小此木政夫の発言 (外交・防衛委員会)
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○参考人(小此木政夫君) 御指摘の金正日総書記のソウル訪問というようなものが考えられるんだろうかということですが、私はなかなかそれは容易ではないというふうに見ております。幾つかの理由があるんですが、そして韓国側もそこのところはわかっているんじゃないかというふうに考えております。
幾つかの理由の最大のものは、北朝鮮の政治体制というのはもう最高指導者にすべて依存した体制でありまして、ある種の国家有機体説のようなものがとられておりまして、最高指導者は人体でいえば脳髄に当たるんだということを彼ら自身が言っております。我々から見るとちょっとおかしな話ではありますが、しかし、もし最高指導者に事故がありますと、もうその体制そのものが大きく動揺する、そういうような状態、そういうような体制でございますから、次の後継者がいて国内を仕切っているというような状況がない限り多分南に出てくるというようなことはないだろう、難しいというふうに思います。
繰り返しになりますが、韓国側もそういう事情についてはわかっているはずでありまして、したがって首脳会談というのは多分一回だけの非常にシンボリックなものとして行われて、あとの問題は実務的なレベルで協議されていくというような形態になるんではないかと思います。もちろん、それは経済協力だけではございませんが、例えばシンボリックなものとしては、例えばそうですね、離散家族の再会の問題ですとか、こういうものは実現しますと大変大きな意味を持ってくるわけです。あるいはワールドカップ、二〇〇二年のワールドカップが一部ピョンヤンで開催されるとか、そういうスポーツや人道の面での出来事というのは十分に予想されると思うんです。そういう形で韓国の国民の期待をつないでいくということが考えられていくんじゃないかと思います。
ただ、首脳会談万々歳ですべてうまくいくのかということに関しては私自身も非常に強い疑問を感じておりまして、つまり北朝鮮側が受け入れたのは金大中大統領の太陽政策の自分たちに都合のいい部分でありまして、つまり経済的な実利というところに非常に大きなウエートがあるわけです。それでは政治的な分野、外交的な分野で原則を変えたのかといえば、それは変えていないわけです。ですから、南北の合意書の冒頭の部分に、一九七二年の七・四共同声明の統一三原則を再確認しと、こういうところがございます。文章がございます。これは、憲法の前文のような形でそれがうたわれているわけですが、自主、平和、民族大同団結というこの三原則であります。
北朝鮮側から見た場合の自主というのは何なのか。それは南北が主体的に合意したことであって、それはアメリカや日本の影響を受けないんですと。つまり、韓国はアメリカや日本に依存するような外交政策はやめてくださいという、日米韓の分断のようなものも意味しているでしょうし、在韓米軍の撤退というような要求にもつながり得るわけです。あるいは、平和ということになれば、ある種の平和宣言を行って相互の兵力を削減しましょうというような、かなり厳しい主張が出てくるかもしれませんし、さらに民族大同団結ということになれば、韓国内の、国家保安法を撤廃しろとかあるいは学生運動に対する取り締まりをやめろとか、いろんな要求はやっぱり掲げられてくるだろうと思います。
ですから、善意に基づく非常に素直な協力というだけではなくて、政治や安全保障の面での厳しい駆け引きというのも同時に展開されるというふうに考えた方がよろしいだろうと思います。