酒井伸一の発言 (環境委員会)
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○酒井参考人 国立環境研究所の循環型社会形成推進・廃棄物研究センターを担当しております酒井でございます。
私自身は、廃棄物問題あるいは物質循環を工学的に研究する立場でございます。その立場から、きょうはPCB処理に関しまして、一点は、循環型社会形成と化学物質コントロールという両方の視点が必要であるという点、それに関連いたしまして、PCB処理が求められる背景、そして処理技術の現状あるいはモニタリングの必要性等といった文脈でお話をさせていただければと思います。
お手元の資料の一ページ目の下の図でかいておりますイメージでございますが、これは私どもかねてより、二兎を追う者は一兎をも得ずという古いことわざ、これを、二兎を追うときのみ救われるということで、昨今進められております循環型社会形成、これは資源・エネルギー問題であり、あるいは廃棄物問題であり、あるいは気候変動問題でありということから、今後の地球系の維持のためにはこの循環型社会形成は不可欠、こういう合意が得られてきたところでございますが、これに右側の、化学物質コントロールの視点をあわせて運用していくことが強く求められているのではないか、こういう主張のための絵としてかいたものでございます。
特に、右側のラインというのは、かつての水銀の問題であれ、あるいは昨今のごみ焼却に伴いますダイオキシン問題であり、あるいは環境ホルモン問題、こういったものを循環型社会の形成とともに同時にコントロールしていかなければ、場合によれば、こういう化学物質をあえて循環、あるいは場合によっては、濃縮をして物を循環させてしまう懸念がある、そういう部分をいかに断つか、そういう必要性を訴えているものでございます。その中に、本日のこのPCBというものも非常に強く関連いたします。
先ほど、森田統括から御紹介がありましたベルギーの鶏肉のPCB汚染問題というのは、これはまさに動物性脂肪を飼料として循環していた中でPCB混入が起こり、そしてその飼料から鶏肉あるいはほかの食肉も汚染をしていったという、ある意味では非常に悲しい事実でございます。こういったことで欧州社会が二年前大きく揺れ動いた、そういう事象でございまして、そういった意味からもPCB処理が求められるということは言えようかと思います。
次の二ページ目の上の方の図では、PCBとポリ塩化ダイオキシン類、いわゆるダイオキシンというのがよく関連づけて話がされます。
毒性評価という意味で、ダイオキシン類は全部で二百十種類の異性体がございますが、その中の十七の異性体、そしてPCBの方は二百九種類の異性体がございまして、そのうちの十二種類の異性体、これを同時に毒性評価しよう、こういうルールがWHOで定められ、日本政府もそういう決定をしてきているわけでございますが、そういうダイオキシン類とPCBの似ている側面があるとともに、この図で示しておりますのは、発生源として見た場合には、ダイオキシン類の方は意図的に生成したものではないということでバツ印を入れてございます。
一方、その下のPCBと書いてある方に関しましては、これは化学反応生成物として意図的に生成をしてきた、そして多様な用途、絶縁体であるとかカーボン紙等にこれは多くを使ってきた、こういう事実がございます。そういった発生源という意味では、これはかなり似て非なるものということが言えるわけであります。そして、日本国内で約五万トン程度まだそういう意味では残存している、そういう状況にあるわけです。
二ページの下の方では、PCB処理が求められる背景ということで、これは三十年前よりその処理の指摘は既になされていた、そういう森田統括のお話がございましたが、九〇年代に入って以降、特にこの処理の要請が強まってきた背景といたしまして、この一番、二番のポイントが挙げられようかと思います。
一つ目は、我々が住んでいる一般の大気の環境、この大気環境をはかりましても、やはりPCBは一定レベルで検出はされます。これはまさにPCBの環境中への移動性によるものでございまして、そういう意味では、わずかながら揮散するといいますか、蒸気圧をもって揮散するということで、移動性を持つ、そういうポイントがございます。
さらに、その移動性が、地球レベルで見ていきますと、極地に住まわれますイヌイット族の方々の女性の母乳中からもこのPCBは検出される。イヌイット御自身はPCBを使っていません。そのあたりは後段の資料の方に少し整理して書いてございますが、右下のページ数で参りますと六ページのところに図を含めてちょっと示してございます。
ケベック極地に住まわれるイヌイット女性の母乳中のダイオキシン類、PCB濃度と、低緯度地域の女性の方々の濃度を比較したものでございます。このグラフの中で、濃度の高い方がケベックのイヌイットの方々の女性の母乳中のPCB濃度でございまして、低緯度地域の方々に比べて約三倍の濃度というふうになっております。
これは九〇年代初めにカナダの学者グループで報告された数字を引用させていただいているわけでございますけれども、こういうことになっている理由といたしましては、PCB自体が地球上を移動する。それは、先ほど申しました、わずかながら大気に移動し、そしてそれが大気循環の中で、あるいは大きな海流循環に乗りまして移動をしている、そういう事実を指し示すものでございます。
それともう一点は、イヌイットの方々の海産物の摂取量がやはり多いということでございます。約三百グラムということで、日本人が平均百グラム程度でございますが、その量に比べて非常に多い。このあたりのことで、みずから使われていないイヌイットの方々の体内濃度の方が高くなっている、こういう事実、これが九〇年代に入ってわかってまいりました。
四番目に書いてあります残留性有機汚染物質の国際条約、恐らく本年の五月にストックホルムで条約が成立する見通しでございますけれども、その中にこのPCBが取り込まれ、そして国際条約に向けて国際社会が動いていることの大きな理由の一つになってございます。
それと、こういう事実と一対ではっきり証明できるものではございませんが、衆議院の環境調査室でおつくりになられていますこの三十七号の資料でも御紹介されておりますけれども、国内の使用、保管中の高圧トランスあるいはコンデンサー約三十八万五千台、このうち何と一万一千台が紛失・不明である、それが環境汚染源となっている可能性は極めて高いと見るのがやはり妥当かと思います。そういう意味で、これと今のイヌイットの方々のPCB汚染というものとが、簡単に一対にこれは証明できるものではございませんけれども、その可能性を否定できるものでもございません。
そういったところで、次の三ページに参りまして、残留性有機汚染物質、POPsと呼ぶ場合もございますが、この条約の成立を目指して国際社会で今議論をされているというところでございます。
この中で十二種類のPOPsが対象になってございますが、この中にPCBが含まれてございます。そして、意図的な生産に対しては製造、使用を禁止し、そして廃棄に至ったものに関しては適切に処理をしようという機運が高まってきてございます。現在のドラフトでは、二〇二八年を目指して廃絶、そういう案が議論されているというふうに伺ってございます。
さて、そういう中で、PCBの処理技術でございますが、三ページの下の表に、廃PCB等ということで、主にPCBを含む油とPCBに汚染された固形物とに分けて、どういった方法がこれまで開発されてきたかということを整理して一覧表にしてございます。
かつては、両者に挙がっております焼却という方法がやや有効であるという認識、これは今も変わらないということが先ほどの森田統括の御見解でございますが、それに加えて、最近いろいろな処理、分解の技術というものが開発をされてきております。そのあたりの整理を含めてここに、水熱酸化分解から還元熱化学分解云々ということで整理をしてございます。
特に、この下の方の容器に関しましては、この分解の技術に関しましては、今、日夜開発が推進されているというふうに理解してございますが、その下の除去、分離、洗浄技術、ここをうまく組み合わせることでもって、固形物に付着したPCB等も、一たん分離、除去をし、そして、廃PCB等と同じ処理技術が適用できる、そういう方向にあることはまず間違いないと見ていいかと思っております。
そういうことで、PCB処理技術に関します現状を整理いたしますれば、廃PCB、特にPCBオイルに対します化学処理あるいは超臨界水酸化、このあたりの技術はほぼ実用レベルに達してきているというふうに見ていいのではないかと理解してございます。
そしてまた、この高温燃焼分解というのは、欧米では確立済みの技術として日夜使用されております。そういう意味では、PCBが新たに廃棄になってまいりますれば、高温燃焼分解で処理を進めているというのが欧州の実情でございます。
また、日本の方でも、排ガスに対するダイオキシン対策の高度技術化というところは、決して燃焼分解だけに適用するというものではございませんで、化学処理の過程でも、ガス対策という意味では、これは的確に使用し得る要素技術ということになってきているのではないかと思います。
こういったことで、技術という意味では昨今非常に前向きな展開を見せておりますので、そういった中で、地球環境の保全の視点からもあるいは適正な循環型社会をつくるという意味からも、PCBとぜひこの段階で決別できるようなシステムができることを願っているものでございます。
その中で、先ほど少し立地時に関します困難性ということの御指摘もございましたが、技術に完全な技術、一〇〇%安全な技術というのはやはりないというふうに認識すべきだと思います。そういった意味では、その技術を使うというシステム、すなわち一定の技術情報、あるいはモニタリングといいますか、その周辺の環境濃度等を含めた情報公開を的確に図りながら、そしてそのデータを見て、そういう意味ではまた見直す勇気も持ち、そして議論の中で的確に処理を進めていくということが最も肝要なことであろうかと認識してございます。
大体時間だと思いますので、これで終わらせていただきます。