正村公宏の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(正村公宏君) もし政府が積極的な財政政策をおとりにならなかったらもっと大変なことになったことは事実だと思います。
金融についても、いろいろ問題点はありますけれども、緊急措置をおとりになったのは、これは金融システムの崩壊を防ぐ効果を、どれだけかというのはわかりませんが、持ったことは事実であります。それは、かつての自由放任経済とは違うということを皆さんが体験なさったと思うんです。非常に政府が重要な役割をする。
金融の自由化ということについて、話はちょっとそれるかもしれませんが、自由化自由化ということを盛んに言ってまいりましたけれども、自由化ではあるんですけれども、それは規制をなくすことではないんです。護送船団方式と言われるような、金融機関を保護するという形で間接的に預金者の資産を保護してきた、こういう仕組みから、もっと競争原理を働かせながら別の方法で預金者の資産を、ミニマムを保証するという新しい規制です、これは。あるいは金融機関の放漫な経営を国民にかわって、預金者にかわって監督する。
ですから、自由化とか規制緩和とかいう言葉は非常に誤解を生んでいるのであって、政府の役割は軽くはならない、政府の役割の質が変わるということをしっかり理解してこなかったところに問題があったと思います。
そして、危機が発生したときに、率直に言って慌てられたと思います。それはバブルの崩壊の後遺症が非常に大きかったわけですから仕方がないんですけれども。財政についても、私は緊急の、いわば堤防の決壊を防ぐための措置をおとりになったというふうに理解しております。
その措置をとるときに、残念ながら過去二十年なり三十年なりの間に取り組んでおかなければならなかった日本の財政構造の改革ということがおくれているために、税制もそうです。私も税制調査会の専門委員をしばらくやっておりまして、多少は議論を知っておりますけれども、テーマは話題になるんですけれども、決まらないんです。あらゆる委員会にそういう傾向があります。調査会、審議会にそういう傾向がありますけれども。それをずっとやってきて、ここに来ていますね。
そこで、応急措置をとるということになれば、今の財政制度、今の財政構造の枠の中でやらなければなりません。したがって、手っ取り早く言えば、手っ取り早く公共投資を拡大せざるを得ない。公共投資というのは、日本の財政法では公共投資は一応公債発行の可能性が制度として認められておりますから比較的楽にやれる。その枠を超えて公債を発行しておられますけれども、今の制度の状況の中ではやはり公共投資に依存せざるを得ない。その長期的な効率とか、今お話がありましたような当面の経済効果ということを一々考えて選択するということは不可能な状態になっている。
私は、堤防の決壊のための応急措置をなさったという範囲のことであると思います。その応急措置の結果として、財政赤字はさらに拡大したわけです。公債の残高はさらにふえたわけです。将来にまた重い後遺症を残すことになったわけです。そのことを考えないわけにいかないと思います。
九〇年代の不況の重要な特徴の一つは、消費が冷え込んだということなんです。過去の景気循環の過程での不況期の重要な特徴の一つは、消費が堅調で下支えを、落ち込みを防ぐという効果を持っていて、その土台の上に、景気の動力は設備投資なんですけれども、下支えを消費がしていたわけです。その消費が冷え込みました。これが景気の回復を非常に悪くいたしました。その消費の冷え込みというのは、やはり国民生活の不安感が非常に大きいという、そういうことをあらわしていると思うんです。そこにやはり七〇年代以来の日本の社会保障への取り組みとか、そういうものの立ちおくれがあります。
ですから、そのことをお考えいただきたいということなんです。九〇年代の政策は、その極めて厳しい状況の中で、後に物すごい後遺症を残すような形で過去の後遺症の後始末に追われたということを考えますならば、こういう危機のときこそ超長期の問題との取り組みを始めていただく必要があるのではないかというのが私の意見でございます。
どうもありがとうございました。