西山登紀子の発言 (本会議)

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○西山登紀子君 私は、日本共産党を代表して、原子力災害対策特別措置法案及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、総理に質問いたします。
 去る九月三十日に起きた茨城県東海村の核燃料施設での臨界事故は、日本の国民はもちろん、世界にも大きな衝撃を与えました。イギリスのインディペンデント紙は、日本には正確な安全文化はないと指摘し、日本のチェルノブイリとまで報じた外国の新聞もありました。この事故によって、日本の原子力行政の実態は、今日の国際的な水準から見ても異常に立ちおくれたものであることが浮き彫りになりました。
 我が党は、国会では七〇年代から日本政府の安全神話の危険性について指摘し、その一掃を求め、具体的改善を提案してきました。しかし、政府は、我が党のこうした提案や住民の意見に全く耳をかそうとしませんでした。安全神話とは、原子力は安全だから心配ないという立場です。今回の事故を契機に提出された二つの法案が真に国民の安全確保の願いにこたえるためには、安全神話にとらわれて安全対策をないがしろにしてきた行政の根本的転換が前提でなければなりません。総理の基本的見解を伺います。
 事故当日、午前十時三十五分に事故が発生した直後にジェー・シー・オー側は臨界の可能性ありと判断し、十一時十五分には科学技術庁にそう書いたファクスを送っています。それにもかかわらず、科学技術庁は臨界事故など信じられないとして必要な対応をしませんでした。科学技術庁が臨界事故を確認したのは午後四時ごろ、事故発生から五時間半もたってからでした。
 総理、安全神話の呪縛にとらわれたこうした判断のおくれから、ジェー・シー・オーの従業員だけでなく、周辺住民を長時間被曝させる重大な結果となったのです。国の原子力行政の責任者として、改めて謝罪と厳しい反省があってしかるべきではないでしょうか。はっきりお答えください。
 今回の事故はジェー・シー・オーのずさんな操業が直接の原因であり、その原子力事業者としての責任は免れません。しかし、もともと臨界事故を起こした沈殿槽は百リットルもあり、形状制限も、容積の制限による臨界防止の対策もとられていませんでした。こうした施設を許可した政府の責任は極めて重大です。ところが、驚くべきことに、今なお政府は、審査は適切だった、事故の原因はジェー・シー・オーの違法行為だと繰り返すばかりです。
 総理、今回明らかになった政府のずさんな安全審査を反省しないで、どうして国民の命と安全を守ることができるでしょうか。答弁を求めます。
 さらに、今、今回の事故で被曝した地域住民の健康管理や経済上の被害救済に万全の対策が求められております。
 放射線被曝による晩発影響については、長期にわたる追跡調査が必要であり、きめ細かい対策が必要です。また、地域に与えた風評被害を含む経済被害は深刻であり、倒産を余儀なくされた業者も出ております。こうした身体的、経済的な被害をどのように賠償するのか、ジェー・シー・オーばかりでなく、親会社である住友金属鉱山の責任もあわせて明確にし、必要な賠償が行われるよう政府も万全を期すべきと考えますが、いかがですか。
 次に、原子力施設の安全確保を図る上で、推進と規制の体制を分離、独立させることは焦眉の課題です。我が党は、我が国も批准している原子力の安全に関する条約に基づくその実行は国際的責務であることを指摘してきました。原子力施設の設置や運転に関する許認可の権限を持たない原子力安全委員会は、条約上そもそも規制機関とは言えません。
 総理、今回の事故の痛苦の教訓から、東海村の村上村長を初め立地自治体の首長や議会も、規制機関の分離、独立を強く求めています。この地元の声に誠実にこたえるべきではありませんか。はっきりとお答えください。
 今回の原子炉規制法改正では、新たに第六十六条の二を新設し、事業者に法令違反の事実がある場合に、従業員の主務大臣に対する申告権を規定しています。しかし、この規定を置いただけでは実効性は確保できないことを指摘しなければなりません。
 アメリカなどでは、警告のために口笛を吹く人を保護するホイッスルブロワー・プロテクション・アクトという法律があります。その法律によれば、従業員は内部告発を行うことが認められるのみならず、事業者がその従業員に不利益な扱いをすれば、そのこと自体が犯罪とみなされることになっています。従業員に申告権を与えるだけでなく、十分に保護されることが明確に規定される必要があります。どのような措置をとるのでしょうか。お答えください。
 次に、ジェー・シー・オーの事故が示したように、原子力の事故の際にはとりわけ専門の知識と経験を持った多くの専門家が不可欠であり、人材の養成も国の責務です。
 この点で、我が国の原子力分野における中核的な総合研究機関として安全性の研究開発などを行っている日本原子力研究所の果たすべき役割は重要です。ところが、この研究所の原子力安全研究予算は、一九九〇年度に約百三十億円あったものが、今年度は約七十二億円にまで減っています。安全神話のために原子力の安全研究はもう必要ないと考えているとしたら重大です。私は、今回の事故処理に献身的にかかわった所員の方から、安全研究費を抜本的にふやしてほしいと切々と訴えられました。
 総理、この際、原子力研究所を初め大学などの安全に関する研究費用を抜本的にふやし、強化すべきではありませんか。答弁を求めます。
 原子力防災を考える場合、事故の影響についてあらかじめ予測し、必要な対策を準備することが不可欠であります。
 科学技術庁は、一九五九年、原子力産業会議に委託をして、「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害に関する試算」を行い、報告書にまとめていました。これは日本で初めて過酷事故を想定した貴重な試算であります。ところが、この報告書全文は、国民のたび重なる開示要求にもかかわらず、国会に提出されたのは本年六月のことでした。およそ四十年にわたって非公開扱いにし生かそうとしなかった政府の責任は極めて重大です。
 この報告書によれば、大型原子炉が事故を起こした場合の損害額は、最大で当時の国家予算の二・五倍に当たる三兆七千億円と試算されています。ここでいう大型原子炉とは十六万キロワットですが、現在の原子炉は百三十五万キロワットにもなっています。被害の規模はけた違いに大きくなるはずであります。有馬前科学技術庁長官は、国会の答弁でこの試算が防災対策を考える上で有効なものと評価しています。
 総理、改めて今日の技術を生かして、個々の原発ごとに過酷事故を想定した災害の予測を行い、具体的な防災対策を立案すべきではありませんか。答弁を求めます。
 ジェー・シー・オーの事故が示したように、事故発生時に最初に事故現場で対応するのは地方自治体です。住民合意の上にその暮らしに沿ったきめ細かい取り組みがどうしても必要です。
 総理、地方自治体の防災対策と防災能力の向上を国が責任を持って技術的にも財政的にも日常的に支援することが重要ではないでしょうか。緊急時に設置される自治体の対策本部を敏速に支援することとあわせて、責任ある答弁を求めます。
 最後に、政府はプルトニウム循環方式による原子力政策の推進に固執していますが、技術的困難さから先進各国は既に撤退の方向を決めています。危険なプルサーマル計画は中止し、原発依存のエネルギー政策を根本的に見直すべきです。二十一世紀のエネルギー政策は、省エネルギー、省資源循環型社会への転換を進め、地球環境に負荷の少ない自然エネルギーの利用などに全力を尽くす方向に切りかえるべきです。
 日本共産党は、原子力防災はもとより、今日の原発の危険から住民を守る立場で国民共同を進める決意を表明して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114615254X00919991201_028

発言者: 西山登紀子

speaker_id: 7729

日付: 1999-12-01

院: 参議院

会議名: 本会議