対馬忠明の発言 (国民福祉委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(対馬忠明君) 新日鉄健康保険組合理事長代理の対馬でございます。
本日は、現場運営に携わる者としての意見を含めまして、健保連の意見を申し上げる機会を与えていただきましたことに対し、まず最初に厚く御礼を申し上げたいと思います。
健保法の改正案についてでございますけれども、現状を打開して一歩前に踏み出して、さらなる抜本改革にぜひつなげていただきたいという強い思いから、賛成の立場で意見を述べさせていただきます。
改正案の内容について意見を申し上げる前に、私どもの置かれた状況を、御案内とは思いますけれども、より御理解いただくために、まず健保財政がいかに待ったなしの状況に置かれているか、触れさせていただきたいと思います。
私は三年前、九年の健康保険法一部改正、自己負担を一割から二割に改正するなどの内容が含まれていたわけですけれども、この場で意見陳述をする機会がございました。その当時と現在を対比してみますと、財政危機が一段と深刻化し、まさに待ったなしにあることが一目瞭然だろうというふうに思います。
恐縮でございますけれども、資料ナンバー1、決算見込みの概要をごらんいただきたいというふうに思います。
この資料の六ページ目、一番最後のページでございますけれども、経常収支の推移が掲載されております。平成六年七年八年、八年は千九百七十六億円という高額の赤字でございました。九年十年、これは法改正の影響で一時小康状態となったわけですけれども、十一年度は二千三十三億円という巨額の赤字になったわけでございます。さらに足元の平成十二年度、これは予算でございますけれども、マイナス三千三百億円ということでございます。これではとても健康保険組合とは言えません。不健康組合でございます。
この財政悪化の原因は、経済の低迷などによります保険料収入の伸び悩みなどもありますけれども、その主因とも言うべきものは、ふえ続ける老人医療費などを賄うための老健拠出金など、拠出金の大幅な増加であります。
一ページ目でございますけれども、ここの2に老健拠出金について記載がございますけれども、ちょっと小さい字になりますが、そのすぐ下に二千七十八億円という数字がございます。前年度から二千七十八億円増加したと。これがすなわちその上の決算見込み額二千三十三億円の赤字にそっくりそのままなったと言うことができるわけであります。
保険料収入と拠出金の関係で見てみたいと思いますけれども、これは五ページ目になりますが、二段目と三段目に拠出金と、そのうちの老人保健拠出金についての欄がございますけれども、この欄をたどっていって一番右側に平成十一年の見込みがございます。拠出金全体としては四〇・三〇、つまり初めて四割を超えたわけでございます。老人保健拠出金でございますけれども、三二・九二%、初めて三割を超えたわけでございます。
保険料収入の四割を超える金額が私ども組合の手の届かないところで決まり、召し上げられるのでは、責任ある自主的な運営はなし得ません。しかも、これは平均値でございますから、組合によっては五割にも六割にもなるものであります。かつて、江戸時代の農民の過酷さをあらわすものとして、四公六民、五公五民という年貢割合がありましたが、それ以上の五割も六割も拠出させられる、召し上げられるというのでは、苛斂誅求と言うほかはございません。
ここ数年、毎年二けたに上る組合が解散などにより減少している中で、十三年度も引き続き悪化することが見込まれておりまして、予算が組めないという悲鳴を上げている組合も数多くございます。
なお、組合には積立金が多くあり、あたかも黒字であるかのような意見がありますが、それは誤解であります。積立金のうち三カ月分は解散の場合のいわゆる未払いの引当金として積み立てることが義務づけられておりまして、十一年度の決算では約二百の組合がその準備金しかない状況でございまして、とても余裕があるものとは言えません。
こうした後のない状況の中で今回の改正案を迎えたわけですが、賛成の理由を三点に絞って申し述べたいと思います。
一点目は、老人医療費の一割定率負担が、十全な形ではありませんが、織り込まれていることであります。先ほど拠出金などの過大な負担が財政悪化を招いていると申し上げましたが、定率一割負担は、老人医療費、ひいては拠出金の抑制に寄与するものであります。
定率化ということは、どういう診療行為にどのぐらいかかったか、トータルで幾らなのか、自分の窓口負担は一割だからこうだというように、患者にとって診療内容とその費用が明確となり、透明化される、またそのことによってコスト意識の一層の喚起、向上も期待できることになります。若人を定率として、老人のみ定額とする根拠はないはずでございます。国民ひとしく定率負担とすることによって、自助、共助、公助の望ましいあり方、老人と若人との負担の公平性、健康な老人と病弱な老人との公平性などを議論する共通の基盤もできましょう。また、介護保険との関係でも、定率一割負担によって初めて整合がとれることにもなります。健保連として長年にわたって定率負担を強く主張してきたことも、こうしたゆえんからにほかなりません。
複雑でもあり、また一部定額が残っていることなど、問題点を含んでいることは認識しておりますけれども、医療保険制度、とりわけ老人保健制度についての大きな前進であり、抜本改革につながる第一歩として高く評価したいと思います。
二点目は、保険料率上限の見直しが含まれていることであります。
新日鉄健保のケースで、現状がいかに変則的な状況に置かれているか、財政にも重荷になっているか、御説明したいと思います。
私どもの組合は、医療保険の料率が八・九%、千分の八十九でございます。介護保険に必要な料率は〇・九%、千分の九、双方を足し合わせますと九・八%となりまして、九・五%の法定上限を〇・三%上回ることになります。したがいまして、現在、〇・九から〇・三を引いた〇・六%しか徴収できず、不足する〇・三%相当分はやむを得ず納付猶予申請をしてしのいでいる状況であります。
この納付猶予申請分、つまり徴収不足分ですけれども、一月当たり四千五百万円、一月の法改正を前提にしましても、今年度で二億七千万円にも上ります。私どもは、組合の機関決定で〇・九%徴収して納付することを決めているのであります。にもかかわらず、法定上限があるがゆえに、毎月四千五百万円もの不足分がかさんでいきます。組合運営を預かる立場として実に耐えがたいものがございます。
私どものように、本来必要な介護保険料を徴収できず、納付猶予申請をしたり積立金などを取り崩して対応している組合は実に四割にも上ります。この問題は、本来、介護保険導入時の四月に解決が図られるべきものでしたが、七月に対応するとされ、さらに来年の一月からと先延ばしされているものであります。制度の中に組み込まれる上限、下限は本来例外チェックとして機能させるはずのものです。
介護保険創設時に料率上限について議論がなされた経緯は承知していますが、現実に四割もの組合が抵触している上限などというものは、上限の名に値しないのではないでしょうか。まして、その上限は、医療保険財政が厳しいほど、つまり料率が高いほど当該組合を苦しめ、運営に携わる者を呻吟させているのであれば、なおさらのことではないでしょうか。変則的な運営を強いられ、財政にも悪影響を及ぼす保険料率上限をぜひ見直していただきたいと思います。
三点目は、抜本改革をできるだけ速やかに推進したいとの視点でございます。
本来、十二年度は抜本改革を実現し、粛々と実施しているはずの年でありました。遺憾ながら実施は二年先送りとなりました。この改正法案には、老人の一割定率負担など、抜本改革の足がかりとなる内容を一部含んでおりますが、もとより抜本改革とはほど遠いものであります。
少子高齢化、経済成長の低迷など、社会経済環境の構造的かつ急激な変化は、これまでの延長線上ではとても対応できるものではありません。新たな高齢者医療保険制度の創設、定額払いを基本とする合理的な診療報酬体系の構築、合理的な薬価設定と薬剤使用の適正化、患者中心の医療提供体制の確立など、抜本改革の各項目は、そのいずれをとってもすぐに答えが見つかり実行に移せるほど簡単なものではありません。とりわけ、最も重要な高齢者医療保険制度の創設は、関係者間の意見が対立し、方向性すら見えてこないのが現状であります。
このような状況のもとでは、目の前の法改正を初め、抜本改革議論のための基盤づくりとなるもの、環境を整えるもの、これは速やかにすべて行う、そのことによって、後顧の憂いなく、一日も早く全力を挙げて抜本改革の具体的検討に取りかかる必要があるのではないでしょうか。ラストチャンスである十四年度改革まで、残された時間は一年数カ月しかありません。これを逃すことは、健保組合を初めとする医療保険制度の崩壊につながります。健保連としても、関係団体との意見の対立点を強調するのではなく、共通点、接点を見出す努力を重ねていくつもりでございます。
国民生活に最もかかわりの深い社会保障、医療保障については、政治の場においても、例えば超党派的対応ということも含めて、ぜひ早急な改革議論をお願い申し上げる次第でございます。
千八百の全組合がかたずをのんでこの法案の審議を見守り、また成立を切望しております。この法改正にあわせて、十三年度の政府の予算措置等も講じていただきまして、今以上の財政悪化に何としても歯どめをかけ、十四年度の抜本改革の実現につなげてまいりたいということでございます。
日夜にわたる御努力に重ねてのお願いで恐縮ですが、十分審議を尽くされた上での法案の速やかなる可決、成立を心からお願いして、陳述を終わります。
どうもありがとうございました。