小此木政夫の発言 (外交・防衛委員会)
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○参考人(小此木政夫君) 賠償という言葉を使わなかったことにはやはり意味があるというふうに考えるのは当然だと思います。前回の交渉では戦時賠償ということをはっきりと言っていたわけでありますし、それは北朝鮮側は金日成主席のパルチザン活動、あれは戦争だったんだ、こういうふうに言っていたわけでありますから、したがってそういう言葉を使わなくなったということ自体やはり変化だというふうに考えております。
私は、日朝交渉に関しては北朝鮮側の方がはるかに交渉を妥結したいという熱意を持っているというふうに見ております。日本の方は相手の体制や出方を見てかなり懐疑心を持ってずっと来ているわけでありますが。例えば一例を挙げますと、九七年から八年の初めにかけて二回にわたって日本人妻が北朝鮮から故郷を訪問するというようなことがございました。そのころ森総理もピョンヤンに与党代表団団長として行かれたわけでありますが、北朝鮮の体制の中にある人間を外に出すということはこれはもう大変な話なんでありまして、南北の離散家族の再会というのがいかに困難であるかということを考えてみますと、当時彼らは日本人妻さえ日本に一回帰してやれば交渉が再開するんだというふうに信じていた、そういう可能性が濃厚に感じられます。まあこれは結局うまくいかなかったんでありますが、しかし、その当時から北朝鮮側の熱意の方がはるかに大きくて、その熱意の源泉が何なのかというと、まさにこの賠償であり補償である、つまり国交正常化に伴う資金であります。
この資金の性質について今御質問ございましたが、我々が通常考えておりますのは日韓国交正常化のときのいわゆる請求権資金のようなものでございまして、当時無償で三億、有償で二億、合わせて五億の資金提供がなされたわけです。韓国はこれを巧みに利用しまして、当時ベトナム特需なんというのもございましたし、経済戦略の運営というのも大変巧みであったということもございまして、まさに韓国経済がそれをもってテイクオフするような、そういう大きな効果を持っていたのであります。
北朝鮮側はそういうことを期待している。今の経済を何とか立て直したい、しかしそれには資金が必要であって、日本からの資金がその有力な源なんではないかということを考えているのであります。ですから、多分これは日本側からすればODAを使って、プロジェクト本位に、どういう形で金が使われるかということをきちっと査定した上で入っていくような、そういう種類のものになるんではないかというふうに考えております。
取引というような言葉を使いましたが、最大の取引はそこでございまして、つまり拉致問題やミサイルの問題の解決とこの補償、彼らの言う補償の提供、これを取引するということでございます。人道問題に関して時々、米支援が行われて、食糧支援が行われたりなんかしておりますが、これは人道的なレベルでのより小さな分野での取引だというふうに考えてよろしいんじゃないでしょうか。国交正常化ということになりますと、どうしても今申し上げたような取引が必要になってくると思います。