角田義一の発言 (憲法調査会)
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○角田義一君 私は、ごく簡単に、今までの議論を聞いておりまして、感想めいたことを申し上げたいと存じます。
私は、やはり日本の憲法の前文、特に政府の行為によって再び戦争の惨禍が国民に及ばないようにするために、主権が国民にあるということを確認をしてこの憲法を制定をするという前文のここのくだりは、非常に大事なくだりだと思います。
俗に平和憲法平和憲法と、こういうふうに言っておりますが、何で平和憲法なのかということになりますと、やはり歴史的な経過を踏まえて、政府に戦争をもう一度やらせないという大変な縛りをかけている憲法でありまして、私は、日本国憲法の本質はそこにあるというふうに思います。
したがいまして、平野先生後から弁明があると思いますけれども、あえて誤解を、私は揚げ足をとるとかそういうんじゃなくて、先ほどのちょっと、負ける戦争をやっちゃいかぬということでいうと、逆に勝つ戦争ならやってもいいかということになるんで、そんなことを先生は考えていないと私は思いますけれども、要するに戦争をやらせないということでこの憲法はできておる。そのための主権在民であり、そして恒久平和主義であり、基本的人権の尊重というのはもう一体となっております。
したがいまして、今後調査会を進めるに当たりまして、主権在民の問題であるとか、あるいは恒久平和の問題であるとか、基本的人権のありようについて、五十年の歴史を顧みて検証するということは私は必要だと思いますし、そのことに何の異論も私自身はございません。
ただ、今の憲法はそういうものであって、その精神で今日五十年間やってきた。営々と我々が営んできて、そして戦争もなく、いろいろこれは理由があると思いますけれども、戦争もなく、しかも経済的な繁栄も今日享受している。
ただ、御案内のとおり、この五十年の間にいろいろ精神的な衰退もあると思います。しかし、それは憲法のせいでは私はないと思う。別の原因でこういう今日の悲惨な非常に嘆かわしい状態があるわけであって、それはそれで別の観点からメスを入れていけばいいのであって、それを憲法のせいにするのはいかがかというふうに私自身は率直に思います。
それから二番目は、私はこれは白浜委員と基本的には同じ考えでありますが、憲法の制定過程について、いろいろ御議論があるし、また問題があったということは私は否定もいたしません。しかしそれは、いうところの押しつけ憲法であったから憲法を改正すべきであるというような短絡的な議論にはとても賛成できない。営々として今日まで五十数年間、この憲法のもとで我々は営んできた、営々と営為を重ねてきたわけでありまして、そのことについてはやはり私は自信と確信を持ってもいいというふうに思っております。
もし、この制定過程を問題とするのであれば、当時の民衆はその憲法に対してどういう反応を示したのか、そこに調査の焦点を絞るべきである。当時の方々はもう七十を恐らく越えておると思いますから、そういう七十を越えた今日健在の庶民の声というものをむしろ私は重要視してこの調査会では聞くべきであって、もちろん学者先生の意見を聞くなとは申しませんが、むしろ民衆の生の声をこの国会で聞くべきだ。その方が私どもの方針を間違うことはないというふうに私は思っております。
それから三番目でありますが、これは多くの先生の方から御指摘がありましたけれども、私どもはアジアがこの今の日本の衆参における憲法調査会の成り行きをどう見ておるか、これを忘れてはならないと思います。
あの新ガイドラインのときにも、かなり中国を初め、朝鮮を初め、東南アジアの人たちは非常に懸念を表明をいたしました。いい悪いは別でありますけれども、自由民主党が単独政権をとっておったときにどういうことをアジアの民衆に向かって言ってきたか。日本は平和憲法があるから軍事大国にならないと言い続けてきたんですよ。これは国際公約であります、ある意味では。このことを忘れてもらっちゃ困る。
だから、今、恐らくアジアの民衆なりあるいはアジアの政府高官なりは、この日本の今の衆参の憲法調査会はどういうふうになっていくのだろうかといって私は非常に関心を持っておると思う。
したがって、今後の調査の過程において、例えば各国の駐日大使がどういうふうな考えを持っておるかというようなことを率直に私は意見を聞いたらよろしいと思います。場合によったら、この調査会も中国や朝鮮や東南アジアに委員を派遣して、今、どういう、日本国憲法に対して彼らが持っておるかというようなことも私は率直に聞いたらよろしいと思っております。
そのことを絶対私は忘れてもらっては困る。もしまかり間違ったことになりますと、私はアジアの民衆から日本が孤立をするということを非常に恐れておりまして、今後の調査会においても、その辺の視点をぜひひとつ忘れないでいただきたいなというのが私の強い望みであります。希望であります。
それから、最後になりますけれども、憲法と現実との乖離とかいうことがいろいろ問題になっております。
私は、佐藤先生がおっしゃったように逐条でやっていくのがいいかどうか、ちょっとその辺はこれからの課題になると思いますけれども、やはり実証的に、現実的に検証するということを私は否定もしませんし、大事だというふうに思っております。非常に実践的な立場でこの辺は議論をしてもらっていいし、どうしても法律では賄い切れないのか、憲法に手をつけなければどうにもならないのかというようなことを議論していただければいいのではないかと思っております。
と同時に、この調査会は決して憲法の改正を発議する調査会ではないということですね。このことだけは銘記をして、皆さんの心の底にすとんと置いておいてもらいたいと思うんです。
もしそのことがあるとすれば、恐らくこの調査会は発足しなかったと思うんですよ。私自身は体を張って抵抗しましたよ、そういうことになれば。ど座ってでも何ででもやってくれという話になったと思うんです。しかし、政治的な妥協の産物として、この調査会は憲法の発議権はないんだということでおさまって議論をしているんですから、そのことだけはぜひ腹の底に置いていただかないと、誤った方向になるのではないかということを最後に申し上げて、私の最初の意見発表にさせていただきます。
以上です。