについて確認をしたわけでございます。
その過程で、実は十月四日からジェー・シー・オー以外の加工施設に対して科学技術庁からの立入検査がございました。その結果、第一報が十月十二日付で発表になっておりますけれども、その内容は、臨界管理を中心として施設・設備、作業・運転管理方法、教育訓練の観点から総点検を実施した結果、いずれも基本的な安全性の確認はなされているということでございました。
第二に、今度はウラン燃料加工業界共通の問題といたしまして、この加工業界は社団法人の新金属協会に所属しておりまして、その中で核燃料加工部会というものをつくっております。そこに臨界事故対応対策会議というのを設置いたしました。そこで鋭意再発防止策の検討を進めているところでございますが、基本的には設備面での安全強化、組織を含む安全管理の強化、安全教育の徹底、不測の事故時の共同対応など、すき間すき間に水のしみ通るような注意力を持って幅広い検討をしているところでございます。
第三に、先ほど前田参考人からもお話がございました電気事業連合会が中心になられまして原子力業界全体として日本版のWANOといいますか、ニュークリアセイフティーネットワークをつくろうという呼びかけをしておられます。加工業界といたしましても積極的に参加したいということで、私も発起人の一人に加えさせていただいているわけでございますが、今回の事故はやはり世間では燃料加工とその他の原子力事業を一体として見ているわけでありまして、原子力業界全体としての安全文化の構築、信頼の回復というのが非常に重要でありまして、NSネットの設立はその意味でも全く意義深いものであるというふうに考えているわけでございます。
それとともに、私ども燃料加工業界といたしましては、世界の核燃料加工業界で共通な安全文化を確立する必要があろうというふうに思っておりまして、加工業界版のWANOといいますか、世界の核燃料加工業界の安全に関するネットワークを新たに構築しようということで検討を開始しております。
加工業の安全というのは、究極のところ加工業自体で考えて解決せざるを得ない面が非常に多いわけであります。同時に、この問題を一つの国の中で完結させることなく、世界に開いた世界共通レベルでの安全文化を築く必要があるというふうに結論づけることができるかと思います。安全に国境はないというふうに思っております。世界じゅうの加工業者が安全向上のために連携して取り組むことが望まれるのであります。
国民の間に思わぬ不信を招きました加工業界の信頼回復の有力な手段の一つは、少なくとも日本の加工業の安全対策、技術が世界レベルと同等あるいはそれ以上のものであるということを情報公開などを通じて客観的にかつ積極的に示していくことが必要であろうというふうに思っているわけでございます。その具体化のために、実は昨日でございますけれども、海外からの主要な核燃料加工業者の代表をお招きいたしまして、フランスやアメリカからもわざわざお越しをいただいたわけでありますが、そういう横のネットワークといいますか、をこれから構築していこうというようなことで東京で準備会合を持ったところでございます。
そういうことで、我々加工事業者みずからが安全性改善のイニシアチブをとらなければいけないという決意のもとで、具体的な行動を起こしているところでございます。
最後に、今回の原子炉等規制法の改正、原子力災害対策特別措置法の制定に関しまして、一言御要請を申し上げたいというふうに思います。
その前に、まず今回の事故の特色を振り返ってみたいと思うのでありますが、まず第一に、今回の事故は、我々が通常行っております実用の商業炉のための五%未満の低濃縮ウラン燃料を供給するようないわゆるルーチンワークといいますか、そういう作業の中で発生したものではございません。高速実験炉でございます「常陽」炉の燃料製造のために必要となる濃縮度一八・八%という、いわゆる中濃縮ウランの原料をジェー・シー・オーさんがバッチ受注で受けられて加工をするという、いわば臨時的な作業の中で発生したということでございます。
第二に、今回の事故の原因究明は現在鋭意なされているところでございますし、軽々に結論づけることはできないと思いますし、また、同業者にむち打つようなことは余り言いたくないのでありますけれども、明らかに今回の事故については弁明の余地はないと考えております。
結局のところ、この事故は形状制限あるいは質量制限、さらにはマニュアルというような形で、いろいろな形で厳格に管理されているはずの多重防護のメカニズムが無視されまして、人為的にそういうメカニズムが一つ一つはぎ取られた、そういう結果起きたものでございます。いかに安全技術の粋を尽くした施設でも、設計の基本思想が無視されれば事故は免れないわけでございます。
こういった状況の中での事故は、規制の強化だけでは防ぎ切れるものではないと思っております。むしろ、当事者に合意されないような一方的な規制の強化というのがもし起こるということになりますと、それはそれを遵守しようとするような意欲をそぐことにもなりかねませんし、あるいは過重な規制は、十分安全だったら、じゃここまでやりゃいいんだろうというようなことで、いわば規制任せになってしまうというような不当な安心感を与えるというようなこともありまして、かえってモラルを低下させるおそれすらあるというふうに思います。今回の事故は千載の痛恨事ではございましたけれども、これに余りの過剰反応を示して過剰な規制でこたえるということは、逆に原子力全体に対する国民の不信を増長することにもなりかねないというふうに思います。
それでは、再発防止は一体どうしてやるべきなのかということでありますが、その要諦は、結局のところ、必要なフェールセーフの機能の中で安全文化の維持向上に向けての当事者の不断の熱意こそが求められるところであって、加工業者が自己努力によって、モラル向上をも含めた自主保安体制の確立による安全性の向上に取り組むほかにないなというふうに思っているわけでございます。
我々は、現在我々が採用しておりますウラン燃料加工工程は、取り扱う核分裂物質の濃度、濃縮度、質量を厳格に管理をいたしまして、さらに中性子による連鎖反応を抑制するために減速度管理あるいは形状寸法管理というようなものをきめ細かく行っているわけでありまして、これらを基本にして設備や作業手順を厳重に組み込まれた多重防護システムで臨界は起こり得ないというふうに確信をしているわけでございますけれども、なお、ウラン燃料加工業界としての自主保安体制の確立を改めて決意をいたしまして、その決意を鮮明に国民各位にも表明しまして、そのこととこれからの監督官庁の検査の強化によりますチェックとの相乗効果をもちまして実行の担保としたいというふうに考えております。
現在国会で御審議中の原子炉等規制法の改正、原子力災害対策特別措置法の制定内容につきましては、私どもといたしましても十分理解をいたしまして、適切に対応していきたいというふうに考えているわけでございますけれども、まだ具体的内容としての政令、省令等の内容は伺っておりませんので、その段階で我々としても意見を十分言わせていただきたい。その意見もお聞きいただいた上で合理的な範囲で規制内容を決定していただけますように御要望を申し上げたいというふうに思っているわけでございます。
以上、いろいろ申し上げましたけれども、信頼回復の道は、正直言ってまことに厳しいものがあろうと考えております。結局のところ、目に見える形での努力を積み重ね、実績を積み重ね、それによって信頼を回復していく以外に道はないと思っております。
我々は今回の事故を未曾有の重大問題として受けとめまして、並々ならぬ決意で事に当たっておりますことを御理解いただきまして、我々核燃料加工業が安全第一のもとで健全な発展を遂げられますように、よろしく御指導、御協力、御支援のほどをお願い申し上げます。
ありがとうございました。