葉梨信行の発言 (憲法調査会)

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○葉梨委員 昭和二十年十月に当時の政府によりまして組織されました憲法問題調査委員会におきまして、松本烝治国務大臣を中心として、日本の手による憲法草案が審議されました。
 この松本試案でございますが、大変評価されることが少ないのでございますけれども、私は、当時にあって、本来は英国的立憲君主制を志したものでございまして、明治憲法を踏まえ、格段に開明的な試案であったということ、当然一定の限界はございましたけれども、これは歴史的な経過としては再評価をすべきであるということを申し上げておきたいと思います。
 さて、現行憲法制定経過につきまして、占領下という厳しい状況の中で、我が国では幣原総理、引き続いて吉田総理、あるいは衆議院の芦田小委員長等々と、GHQのマッカーサー元帥以下、ケーディス次長等との対応につきまして、各参考人から詳細にいろいろな御見解を伺いましたが、当時、占領下という厳しい状況の中にあり、時代の大きな転換期にいかに対処するか、国家の将来を憂えて、また苦悩に満ちた時期であった、また苦悩に満ちた過程であったということを痛感しておるところでございます。
 同時にまた、現行憲法のもとに、我が国は、戦後、世界史に例を見ない経済的発展を遂げ、今日に至っております。我が国は、敗戦を経まして、五大改革を実現し、まさに新しい日本をつくり出したことを高く評価しているものでございます。
 しかし同時に、大事なものにつきまして認識にずれがなかったか、忘れてはならぬはずのものを忘れていないかということを指摘したいのでございます。
 西ドイツ基本法、西独基本法にうたわれております戦う民主主義という理念に対比しまして、我々日本人は、民主主義につき深く考え、正しく理解してきただろうか。自由の精神は公的精神の欠落という形に傾き、未成熟そのものではないだろうか。長い日本の歴史への敬意、国家の存在、日本人のアイデンティティー等々につきまして、我々の念頭から薄れたことはなかっただろうか等を指摘させていただきたいと思うのでございます。
 さて、冷戦終結後十年を経ました今日、我が国の平和と繁栄は国際貢献なしにはあり得ないことが既に国民的コンセンサスとなっております。阪神大震災、地下鉄サリン事件等から五年を経過いたしましたが、当時あれだけ叫ばれました危機管理については、いまだに十分な体制が整備されたとは言えません。国内、国外における非常事態について、今後この調査会において真摯な議論が必要ではないでしょうか。
 今日、激増する少年犯罪とその残虐性を見るとき、現行憲法が日本人の心の中の深い部分にマイナスに作用した面があることは否定しがたいように思えます。犯罪人の人権は尊重されるけれども、犯罪被害者の人権はほとんど無視されるに等しい現状であることはだれしも認めるところでありますが、これら現行憲法下では、日の当たることがなかった人々への責任はだれがとるべきなのだろうか、こうした問題についてもぜひともこの調査会で今後取り上げたいと考えております。
 国連憲章第五十一条は、国連加盟国に対し、個別的自衛権のみならず、集団的自衛権をも国家固有の権利として設定しております。この意味からしましても、憲法第九条第一項を堅持しながら、第二項の改正が必要であることは自明の理でございます。
 現行憲法制定時の日本と現在の日本は、経済的にも、国際社会における地位も、同じ国とは思えないほど飛躍的発展を遂げました。我が国は、世界第二位の経済大国として、国際社会の中で果たすべき役割はますます大きなものとならざるを得ません。我々は、いたずらに権利のみを主張し、国家、社会、家族への責任と義務を軽視する風潮を改め、国民一人一人が自己責任原則に基づき、みずからの自由を実現する社会を目指すべきであると思います。
 前回の調査会における中曽根元総理の御発言のとおり、二十一世紀にふさわしい国民憲法の制定に向けて、私も与党筆頭幹事として当調査会において微力を尽くす所存でございます。

発言情報

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発言者: 葉梨信行

speaker_id: 14748

日付: 2000-05-11

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会