清水睦の発言 (選挙制度に関する特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(清水睦君) 清水です。
 私は、法案の内容、骨子ということになりますが、それから法案の立法化手続、そのプロセス、扱い方について、二点について意見を述べさせていただきます。
 法案の骨子、第一点は定数の削減の問題であります。それからもう一つは、比例代表制を前提としました拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるという、これが法案の骨子ではないかと思います。
 最初に、定数削減のところについて簡単に意見を申し上げさせていただきます。
 これまで多くの政党は、削減に賛成、前向きの意見を持たれているようです、パーセンテージについては違いはありますけれども。しかし、現状維持を主張する政党とか議員の方もおられるわけです。今回の改正案は、鹿児島県と三重県、この逆転区をなくすという、そういう点は実現するように思われますが、私の意見では反対でございます。
 私は、本来参議院の定員はもっとふやして三百人にすべきであるという意見を持っております。それは、常任委員会がおよそ二十ほどあります。平均しますと一つの常任委員会に十五人の議員は必要であると思われるわけです。参議院の活動にそのくらいは必要なのではないか、余り人数を少なくするというのは飾り物になってしまうおそれがあると思います。少なくとも現状維持ということで踏みとどまるべきではなかろうか、このように思っております。
 それでは、第二点の法案の内容の点での立法化、拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるというその改正論点でございます。
 私は、参議院の比例代表制にはもともと反対でございます。もちろん、今日の国政選挙に政党がかかわるということはこれは避けられないことでありますけれども、衆議院と比較してなるべく政党化、政党のニュアンスを少なくする方がよいというふうに思っております。
 それで、比例代表制は廃止するということで、得票率と議席率をなるべく同じにするということが望ましい。したがって、今では、前に資料に載っているものとちょっと意見が変わっておりますが、三百人の定員を十から十一のブロックに分けて大選挙区でやるのがよいのではないか。そうしますと、政党に所属しない無所属の候補も当選する可能性があると、こういうふうに思います。無所属議員が多くなる、一匹オオカミ的な議員が少なくとも二十人から三十人いるということが参議院の特色を発揮することになるのではないかというふうに思います。
 以上のお断りをした上で、次に、拘束名簿方式から非拘束名簿方式に改正する点についての問題点について意見を述べさせていただきます。
 本改正案の場合は、政党は名簿を作成しますけれども、その名簿に載せられた候補者の順位は定めないということでございます。これはベルギーの下院の選挙制度における場合と異なっております。ベルギーの場合には順位を一応定めております。
 それから第二は、名簿登載者の個人名を自書する。ただし、政党等の名前を書くということも認めておりますが、これは法案の体裁からいきますと、並列的ではなくて個人名を自書するというのが原則となっていると思います。ただし書きで政党名等を書くことも認めるということであります。
 ベルギーの場合においては、政党名を書くということがこれが原則のように思われます。二次的に個人名を書くということが認められる。つまり、有権者が個人名を書いて順位を変えるということが可能であるという、そういうふうに思われます。ルクセンブルクの議会の場合はまさしく並列型でございます。フィンランドの議会の選挙制度を見ますと、個人名だけを書くということになっておりますから、本案の改正点はフィンランド議会の選挙の非拘束名簿方式によく似ているのではないかと思います。
 それから、名簿上の当選順位は得票数の多い順からというふうになっております。個人の得票は政党の得票になるわけでございます。したがって、政党が背後にあって個人を際立たせている、こういう案ではなかろうかと思います。本来、政党が表に立つのがこれが拘束名簿方式であります。それではなぜ個人を際立たせるようなこういう非拘束名簿方式が提案されているかといいますと、その理由とされているものは、政党色が薄まり参議院にふさわしい。有権者は政党より個人への投票を好む、候補者の顔の見える方が有権者にとっては投票の場合に張り合いがある、したがって有権者の選挙への関心が高まるという、そういう意見でございます。三番目が、有権者の選択が広がり、有権者が当選人を決めることになるんだということですが、私はこういうふうな理由については次のように考えるのでございます。
 まず、個人の得票であってもそれは政党の得票になるわけです。個人は政党の枠に入って行動をする。したがって、政党のいわゆる政党色が薄まるということにはならないのではないかということです。そして、有権者は政党よりも個人に投票したがるというそういう点でありますが、それにあやかるといいますか、そういう有権者の動向というふうなものを、悪く言うと利用するというのは、政党のあり方としては本末転倒ではないか。比例代表制というのは本来政党本位のものでありますから、この制度をとる限り、政党と有権者が密着すべきものではなかろうか。個人を際立たせないと政党の得票数がふえないというふうな考え方があるとすれば、それは政党のあり方として疑問に思われるわけでございます。
 それから、個人の得票によって順位を有権者が変更するということは、これは有権者の資質の高いことが条件でありまして、また政党がどんな候補を名簿に載せるかということにもかかわってまいります。
 目下、世間でいろいろ取りざたされているような、スポーツ界の人とかテレビタレントなどが名簿に登場するとすれば、有権者の中にその能力ではなくてムード、情感で票を投ずる、それを政党が自分の政党の票とするという構図になってしまうのではないかと思います。これはやっぱり政党の本来あるべき姿ではないのではないかというふうに思います。
 極言しますと、有権者のそういうムード選挙、そういうものを、政党がそれを利用するというふうなことは政党の本来のあり方ではなかろう、政党は政策を掲げてその支持を訴えるのが筋なのではないか、むしろそうすることこそ一面では政治家が持っている国民の政治意識を高めるという責務にこたえることになるのではないか、政治家はそういうプライドを持つべきではないかと、こういうふうに思うわけでございます。
 以上からしまして、私は、非拘束名簿方式がそのねらいどおりであるとすれば、それは比例代表制を前提とする限り特にそれに異を唱えるものではございませんけれども、日本の状況ではこのような建前どおりのような長所が発揮できるかというと、そうではないのではないかと。
 むしろ、全国区制のときの宮田輝氏のような場合、その他近年スポーツ選手等から名簿に登載される方が出ておりますが、そういう例から見ますと日本では時期尚早ではないか。こういう形にしてしまうと、有権者も政党も、ちょっと言葉は悪いですが、資質が向上しないということになってしまうのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 ですから、拘束名簿方式から非拘束名簿方式に切りかえるということは日本においては時期尚早である。これはいかなる場合においてもすべきではないという考えではございません、時期尚早であると、こういうふうに思うわけでございます。
 次に、最後の法案の立法化手続について、扱い方についてでございます。
 参議院選挙制度改革に関する協議会報告書、平成十二年二月二十五日によりますと、抜本的改革は当面無理だから現行の基本的枠組みを維持して改革すべき余地があるかを検討すべきであると、こういうことでまとまっております。
 もちろん、拘束名簿方式、非拘束名簿方式の長短の指摘はなされておりますが、あの報告書が、その点は当面は動かさないということでありました。ただ、定数是正問題については積極的な発言がありまして、速やかに措置をとるべきであるという、そういうことだったと思います。
 にわかにこういう改正案が浮上したのは、久世公堯金融再生委員長の国務大臣辞任問題にかかわったケースのように思われます。これはマスメディアが共通して指摘している点でございます。
 李下に冠を正さずという言葉がございます。選挙のルールは公正につくられなければなりません。あるルールの改正が一つの立場から非常に不利であるというふうに考える立場があるとすれば、そのルールの改正を主張する立場は反対する立場を説得する、公正であるというならば説得するのに必要な時間というものを考える必要があるのではないか。現在、そういうふうな時間をかけられているというふうには私には判断できないわけであります。
 しかも、拘束名簿方式を非拘束名簿方式に切りかえるということについては、客観的に見て緊急性がございません。緊急性がないにもかかわらず、これを一つの立場からルールの改正を行うということは、言葉はよくない、きついかもしれませんが、フェアではないのではないか、そのように思います。国民の中にも、やはりこれはフェアではないという意見もいろいろあるようでございます。
 したがって、時間をかけてじっくり、この問題は与野党がなるべく一致できるような、そういう方向を見出す努力がなされるべきではなかろうかと思います。
 以上をもちまして、私の意見を終わりたいと思います。失礼いたしました。

発言情報

speech_id: 115014596X00520001012_002

発言者: 清水睦

speaker_id: 31093

日付: 2000-10-12

院: 参議院

会議名: 選挙制度に関する特別委員会