正村公宏の発言 (予算委員会公聴会)

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○公述人(正村公宏君) 貯蓄が非常に大きかったというのは過去なんですね。これから非常に高い貯蓄がずっと続くというふうに私は考えているわけではありません。
 急速に高齢化していくわけであります。それから所得の伸びが落ちてまいります。いろいろな事情がありまして、高い貯蓄率がそのまま長く維持されるかどうかはかなり疑わしいと思っております。その点はまず留保をしておかないといけないと思います。さま変わりしてうんと減ってしまうということはないと思います、高齢者がまた貯蓄をしたりしている社会でありますから。ですけれども、今までのような形でそのまま高貯蓄が続くかどうかというのは疑わしい、世代もかわってまいりますから。
 ただしかし、御指摘のように、貯蓄を国内で有効に使うということが必要であるということはおっしゃるとおりであります。しかし、主要な部分は民間なんですね。民間の設備投資の水準が六〇年代、七〇年代、八〇年代と落ちてきているわけです。九〇年代は民間の設備投資が非常に落ち込んだということが景気を悪くしたわけです。景気を悪くしたということは、九〇年代に日本経済にとって可能であった水準の成長率よりは低く現実の経済成長率を下げてしまったと。
 私は、九〇年代は恐らくポテンシャルで三%台の成長は可能であるというふうに考えておりました、九〇年代の初期の段階で。三%台を実現いたしたのは九六年だけだったわけであります。しかし、九六年の三%台の実質経済成長率が実現したのは、それは民間設備投資なんですね。民間設備投資がきれいに盛り上がってまいりまして、将来に対する予想、それから今お話がありました情報技術革命等の影響もあって、この状態がある程度続くことができれば安定成長の軌道に日本経済を乗せることは可能であったと思いますけれども、それはならなかった。ならなかった理由はいろいろございます、金融不安もございますし、政府の財政もこの時期に引いてしまったわけでありますから。
 ですから、私は財政で積極的に国民の貯蓄を使うという考え方ではなくて、これをやろうと思ったら公債依存をずっと続けなければならないわけですから、そうではなくて、民間の企業がこの大変化の時代に、御指摘のように非常に大きな変化の時代です。非常に大きな変化の時代は、非常に大きな潜在的可能性があると同時に、やはり非常に不安定化する時代でもあるわけですから、この状況の中で、財政政策は国民生活の基盤を支えるということでアンカーになるという役割を追求することが必要ではないかというふうに考えております。
 それから、もう一つ申し上げたいのは、高貯蓄ということの中には可処分所得が大きいということがあるわけですね。可処分所得が非常に大きいということは、つまり租税負担率が相対的にヨーロッパのいわゆる福祉国家に比べますならば一段と低いわけであります。
 例えば、スウェーデンの人たちの生活の構造を見ますと、租税・社会保険料の負担率は言うまでもなくかなり高いわけです。しかし、貯蓄率は低いわけです。しかし、考えてみるならば、そんなに高い貯蓄をしなくてもいい暮らしを、安心感、安心の給付ですから、社会保障は所得の再分配だと考える人がありますけれども、これは間違いなんです。社会保障は所得の再分配の制度ではないんです。そうではなくて、すべての国民に安心を給付する制度なんですね。
 ですから、この安心を給付するためにこれだけのコストを負担してくださいよということで租税・社会保険料の負担率を高めれば、これは消費水準を大幅に下げないようにするためには当然貯蓄を削らざるを得ません。しかし、貯蓄を削っても済む、削ることができる状態になると思いますね。
 それから、もう一つ貯蓄に影響しているのは、恐らく持ち家主義、日本の住宅政策が持ち家主義でやってきたと。ですから、頭金を用意し、ローンを返しということで、これは貯蓄になりますから、その貯蓄の率、家計貯蓄率は高くならざるを得ないんですね。
 持ち家主義というのはやむを得ない部分はありますけれども、私はかねてから批判的でありまして、持ち家主義でやってきたということは、日本のいわば国民の政治的無関心を高めたり、一種の保守的な空気、保守党とか何とかという意味じゃなくて、保守的な空気を育てる上で自作農主義と同じように大きな効果があったと思いますが、経済政策としては私は必ずしも妥当でなかったと思っております。
 もう一つは、過剰な進学ですね。こんなに、高等学校に九割の子が行き、四割の子は大学に行っていますけれども、そのうちの何%がまじめに勉強していますか。親の贈与と社会の贈与、補助金つぎ込まれていますからね。親の贈与と社会の贈与に依存してモラトリアム人間をたくさんつくるという、そういうことになってしまって、そのために親は猛烈に貯金しているわけです。こういうことをやめなきゃ、全体の構造を変えないと私はまずいんだろうというふうに思っております。

発言情報

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発言者: 正村公宏

speaker_id: 10584

日付: 2000-03-14

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会