今井澄の発言 (国民福祉委員会)

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○今井澄君 いや、私はそこが問題だと思うんですよ。そういう抜本改革のとらえ方をするから一向に先が見えてこないと思うんです。
 私はずっと長い間医療現場におりました。それで一医師もやり、それから病院長として病院の経営のこともやりました。それから、国保の診療報酬審査委員として月に一回は今度は診療報酬を削る側の仕事もやったわけです。そしてその後、国会議員になって八年余りがたつわけで、いろんな立場を見てきましたが、八〇年代からいわゆる医療費抑制策、あるいは医療費適正化策というか、そういうものが始まったんですよね、具体的に。一時は医療費亡国論まで飛び出したわけです。
 だから、私は医療現場の感覚も、それも医者だけじゃなくて看護婦さんとか、いろんな感覚もわかっているつもりですし、また国会議員となれば国家財政の問題、今非常に大変なこんな借金を抱えたその立場も、両方実感したつもりでおります。
 それから、患者さんの立場は余り実は私は経験していないんですが、余り病気をしないんですが、ただ、きのう久々に胃カメラ検査をやりまして今ものどが痛いと。この程度のことはどうということはないんですけれども、家族が患者になって病院にかかったとき、どこどこの院長ですとか医者ですとかと言えば早く診てくれることがありますけれども、私はそういうことをしないでじっと外来で三時間待っていたりしたこともあるので若干はわかりますけれども、患者の立場がわかるかどうか自信がありません。
 しかし、総体的に見ると、八〇年代から、もっと振り返れば老人医療費が無料になった昭和四十八年、一九七三年、そしてオイルショックがあって日本経済が低成長になって、十年後に老人医療費が有料化になってというあたりの時代からもう締めつけというのはあるわけですけれども、特に八〇年代以降、医療費がふえ過ぎて困る、医療にむだがあるから何とかしなきゃならないということでずっと二十年間続いてきた。この中で、医療現場に働く人間としては、何しろじわじわ締めつけられる、真綿で首を絞められるような経験を二十年間してきて、もういいかげんにしてくれとうんざりしているんですよ。そういう中で、医療現場の人々はやる気を失ったり士気阻喪したり、そういう中で医療事故も起こっているという面もあるんです。
 患者さんにしてもそうですよ。ああ、無料化になってよかったと思ったら有料化になって、その後どんどん自己負担がふえるでしょう。後でまた具体的な数字を質問いたしますが、厚生省の数字でもヨーロッパに比べて日本は自己負担の比率が極めて高いという現実まで来ている。この先どれだけ自己負担がふえるかわからないと。今度の改正案もそうでしょう。
 それで、患者さんの不満というのは、最近大分情報公開もされるようになってきましたけれども、それでもまだまだ医療に対する不満は強い。少子化というのに小児救急がもう崩壊状態にあるというふうなことも言われていて不安は強い。医療事故は起こる。一方、お金を預かっている側も、これは国もそうですけれども、健保連にしてもどこにしても非常に不満が強い。みんなが本当にやりきれない気持ちでこの二十年間過ごしてきているんです。
 だからこそ将来のビジョンを示して、現実に改革というのは難しいと思いますよ。大変難しい。だから一歩一歩やるしかない。やはりソフトランディングというのをねらうのが、政治としてもあるいは利害が違ったりするあらゆる立場の人を考えた場合もソフトランディングがいいと思う。だけれども、五年先、十年先にはどうなるのか、あるいは高齢化の人口のピークが来るときにどうなるのか、このビジョンを示すことが実は抜本改革だと私は思っているんです。
 ですから、民主党ではそういう視点から、昨年、抜本改革の中間報告をまとめました。その中でも、やっぱり高齢者の医療制度、老人保健制度をどうするかということは結論が出ないままに四論併記ぐらいに終わりましたけれども、全体のビジョンは出したつもりでおります。
 私どもが考えるのは、四つの課題でやってきたことが何も全部いけないとは言いません。当面の緊急の課題の薬価差をなくすこととか診療報酬、そういうことで分けたこと自身には問題はないんですけれども、やっぱり基本的な戦略的視点を欠いた取り組みだったと思うんです。
 私たちは、戦略的な視点というのはこういうことだと思うんです。一つは、今の医療のあり方、病院や診療所、あるいは患者のかかり方も含めて、あるいは薬の出し方とか情報公開の問題を含めて医療のあり方がどうなのかということを、戦後五十年たって、日本の制度は大変いい制度だと言われるけれども見直すべきではないか。端的に言うと、大病院から中小病院、診療所まである、診療所には有償と無償とあるという、国民にとってわかりにくいですよ。かつて五十年前にそういうふうにやった医療提供体制というものも非常に今の時代に合わなくなってきた。
 しかも、これは松崎委員がこの前本会議でも申し上げましたとおり、この三十年間、世界の各国は病院というものの改革をどんどん進めてきた。その結果は、病院の数は減った、平均在院日数も減った、そのかわり病院での患者さん一人当たりの看護婦さんを初め職員数は非常にふえてきちっとした医療ができるようになってきた。ところが、日本はこの三十年間何にもそれが変わってないんですね、広く浅く。東北大学の濃沼先生に言わせれば、農業ではありませんが、日本は粗放医療をやっている、先進国は粗放医療から集約医療に変わってきていると。こういうことだって見直さないといけないですね。そういう医療提供体制というのはどうあるべきなのか。
 つい最近、ある新聞にいい町医者が欲しいと書いてありました。各国では家庭医制度という妊婦から子供からお年寄りまで一通り診られるそういう制度もそろっているわけです。日本は、医者は専門医として育つわけです。例えば、内科といったって心臓の専門医、それが開業してから呼吸器の病気、風邪も診たりあるいはおなかの病気も診たり、内科、小児科と掲げて子供も診たり、そして老人も診れば整形外科も診たりと。そして、頑張るお医者さんは本当にオールラウンドのいい医者に育っていくけれども、そうでない医者は自分の昔の専門だけにこだわって、大して勉強もせずに誤診をしたりして手おくれにしてしまう医者もいるわけです。そうすると、医者の教育制度だって見直さなきゃならない。
 したがって、医療提供体制がまずどうあるべきか、二十一世紀にはどうあるべきかを見直すべきなんじゃないか。それを見直すと、おのずと診療報酬制度、どういうふうにして医療費を払ったらいいかというのがわかってくると思うんです。これは常識だと思うんですね。
 例えば、私は病院に長年勤めていたからわかりますけれども、病院というのは出来高払というのは似合わないんですよ。病院というところはチーム医療なんです。どうやって患者さんを苦痛なく速やかにコストをかけずに治すか、このチーム医療なんです。これは包括払いがいいわけです。しかも、今病気になってお医者さんにかかる八割の方は定型的な医療を受けているんです。その人によって特別な医療を受けているなんて思ったら実は大間違いです。もちろん、そうとばかりは言えませんが、話の内容は違うし、お薬の内容も多少違うけれども、高血圧だったらこうだとか胃がんの手術だったらこうなんだとか、胃がんの手術なんてもう百年も前から決まっているんですから、やり方は基本的に。こんなのは治して幾らになった方が病院にはふさわしいんです。
 腕のいい医者を雇って非常に効率的にやる病院はもうかるんですよ。腕の悪い医者でもたもたやっている病院は損をするんです。そうすると、自然に病院の中でいい病院、悪い病院、淘汰されてくるんです。家庭医もそうです。家庭医だってその人の健康管理から何から請け負うようになれば一人当たり幾らという基本でいいと思うんです。
 だけれども、もちろん包括だけで済むものじゃありません。人によって違うから出来高も必要でしょう。あるいは専門医というのは、場合によってはまさに専門である特定の患者さんだけ扱うから、その人たちは出来高でいいかもしれない。おのずとわかるんです。これを出来高と包括払いのベストミックスなんて、聞こえはいいですけれども、これは何にも言っていないに等しいんですよ。こんなことじゃ抜本改革できないんですね。
 薬価制度だってそうですよ。薬価差がなくなればいいというんじゃなくて、いいお薬がメーカーの言い値じゃなくて安く買えるようになればいいわけです。
 したがって、四つの課題と言われたけれども、医療提供体制、診療報酬制度、薬価制度というこの一連の医療の中身をどうするかということ。それともう一つは老人保健制度。老人医療制度と言われるように、それをファイナンスする、どうやってお金を集めて支払うかという保険制度、この二つの軸で考えるべきだと。そうじゃないと抜本改革はできない。
 ところが、今、大臣の御認識も、厚生省当局の御認識もお聞きしますと、問題なのは保険制度があと若干の問題が残っているけれども、医療提供体制も診療報酬も薬価制度もほぼ抜本改革についてはめどがついたと。私は、こういう認識では国民も医療の現場で働く人たちも全く救われない、そのことを申し上げておきたいと思います。
 ところで、内容のことをさらに少し議論したいわけなんですが、その前に、抜本改革についてもいろんなことが言われているんですね。衆議院での委員会の御答弁、それから参議院の本会議の御答弁、それから厚生省の文書などをいろいろ見ますと、どうもことし、二〇〇〇年、平成十二年までに抜本改革をやる予定だったと。ところが、私どもは全然できていないというふうに考えるわけですが、先ほどの御答弁だと三つの課題についてはそこそこ今できつつあるという御認識のようです。その違いは置くとして、あと残ったのは老人保健制度だと。これは平成十四年というふうに言われているんですが、これは平成十四年度なのか、平成十四年なのか。恐らく年度だと思いますね。そうすると、二〇〇二年の四月一日からは新しい制度にしますと言っているのか、二〇〇一年の一月に始まるだろう通常国会にその制度改革の法律案を出しますと、どっちなのか、そのことについてちょっとお答えいただきたい。

発言情報

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発言者: 今井澄

speaker_id: 9960

日付: 2000-11-14

院: 参議院

会議名: 国民福祉委員会