二宮厚美の発言 (国民福祉委員会)
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○参考人(二宮厚美君) 二宮でございます。
私は、児童手当に絞ってお話し申し上げたいと思います。
児童手当の内容につきましては、大体五つの論点が浮かび上がってくるのではないかというふうに思います。五つの問題といいますのは、あらかじめ項目だけ申し上げておきますと、まず一つは児童手当の趣旨ないし目的にかかわる問題、二つ目は支給時の所得制限の問題、第三番目には児童手当の支給対象だとか支給期間について、第四は児童手当の支給額だとか水準にかかわる問題、それから第五番目になりますけれども、今回の児童手当の最大の争点でありました児童手当の財源構成の問題、この五つにわたってそれぞれ、以下時間の許す限り意見を述べたいと思います。
まず、第一番目の趣旨だとか目的にかかわることでありますが、先ほどのお二方の先生の話とダブるところがありますけれども、私は子供の生活保障につきましては二つの側面から統一して推進していかなければいけないというふうに思います。一つは、子供の生活を生計費の側面から保障する、すなわち所得保障の視点を徹底するということです。二つ目は、それにとどまらなくて、保育だとか学童保育にかかわって子供の発達に必要な社会サービスの保障、保育所を初めとして学校まで発達保障目的のサービスの保障の充実、この二つの視点の統一が必要だというふうに思います。
児童手当は、その内部を見ますと、私は過去十五年ばかり学童保育の連絡会の大阪での会長を務めてきたのでありますが、これにかかわって、児童手当勘定の中に特別保育だとか学童保育のいわゆる児童育成事業が含まれておりますけれども、中心的には児童手当の財源は前者の所得保障を担っている。子供一人一人に対する、親ではなくて彼らに対する所得保障というふうに児童手当をとらえるのであれば、現在の法律の仕組み、前提になっております児童を養育している者に対する児童手当の支給、すなわち簡単に言えば親ないし世帯に対する支給ということになりますが、こういう家計ないし世帯補助的な考え方というものを改めていく必要がありはしないか。
とりわけ、今回の措置は将来の児童手当の改革への第一歩、過渡的な措置だというふうに言われておりますけれども、全体として児童手当を子供一人一人の所得保障としてどう発展させていくのか、この方向が明らかになっていない。この点に私は大変大きな不満を持っております。
とはいいましても、今全国各地で保育だとか学童保育が、例えば公立のものが民営化されるとか民間委託になるとか、いわゆる市場化路線が進行しておりますけれども、そのときに所得保障をちゃんとやっておれば、いわゆる現物給付というふうに言われております保育だとか学童保育の充実は後回しにしていいというか副次的なものでいい、こういう考え方もあるようでありますけれども、これはまさに少子化であれ子どもの権利条約の精神であれ、児童福祉の視点から見て非常に大きな問題を持っている。つまり、所得保障と社会サービス保障というのはあくまでも統一して相互補完的に充実させなければならないというふうに思います。
それから第二番目でありますが、子供に対する普遍的な生活ないし所得保障という視点からとらえるとすれば、イギリスであるとかスウェーデンであるとかその他ヨーロッパ各国がそうしておりますように、親ないし世帯の所得制限はやはり撤廃する、もしくは当面撤廃という方向をにらみながら大幅に引き上げるということが必要で、そういう方向性を打ち出すべきではないかというふうに思います。
ところが、今回の改正では児童手当の本則給付及び特例給付両方にわたって所得制限は据え置かれておりますし、所得制限の中でも、もう既にこの国会でも問題になっておりますけれども、いわゆるサラリーマン世帯と自営業世帯との所得制限の格差という従来から問題になっている問題群もなお踏襲されている、こういう問題点が第二番目に指摘できると思います。
それから第三番目は、支給対象、支給期間の問題でありますけれども、今回の改正は小学校入学前までの子供に対して支給が延長される、こういうことでありますから、その限りでは支給対象児童や期間が拡大する。これは言うまでもなく評価できるわけでありますけれども、ただ日本の児童手当の歴史を振り返ってみても、これは一歩前進二歩後退というふうに言うべきではないか。
つまり、本来であればヨーロッパ諸国に並ぶ形で、児童福祉で言うところの児童といいますのは児童福祉法にありますように十八歳まででありますから、十八歳までやはり延ばすべきだし、当面それが無理であるとすれば義務教育終了まで延長すべきではないか。とりわけ、第三子に限ってではありますけれども、日本の児童手当の中でも七〇年代の半ばから八〇年代の半ばまでおよそ十年間、義務教育終了前まで手当を支給したことがあります。
したがって、こういう歴史の流れから見ましても、やはり最低でも義務教育終了までは児童手当の支給期間を延ばすべきではないか。この点の改善が、先ほど言いましたように一歩前進ではありますけれども、大きな日本の流れからすれば二歩後退ではないかというふうに考えられます。
それから第四番目でありますが、児童手当の支給額、水準につきましては、先ほど大沢先生の御指摘にもあったわけでありますけれども、日本は少なくともヨーロッパ先進諸国と比べてみて圧倒的に低い水準にある。これは支給額もそうでありますし、児童手当や援助パッケージの総額を対GDPだとか国民所得比で比較した場合もそうでありますし、衆議院の議事録を私は来る前に読ませていただきましたけれども、ここでの委員会の議論の中でも、例えばGDP比でいいますと〇・一以下、先進国では少なくとも児童手当は二%ないし三%以上に達成しているというのが当たり前だという指摘がありましたけれども、こういう問題群、つまり支給額や水準についてやはりもう少し改善すべきではないかというのが第四番目です。
それから第五番目、これはいわゆる財源構成の問題でありますが、今回の改正の最大のポイントは、児童手当につきまして従来の事業主七割負担、公費三割負担という財源構成を一たん横に置いて、三歳から六歳までの子供向け児童手当については全額公費負担とする、その公費負担の資金を年少扶養控除の引き下げで賄う、これが今回の改正の最大のポイントであったように思いますけれども、これは政府もお認めでありますが、千九百万人の子供に対する増税から三百万人分の支給対象児童の手当財源を捻出する、そういう格好で、事実上千六百万人の子供を持つ世帯ないし家族はそのおかげで増税というしっぺ返しを食らう、こういうことになっているわけです。
私は、これは三つ問題があって、一つは年少扶養控除加算分十万円といいますのは一年限りで廃止でありますから、マスコミも言っておりますように朝令暮改というか、夕方にならぬ前に変えちゃうというぐらいで、朝令昼改というふうに言ってもいい、そういう問題点と、それから子育て支援全体の財源構成から見れば朝令暮改と並んで朝三暮四という問題点を持っている。それから、財源構成から見ますと、従来の児童手当の財源獲得という骨子から別建てのものを用意したという意味で接ぎ木という問題点を持っているのではないか。
以上申し上げまして、私の意見にしたいと思います。