2000-10-25
衆議院
志田なや子
政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会
志田なや子の発言 (政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会)
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○志田参考人 ただいま御紹介いただきました弁護士の志田でございます。
私は、今議論になっております参議院への非拘束名簿式導入法案について意見を述べさせていただきます。
私は、この法案の第一の問題点は、果たしてこの制度が名簿式比例代表制と名乗れるようなものなのかどうかということであります。
与党三党は、非拘束名簿式比例代表制と名づけて、候補者個人に投票したものを、その得票のすべてを候補者所属政党の得票とみなして、政党得票に基づいて議席を配分する制度を導入しております。
そもそも名簿式比例代表制といいますのは、各政党にその得票率に応じて議席を配分することによって民意を反映させようという選挙制度であります。しかし、非拘束名簿式比例代表制を採用している国でも、立候補しているすべての政党と候補者の名簿が一覧にされている投票用紙を使って、有権者は、政党を選んだ上で、候補者の名簿順位を入れかえたり、候補者名を記入するということで名簿順位を変えるということを可能にしているわけであります。各政党にその得票率に応じて議席を配分するという名簿式比例代表制の趣旨を生かした制度となっております。
しかも、参議院の比例区が全国単位であるのに対して、この非拘束名簿式比例代表制をとる国の比例区は、日本でいうと都道府県単位程度、実際は一千万の国を十幾つの選挙区に分けるというようなことでありますから、東京でいうと区、市ぐらいの単位になるのでありましょうか、そういう狭い単位で非拘束名簿式比例代表制をしいているわけです。ですから、有権者は候補者の人柄や人格、識見、実績を知って、それに基づいて政党が提出した名簿順位を入れかえるということができるわけでありまして、与党三党の法案とは全く制度の目的も内容も異なるものであります。与党三党は非拘束名簿式というふうに名前をつけておりますけれども、この法案は、本来の非拘束名簿式比例代表制の姿とはほど遠いものであると思います。
与党三党の案では、有権者が投票するときには個人名で投票させて個人であることを強調して、票を数えるときには政党への投票として得票数を計算する、こういう制度なのでありまして、こういう制度を導入することによって、とても奇妙なことが起こるわけであります。大量得票した候補者個人の得票によって、当の候補者が当選するだけではなくて、名簿に登載してある同一政党の別の候補者がほかの政党の候補者よりも得票数が少なくとも当選するという逆転現象が生じます。また、当選した候補者の関係者が買収などの選挙犯罪を犯して、連座制により議員の職を失っても、政党の得票はそのままで、同一政党の別の名簿登載者が繰り上げ当選するという異常な事態になるわけであります。
与党三党の主張する非拘束名簿式は、民意を大きくゆがめ、名簿式比例代表制の制度趣旨を没却させるものであります。
第二に、私が心配していることは、女性が多数進出してきた参議院の拘束名簿式比例代表制の長所が失われるのではないかということであります。
政党が候補者の名簿登載順位を決めるのは、政党として適切な人材を候補者名簿に登載することによって、議員にふさわしい人材を得ようとする趣旨だと考えられます。北欧諸国では、名簿式比例代表制のもとで、女性議員の比率を高め、三割台、四割台にまで高めております。参議院の比例区でも、拘束名簿式比例代表制のもとで、各政党が名簿の高位に女性を登載することによって、女性議員の比率を高めてまいりました。一九九八年の参議院選挙では、比例代表選出五十人のうち十人が女性であり、その比率は二〇%に上っております。
参議院に非拘束名簿式が導入されますと、自民党などが各業界、官庁、支持団体ごとに候補者を立候補させて得票を競わせるということになり、比例区の女性候補がはじき出されるという事態になるのではないかと心配しております。
第三に、拘束名簿式比例代表に金がかかるという主張がありますが、この主張には何の根拠もありません。
もともと、選挙制度としては、拘束名簿式比例代表制というのは、最も買収や利益誘導が起こりにくい制度であり、お金のかからない選挙制度であるはずです。ところが、自民党で起きたもろもろの事件をきっかけにこういうことを言い出したわけですけれども、候補者名簿への登載や順位の決定をめぐってお金がかかると言いますけれども、名簿登載や順位決定がお金に左右されるということ自体が異常なことです。それはまさに政党幹部の見識の問題であり、さらに言えば、政党の腐敗した体質の問題であって、拘束名簿式比例代表制に原因を求めるのは本末転倒であると言わなければなりません。
そもそも、参議院で全国区を廃止して拘束名簿式比例代表制を導入しましたのは、お金がかかるという弊害が生じたからと言われております。与党三党の主張する非拘束名簿式は、お金がかかるという弊害はより一層ひどくなり、候補者個人に対する投票を政党への得票に読みかえて民意の反映をゆがめるという意味では、旧全国区よりももっと悪い制度だというふうに私は考えます。
第四に、国民の選挙権にかかわる重要法案をこんなに拙速に成立させるべきではないということを強調したいと思います。
この与党三党の法案は、個人名で投票させておきながら、投票後は神出鬼没に政党が登場してくるという大変難しい奇妙な制度であります。十分に国会で審議をして、国民の中で議論を闘わせた上で成立させるべきであります。きょうも、参考人として呼ばれまして、大変に急いでいるということがわかったんですけれども、こんなに急ぐのは、非拘束名簿式の内容が国民に知られないうちに法案を成立させてしまおうというふうに考えているのかなというふうに思わざるを得ません。
現在、参議院の選挙制度で憲法上問題なのは、最小の鳥取県選挙区と最大の東京都選挙区との間に、議員一人当たりの人口格差がほぼ五倍にもなっているということであります。最高裁判決でも合憲とはされておりますけれども、強力な反対意見があり、違憲であると主張しております。私は、現在の参議院の選挙制度で改めるべきは、抜本的に選挙区の議員定数の格差を是正することであると思います。
どこから見ても致命的な欠陥のある非拘束名簿式導入法案は、廃案にするしかありません。
憲法は、国会を国権の最高機関と定めております。今、国会の権威は国民の間では地に落ちております。衆議院において十分な審議を進めることこそが、国会の国権の最高機関としての権威を回復する唯一の道です。このことを与野党の議員の皆様にお願いをいたしまして、私の意見を終わらせていただきます。(拍手)