花井圭子の発言 (国民福祉委員会)
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○参考人(花井圭子君) おはようございます。日本労働組合総連合会生活福祉局の花井でございます。
健康保険法等の一部を改正する法律案に対する意見を述べたいと思います。
まず、医療・医療保険制度の抜本改革についてです。
健康保険制度は、かつて三K赤字の一つに数えられたように、赤字を生み出す構造的欠陥が指摘されながら、政府は抜本的な制度改革を先送りしてきました。そのため、膨張する医療費を被保険者、患者の負担で埋め合わせるという悪循環を繰り返してきました。この悪循環を断ち切ることは、高齢化の進展と老人医療費の膨張からいよいよ重大な課題となっており、五年前から関係審議会で議論が重ねられてきました。
九七年九月の健康保険法等改正で、被保険者、患者の負担が大幅に引き上げられました。このときの国会でも、医療・医療保険制度の抜本改革を求める意見が全政党から出されました。当時の与党三党、自民、社民、新党さきがけは、法施行に先立つ八月二十九日に、「二十一世紀の国民医療—良質な医療と皆保険制度確保への指針」という改革プログラムを公表し、抜本改革の実施は平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施することを明らかにしました。当時の与党三党は、二〇〇〇年度抜本改革を国民に公約したのです。また、同年秋の介護保険法制定時に、政府は介護保険法施行の二〇〇〇年度に抜本改革を行うことを明言いたしました。さらに、翌九八年の通常国会では、国保法等の一部改正審議で、抜本改革を二〇〇〇年度に行う旨の附則修正が行われました。
以上のように、抜本改革二〇〇〇年度実施は政府の公約であり、国会の意思でもあったはずです。しかし、それ以降、これらの公約すべてがほごにされてきました。そして今回、またもや改革なき負担増を行おうとしています。私たちはこれまで政府に三回も約束を破られたと思っています。抜本改革を先送りして負担増を中心とした今回の改正は、到底容認できるものではありません。大幅な法案修正を求めます。
以上を前提としまして、以下四点について意見を述べさせていただきます。
まず第一は、七十歳以上のお年寄りに薬剤一部負担を廃止し定率一割負担を求める、老人に係る外来の一部負担金の見直しについてです。
現在の老人保健制度は根本的に行き詰まっており、それにかわる新たな制度が必要なことは各方面から指摘されています。しかし、今回の改正案にはそうした積極的な改革内容は全く見当たりません。薬剤一部負担は一九九七年に導入され、薬剤数の減少など、一定の効果があらわれていたにもかかわらず、みずから決めた制度を二年もたたないうちに老人のみ実質的に廃止することは、廃止に至る不透明な経過も含めて全く納得することができません。
そして、今回の改正は、定率一割の導入に加えて、医療機関が二百床未満か二百床以上かで異なる上限額、診療所の定率・定額の選択、院内処方か院外処方かによって同じ医療費でも自己負担額が変わるという大変複雑なものとなっています。お年寄りは何を見て判断すればいいのでしょう。医療機関にとっても煩雑で大変な事務負担となるのではないでしょうか。
今国会の中で政府は、診療所に定額を残すことは複雑な面も否めない、複雑でわかりにくい面もあると答弁しています。さらに、患者単位で上限額を設定、管理できるかどうか、今関係団体と話し合いを進めているという答弁がありました。患者単位で上限額を設定するとはどういうことなのでしょうか。加えて、関係団体とはどこなのか。これらについては、本来、国会の場で審議すべき内容です。政府みずからが複雑でわかりにくいことを認めながらも、患者に混乱を招くような複雑な仕組みを、またもや国民、患者不在の中で導入しようとしています。これは、薬剤一部負担廃止によって不足する医療費を埋め合わせるための単なる財政対策でしかないからです。
こうした小手先の制度いじりではなく、老人保健制度にかわる新たな高齢者医療制度の創設へ全力を挙げることが先決であり、この項の撤回を求めます。
第二は、高額療養費に係る自己負担限度額の見直しについてでございます。
見直しは、標準報酬月額五十六万円以上の上位所得者について限度額を十二万一千八百円に大幅に引き上げるとともに、一般、上位所得者とも、それぞれの限度額を超えた医療費の一%を上乗せするという内容になっています。これは自己負担額を軽減するために導入された高額療養費制度の根幹にかかわる重大な変更です。この制度は、重い病気にかかったときにこそ安心して医療が受けられる安心の給付の制度だったはずです。
ところが、今回政府は、これまでの患者負担が家計に与える影響に加えて、患者が受けた医療サービスの費用も考慮して定めることとしたと説明し、医療を受ける人と受けない人との均衡を図る、コスト意識を喚起するためと答弁しています。まるで医療費は患者自身が決定しているかのようです。心ならずも重病にかかって医療費がかさむ患者にコスト意識を持てということなのでしょうか。
また、高額となった医療、特に終末期医療等については、医療機関においてコスト意識が見られない事例が散見されるためという答弁もありました。治療中の医師や医療機関にコスト意識を持って治療を中断しろとでも言うのでしょうか。仮に、コスト意識のない医療機関によって医療費がかかったとしても、なぜそれが患者に転嫁されなければならないのでしょうか。理解しがたい答弁は、制度導入に必然性や合理性が全くないからとしか思えません。
上位所得者とは年収ベースで九百万円以上程度と言われていますが、この層の多くは住宅ローンや教育費が重く、かつ現下の経済情勢で雇用不安、生活不安にさらされている中高年です。この層に、今度は病気になったときの負担を重くし、さらに生活不安を強めることになりかねません。加えて、上乗せの一%が今後引き上げられるのではないかという不安があります。
改正内容は、保険料は所得に応じて、給付は公平にとする医療保険の基本理念を揺るがすものです。国民皆保険制度を維持するためにも、こうしたことは避けるべきであり、特に一%上乗せは何をおいても撤回するよう強く求めます。
第三に、保険料率の設定に係る上限の見直しについてでございます。
介護保険料は、健康保険料と合算して上限率を超えない範囲で徴収することとなっています。今回の改正で、上限率の適用を健康保険料のみとし介護保険料を別建てにすることは、実質的な保険料引き上げと言わざるを得ません。
介護保険法制定時、政府は、医療費で賄っていた介護に係る費用、主に社会的入院は介護保険に移るので、医療費が減少し健康保険料は下がる、二〇〇〇年度までに抜本改革を行うため、介護保険料と健康保険料を合算しても法定上限率を超えないと説明しました。ところが、社会的入院は当初見込みより減少せず、抜本改革は行われていないため、両保険料を合算すると多くの保険者が法定上限率を超える見通しとなってきました。しかし、この要因は老人医療費の膨張による老健拠出金の増加にあり、見通しの甘さと抜本改革を先送りしてきた政府の責任です。
介護保険法は本年の四月に施行されたばかりです。別建てにするのであれば、抜本改革時か介護保険の見直し時期に検討すべきであって、今回行うべきではありません。当面、現行三割の老人医療費の公費負担を引き上げて、保険者、被保険者の負担増を避けることこそ政府として責任ある態度だと考えます。上限率の別建てはぜひとも撤回していただきたいと思います。
第四は、医療保険制度等の抜本改革に関する事項についてでございます。
改正案には医療保険制度等の抜本改革の時期がどこにも明記されておりません。抜本改革を二〇〇二年度に必ず実行する規定を追加し、かつその実行を明確に約束するよう強く要望します。公約を破り、改革を先送りすることは、国民の医療保険制度への不信をますます高め、そのことが国民皆保険制度の崩壊を招くことになります。今度こそ、ぜひとも政治の決断で抜本改革を二〇〇二年度に実行する強い意思を国民に示すべきだと思います。
私の意見陳述は健康保険法等の一部改正に対するものですが、最後に医療法等の一部改正に触れさせていただきます。
医療提供体制は、医療資源を有効かつ効率的に配分し、良質な医療サービスを国民に提供するという目的から、医療制度の基礎となる重要な課題です。改正案は、審議会の中で後退に後退を重ね、改革とは名ばかりのものになったというのが私たちの認識です。国会の場においてぜひとも修正していただきますよう要望いたします。
第一は、看護基準についてです。今回、四対一から三対一に引き上げられようとしていますが、二対一、最低でも二・五対一とすべきです。
第二は、カルテ開示の法制化です。国民、患者が自分の体のことを知りたいという意識が高まっています。一方、多発する医療事故が国民の医療に対する不安と不信を高めています。患者の知る権利、医療への信頼確保という観点からも、本人申請によるカルテ開示の法制化を図ることは当然です。
第三は、広告規制の緩和です。患者が医師や医療機関を選択するとき、口コミ情報に頼っているのが現状です。虚偽広告、誇大広告などを除き、原則自由にすべきと考えます。
今回提出されている健保法、医療法等の改正法案は労働者の生活に大きな影響を及ぼす内容を含んでおり、これまでの改革論議に責任を持ってかかわってきた連合としましては到底看過することができません。改正法案の大幅修正と、医療・医療保険制度の抜本改革二〇〇二年度実施の決意を示されるよう重ねて要望して、私の意見陳述を終わります。
ありがとうございました。