金子郁容の発言 (文教委員会)
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○金子参考人 皆さん、おはようございます。金子でございます。
小学校ですと、みんなわあっと、おはようございますと言ってくれるのですが……。これは冗談でございます。
第二分科会関連の内容についてお話をしたいと思いますが、内容については中間報告によりよく書いてありますので、きょうは少し違った観点からお話をさせていただきたいと思います。
皆様、スペリングビーというのを御存じでしょうか。スペリングビーというのはアメリカでもって毎年行うコンテストで、江崎先生なんか御存じかもしれませんが、全米の子供たちが英語の単語のスペリングを競う、その正確さを競う全国大会でございます。
毎年、各学校、地域から勝ち上がった子供たちがワシントンで全国大会を行います。ことしは七十三回目で、五月の三十一日と六月一日にワシントンで行われ、十二歳のジョージ・サンピー君という子供が優勝いたしました。ちなみに優勝を決めた単語はデイマーシュ、demarche、多分江崎さんも御存じないかもしれません、私は全然聞いたことがないですが、手段とか処置という言葉で、フランス語の輸入らしいのです。
この話を今持ち出したのは、ジョージ・サンピー君は、実は日本で言う不登校生、ホームスクーラーでございます。インターネットなどを利用して、うちでお母さんと兄弟たちと一緒に勉強しているという子供でございます。実は、このジョージ・サンピー君と優勝を争った準優勝の男の子十二歳もホームスクーラー、もう一人ベストエイトに入った女の子十四歳もホームスクーラー、ベストエイトになった三人がホームスクーラーでございました。実際、この決勝に進出した二百四十八名中ホームスクーラーが二十七名いるというのが、ことしの結果でございます。
ホームスクーリングは七〇年代の後半からアメリカで始まりまして、ワシントン州で初めて認可されて以来、現在では全州で認可を受けております。百数十校、このホームスクーリングをサポートする機関があり、ホームページなどによるものが多いわけですが、現在アメリカの就学人口の五%に当たる二百万人程度がホームスクーリングで勉強しているというふうに言われております。
ちなみに、アメリカのチャータースクールに行く児童生徒が大体二%でございますから、それよりも数倍ある。アメリカの私立学校が学生と生徒の数で一一%でございますから、大体その半分程度のインパクトのあるものでございます。ちなみに、日本の小学校、中学校の私立の割合は二・六%しかございませんから、その二倍ぐらいがアメリカでホームスクーリングをやっているということになっております。
サット、SAT、皆さん御存じかもしれません、ちょっと違いますが、アメリカのセンターテストのようなもので、高校生が受けて、それによってアメリカの大学への進学が決まるという非常に重要な全国テストでございます。そのサットの点数でいきますと、ホームスクーラーが平均千八十三点、全受験生の平均が千十六点、ホームスクーラーが七%ぐらいアベレージでいいということになっております。つまり、ホームスクーラーは落ちこぼれではないということです。いろいろな事情で、うちでもって勉強することを自分で選んだ子供たちでございます。ちょっと大げさに言いますと、いい点をとるなら学校に行くな。これは冗談でございますけれども。
もちろん、日本の場合にはこういうことは今認められておりません。大学においては、単位の取得などについては道が今開かれようとしております。もちろん、教育の一番大事なことは対面性、社会性でございますから、私はすべてをインターネットでやればいいということを申し上げているのではございません。しかし、一定の知識、技能を得るということに関しては、アメリカで五%の子供がやっているように、ホームスクーリングをやっても十分にできるわけです。アメリカの例でいくと、点数ということからいえば、十分それでとれるわけでございます。
となると、学校とは何か、義務教育とは何かということが問われる、そういう時代になったのではないかというふうに思う、その一つの例としてお話をいたしました。
今世界じゅうのいろいろな国で、教育こそが国の繁栄を支える最大の要素だという考え方が広まっております。ネットワーク社会、情報社会では、軍事力とか経済力というよりは、むしろ教育の力だというふうに言われております。
イギリスのブレアは、一に教育、二に教育、三に教育、四、五はなくて、六に教育というふうに言っております。アメリカでは、九〇年代からチャータースクールというイノベーションが起こって、どちらがアメリカの大統領になるかまだ決まっておりませんが、両方とも演説のときに、チャータースクールを二倍ないし三倍にしようということを提案しております。アメリカ、イギリスだけではなくて、韓国、シンガポールなども、教育を熱心にやるような制度改革をしております。アメリカでいうと、カリフォルニアのデービス知事は、カリフォルニアの州予算の、実に四五%を教育に投入しております。
このようなときに日本はどうかというふうに見ますと、全くやっていないわけじゃないが、しかし何か歯がゆい思いをするのは私だけではないのではないかと思います。
子供の状態が大変おかしいというのは、前の二人の参考人も言っておりますが、いじめの発生件数が三万件、不登校が十三万件、校内暴力が三万件というような数字。学校の学級崩壊、これは定義はないのでございますが、先ほど森参考人が言ったように、一〇%から二〇%ということでございます。先生たちも悩んでおります。子供が理解できない、担任をやめたいという人がそれぞれ、六〇%、三七%もいるという日教組の調査もございます。
村上龍という小説家の「希望の国のエクソダス」というベストセラーでは、小中の子供たち八十万人が一斉に不登校になって、ネットビジネスを立ち上げて日本を救うというストーリーがございまして、大変読まれております。今の不登校十三万件、高校の中退者が十一万人ですから、合わせると、その八十万人の不登校というのは夢物語ではないのではないかなというふうに感じてしまいます。
このような状況にかんがみまして、国民会議第二分科会では、特に時間の制約で小学校、中学校に焦点を合わせたのでございますが、学校をどういうふうにしたらいいのかということに関して討議を重ね、具体的な幾つかの提案をいたしました。
内容については、中間報告に書いてありますので今は繰り返しませんが、ざっと申し上げると、大きく分けて二つのグループ提案をしております。
一つは、現在の全国の公立の小中学校の改善をするためにこのようなことをすることを提案するという形で、幾つかの提案をしております。中間報告で見ますと、十ページと十一ページに第二分科会関係の提案がございますが、そこに二重丸が一、二、三、四、五つございます。そのうちの最初の四つがそれに当たります。最後の五つ目は、全国の学校を改善するのではなく、新しいタイプの公立学校を全国に幾つかつくって突破口をつくろうということでございます。
もちろん、文部省も教育委員会も何もしていないということではなくて、いろいろな施策は講じておりますし、問題解決や改革に取り組んでいる学校はたくさんございますが、しかし、全体として、現在の学校は親や国民一般の期待にこたえているとは到底言えない状況じゃないかと思います。教育のあり方がどうしても画一的になり、事なかれ主義になってしまう。親が知りたい学校の情報が提供されない。学校だけでなく、教員自身にも、入れ籠のように同じ構造があるのではないか。また、教育委員会を初めとした文部省などの学校行政、教育行政にも、同じような体質が入れ籠のようになっているのではないかなというふうに我々は感じております。
もちろん、教育は社会サービスでございます。企業活動ではございません。一緒にはできませんが、しかし、学校教育は実質的に独占的サービスであるがゆえに、教育を受ける側のニーズや情報がうまく反映されていないという嫌いがございます。義務教育を国民の多くはただだというふうに思っているわけでございますが、実際は、小中学校だけで十兆円以上の公費を使い、六十万人の終身雇用者を雇っている巨大産業というか巨大事業、もう少し言えば巨大官僚システムでございます。これがただということはない。それに我々はもっと関心を持ち、不断の改善の努力をしていかなければいけないというふうに思っています。
この五つの丸の提案、内容は申し上げませんが、ざっと申し上げますと、教員というのがやはり学校教育にとって一番大事な要素であろう。個々の教員についても、また学校についても、それぞれがいつでもよくなる努力をし、情報を開示し、成果は上がっているかどうかチェックをし、そして成果が上がっている教員とか学校についてはそれなりのしっかりとした評価を与えていくということが重要ではないか。これは、教育委員会や教育行政組織全体にとっても同じことではないか。それには、もっと組織マネジメントの発想を取り入れることなどをするというような提案をさせていただいております。
ここまでが、提案の二つのうちの一つ、全国の学校の改善をしようということでございます。
ただ、どうもこれだけでは少し不足ではないか、第二分科会ではそう考えておりました。先ほどから申し上げているように、文部省なり教育行政はいろいろとやっているわけでございます。やろうと思えばできる、けれどもなかなかできない。臨教審、中教審以来いろいろな改革案が出て、改革、改革と言っているがなかなかそれが実現しないという閉塞感、ここに問題があるのではないかと思っております。
一つ実例を挙げますと、開かれた学校というのはかなり昔からのキーワードになっておりました。最初に出てきたのは多分一九八七年、十三年前の臨教審のときで、学校は地域に開け、地域の意見も取り入れろと言ってから実に十三年後のことしの一月になって学校評議員制度というものができたことは、皆さん御存じだと思います。しかし、世界の潮流を見ますと、これは内容的にも一歩も二歩も不足しております。
御存じのように、学校評議員というのは、評議員会ではございません。校長が必要に応じてお願いするわけですから、非常に厳しく言えば、いい校長にはアドバイスは要らないわけでして、悪い校長の方にはアドバイスは要るわけですが、悪い校長だとそんなに厳しい意見を言う評議員に頼むことはないという可能性が高いわけでございます。
イギリス、アメリカ、オランダ、フランスなどはしっかりとした評議員会、理事会のようなものが規定されていて、そこにかなりの度合いの権限が委譲されております。欧米だけでなくて、例えば韓国でも、一九九五年に運営委員会というものを発足させ、去年から全校、公立、私立、全部の学校に必置になっております。
そういう意味では、日本の学校評議員制度も、私はこれは第一歩だと思い評価しておりますが、ツーリトル・ツーレートというのでしょうか、十三年かかってやっとできた割には内容がいま一つ、いま二つ不足しているなという感じを受けてしまいます。
このような形で、なかなか改善が進まないということで、第二分科会ではそれではひとつ新しいタイプの公立学校をつくりたい地域はつくれるようにしようというふうに考えたのが、コミュニティースクールの提案でございます。
あと時間が二、三分でございます。コミュニティースクールについて最後に御説明したいと思います。
コミュニティースクールというのは、中間報告では市町村と書いてありましたが、今では都道府県とか市町村の連合体がつくってもいいかなと思っておりますが、自治体がそのニーズに基づいて有志を募ってつくる新しいタイプの公立学校でございます。
その手続は、今詳しく述べませんが、市町村が公募をして、有志が応募してもいいし、それから市民が、例えば条例請求権は五十分の一の署名でもってできます、何かそういう形でもって発議をしてもいいかと思いますが、とにかく何かしらの形で住民の意思を反映させ、有志が、私がやろうという者が、校長ないし運営スタッフを連れてきて学校をつくるということでございます。
もう一つの特徴は、校長に人事権を与えようというふうに考えております。私は私立の小学校の校長でございます。慶應の小学校でございますが、ことしの教員募集は、数名募集するのにホームページを使い公募したところ、二百名に近いさまざまな、二十歳から五十九歳までのいろいろなキャリアの人が集まりました。その中で慎重に、インタビューをしたり即興演奏をしてもらったりして数名を選びましたが、これができないと、校長としては責任を持って自分の考えを教育に反映できないなというふうに私は思っています。
一方で、これは例えば東京都ですが、ことしは三千五十五人の応募から四百五十五名の教員を採用しております。採用方法に文句があるというのではなしに、どの学校のどの教科をだれが教えるかということを考えずに三千人から四百人をとるというのは、私はちょっと想像ができません。もっともっと校長、学校が責任を持って自分でリクルートし、いい教員を集めるということが、いい学校をつくるまず第一歩ではないかなというふうに思います。
もう一つの要素は、コミュニティースクールは、勝手にやるというのではなくて、地域学校協議会というふうに呼んでおりますが、これは先ほど言った韓国でいう学校運営委員会、イギリスの理事会でございますが、そういうものを学校ごとに必置といたしまして、そこで情報開示をし、ちゃんとチェックをする、ある程度の結果責任をそこで学校に負わせるということ。
要するに、平場のチェック機能をいつも携え、ある種の緊張感を持って、校長ないし運営スタッフが自分の考えに基づいて、しかし実際は自治体のニーズに基づいてやろうというのがコミュニティースクールでございます。
時間がありませんのであと一言ですが、どんな学校ができるかというと、例えばITとか英語なんかをどんどんやるという学校があってもいいし、それから統合教育とか、茶髪の子集まれというのでもいいし、いじめに遭うような子供たちを集めるという学校があってもいいかもしれません。大自然の中で全寮制ということがあってもいいかもしれません。それから、フリースクール、フリースペースなどでしっかりしたところを積極的に認可するということがあってもいいかもしれません。
このような形でもって全国で、ニーズがあり、やる気がある自治体はできるようにしよう、とともに、全国の公立学校システムをさまざまな形で改善しようという二つの提案をしたのが第二分科会でございました。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)