中曽根康弘の発言 (憲法調査会)

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○中曽根委員 どうもありがとうございます。
 私は、先般来憲法制定経過の検討が行われましたが、経験した一つの事実をここで申し上げてみたいと思うのです。
 それは、昭和二十三年に、たしか片山内閣のころ、マッカーサー司令部から、憲法の見直しをしたらどうか、一年以内に検討せい、そういうような要請があって、当時鈴木法務総裁から、私は与党でありましたからその話を聞きましたが、当時の状況としては、この占領状態で自由がないところでまたやったってそう変われるものじゃない、それから、今食糧と兵隊さんを日本に帰すことと在外同胞を日本に帰すことで精いっぱいで、その余裕も今のところない、そういうような理由で、結構ですと、そういう返事をしたことを実は記憶しております。
 第二は、昭和二十九年だと思いますが、岸さんが自由党に復帰して吉田さんから憲法調査会長を任されたとき、私は岸さんと二人で会合して、岸さんから話を聞いた。私が調査会長を引き受けたのはこういうわけだ、吉田さんからこう言われたと。マッカーサーの占領の末期に、実はマッカーサーから憲法改正を考えたらどうか、そういう話があった。いや、吉田さんも、マッカーサーが言う前に、吉田さんから、たしかあれは警察予備隊ができたころだろうと思いますが、憲法を改正したらどうなんですかと言ったら、マッカーサーから、自分はもう恐らく早く帰るから、次の人に話したらいいと。それで、リッジウェー将軍が着任したので、リッジウェーにそのことを申したら、もう占領も終わるから、占領後独立してからやったらどうか、そう吉田さんは言われた。そこで、自分は憲法改正を考えないといかぬと思っていろいろ内面的にそういう準備を始めた、そこで、あなたに憲法調査会長をお願いするんだと岸さんに言われたと。岸さんはその話を私にしまして、中曽根君、一緒にやろうじゃないかという話があったのです。
 吉田さんは、ですから、内面的には改正しなくちゃいかぬということを実は持っておったが、当時はやはり一国平和主義で、解散、選挙を考えると、そっちの方を言った方が多数をとれる、そういう意図もあって、表と裏は別で、ああいう態度をとったのではないか、そう考えております。これが一つです。
 それから第二は、憲法の動態でありますが、現在の日本を見てみるというと、国家戦略がないのです。これは我々の責任でもあります。ところが、アメリカ、あるいは中国そのほか共産国というものは、イデオロギーとか建国の理想で、契約でできた国等でありますから、非常に戦略主義です。日本は自然国家で、伝統と歴史が積み重なっているから、そういうものがない。そういう欠陥が非常に今出てきている。国に顔がないというのはそれであるだろうと私は思うのです。
 それで、二十一世紀の日本を考えて、我々はその欠陥を是正するためにどうしたらいいか、そういうことを実は考えておる。それにはやはり、国民参加で新しい憲法をつくって、そして出直そうではないか。そういう戦略国家になるためには、国家の基礎構造がしっかりしていなければだめだ。ところが、憲法改正論が今六〇で、反対論が三〇という状態が各新聞から報道されている。これだけ憲法が今動揺しておる、国家が動揺しておる、そういう状況を見ると、もうこの段階になってきたらみんなで考えてやり直す必要があるのではないか。
 特に憲法第一条に主権在民の国家となっていますが、主権在民ということは憲法を自分でつくるということであって、これはフランスのデュベルジェという憲法学者がプーボワール・コンスティテュアン、憲法制定権力ということで、まず言っていることであります。
 そういうような面から見て、日本の二十一世紀の青写真をこれからつくる、そして言いかえれば、この国の形とこの国の心をみんなでここでつくっていこうじゃないか。過去のことは過去のことだ、新しい日本へ向かって国民参加でみんなで行こうじゃないか。明治憲法は天皇が下された欽定憲法であり、今の憲法は、占領中、占領軍の有力な指導、影響でできた占領憲法だ。我々は初めて、国民憲法をみんなでつくろう、そういうような意図で国家の形と心をはっきり固めて、この国家構造をしっかりした上で、戦略的にも米英に軽視されない、中国やロシアにも軽視されない、顔のある国家につくっていかなければならぬ、そういう段階に入ったと私は思うのです。
 そして、政局にかんがみて申したいのでありますが、今度の解散、選挙という際には、憲法とか教育基本法というような国の構造の基本に関する問題について、政治家や政党が国民に態度をはっきりする、そして国民の判定を求める、そういうような形で前向きに国を前進させる方向で我々政治家は動いていかなければならぬ、そう思っておるのであります。
 生意気なことを申し上げて恐縮でございますが、どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 中曽根康弘

speaker_id: 15356

日付: 2000-05-11

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会