中山徹の発言 (予算委員会公聴会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○公述人(中山徹君) 御紹介にあずかりました奈良女子大学の中山です。
時間が限られていますので、早速本題に入らせていただきます。
私の専門は都市計画とか公共事業、そういった問題を扱っております。そういう専門から日本の国家予算もしくは自治体の予算なんかを見ますと、どこに大きな特徴があるかといいますと、他の先進国と比べますと明らかに公共事業費が非常に大きいというところに日本の予算の大きな特徴があるのではないかなと思います。
それがどういうものかというところ、お手元に資料が届いていると思いますので、それを参照しながらごく簡単に触れます。
図の二というのがあるかと思います。一般政府固定資本形成の対GDP比という資料ですが、大体おおむねこの三十年ほどの推移を見ているものですけれども、ちょっと見づらくて申しわけないんですが、一番上のグラフが日本です。一九七〇年代後半から日本の公共事業費というのは他の先進国の倍以上の推移をずっとたどっております。
また、図の三というのが右の上にありますけれども、一般政府固定資本形成、公共事業の工事費ですが、これを実際の金額ベースで見たものです。
一九九五年の公共事業の工事費ですけれども、日本の公共事業費をアメリカのドルに換算しますと大体三千二百七十九億ドルになります。当時、アメリカは千二百九億ドルぐらいの公共事業をやってきたわけです。日本の国というのは、アメリカの国土面積と比べますとアメリカの方がはるかに大きいわけですが、そのアメリカで行ってきた公共事業の倍以上の公共事業を日本の国は一九九五年にやっておりました。
また、ほかの先進国、日本を除く六つの先進国をすべて足した値がそのグラフの一番右に出ています二千六百八十二億ドルです。ですから、そういう意味では、日本の国というのはほかの六つの先進国の公共事業費をすべて足した以上の公共事業をこの年には行っていたということになるかと思います。
ちなみに、例えば都道府県で見ますと、ここの東京都でいいますと、東京都内で一年間でこの年に行っていた公共事業は、このグラフでいいますと大体イギリスぐらいに当たります。ですから日本の場合、公共事業をたくさんやっている都道府県というのは東京とか北海道になるわけですけれども、そういった東京とか北海道でやってきた公共事業というのは大体イギリスと同じぐらいというような金額になるかと思います。
日本の予算、国とか自治体まで含めまして非常に大きな特徴というのは、こういう公共事業予算が非常に大きいというところにあるのではないかと思います。
では、なぜこういう公共事業予算が大きくなったかということなんですが、その図の二というのをもう一度見ていただいたらおわかりのように、九〇年代に入ってから日本の公共事業予算がふえています。
これには幾つかの理由があると思いますが、一つ大きいのは、公共投資基本計画というのがございます。日本の国は公共投資基本計画というのを立てております。そこで、日本の公共事業を内需拡大のためにふやしていくという、これを国際的な公約にしたわけです。そういう中で、九〇年代に入ってから公共事業費が急増しております。
また、もう一つ大きなのは、ここでもずっと議論されていると思いますけれども、景気対策です。九一年にバブルがはじけました。それ以降、日本は不況に入っていくわけですが、その中で、日本の国の不況対策といいますと公共事業の拡大というふうになっております。ただ、御承知のように、前の内閣のときに財政構造改革で議論されておりましたが、今先進国の中で景気対策で公共事業を拡大している国というのは日本だけでございます。
図の四というのに資料を挙げておりますけれども、これは一九八五年、九〇年、九五年の公共事業費の比率を見たものです。各国ごとにグラフを三つ挙げておりますが、特に見ていただきたいのが九〇年と九五年のグラフです。
アメリカは九〇年代半ばからやや景気が回復してきていますが、おおむね九〇年代の前半というのは国際的に見て景気が余り芳しくなかった、特に先進国は芳しくなかった時代です。その時期にカナダとかフランス、ドイツ、イタリア、イギリス、そういった国々は公共事業の予算の比率を下げております。
これはある意味では当然でして、不況のときというのは税収が減ります。そういう中で公共事業も抑制しているということなんですが、日本の国は不況対策といいますと公共事業をふやすということになっておりますので、九〇年代に入ってから他の先進国とは違って公共事業費を非常にふやしたという、そういう経済対策をとってきたのではないかと思います。そういった景気対策によって九〇年代に入って公共事業費が非常にふえたのではないかと思います。
また、私のように都市計画を専門的にしていますと、今の自治体のあり方というのも問われるかと思います。
御存じのように、この間、国際化とか情報化、そして規制緩和、そういったものが物すごく進んでおります。そういう中で各自治体は、国際化、情報化の波に乗りおくれては大変だ、国際化とか情報化、そういうのに勝てるような地域社会を築いていく必要があるということで、日本の各都市が国際化や情報化に役立つような大型公共事業をこの間競争のようにやってきたわけです。そういった背景で九〇年代に入って公共事業費が非常に膨らんだのではないかと思われます。
さて、そうなってきますと、九〇年代に入って非常にふえてきた公共事業が当初予定していたような経済効果をもたらしてきたのかどうか、この点を考えておくことが日本の今後の予算を考えていく上では非常に重要になるのではないかと思います。
特に、公共事業と景気の関係でいいますと重要な点が幾つかあります。
一つは、いわゆるストックの効果と言われているものです。これは何かといいますと、公共事業で高速道路とか空港をつくりますと、当然、後々それを使って経済の活性化が図れるわけです。確かに、六〇年代から七〇年代にかけての高度経済成長期、例えば東海道新幹線ができて東名高速道路や名神高速道路が当時つくられました。そういった公共事業というのが日本の当時の経済発展にある一定の寄与を果たしてきた。これは事実だと思います。ところが、この間行われてきた大型公共事業、それが日本の経済にとってストックとして大きな役割を果たしてきているかというと、この辺はやや慎重に考える必要があるのではないかなと思います。
例えば、この近辺でいいますと東京湾の横断道路、またもうちょっと西の方へ行きますと本四架橋があります。また、自治体が行ってきた大きなプロジェクトでいいますと、ここでしたら東京の臨海副都心開発、また私の住んでいる大阪でいいますと、大阪のりんくうタウンなどをこの間ずっと手がけてきています。
ところが、そういった公共事業を見ていますと、当初予定していただけの利用が行われていくか、当初予定していただけの採算があるか、また当初考えていただけの企業進出が見込まれてきたか、そういった点を判断していきますと、大型公共事業をやってきたのがストックとして経済の活性化に当初予定していたほど役立ってきているかというと、この辺は必ずしもそうではないのではなかったかと思います。
また、公共事業に、経済的な問題でいいますとストック以外にいわゆるフローの効果というのがございます。このフローの効果というのは、公共事業をやればたくさんのお金が動くわけで、そのお金が景気の回復に与える効果です。このフローの効果というのも、大きく分けると二つあります。
一つは、公共事業をやりますと、当然そこでは建設会社が仕事を受けるわけですけれども、建設会社が仕事を受けるだけではなくて、製鉄所とかが鉄を受注するわけですし、また公共事業をやりますとたくさんのセメントなんかを使います。公共事業をやりますと、そこで鉄やセメントなどいろんなものを使って、それがさまざまな別の産業に波及していく効果があるわけです。
公共事業はそういう効果が非常に高い分野だというふうに言われてきました。確かに、かつての高度経済成長期、そういった面はかなりあったかと思います。ところが、最近の様子を見ていますと、必ずしもその辺の効果がかつてほどは高くなくなってきたのではないかなと思います。
なぜそういう変化が起こっているかと申しますと、御承知のように、一九八五年にプラザ合意があって、それ以降急速な円高が進んでいく中で、日本の製造業は、日本の国内で工場をフル回転させるというよりも、むしろ日本の国内の工場を海外に移していくという、そういう方向が一九八〇年代半ば以降急速に強まってきたわけです。
かつてのように公共事業でたくさんの資材を使えば、それがそれ以外の産業にもどんどん波及していって、そこで新たな設備投資を次々引き起こしていくというようなことが最近ではほとんどなくなってきています。強いて仮に公共事業でたくさん鉄を使ったとしても、かつてのように日本の製鉄所がそれを受けて日本国内で新たな工場をつくるかというと、もう今ではそういうことは恐らくあり得ないと思います。そういう意味では、公共事業が持っているこの波及効果、それが年々低下してきているんではないかなと思われます。
また、もう一つ公共事業が持っているフローの効果として大きいのは雇用効果でございます。公共事業をやりますと、そこでたくさんの人を雇用することができます。雇用された人は当然給料をもらうわけです。給料をもらいますと、その人たちはそれを消費に使います。公共事業というのはそういう個人消費の拡大につながる効果が非常に高いというふうにかつては言われていました。確かに、景気が悪いときには失業する方がふえるわけで、その人たちを公共事業で救っていくという政策が日本の国は伝統的にとられてきたわけです。
ところが、最近、その雇用効果という点を見ても公共事業の持っている効果がやや衰えてきているんではないかなと思います。それを見ているのが、お手元にお配りしています資料の裏側になりますが、図の七でございます。これは建設省が出している公共工事着工統計年度報からつくったものですけれども、すべての公共事業を網羅している統計書ではないのですが、大体大まかな経過はわかるかと思います。一番太い実線がこの十年間の公共事業費の変化を見ておりますが、大体公共事業費はこの十年間で五割ほどふえています。それに対して、例えば総工事費百万円当たりの労働者数を見ますと大体五割ほど減っています。そういう意味では、公共事業の持っている雇用効果がかつてのように高いかといいますと、最近の雇用効果という点でいいますとやや衰えてきているんではないかというふうに判断できると思います。
そういった点から見ますと、公共事業を景気対策としてやっていく、日本の政策というのは伝統的にそういうことを行ってきたんですが、そういった効果というものをもう一度見直しておく必要が今あるのではないかなと思います。
では、どうすればいいのかということなんですが、公共事業というのはどんどん拡大しますと当然借金がふえます。日本の財政状況が極めて深刻だということは国会でも議論されておられるとおりでして、そういった財政状況が厳しい中で一体どう考えていったらいいのかということがあるかと思います。
私のように都市計画とか公共事業をやっている者からいいますと、今の日本の公共事業はもう一度きちっと内容を見直していくべきときに来ているのではないかと思います。特に、今のような財政状況を考えますと、緊急度の低い公共事業もしくは採算性に疑問のある公共事業、そういった公共事業についてはかなり内容を精査していく必要があるのではないか、そのように思います。
もちろん、国際化がどんどん進んでいく中で、そういった社会資本整備が全く不要だと言っているわけでは決してありません。私も都市計画を専門にしていますので、日本の社会資本整備が先進国と比べると劣っているということは当然事実としてあるわけでして、すべての社会資本整備をやめろと言っているわけでは決してありません。ただ、今のような財政状況、国民の暮らしの状況を考えますと、今本当に慌ててしなければならない公共事業というのは何なのか、その辺を精査していく必要があるのではないかなと思います。
例えば、国際化というとすぐ空港というふうな感じになろうかと思います。もちろん、空港というのも非常に重要な施設で整備していく必要はあるのですが、例えば首都圏では成田がありますし羽田があります。今、首都圏の第三空港の計画というのもあります。静岡に行きますと静岡空港が計画されていますし、愛知県に行きますと愛知新空港に名古屋空港もあります。滋賀県に行きますと琵琶湖空港の計画があります。私が住んでおる大阪には関空がありますし伊丹があります。神戸市は今、神戸沖空港の計画を進めています。兵庫県は姫路に空港をつくる計画を持っています。岡山に行きますと岡山空港。広島空港それから広島西空港。山口県に行きますと、山口県は東部に空港をつくりたい計画を持っておりますし、今既に山口宇部空港があります。九州に入りますと北九州空港があって福岡空港があるわけで、ちょっと数え間違っているかもしれませんが、おおむね首都圏から九州までに十八ぐらいの空港がこれから並んでいく可能性があると思います。
ただ、例えば新幹線の「のぞみ」に乗りますと、東京を出ますと、通常は名古屋にとまって、京都にとまって、それから大阪、岡山、広島、小倉、博多、「のぞみ」でも八つしかとまらないわけでして、その間に十八の空港を並べることが、それは予算がたくさんあればいいと思うんですけれども、今の時代そういう整備を進めていくことが本当に日本経済、国民生活にとって必要なのかどうか、そういった内容を精査していく必要が今の財政状況を見ればあるのではないかというふうに考えています。
ただ、そういうことを申していますと、いや、この間公共事業を行ってきたから日本の経済はここで食いとめられているんだ、もし公共事業を削減すればもっと失業者がふえて大変であったはずだというふうな議論も聞かれます。
ただ、その点をどう考えればいいかということで、私自身、試算をしたことがありますので、それを紹介しておきますと、図の八と図の九があります。これはちょっと急いでいまして、タイトルが図の八と図の九を反対にしてしまって申しわけないんですが、この図の九の折れ線グラフの方が、これは普通建設事業の一般財源に対する比率、自治体の公共事業費を見ているものです。見ていただければわかりますように、九〇年代に入って公共事業費が急増しています。
私がどういう試算をしたかといいますと、仮に九〇年代に入ってこれだけ公共事業をふやさなかったとすれば、別にゼロとしろとは言いません、せめて八〇年代後半ぐらいの水準、一般財源に対して四割程度の公共事業費の水準で仮に九一年以降推移させておれば日本の経済はどうなっていたのかというのを見ました。
もちろん、公共事業を削減する、それだけをすれば景気に対して悪い影響が出るのは当たり前ですが、公共事業を削減することによって財源が浮いてきます。その財源を、私が考えたのは、社会保障、自治体でいえば民生費になりますけれども、仮にそういったところに充当していたとすれば日本の経済はどうなっていたかというのを見たものです。
御承知のように、これから少子高齢化社会に入っていくということで、社会保障予算の拡充というのはむしろ求められていると思います。従来でしたら、社会保障といいますと、国民生活の向上には必要だけれども、経済対策という面から見るとややお荷物ではないか、むしろ経済的に見ると浪費ではないかという考え方が強かったと思うんですが、社会保障とか民生費というのは経済的な面から見ましてもそれなりの一定の効果を持っています。特に、社会保障の持っている経済的な面で多いのは雇用効果です。公共事業と比べましても社会保障というのはかなりのそういった意味では雇用効果を持っています。
もし、公共事業を九〇年代に入ってこれだけふやさずに、そこで浮いてきた予算を社会保障に該当しておればどうなっていたか。それを計算しましたが、結論だけ申しておきますと、経済的な波及効果という面ではほとんど変わりません。
それに対して、今失業者がどんどんふえています。雇用効果という点だけを見ますと、むしろ公共事業を八〇年代の水準で推移させていて、それで浮いてきた財源を社会保障に充てていた方が明らかに雇用はふえていたというふうな計算結果になっています。
もちろん、これだけですべてのことが論じられるわけではありませんけれども、今の国民生活の状況とか日本の財政状況そして景気、そういったことを考えていきますと、この公共事業予算というのをどこまで精査していくことができるのか、またそういう中で財政再建というのをどういうふうにめどを立てていくことができるのか、そういったことが、恐らく日本の今の国とか自治体の予算全般を見ていますと非常に重要なことではないか。私のように都市計画をやっている者から見ますと、そのように考えている次第でございます。
以上です。(拍手)