外交・防衛委員会

2000-04-20 参議院 全88発言

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会議録情報#0
平成十二年四月二十日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十三日
    辞任         補欠選任   
     久野 恒一君     森山  裕君
     浅尾慶一郎君     羽田雄一郎君
     笠井  亮君     立木  洋君
 四月十四日
    辞任         補欠選任   
     岸  宏一君     依田 智治君
     羽田雄一郎君     浅尾慶一郎君
 四月十七日
    辞任         補欠選任   
     佐々木知子君     岡野  裕君
 四月十八日
    辞任         補欠選任   
     岡野  裕君     佐々木知子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢野 哲朗君
    理 事
                鈴木 正孝君
                武見 敬三君
                小山 峰男君
                益田 洋介君
                小泉 親司君
    委 員
                佐々木知子君
                村上 正邦君
                森山  裕君
                山崎  力君
                山本 一太君
                依田 智治君
                吉村剛太郎君
                浅尾慶一郎君
                海野  徹君
                松前 達郎君
                荒木 清寛君
                立木  洋君
                田  英夫君
                田村 秀昭君
                佐藤 道夫君
   国務大臣
       外務大臣     河野 洋平君
   政務次官
       外務政務次官   江崎 鐵磨君
       外務政務次官   山本 一太君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫻川 明巧君
   政府参考人
       外務省アジア局
       長        槙田 邦彦君
       大蔵省国際局長  溝口善兵衛君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授     小此木政夫君
       静岡県立大学国
       際関係学部教授  伊豆見 元君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○外交、防衛等に関する調査
 (朝鮮半島情勢に関する件)
○政府参考人の出席要求に関する件

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矢野哲朗#1
○委員長(矢野哲朗君) ただいまから外交・防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、笠井亮君及び久野恒一君が委員を辞任され、その補欠として立木洋君及び森山裕君が選任されました。
 また、去る十四日、岸宏一君が委員を辞任され、その補欠として依田智治君が選任されました。
    ─────────────
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矢野哲朗#2
○委員長(矢野哲朗君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外交、防衛等に関する調査のうち、朝鮮半島情勢に関する件について、本日の委員会に慶應義塾大学法学部教授小此木政夫君及び静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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矢野哲朗#3
○委員長(矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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矢野哲朗#4
○委員長(矢野哲朗君) 外交、防衛等に関する調査のうち、朝鮮半島情勢に関する件を議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 委員長の矢野でございます。本日は、大変お忙しいところ本委員会に御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でありますが、まず、参考人の方々からそれぞれ二十分程度御意見をちょうだいします。その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構であります。
 それでは、まず、小此木参考人からお願いいたします。小此木参考人。
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小此木政夫#5
○参考人(小此木政夫君) 小此木でございます。
 国内情勢を中心に、首脳会談、日朝交渉等についてお話ししたいと思います。
 韓国、北朝鮮の国内情勢ですが、韓国に関しましては、御承知のように四月十三日に総選挙が行われました。これは、選挙の三日ほど前に南北首脳会談のニュースが公表されたということで、大変その影響等が注目された、そういう選挙でございました。
 選挙の分析をするのがこの趣旨ではないとは思いますが、簡単にそのあたりから始めたいと思います。今回、韓国での総選挙の一番の大きな特徴は、慶尚道と言われる地域、韓国の南東部の地域を基盤とするハンナラ党が非常に強い結束力を示したということではないかと思います。恐らく、その南北首脳会談のニュースもそういう意味では地域の結束力を高めたということが言えまして、与党にとってはプラスとマイナスと相殺されたようなところがございます。つまり、首都圏ではプラスに作用したけれども、野党の強い地域ではむしろ警戒心が高まり結束を促してしまったというようなところがございます。その結果、ハンナラ党が過半数に近い議席を確保することになりました。もちろん、与党の民主党も善戦いたしまして議席を大幅に伸ばしたわけで、全体としてはどうやら二大政党制に近いようなものが韓国の中に出現したような気がいたします。
 これがそのまま定着するかどうかに関しては、次の大統領選挙と次の総選挙ぐらいまで見てみないと何とも言えないのでありますが、しかし、私が漠然としたイメージで描いておりますのは、全羅道を中心とする民主党、これは革新色が強くて改革志向性の政党ですが、北朝鮮政策に関してはかなり穏健で柔軟である、大きな政府を志向するような、そういう政党になりつつある。他方、慶尚道を中心とするハンナラ党は、保守的で経済的には自由競争を信奉する、そして北朝鮮に対してはやや強硬である、小さな政府を志向する。ちょうどアメリカの民主党と共和党のような関係、そういう二大政党制のようなものが輪郭をあらわしてきた。ただ、韓国においてはやはり地域の要素というのが非常に大きくて、当分そこのところは変わらないだろう、こんな気がいたします。
 南北首脳会談関連のニュースですが、全般的には国民に歓迎されている、かなり歓迎されていると言っても間違いないと思います。ただ、総選挙となりますとそれとこれとは別というようなことで、そのことが票には直接結びつかなかったということではないかと思います。
 いま一つ、選挙の影響で次の大統領選挙の展望のようなものが、やはり輪郭だけですが、見えてまいりました。この選挙で勝利したと言っていいんでしょうが、このハンナラ党の総裁の李会昌さんが慶尚道の票を固めたことによって次の大統領候補の最も有力な候補として登場したということが言えるだろうと思います。また、民主党の側では、選挙対策委員長を務めた李仁済さんがやはり有力な候補として登場してきているように思います。二人だけということはなくて、またさらに何人かの人が出てくると思いますが、しかし、三金対立から二李対立へというような様相が出てきているということも御報告申し上げなければいけないと思います。
 国内の情勢から見ました場合に、今後の南北首脳会談に与える影響ですが、私は韓国政府には二つの制約があるというふうに見ております。
 まず第一は制度的な制約でございまして、これは野党のハンナラ党が百三十三という議席をとったことによって、やはり金大中大統領も野党の協力なしに南北の首脳会談及びその後の経済協力というものを進めることができにくくなってきたのではないかという気がいたします。
 当初は、首脳会談開催のニュースで、これを利用して民主党が圧勝するというようなそういう予想もございましたから、そういうふうになった場合と比べまして若干様相が違うのではないかという気がいたします。大規模な経済援助をやるということになれば予算上の措置が必要になるし、予算上の措置が必要になれば国会でやはり協力を得なければならない、こういう意味合いでございます。
 いま一つは、能力に関するものですが、選挙戦の最中に言われましたのは、中東特需に匹敵する、あるいはそれをはるかに上回るような北朝鮮特需がある、こういう言い方でございました。と申しますと、中東特需は韓国の場合約五十億ドルと言われておりましたから、それを上回るような経済交流が北朝鮮との間に生じる。それが政府支援によるものであれ民間の交流によるものであれ、そういうことになります。果たして今の韓国にそれだけの財政的な基盤があるのかということになってきますと、やや首をかしげるところもございます。それは韓国の幾つかの経済研究所等がそのことを既に指摘しております。そういったことであれば、やはり国際機関とかあるいは外国の協力も必要とする、そういう事態が出てくるのではないか。このあたりは日朝交渉等にも影響してくる部分ではないかというふうに見ております。
 さて、南北首脳会談でございますが、これにつきましては後ほど伊豆見先生から特に対外的な部分について十分な説明があるというふうに理解しております。
 北朝鮮の国内の事情だけ申し述べておきたいと思いますが、大ざっぱに申しまして、政治の面でも経済の面でも北朝鮮の指導部が最も苦しかったのは九五年、六年、七年のこの三年でございます。これが最悪の時期であったというふうに申し上げていいと思います。そして、立ち直りといいますか再出発、あるいは正常化という言葉を使ってもいいんですが、そういう現象が見られ始めましたのは九八年以後です。これは端的に言えば、テポドンが上がって、そして最高人民会議が開かれた、そのころから北朝鮮の立ち直りが見え始めた、こういうことです。
 また、外国の目も変わってまいりました。その間、北朝鮮の早期崩壊論とか、あるいはミサイルの開発能力を本当に持っているんだろうかとか、そもそも金正日総書記という指導者は本当に有能な指導者なんだろうかというような、こういう議論が随分ございまして、それがわかるまでは北と交渉してもしようがないじゃないかというような議論がかなり力を持っていたわけです。しかし、これ以後、どうも北朝鮮はそう簡単に崩壊しそうもない、ミサイルまで上げているじゃないか、あのミサイルは我々が想像していたよりずっと進んでいる、金正日さんもなかなかやるじゃないか、こういうことになってきたわけです。このことは、ただ単に対外的なイメージだけでなくて、やはり政治経済体制の正常化というような、北朝鮮なりの正常化と言ったらいいかもしれませんが、そういうものが進行していくきっかけになっております。
 九八年の最高人民会議で金正日の指導体制というものがはっきりと確立されて、その後、政府機構の正常化が進んでおりますし、経済の面でも財政計画が発表されるようになりましたし、どうも工場やあるいは管理部門でリストラが盛んに行われているように見えます。経済計画を発表したいというところまで来ているように思います。あとは、労働党の創立五十五周年という年に当たりますので、党機構を何とか正常化したいというのが今の北朝鮮指導部の考えではないかというふうに見ております。
 そういう形で体制は再整備されつつあるのですが、しかし政治よりはむしろ経済の方にずっと大きな問題がございまして、つまりこの最悪の三年間に北朝鮮の経済規模はほぼ二分の一以下に縮小されているわけです。これは予算の面から見ましてそのようなことが言えるわけであります。その後、底打ちはしたけれども経済はなかなか回復しない、つまり底ばいのような状態が続いておりまして、いつまでこういった状態が続くのだろうか。二〇〇二年の金正日総書記の還暦までには何とか経済を立て直さなきゃいけないということになりますと、もうそういうタイミングは来ているということでございます。
 つまり、外部から資本や技術の導入ということを考えると、今韓国以外にそれをやってくれるところはないじゃないかというのが今回の首脳会談受け入れの大きな動機になっていたというふうに理解しております。
 したがいまして、首脳会談を受け入れるという決定、これは北朝鮮側が主体的に戦略的な判断のもとで行ったものだというふうに私は見ております。そのほかの要素もいろいろございますが、外交的なものもございますし、あるいは総選挙というタイミングをねらったという部分もございまして、いろいろな要素があるわけですが、金正日総書記自身の主体的なそして戦略的な判断だということになりますと、戦術レベルでのトラブルがあったからといってこの会談が流れるということはないだろうというふうに私は見ております。よほどのことがない限り、会談自体は実行に移されると思いますし、それが実行に移されれば相当規模の経済協力がやはり約束されていくということだと思います。
 したがいまして、南北関係において何が変わるのかということになりますと、もちろん二人の最高指導者が一堂に会するということは、それ自体大変大きな歴史的出来事でございますが、その結果として南北関係のどこが変わるのかというと、やはり経済的な相互依存関係のようなものが将来的に予想できる、こういうことなんですね。
 つまり、大規模な経済支援が入れば、それは北朝鮮側からすればやはり撤収されては困るものでありまして、毎年必要になってくるわけでありますし、韓国としても、民間の資金まで入るでしょうから、一たんそれを行えば途中でやめるわけにいきません。そんなわけで、ポイント・オブ・ノーリターンを超えるといいましょうか、南北の分断の歴史に新しい章が開かれる、このあたりが大きなポイントではないかというふうに見ております。そういった経済的な相互依存関係というのは、当然政治や安全保障の面にも影響を及ぼしてくるだろうということになります。
 そういうふうに見ますと、北朝鮮側が行った決断というものは相当リスクを伴うものであったということが言えるわけです。長い目で見ると、韓国に依存するような体質というのはできているわけでありまして、それは北朝鮮の今の体制の変質というものを迫りはしないか、こういう疑問が当然あるわけでありまして、あえてそれを知りながら決断したということは、かなり大きなリスクを伴っているということが言えますし、また韓国側のねらいというのは平和的にそれを達成したいというところにあるわけであります。
 さて、私に許されている時間がそれほどございませんので、日朝関係について少し申し上げておきたいと思うのでありますが、仮に南北の首脳会談が順調に行われて経済支援が大規模なものが入っていくということになりますと、最前申し上げたように、韓国は独力だけでなくてやはり日本の力をかりたいというようなことになってくるかもしれません。また、北朝鮮としても、韓国の支援だけでは足りないということになってくるかもしれません。
 要するに、私が申し上げたいのは、日朝交渉を早期に妥結させたいという欲求は、北朝鮮側からだけでなくて韓国からも表明されてくる可能性があるということです。両国の最高指導者たちが口をそろえて日朝交渉を早く妥結してくれないだろうか、そうすれば南北関係もやりやすくなっていくんだ、これで朝鮮半島情勢も変わるじゃないかというような趣旨の発言というものが両国の指導者から出てくるということが将来的には十分に考えられるわけであります。
 また、北朝鮮側が首脳会談の後、日朝交渉でどういう態度を示すのか。次の日朝交渉は首脳会談の前のようでございますが、それにしましても首脳会談のニュースが発表された後、どういう態度を示し始めるだろうか、この辺もポイントだと思うんですね。これをよい機会だと思っていることは間違いないわけですが、それでは日本との関係も早期に正常化したい、そのために拉致疑惑あるいはミサイルの脅威の削減というような問題に関しても思い切った譲歩をしてくるんだろうか。もしそうであれば、日朝交渉はかなりスピードアップするということになるわけですが。
 しかし、そうでない可能性もございます。今のような北朝鮮に有利に見えるような情勢を利用して、拉致疑惑やミサイルの問題を棚上げしたまま、何とか早期に国交正常化して過去の清算だけを、つまり補償だけを早く受け取りたいというようなことであるとすれば、これは日本側としてはそれほど簡単に受け入れるわけにはいかない。日本の世論、そのあたりに関しては警戒心を持っているように私には見えるのであります。
 したがいまして、そのあたりの扱い方というのが難しいわけでございまして、日本政府は朝鮮半島の二つの国から早く交渉を進めてくれと要請されながら、他方、国内からは、いや拉致問題はきちっと清算しなきゃいかぬという反対の声もある、その間に挟まって立場が難しいというようなことになりはしないかと危惧しているわけです。
 私の個人的な意見としましては、これは北朝鮮側の出方によるところが大きいわけですが、拉致問題や核疑惑、どこまでどういうふうにやったら日本側は日朝交渉を進めていいのかというようなあたりを十分に議論していただきたいというふうに思うんです。つまり、七件十人以上の方が一遍に飛行機に乗って帰ってくるというようなことはなかなか想像しにくいわけですし、またテポドンからスカッドミサイルまで一斉に廃棄されるなんということも想像しにくいわけですから、まず日本側としては何を求めているのか、それが満たされれば交渉は先に進むんだろうか、どれが絶対に譲ってはいけないものなんだろうか、このあたりの議論が重要ではないかと思うんです。そして、ある種の原則を持ってできるだけ柔軟に対応していただければと、このように考えている次第でございます。
 どうもありがとうございました。
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矢野哲朗#6
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 続きまして、伊豆見参考人にお願いいたします。伊豆見参考人。
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伊豆見元#7
○参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。伊豆見でございます。
 お手元にレジュメをお配りしてございますが、これを細かくやりますとちょうだいしているお時間内では全部お話ができないかもしれませんので、少しはしょって御報告をさせていただくことをまずお許しいただければと思います。
 私に与えられました課題は、国際関係の視点の方から最近の朝鮮半島情勢の変化というものを検討するようにということでいただいておりますので、その中で注目される動きを幾つか挙げて検討をさせていただこうと思っております。
 国際関係の中での朝鮮半島あるいは北朝鮮ということで考えてみますと、この一年ほどはむしろ北朝鮮が非常に積極的に外交に取り組むようになったということが一番注目される点であろうかと思います。ほぼ一年というそれほど長い時間ではない間に、もとより米国との関係というのを今北朝鮮は重視いたしておりますから、それを継続するということを基礎にしながら、ここしばらく冷却化していたといいますか、かなり疎遠な印象を与えておりました中国や、あるいはロシアとの関係というものを進めましたし、あるいはヨーロッパ諸国との関係改善というものにも努力をして、その中ではイタリアとの間にこの一月に国交を樹立するというところまでこぎつけました。そのほかオーストラリア、カナダあるいはフィリピンといったところとの関係改善、正常化というものも目指している。
 日本に対しましても、考えてみますと九二年の十一月に日朝交渉を中断させて以降、それほど積極的に交渉再開に取り組んできたとは考えられない北朝鮮が、昨年の夏以降は非常に熱心になりました。もちろん、それが一つの大きな要因となって日朝交渉の再開までこぎつけたというのが現状であろうかと思います。
 ということで、この一年ほど、北朝鮮は大変積極的に外交を展開するようになった。範囲が相当広がってきたということがありますが、もちろんそれは、金正日体制というのがある程度安定をし、あるいは父親の金日成が亡くなった後の過渡期というものを乗り切って、それを前提にこういう外交の拡大というものを図っているということがまず言えると思います。これは先ほど小此木先生の方から御説明があったとおりでありますし、さらに経済再建の必要性というものがより増してきている、これも先ほど小此木先生の方から御指摘がございましたが、一応底を打った経済ということにはなりますが、二〇〇二年の金正日の還暦を目指して今北朝鮮は経済再建というものにかなり真剣に取り組もうとしているということがうかがわれますので、そういう理由があって外交を拡大してきたというところがあろうかと思います。
 もちろん、外交拡大、外交を積極的にやる、国際社会との接触を拡大するということは我々にとっては歓迎できる変化であろう、動きであろうと。国際社会の一員として北朝鮮の態度が今後変わってくるかもしれないということを当然それは予感させる部分がありますので、それ自体歓迎できるということにはなりますが、しかし、そういう変化が重大な変化かということになりますと、まだそこまでは言い切れないものがあろうかと思います。
 特に国際社会側の目から見ますと、北朝鮮の変化というのは、重要なのは本当に改革・開放というものを通じて国際社会の責任ある一員になってくるのかどうかという点でございますので、その点からしますとまだまだ北朝鮮の変化は非常に小さいものにとどまっておりまして、改革・開放の方向に動いているということは認められますが、しかしまだ十分なものでは当然ないということがあります。
 それと二番目に、これが私はより重要だと思いますが、今北朝鮮が我々にとって問題なのは国際社会に対してある種の軍事的な脅威を与えているということでありまして、そういう軍事的な脅威をみずから減らしていくという態度に出てくれるならば我々としてはより歓迎できるわけでありますし受け入れやすくなるわけでありますが、残念なことに、この点についても、北朝鮮は軍事的な脅威を減らそうという方向に動いているのかどうかはまだわからない。もちろん、将来そういう方向に動く可能性は一応認められると思いますが、しかし現在、一生懸命北朝鮮が関係の改善、正常化に努めているような国というのは、実は北朝鮮の軍事的脅威がそれほど減らなくても構わないという国ばかりであります。
 問題なのは、やはり日本とアメリカでありまして、日本とアメリカとの関係が正常化に向かう、あるいは大変友好な方向に向かうということであれば、その大前提は、北朝鮮の軍事的脅威というものを除去してもらうということが我々にとっては前提条件になろうかと思いますが、そういう点について北朝鮮が積極的に動き始めたという兆候はまだ遺憾ながらないというわけでありまして、歓迎できる動きではあっても十分なものではないということが言えようかと思います。
 そういう中で、今回、南北の首脳会談の開催に北朝鮮が合意するということになりました。この点につきましても、先ほど小此木先生が御説明になられました。小此木先生のおっしゃられたことは基本的にすべて意見を同じくするものでありますが、私は、今回の南北首脳会談というものを首脳会談だけで余り見ない方がいいかなと思っておりますのは、これは、韓国側が北朝鮮に対して経済援助を提供するということと、それと南北首脳会談を北朝鮮が受け入れるということが取引されたようなところがあるであろうと思うわけでありまして、そもそもこの動きは一カ月程度の非常に短い時間の中で急激に決まったとは考えない方がいいと思われまして、少なくとも六カ月程度の水面下でのさまざまな動きがあって、それが首脳会談開催の合意までこぎつけたということであろうかというふうに思っております。
 恐らく、最初は北朝鮮側が韓国政府に対してかなり大規模な経済支援というものを求めるようになり、それに対して韓国側にも、その準備というものが一応整った上で経済支援を与えるのであれば、その条件として南北首脳会談というような形を通じてそういうものを実現していかなければならないという要請が韓国側からなされ、最終的にはそれを北側も受け入れて今回、首脳会談が実現したのではなかろうかというふうに思っております。失礼しました、首脳会談はまだ実現しておりませんが、合意に至ったと。
 私も首脳会談そのものが実現する可能性は非常に高いと思っております。これは、結局は首脳会談が実現できなければ北朝鮮が得られるものはほとんど何もないということでありまして、北朝鮮はやはり経済支援というものを何としても獲得したいという強い要求から今回韓国との首脳会談開催に応じたと考えられますので、だとするならば、六月十二日に私はまず確実に南北首脳会談が開催されるであろうというふうに思っております。
 その首脳会談を通じて恐らく南北間の経済協力というものの枠組みが見えてくるはずでありますし、特に重要視されているのはインフラ部分の建設であろうということになります。これは北朝鮮側が一番今求めているものの一つであるということではありますが、どういうことが考えられるかということでありますが、我々は、しばしば北朝鮮への経済支援とかあるいはインフラ支援ということになりますと、何か新しいものをともかく北朝鮮につくってやるということばかりを考えますけれども、しかし恐らくそれはちょっと違うと考えておくべきでありまして、最初に問題といいますか大事なことは、現在北朝鮮が持っている現有の施設を再稼働させるということであります。
 御案内のように、ここ十年ほどは経済が極めて停滞をきわめたために、北朝鮮は現有施設をほとんど稼働できない。その稼働率は二〇%とも三〇%ともいろいろ言われますが、ほとんど稼働していない部分がある。そうしますと、重要なことは、まずそういう現有施設を修復する部分がかなりありますでしょうし、次にそれを再稼働させるということであります。それだけでも実は北朝鮮経済というのはかなり回復といいますか、盛り返すことはもちろん可能なわけでありまして、それが恐らく第一段階であり、その上で第二段階で新しい施設等を導入してさらに経済の再活性化を図ろう、そういうことを考えていると思われます。
 韓国が単独で支援できる部分は、私はその第一段階である。すなわち、北朝鮮の現有施設の再稼働というような部分については韓国の資金だけで十分に恐らく賄えるわけであります。しかし、新しい例えば電力についていえば、発電所をつくるとか、その発電所に対して重油あるいは石炭を供給するというようなことまで考えますと、これは韓国だけでは恐らくできないはずでありまして、そのために第二段階以降になりますと世界銀行やアジア開発銀行といったところからの融資が必要になりますし、あるいは周辺諸国からの協力、とりわけこれは日本が一番期待されているということになろうかと思いますが、そういうことが恐らく今回現実のものになっていくのであろうというふうに私は見ております。
 結局、こういう形で南北が合意できるということは、当面現状の中でお互いに生きていこうということでありますので、あえて言えば、それは統一の先送りということで実は南北が非常に共通の利益を持っているということであろうかというふうに考えております。
 北朝鮮にとってみれば、それは体制保障、体制をどうやって維持していくかということが一番重要だと。これはしばしば指摘されますし、全く私も同感でありますが、その体制保障というものを得、一方、韓国の方は平和的な共存というものを制度化させて余計な負担はこうむらないようにするというような、そういうことでは実は南北間には共通の利益があるわけであります。
 したがいまして、今回の首脳会談というのは、統一に向かって非常に急激なステップが踏まれるということではなくて、むしろ統一という課題はかなり後ろの方にといいますか、先の方に持っていくということで南北で合意を見るというような、そういう形になるのではなかろうかと思います。
 首脳会談に関連しまして、特に国際関係の枠組みでいいますと、一番注目される部分あるいは懸念される部分というのは、米軍の扱い、あるいはアメリカとのかかわりをどういう形で南北が話し合いをするのかということであります。
 既に在韓米軍について何らかの取引が南北間で行われるのではないかというような懸念も出てきておりますが、これは韓国側は明らかに在韓米軍の問題は南北の問題ではなくて米韓の問題であるということの立場を既に表明もいたしておりますし、その前提で北との交渉に当たると思いますから、私は今回、在韓米軍について何らかの合意が南北間にできることは全くないであろうというふうに考えております。
 しかし、もう一つ重要なのは、米朝間の平和協定というものを北朝鮮は一貫して望んでおるわけでありますが、これはむしろあり得るシナリオになるかなと。米軍はそのまま置いておく、しかしそのアメリカとの間に北朝鮮が平和協定を締結する。もちろん、一方では南北が進むということが前提になっておりますから、南北に加えて米朝という平和の枠組みを加えてやりますと北朝鮮はより安心するわけでありますし、北朝鮮の体制保障ということが考えられますので、そういうことが言えようか、そういうことは可能性としてあり得るというふうに思っております。
 最近の変化の中では、そういう南北が首脳会談の開催に合意したということが大きいわけでありますが、この結果として我々はアサンプションといいますか、朝鮮問題を考える前提を大きく変えなきゃいけないというふうに私は感じております。
 といいますのは、この五年、あるいはもうこの十年ぐらいずっとそうであったと言ってもよろしいかもしれませんが、朝鮮問題を考える、あるいは北朝鮮にどう対処しようかということを考えるときに大前提になっておりましたのは、南北関係は進展しない、南北関係は停滞したままである、それはなかなか北朝鮮が受け入れないからだめだという前提であります。その上で当たってきたところが今回、南北首脳会談、そして南北の経済協力というようなものまでが視野に入ってくるような状況になりましたので、むしろ今後は南北関係がかなり進展するということを前提とした朝鮮問題への取り組み、あるいは北朝鮮への取り組みということを考えなければいけないというふうに思います。
 これは、実は私は大変大きな変化であろうと思っておりまして、これ自体はもちろん歓迎される動きなのでありますが、単に歓迎とだけは言い切れないほどのより複雑な状況が生ずるのではないかというふうに思っております。
 実際、日米韓の協力ということがこの間非常に進みました。北朝鮮に対して我々は非常にいい協調をしてやってきたと思いますが、その大前提は南北が進まなかったという前提でありますから、これは三者間で協調することは実はやりやすかった部分が相当あると思うわけであります。ところが、一方で南北が進むということになりますと、日米韓が一緒になって北朝鮮に対応するというのは、これはそう簡単な話ではないということになります。
 特に、韓国側は今後経済協力の進展に重点を置くということが大いに考えられますし、その大前提は、実は韓国側が感じている軍事的脅威というのは、日本あるいはアメリカが感じている軍事的脅威とかなり質を異にする部分があります。どうしても日本やアメリカの場合ですと北朝鮮の大量破壊兵器を懸念しているところがあるわけでありますが、韓国の場合にはその点についての恐怖感というのはそれほど高くはなくて、むしろ現有の通常兵力に対して韓国側は懸念を持っているわけであります。
 そういうことを考えてみますと、韓国と実は日米というのはかなりずれるということでもありますし、さらに問題なのは、そういう南北がある程度和解をする方向といいますか協力の方向に行きますと、今度は中国やロシアにとって非常に好ましい状況が生じる。今までは、もう韓国は日米韓ということで協調体制で終始する、その上で北朝鮮をどう扱うかという話だけだったのが、今回南北がかなり一緒になる部分が出てきて、少し日米からも距離をとるということになりますと、中国やロシアにとってみればそれを歓迎し、そういう南北の協調進展というものを側面からより支援することによって、朝鮮半島そのものをかなり日米から切り離すということも可能になるということでありまして、中国やロシアにとってみるとこれから動ける範囲が相当広がるということだろうと思います。
 三枚目に変な図をちょっとつけておりまして、これは非常に単純化して書いてみたんで、私の頭の整理のために書いただけの話でありますが、今まではともかく日米韓というのが一方にあり、それで北朝鮮に当たる。北朝鮮の裏に中国とロシアが控えておりますが、それほど強いサポートをするとか、あるいは協調して動くという話ではなかったわけでありますが、これが将来北朝鮮と韓国というのがかなり一体となって動く部分が出てくるということになりますと、一体となって動ける南北朝鮮をめぐって日米、中ロの一種の綱引きも展開される、あるいは日米韓の協力と協調というものがかなり難しくなるというようなことが当然懸念、懸念といいますか見ておかなければいけないことであろうかと思います。
 ちょうだいしているお時間も限られてまいりましたので、日朝交渉につきましては、私はまず今北朝鮮側に交渉に取り組む非常に熱意が感じられるということだけは現時点では確かだろうと思いますが、ただ、交渉に一生懸命取り組もうとしているから日本に対して譲歩もし、日朝間でちゃんと妥結できるような方向に北朝鮮が積極的に動いてくるのか否かは今の段階ではまだわからないということになろうかと思います。
 これは考えてみますと、まだ一回目、二回目は双方のそれぞれの主張というものを相互いに明確にし、それに対してどう考えるかという反応、反論を行うというようなそういう形の会談になろうかと思いますので、本格的な交渉は第三回、第三回といいますか再開第三回目ということでありますが、になろうかと思いますし、そういう中で北朝鮮の本当の姿勢というものも見えてくるということだと思いますので、今の時点では、北朝鮮に熱意はあるものの、日朝交渉をきちっとまとめていこうとしているかどうかはまだ読めないといいますか、判断できない段階であろうかというふうに思います。
 その北朝鮮がどうしても譲歩しなきゃいけないといいますか、我々にとって望んでいる部分でいいますと、もちろん拉致問題がございますし、あるいは軍事的な脅威の問題があるわけでありますが、拉致問題につきましては、先ほど小此木先生がおっしゃられたことに私は全面的に賛成でありますし、北朝鮮側にもこの拉致問題が相当日本にとって深刻な問題だということをより深く受けとめてもらわなきゃいけないわけでありますが、その点では第二回目の会談が東京で五月末に行われると。
 ということは、日本側の雰囲気というものを北朝鮮の代表団が肌身で知る機会になるということでありますので、日本側にいかに拉致問題について深刻な雰囲気があるかということを北朝鮮が感じ取って、この問題を避けて通れない、したがって何らかの形で動かしていかなければいけないという方向に動いてもらうということを強く期待したいと思いますが、まだその点についてはそれほど楽観的になれるかどうかはわからないというふうに考えております。
 それと、やはり三回以降の展望でいいますと、北朝鮮が経済経済という経済協力ということに重点を置いてくる。これは、彼らの言い方からしますと過去の清算ということになりますけれども、私もその公算が非常に高いと思いますし、先ほど小此木先生が御指摘になられましたように、南北関係が進むと、特に経済関係が進みますと、日本に対し、日朝交渉を早くして妥結してほしいという動きが北朝鮮のみならず韓国側からも出てくるというのは、私もまさにそうであろうというふうに考えております。
 別に、それはそれで結構なのでありますが、問題は、そのときに例えば拉致問題、あるいはさらに我々にとっての重要な問題であるミサイルあるいは核といったような問題について、そちらの問題が少しおろそかになるというのが困るわけでありまして、その点で、韓国側にも日本に十分に協調していただけるようになっていただきたいと切に願っておりますし、期待はしておりますが、果たしてそうなるかどうかは保証の限りではない。むしろ、経済だけを優先させて、軍事的な脅威の問題については少し後回しでというような雰囲気が南北の中に、北朝鮮のみならず、北朝鮮はもちろんそうしたいわけでありますが、韓国もそちらの方向に行く可能性が私はやはり否定できない。ですから、そういう意味で、先ほどアサンプションが変わりました、南北が動き始めると朝鮮問題が相当変わると申し上げましたのは、そういうことからであります。
 あと、課題としては、ほんの一言だけ申し上げますと、そういう時期でありますから、私は日米韓の協調というのはなかなか難しいと思いますが、だからこそ、役割分担をきちっと明確にして、お互いにその枠をはめてきちっと動いていくということが必要であろうと思いますし、二番目にボトムラインの明確化ということを申し上げました。
 これは、先ほど小此木先生もおっしゃられていたことに近い話でありますが、もうこれ以上絶対譲れないというものが何なのかということを踏まえた上で日朝交渉にも当たらなければいけない、私もそう思います。
 それは、私は北朝鮮の核ミサイルの保有を阻止することが何よりも日本にとっては最大の喫緊の課題であろうかと思っておりますので、そういうボトムラインというものを明確にすべきであろうかと思いますし、そうであるならば、その核ミサイル保有というものを何とか阻止するのにどうすればいいのかというときに、私はやはり一種の取引というものをどうしても考えざるを得ないと思いますので、取引するか否かの前に、取引についての議論というものが恐らく必要になる。
 それと、最後に、南北の非核化共同宣言というものを挙げておきましたが、これは先ほど来申し上げておりますように、南北が経済経済ということで余り軍事とか核とかいうことについて熱心にならなくなるかもしれないという懸念がありますので、だとしますと、この非核化共同宣言をぜひともちゃんと実行してもらうという方向に我々は強く要請すべきではないか。
 非核化共同宣言は南北で結ばれたものでありますが、これを完全に履行しますと、朝鮮半島には絶対に核兵器は存在できないわけであります。一〇〇%の保証というか、一〇〇%を超えるぐらいの保証になるわけでありますから、この辺、我々はすべて忘れておりますけれども、もう一度持ち出して強く南北に対して要請をすべきであろうというふうに考えております。
 若干お時間を超過したかもしれませんが、申しわけございませんでした。
 ありがとうございます。
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矢野哲朗#8
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 それでは、これより質疑を行います。
 本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手の上、私の指名を待って御発言いただきたいと存じます。
 限られた時間でありますから、質疑、なおかつ御説明についても端的にお願いをしたいと存じます。
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山崎力#9
○山崎力君 両先生にお伺いしたいと思いますが、南北首脳会談、これから順調にスタートするとしてという前提なんですが、何が協議されるかは別としまして、私の感覚からすると、今回の南北首脳会談をスタートできた一つの大きな理由に、金大中大統領の方がピョンヤンを先に訪れるということがあると私は思っております。
 これは、向こうの儒教的な背景からいって、年齢的にも政治的にも上といいますか、そういった人が北へ先に行くと、これがやっぱり北が受け入れる一つの大きな理由になっていると思うんです。そうしますと、問題は次のステップとして金正日が、肩書はちょっとどう言っていいかわかりませんが、総書記かあるいは主席かは別として、ソウルを訪れる機会がなければ次のステップに行かないんじゃないかという気がしております。それが果たしてできるのかできないのかが、この南北首脳会談が今後順調に発展していくかどうかというかぎになろうと思うんです。
 それがないと、それからほかに付随すると言ってはなんですが、日朝関係、あるいは米朝、そういったものの基本にある南北関係が進展しない可能性がある。そこで、非常にネックになる可能性があるというふうに私は、そこが一つの近未来での大きなポイントだろうと思っておりますが、その辺の見通しと考え方について、両先生から御意見を伺いたいと思います。
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矢野哲朗#10
○委員長(矢野哲朗君) それでは、小此木参考人、よろしゅうございますか、お願いします。
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小此木政夫#11
○参考人(小此木政夫君) 御指摘の金正日総書記のソウル訪問というようなものが考えられるんだろうかということですが、私はなかなかそれは容易ではないというふうに見ております。幾つかの理由があるんですが、そして韓国側もそこのところはわかっているんじゃないかというふうに考えております。
 幾つかの理由の最大のものは、北朝鮮の政治体制というのはもう最高指導者にすべて依存した体制でありまして、ある種の国家有機体説のようなものがとられておりまして、最高指導者は人体でいえば脳髄に当たるんだということを彼ら自身が言っております。我々から見るとちょっとおかしな話ではありますが、しかし、もし最高指導者に事故がありますと、もうその体制そのものが大きく動揺する、そういうような状態、そういうような体制でございますから、次の後継者がいて国内を仕切っているというような状況がない限り多分南に出てくるというようなことはないだろう、難しいというふうに思います。
 繰り返しになりますが、韓国側もそういう事情についてはわかっているはずでありまして、したがって首脳会談というのは多分一回だけの非常にシンボリックなものとして行われて、あとの問題は実務的なレベルで協議されていくというような形態になるんではないかと思います。もちろん、それは経済協力だけではございませんが、例えばシンボリックなものとしては、例えばそうですね、離散家族の再会の問題ですとか、こういうものは実現しますと大変大きな意味を持ってくるわけです。あるいはワールドカップ、二〇〇二年のワールドカップが一部ピョンヤンで開催されるとか、そういうスポーツや人道の面での出来事というのは十分に予想されると思うんです。そういう形で韓国の国民の期待をつないでいくということが考えられていくんじゃないかと思います。
 ただ、首脳会談万々歳ですべてうまくいくのかということに関しては私自身も非常に強い疑問を感じておりまして、つまり北朝鮮側が受け入れたのは金大中大統領の太陽政策の自分たちに都合のいい部分でありまして、つまり経済的な実利というところに非常に大きなウエートがあるわけです。それでは政治的な分野、外交的な分野で原則を変えたのかといえば、それは変えていないわけです。ですから、南北の合意書の冒頭の部分に、一九七二年の七・四共同声明の統一三原則を再確認しと、こういうところがございます。文章がございます。これは、憲法の前文のような形でそれがうたわれているわけですが、自主、平和、民族大同団結というこの三原則であります。
 北朝鮮側から見た場合の自主というのは何なのか。それは南北が主体的に合意したことであって、それはアメリカや日本の影響を受けないんですと。つまり、韓国はアメリカや日本に依存するような外交政策はやめてくださいという、日米韓の分断のようなものも意味しているでしょうし、在韓米軍の撤退というような要求にもつながり得るわけです。あるいは、平和ということになれば、ある種の平和宣言を行って相互の兵力を削減しましょうというような、かなり厳しい主張が出てくるかもしれませんし、さらに民族大同団結ということになれば、韓国内の、国家保安法を撤廃しろとかあるいは学生運動に対する取り締まりをやめろとか、いろんな要求はやっぱり掲げられてくるだろうと思います。
 ですから、善意に基づく非常に素直な協力というだけではなくて、政治や安全保障の面での厳しい駆け引きというのも同時に展開されるというふうに考えた方がよろしいだろうと思います。
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矢野哲朗#12
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。あわせて、伊豆見参考人、お願いいたします。
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伊豆見元#13
○参考人(伊豆見元君) 今、小此木先生の方から非常に細かい御説明がございましたし、私も全く同感でありまして、やはり二回目はそう簡単にはないと思いますし、金正日総書記がソウルに簡単に行くとは考えられない。もちろん、うんと先の話は別だと思いますけれども。その点を韓国側がよく承知していると小此木先生はおっしゃいましたけれども、私もそう思いますし、そこが大事なんであろうかと思います。
 すなわち、首脳会談というのは、定期的に韓国と北朝鮮の間を行ったり来たりしなければいけないようなものとして構想は恐らくされていないと思います。それは、受け入れられる素地がもう今の時点でも十分韓国側にはあると私は思います。ただし、とはいえ、やはりやったからには相互主義でという声も当然あるわけですから、一たん金大中大統領がピョンヤンへ行ったのであれば、次は金正日総書記がソウルを訪れるべきであるという声は当然あるわけでありますし、その辺の批判というものをうまく乗り越えられるかどうかは、今後の南北関係がある程度進展して、その経済協力の面で目に見えるような形で、ああ前に進んでいるなというものが見えるか否かにかかっていると思います。
 経済協力がある程度、経済協力といいますか韓国側の経済支援というものが進み、それがそこそこ効果を上げているようだという印象が持たれるようであれば、特に韓国側ですぐ第二回目を、そして金正日総書記がソウルにすぐ来なければいけないというような声は、私は余り大きくならないと思います。要は、首脳会談そのものが大事なのではなくて、やはり首脳会談後の展開が非常に大事ということになろうかと思います。
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矢野哲朗#14
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。続きまして、小山峰男君。
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小山峰男#15
○小山峰男君 両先生には、きょうはお忙しいところどうもありがとうございます。
 日朝関係でございますが、私は伊豆見先生が三枚目にこの表というか、図をかいていただいたわけでございますが、この下のような形になるというのは、やっぱり日本としては大変好ましくない状況だろうというふうに思っております。
 今、日朝交渉が再開された、五月にはまた東京でということでございますが、今その状況等をお聞きしますと、いずれにしても、日本側は拉致疑惑とミサイル問題、それから朝鮮側は過去の清算というようなものをお互いにぶつけ合っているという状況だと。これ、かなり長期化の様相を呈するだろうというふうに思うわけでございます。
 いずれにしても、何らかの形でやっぱり日朝関係が正常化しなければならないだろうし、韓国だとか米国も含めて巻き込んだ形で日朝関係が正常化されるというようなことが、何か第三の道みたいなものを探さない限り、お互いにぶつけ合っていてもなかなか結論は出ないのではないかなというような感じを持っているのですが、先ほども若干お話がございましたが、ちょっとこの辺、簡潔に両先生からお話をいただければと思います。
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矢野哲朗#16
○委員長(矢野哲朗君) それでは、順序を逆にしまして、伊豆見参考人、お願いします。
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伊豆見元#17
○参考人(伊豆見元君) 大変重要な問題でございまして、御指摘のとおり、このままいきますとなかなか日朝交渉というのが進まないというのは、今の時点で考えますとその可能性が一番大きいということになろうと思いますし、やはりそれ自体が望ましいかというと、私も望ましいとは考えませんで、進展があるという意味は、それは我が国にとっての例えば安全の確保というものがより明確なものになるとか、あるいは朝鮮半島を含む北東アジアの平和と安定というものがより確固たるものになるということが一つあり、その上で過去の清算も遂げて日朝間が正常化、二国関係が正常化する、こういう意味であろうかと思いますので、やはり交渉は進展し、その中で結果が出てくるということが望ましいと思いますが、しかし、それが簡単ではないということも、また十分言える話であろうかと思います。
 今、懸念されますことは、先ほど来議論になっておりますように、南北関係が動き始めるということになりますと、その南北の中で経済協力が進みますと、日本に対して、北朝鮮に対して経済的にさまざまな形で支援してほしいという圧力がかかってくるということが一つ新しく考えられる可能性ということになろうかと思います。
 そうしますと、それにこたえるということは私は決して悪いことではないと思うのでありますが、しかし、そのためには、日本側が非常に懸念をいたしております北朝鮮の軍事的な脅威というものをどうしても減らしてもらう、その除去に努めてもらう、ある種の取引ということを、こちらが経済協力、経済支援というのを提供するのであれば当然その前提というのは北朝鮮側の軍事的な脅威というものが減るということを考える、それが前提になる、そういう方向に進めるべきであろうかと思います。
 今、日本国内ではこういうものを取引しようということは余り議論になりませんし、そもそも取引自体が余りよくないという考え方もあるわけであります。しかし、今後の状況ということを考えますと、経済協力、経済支援というものを北朝鮮に対してかなり出していく、あるいは出していかなければいけないような状況が一方で生じるのであれば、きちっとその前提として北朝鮮の軍事的脅威の削減を図るという、まさにその取引ということを真剣に考える、そういう時期に来ているのではないかと思いますし、それが日朝交渉を考える上でも一つのやり方ではないかというふうに思います。
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矢野哲朗#18
○委員長(矢野哲朗君) それでは、小此木参考人、お願いいたします。
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小此木政夫#19
○参考人(小此木政夫君) 日朝交渉に関する北朝鮮側と日本側の態度を見ておりますと、かなり大きな違いがあるわけでして、北朝鮮側は国交正常化を最優先にしております。国交正常化というのは彼らにとっては過去の清算であり、過去の清算というのは要するに謝罪と補償だと、こういうふうに言っているわけです。そこのところに、つまり謝罪と補償を早期に獲得するところに北朝鮮側の最大のねらいがあるわけでございます。
   〔委員長退席、理事鈴木正孝君着席〕
 日本側は、もちろんその過去の清算をしないと言っているわけではございませんが、それと同時に拉致問題やミサイルの脅威の削減といった問題を解決してもらわなければ困る。つまり、これは同時に協議して最終的には一括して解決しよう、こういう方式ではないかと思うんです。したがいまして、拉致問題やミサイルの問題が入り口のところで先に解決されるというようなことは非常に考えにくくて、私はいずれも段階的に解決していくしかないというふうに考えております。
 最初に我々は何を要求したらいいのか。国交が正常化されるときには少なくともここまで行っていなければいけない、正常化した後にここまで行くことが望ましいんだ、こういうような考えで拉致にもミサイルにも対応していくべきじゃないかというふうに見ています。
 その場合、一番重要なのは、拉致問題の場合には要するに関係者の身辺の安全と所在の確認でありまして、そして、恐らく国交正常化がなされるまでには少なくとも両親を含めた日本側の関係者が北朝鮮を訪問して面会する、そのくらいのところまでは行かなければならないというふうに思うのであります。最終的には自由往来が確保されればいいわけですから、先方にいると思われる被害者たちが日本に帰ってくるような状況が確保されなければいけない。これは国交正常化以後のことになるかもしれませんが、自由な往来が確保されるような状態をつくっていかなければいけないと思うんです。
 それから、ミサイルに関しては私よりも伊豆見さんの方が専門なので後ほど補足していただきたいと思うんですが、私は、少なくとも日本を標的としているノドンミサイルの配備が現在進行中であるということに関してはやはり我慢がならないのでありまして、つまり、国交正常化交渉をやりながら新しい関係を築こうという段階で、しかし、中距離ミサイルが着々と配備されている。
 この中距離ミサイルというのはどこを標的としたものかといえば、ソ連や中国でないことは歴然としているわけですから、彼らは同盟条約や友好条約を持っているわけでありまして、したがって、日本を標的としているということが言えるわけであります。ですから、交渉するのならばまずその配備をやめてください、凍結してください。最初の第一歩はそれじゃないかと思うんです。
   〔理事鈴木正孝君退席、委員長着席〕
 しかし、これも現実的に考えますと、朝鮮半島に地域的なミサイル管理レジームのようなものができないとあらゆるミサイルを規制するというようなことは不可能だろうと思うんです。半島の中のスカッドミサイルをやめるなんということはまず不可能でありまして、これは南北の兵力の均衡に基づいているわけですからこれはやむを得ない。しかし、半島から外へ出てくるノドンミサイルやテポドンミサイルを何とか規制していただきたい。そういう管理レジームは恐らく、日朝交渉の議題であるというよりは、やっぱり米朝ミサイル交渉とか、あるいは四者会談を通じて達成されるものではないかというふうに見ております。
 いずれにしましても、そのような形で段階的に、伊豆見先生がおっしゃっているように、ある種の取引に基づいてこういった問題が処理されていくことが望ましいのでありまして、純粋な理想論というようなもので解決する種類のものではないというふうに理解しております。
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矢野哲朗#20
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございます。続きまして益田洋介君。
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益田洋介#21
○益田洋介君 まず、小此木先生にお伺いしたいと思います。
 今まさに日朝国交正常化交渉が始まったばかりでございますが、先日、委員長のお取り計らいで、高野政府代表、当委員会に懇談という形でございますが来ていただきまして、若干の意見交換をさせていただいたときに私は提起させていただきました。
 北朝鮮側は謝罪と補償が前提であるというまず切り口で出発をいたしましたこの交渉なんですが、以前は補償という言葉を使わずに賠償という言葉を使っていたのが、賠償というのは損失に対する補てんといった意味合いがあるわけで、要するに、被害をこうむった方に対して加害的な立場から損害に対する賠償をする、補てんをするという考え方が、補償という言葉に今回切りかえてきたところにどんな意味があるのだろうか、何を企図しているのだろうかということについて問題を提起させていただきました。それはこれからの交渉の過程でわかってくることじゃないかという非常にうまい答弁をいただきましたが、先生はこの点についてどういうふうにお考えかということが一点。
 今、取引というお言葉を両先生はお使いになりました。例えば、小此木先生のレジュメの二ページの経済的相互依存という言葉、非常に耳当たり、耳ざわりのいい言葉でございますが、実際はこれは、南北の関係においてでございますと、そこに両先生が指摘されているとおり日本という国が当然中に介入してこなきゃいけない。その際、どういうふうな形で実際は取引の材料として提供できるものが日本にあるのかというと、先ほど小此木先生は、世銀による融資であるとかあるいはアジア開発銀行の融資だとかおっしゃいました。
 世銀は、今回G7でIMFでも改善がかなりあちこちの国から要求がありまして、長期的な今までのような融資というのが果たしていいものかどうか。また逆に、アジア経済危機を誘引したのが世銀による金融・財政的な締めつけであったというようないろいろな反省がありまして、そう簡単にこういった状況下で世銀から資金が引き出せるとは私は思えないのと同時に、それであるならばODAを使って円借款とか、あるいは無償供与というようなことも考えられるのではないかというふうに先生のお話を伺いながら聞いていたんですが、これもやはり私も当委員会で、中国に対する、対中ODAの円借款について、透明度がなくて軍事目的に使われていく場合には、非常にODA大綱に言ってみれば矛盾する、あるいは抵触するようなことがあるとこれもなかなか規制があってできない。
 一方で、民間レベルの投資につきましては、中国で既にGITICというような政府関係のこれノンバンクがございますが、で焦げつきが生じていて、簡単に日本の国あるいはアメリカから民間レベルの投資が行われるとも思えない。ですから、取引とはおっしゃいますけれども、物すごいいろいろな問題を抱えているのではないかというような気がいたします。この点についてお伺いしたい。
 もう一点だけ。今度は伊豆見先生にお伺いしたいんですが、アサンプションが変わってくる、将来的なアサンプションという形で各国の交渉の構図が変わってくるという中で、具体的に中国とロシアというのが北朝鮮との接触が今の状況よりも太い線で結ばれるように拡大していく状況下において、ロシア、中国と韓国の関係も当然のことながら変化してくるのではないかという気がいたしております。
 それで、江沢民主席がイスラエルを訪れて、イスラエルの首脳と会って軍事的な話し合いも相当行われたというふうに報じられておりまして、そうすると、要するにアメリカがかなり牽制していましたのは、イスラエル製の早期警戒システム、これを中国側に輸出するということに対して、これは北東アジアの戦略のバランスを崩すんだというようなことになって大変な騒ぎになりかけていますが、こういった懸念がどんどん膨らんでいく。アサンプションはそのまま先生のおっしゃるような道筋をたどっていくのであればそんな懸念がされてなりませんが、これについてお考えを敷衍させていただきたいと思います。
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矢野哲朗#22
○委員長(矢野哲朗君) それでは、まず小此木参考人、お願いします。
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小此木政夫#23
○参考人(小此木政夫君) 賠償という言葉を使わなかったことにはやはり意味があるというふうに考えるのは当然だと思います。前回の交渉では戦時賠償ということをはっきりと言っていたわけでありますし、それは北朝鮮側は金日成主席のパルチザン活動、あれは戦争だったんだ、こういうふうに言っていたわけでありますから、したがってそういう言葉を使わなくなったということ自体やはり変化だというふうに考えております。
 私は、日朝交渉に関しては北朝鮮側の方がはるかに交渉を妥結したいという熱意を持っているというふうに見ております。日本の方は相手の体制や出方を見てかなり懐疑心を持ってずっと来ているわけでありますが。例えば一例を挙げますと、九七年から八年の初めにかけて二回にわたって日本人妻が北朝鮮から故郷を訪問するというようなことがございました。そのころ森総理もピョンヤンに与党代表団団長として行かれたわけでありますが、北朝鮮の体制の中にある人間を外に出すということはこれはもう大変な話なんでありまして、南北の離散家族の再会というのがいかに困難であるかということを考えてみますと、当時彼らは日本人妻さえ日本に一回帰してやれば交渉が再開するんだというふうに信じていた、そういう可能性が濃厚に感じられます。まあこれは結局うまくいかなかったんでありますが、しかし、その当時から北朝鮮側の熱意の方がはるかに大きくて、その熱意の源泉が何なのかというと、まさにこの賠償であり補償である、つまり国交正常化に伴う資金であります。
 この資金の性質について今御質問ございましたが、我々が通常考えておりますのは日韓国交正常化のときのいわゆる請求権資金のようなものでございまして、当時無償で三億、有償で二億、合わせて五億の資金提供がなされたわけです。韓国はこれを巧みに利用しまして、当時ベトナム特需なんというのもございましたし、経済戦略の運営というのも大変巧みであったということもございまして、まさに韓国経済がそれをもってテイクオフするような、そういう大きな効果を持っていたのであります。
 北朝鮮側はそういうことを期待している。今の経済を何とか立て直したい、しかしそれには資金が必要であって、日本からの資金がその有力な源なんではないかということを考えているのであります。ですから、多分これは日本側からすればODAを使って、プロジェクト本位に、どういう形で金が使われるかということをきちっと査定した上で入っていくような、そういう種類のものになるんではないかというふうに考えております。
 取引というような言葉を使いましたが、最大の取引はそこでございまして、つまり拉致問題やミサイルの問題の解決とこの補償、彼らの言う補償の提供、これを取引するということでございます。人道問題に関して時々、米支援が行われて、食糧支援が行われたりなんかしておりますが、これは人道的なレベルでのより小さな分野での取引だというふうに考えてよろしいんじゃないでしょうか。国交正常化ということになりますと、どうしても今申し上げたような取引が必要になってくると思います。
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矢野哲朗#24
○委員長(矢野哲朗君) 続きまして、伊豆見参考人、お願いします。
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伊豆見元#25
○参考人(伊豆見元君) 益田先生の方からの御質問に直接お答えすることになるかどうかちょっとわからないのでありますが、最近の変化ということを見てみますと、確かに中国、ロシアとまず北朝鮮の関係がかなり好転してきている。しかし、それが軍事的な意味合いを伴っているかどうかといいますと、私はそうではないと基本的には考えております。
 ロシアが今北朝鮮に軍事的な援助ができるという状況にないことは明確でありますし、中国はある程度の軍事的援助をしていると考えられますけれども、それが今後中朝関係が好転するに従ってさらに増してくるという、軍事的な援助が増すというようなことはやはりそれも考えられないと思います。
 もう一つの最近の特徴で、それは何回も御指摘しているところでありますが、南北関係が動き始めて南北に進展が見られるかもしれないということになることが、実は周辺の諸国のゲームといいますか、大国の政策というものにかなり影響するであろうと考えられますことは、結局は中国にいたしましてもロシアにいたしましても、朝鮮半島の問題を考えるとき、あるいは朝鮮政策をつくるときにかなりアメリカを意識してやっていることは間違いないわけでありまして、対米関係、対米政策の一つの部分として朝鮮問題を考えるという傾向が中国にもロシアにも非常に強くあろうかと思います。
 それが、今までは南北が関係が進展しないわけでありますし、韓国はがっちりと日米韓協調というような枠組みの中にいて、それで北朝鮮も米朝交渉をこの五年間は真剣にやってきたわけでありますから、アメリカの方にかなり引き寄せられるような部分もありということで、中国やロシアの目から見ますと状況は余りよろしくない。すなわち、アメリカの影響力が一番増すような、そしてアメリカを中心としたような日米韓、その中に北をどう位置づけていくかというような構図があった。こういうふうに考えてとらえてきたというふうに私は感じておりますが、それが今後、南北が動き始めますと、南北がもう少し中立的なといいますか、一つの独立変数になりがちである。
 そうすると、南北をひとつ自分たちの方により引きつけるということによって、アメリカの朝鮮半島に対する影響力あるいは政策というものをかなり変えていくことが可能になるし、むしろ中国やロシアにとってはその部分が有利になる部分が出てくるという、そういうことで、大きな戦略的なバランスが変わるというようなことにならないとは思いますが、少なくともここ五年、十年ずっと存在しておりました朝鮮半島をめぐる周辺の諸国あるいは大国間の関係、あるいはそのゲームといったようなものが今後かなり様相を異にしてくるということは大いにあり得ると思います。
 それは、日本にとっていいことかどうかはまだわかりませんし、少なくとも状況が変わる可能性があるならば、それに対する対応というものを早急に考え始めなければいけないというふうに感じております。
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矢野哲朗#26
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。続きまして、立木洋君。
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立木洋#27
○立木洋君 お二人の参考人にお尋ねしたいんですが、南北首脳会談の合意が発表されたときに一番最初に頭に浮かんだのは、一九九四年六月の南北の首脳会談の合意でした。あのときは金日成主席が死亡されて実現しなかったわけですが、あのときから比べてみると朝鮮半島を取り巻く状況というのは大分変化があるんじゃないかなという気がしました。
 それで一点、小此木参考人にお尋ねしたいんですが、南北の問題で、御承知の、金大中大統領が就任されてその後太陽政策を取られたと。ことしになってベルリンにおける協議でいわゆる経済協力方針まで打ち出すというふうな宣言といいますか、あれが出されて、こういう状況の中で当初この太陽政策について北の方は極めて懐疑的といいますか、批判的な考え方があったんですが、これは大分見方が変わってきたんじゃないかというふうなことが感じられます。
 それで、選挙が終わった後、韓国での選挙が終わった後、いわゆる金大中大統領が野党に対する協力も呼びかける、それに対して対応するというふうなことも生まれてきましたし、だからこれはお話しのようにこの会談は進んでいくだろうと思われます。
 小此木参考人は、現在のところでは北の方は政治的、外交的な姿勢が変わるという状況は見られないと言いますが、このような経済交流あるいは協力等々が進んでいき、それと金剛山の観光みたいなもののように非常に人的な交流も進むという状況が来ると、やっぱりどうしても一定の影響が及ばざるを得ないんじゃないかという感じがするんです。次の段階での変化があり得るとすると、どういうふうな形で変化はあり得るというふうにお考えになるのか。南北の関係がさらに進展するというふうにお考えになるのか。これが小此木参考人に対する質問です。
 それから次に、伊豆見参考人へのお尋ねなんですが、交流、諸外国との関係を見てみますと、この点では御承知のペリー報告が去年の十月に行われました。これで、北朝鮮に対する政策の見直しが行われたわけですが、そういう内容が起こってきましたし、それから日本の場合でも去年の十二月、政党代表団が訪朝して、前提なしの正常化の話し合いをということで、既に延期された後の会議で、二回目が東京で行われるというふうな形にまで進んできております。
 これは、当然粘り強い必要な道理を尽くした話し合いということが必要になってくるだろうというふうに思いますが、こういう北朝鮮とそれから米朝の関係、それから日朝の関係、これの進展がやはりこの南北会談のあり方にも相互に関連し合ったんではないかというふうな感じがします。この問題が今後どういうふうに影響し合っていわゆる南北の関係の進展に進んでいくのか、そういう取り巻く日朝のかかわり方ですね、この問題についての御意見をお聞かせいただきたい。
 以上です。
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矢野哲朗#28
○委員長(矢野哲朗君) それでは小此木参考人、お願いします。
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小此木政夫#29
○参考人(小此木政夫君) 北朝鮮側は金大中大統領の太陽政策をずっと慎重に見てきたと思うんですね。そして、金剛山の観光事業というのは、ある意味では実験的なことをやっていたわけであります。この間、政経分離というようなことでやってきたわけでありますが、ベルリン宣言は、しかし、そうは言っても政府が乗り出さなければそれ以上の大きな規模のものはできないじゃないか、こういう趣旨の宣言であったというふうに思います。
 私は、国内の情勢を中心にお話し申し上げたんですが、今後の展望という点で、特に外交的な点でということであれば、そもそも北朝鮮側は従来の外交方式を大きく転換したんだということを指摘しておかなければいけないと思うんです。伊豆見先生からも御指摘があったように思いますが、これまではアメリカとの関係を打開して、それによって日本との関係を打開する、最後に南を動かそうと、こういうやり方でやってきたわけですが、対米交渉にある程度限界を感じてこれを逆転させているわけです。そこのところに非常に大きな意味合いがあるんだというふうに思います。
 つまり、南との関係を打開すれば日本が動かせる、アメリカとの関係も将来的には変わるかもしれない。少なくともこの一年間は南北首脳会談を中心に南北関係をやっていきたい、そうすれば、アメリカで大統領選挙があって仮に共和党政権ができても、南北が順調にいっているときに米朝関係がおかしくなるわけがないんだと、そういうことじゃないかと思うんですね。
 ですから私は、北朝鮮側は、その過程で日本との関係も何とかしたいと当然考えているわけでして、したがって、北朝鮮側は南北関係の改善というものを、首脳会談を土台にして対日関係や対米関係を考えている、かなり長期的に動いているんだということを御指摘しておきたいと思います。
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