室生昇の発言 (厚生委員会)

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○室生参考人 全国保険医団体連合会副会長の室生昇でございます。名古屋市内で三百十三床の一般病床病院と六十床の療養型病床病院、診療所を開設しております。
 本日は、健康保険法等の一部改正案と医療法改正案について、意見を述べさせていただきます。
 さて、私ども全国保険医団体連合会といたしましては、両法案に対して反対の立場をとっております。特に患者負担の問題につきましては、高齢者だけでなく、健康保険本人も含めて、これ以上患者負担をふやすことには反対でございます。
 その理由をすべてお話しする時間がございませんので、採決前にこのことだけは御検討いただきたいという問題に絞ってお話しさせていただきます。
 配付させていただいた資料をごらんいただきたいと思います。まず、今回の法改正によって、資料一の右側の欄に示したように、一・三から一・五倍に高齢者の医療費負担がふえることは間違いございません。高齢者は一律に経済的弱者ではないのでこの程度の負担にはたえられるという議論もありますが、一律に経済的に豊かなわけでもございません。
 資料二は、ことしの厚生白書からとった図でございます。高齢者の方の所得がどの程度あるかを見たものでございますが、ごらんのように、一一・八%は所得なし、八十万円未満の所得の方が二七・一%、約四割が年間所得八十万円未満及び収入なしということでございます。また、高齢者世帯の年間所得は、その四割が二百万円未満でございます。
 今回の改正案は、こうした低所得の高齢者に配慮していると言えるでしょうか。これまでの審議では、入院について、市町村民税非課税世帯の高齢者は、負担上限を現行の三万五千四百円から二万四千六百円に引き下げたことが手厚い配慮とされているようでございますが、これまでは一日千二百円で済んでいます。手術などで短期間の入院をした場合は、負担は二倍、三倍となります。詳しくは資料一の白内障の例をごらんください。
 また、外来については、低所得層の救済措置は全くありません。これらの措置も、実効性のある対策を御検討いただきたいと思います。
 もう一つは、今回の制度改定の理由として、老人医療費が高騰して、政管健保や組合健保の財政を圧迫しているということが挙げられております。改革は待ったなしで、とりあえずは高齢者にも応分の負担をということでございますが、本当に今すぐでなければならないのでしょうか。
 介護保険の実施によって、一定額の老人医療費がそちらに移行しております。本来、本年度予算では、老人医療費は前年度より一兆三千億円少ない十兆一千億円と見込まれています。一方、介護保険の方は、十月から六十五歳以上の保険料徴収が始まって、年間で七千億円以上の保険料負担が新たに高齢者に課せられております。これらの結果、医療と介護を含めて財政負担がどうなるのか、政管健保や組合健保の負担がどうなるのか、介護保険実施による財政的影響をしっかり見定めてから高齢者の自己負担問題を検討しても遅くはないと思います。
 次に、病院経営者として、医療法改正について意見を申し述べます。
 まず、病床区分の見直しと一般病床の看護配置基準を四対一から三対一に引き上げる問題でございます。これについては、二つの問題があります。
 第一は、現在、三対一未満の病院が約一千病院ございます。その理由について実態を把握し、国会での審議が必要だと思います。特に、五年間の特例措置の対象外となる三十二病院については、法改正によって地域における入院医療の確保に支障が起きないのか、十分な検討が必要でございます。そうした実情把握と検討を抜きにして制度改定がなされるとするなら、病床削減のためだけの改定と言わざるを得ません。
 第二は、看護体制の改善をどう進めるかという問題でございます。日本の看護婦の配置数が先進国の中でも最低ランクにあることは、これまでも各方面から指摘されてきました。現在、社会問題ともなっている医療事故の背景に、看護婦の過密労働や人手不足があることは御承知のとおりでございます。まともな夜勤体制を含めて、看護の質を確保するためには、一・五対一以上の看護婦配置が必要ですが、診療報酬上での評価は二対一まででございます。それ以上の配置をとった場合は、医療機関の持ち出しとなっております。
 さらに、ことし四月の診療報酬改定では、平均在院日数が二十九日以上の病棟については、これまであった二対一、二・五対一の診療報酬が廃止され、三対一以下となりました。
 さらに、こうした一般病床に九十日を超えて高齢者が入院していると、入院費が削減されるだけでなく、一部の例外を除いて、どんな治療をしても一定額しか支払われないという定額制が押しつけられました。
 療養病床の方はどうかといいますと、今回の改正案では最低基準が六対一となっていますが、診療報酬では最高ランクが五対一です。これ以上の看護婦配置は収入保障がありません。しかし、長期入院患者であっても、看護の必要度の高い場合は当然あるわけでありまして、現場では大きな矛盾を抱えております。看護婦の増員は、患者にとっても、医療従事者にとっても切実な願いですが、今回の医療法改正によって、以上指摘しました問題が改善されるとは思われません。
 最後に、今回の医療法改正の中に、従来の地域医療計画における必要病床の名称を基準病床に改め、その必要数の算定基準を変えることが含まれております。算定方式については厚生省令で定めるとされておりますが、その内容については厚生委員会でもほとんど議論されていないように思います。
 従来、全国を五つのブロックに分けて基準を決めていたものを全国一律の基準にすることによって、全国平均より入院率の高い地域の病床規制を強める、さらに、すべての地域で一〇%程度の病床を削減するという内容でございます。
 御承知のように、地域によっては共働きが多く、その家族の在宅療養が困難なところもございますし、気候や交通の便の違いがあって、同じ年齢層でも入院率に違いがあるのは当然のことであります。それを、そうした地域差は認めないというのはいかがなものでございましょうか。
 どちらにいたしましても、具体的に算定方式がどう変わるのか、その内容について、国会での審議抜きで厚生省にお任せということでは困ります。しっかりとした審議と、どのようになるのか国民の前に明らかにすることを求めたいと思います。
 今回提出されている健康保険法、医療法改正法案は、これらと表裏一体となっている診療報酬改定とによって、高齢者や病人の負担増、入院にしろ、在宅医療にしろ、重症者の治療に手間取れば病院や医院の持ち出しになる。規制が強化されて地域から病床が消えるなど、抜本改革の名のもとに、病める人をいやす場への愛とぬくもりの政策がますますなくなっていくように思われます。一方で、経営不振の不良銀行やデパートに多額の税金が投入されています。
 人権を尊重し、人の命を大切にする施策を希望して、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 室生昇

speaker_id: 27576

日付: 2000-10-31

院: 衆議院

会議名: 厚生委員会