浦野紘平の発言 (環境委員会)
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○浦野参考人 横浜国立大学の浦野でございます。以前にもほかの法案でこちらにお招きいただいたことがございますが、四月から所属が若干かわっておりますので、最後の方に所属、連絡先等を書いてございます。
きょうは、四ページの白い紙と、それからピンク色の参考資料、私どもの研究室で事務局をしております研究会が一年前にPCBの処理の必要性を書いた資料を参考にお配りさせていただいております。
本日の私のお話は、四つに分けてお話ししたいと思います。一つ目はPCBの特性、二番目が対策の緊急性、それから、重要な三番目が法案への意見、四番目がその他の意見でございます。これに従ってお話しさせていただきます。
私は物質工学科というところに所属しておりましたので、化学物質の管理というのが重要な仕事であったわけですが、まず、PCBというものがどういうものかというのを、先ほど来お話がございましたけれども、簡単に復習させていただきます。
PCBは、日本が約五%、世界じゅうが百二十万トンぐらい製造したうちの六万トン弱を日本が製造、場合によっては一部輸入もしておりましたが、こういったものを使ってきました。非常に分解しにくい安定な化合物であるということで、極めて多種多様な用途に使われてきましたけれども、これが災いして、環境中でもあるいは体の中でも極めて安定で蓄積しやすい難分解な状態であったということ。また、一部に、これが安定であるにもかかわらず、中途半端な加熱をされて酸素の中に放置されると、ダイオキシンの一種であるポリ塩化ジベンゾフランに酸化されて毒性がむしろ強まるという性格もございます。
これが特に体に蓄積しやすいものですから、魚介類等に数万倍あるいは海洋哺乳類や水鳥に数千万倍に濃縮されている。日本人のダイオキシン摂取量の三分の二は魚介類からと言われておりまして、そのうちのまた三分の二、全体の半分以上がコプラナPCB、すなわち、PCBのうちのダイオキシン類に指定されているものが半分以上を占めているというのが現実でございます。
この有害性については、環境試料、土壌であるとか生物であるとか、あるいは母乳も含めて、合計濃度とダイオキシン換算の毒性等価量との関係が出ておりまして、これは大体一万分の一から五万分の一ぐらいになっております。ですから、一番毒性の強いダイオキシンほど極端に怖がる必要はないんですが、やはりその数万分の一、平均でいうと二万五千分の一ぐらいの毒性があるということになっております。
この関係を、最近のダイオキシンの耐容摂取量、一日、体重一キログラム当たりの許容摂取量のようなものですが、これが四ピコグラム、十兆分の四グラムというふうに決められているわけですけれども、PCBの許容摂取量は現在五マイクログラムということになっておりまして、ダイオキシン換算しますと、この間に五十倍ぐらいの差がある。PCBの許容摂取量の方が改正されていないままであって、それに関連した基準も改正されていないという状況にあるのを、今後きちっと毒性を評価して管理をしていく必要がある。
それから、もう一つ重要なことは、PCBは揮発性が少しございまして、取り扱い中に大気中に出る、あるいは保管中にも大気中に出て、地球上全体を汚染、周辺ももちろんのことながら地球全体を汚染し、それが先ほど御紹介のあった北極域に特にたくさん集まってきて被害を与えるというようなことが言われておるわけです。
こういった特性があるPCBが長い間保管をされてきたわけですけれども、旧厚生省が調査をしたのが、平成四年と十年に調査をされておるわけですけれども、アンケート等で問い合わせをしても七割ぐらいの企業が返ってこないという状況ですので、その後、最近PCB問題が大きく取り上げられてから、大企業を初め米軍であるとか学校を含めて、私のところにもありますとか、こういうところにもありましたというのが次々に見つかっているという状況でございまして、中小事業者あるいは自衛隊なども含めて、本当に日本じゅうでどういうところで使用され保管されているのかというのは必ずしも十分把握されていないという状況にある。
しかも、例えば旧厚生省の調査で不明ないし紛失したと言われているものをダイオキシン換算すると、およそ百四十キログラム相当になります。百キロと言う方もおられるんですが、このぐらい。現在、旧環境庁が発表しているごみ焼却場等から出てくるダイオキシンの量は、年間三キロぐらいでございます。ということは、四十五年相当分がもう既にPCBからダイオキシンが環境中に出てしまっている可能性がある。
あるいは、こういうPCB機器を持っている事業者、建物を解体する場合、PCB処理をすると大変だから、ビルごと全部壊して、ビルの建設廃棄物と一緒にPCB廃棄物も一緒に捨ててしまえばわからないからそうしようというような、露骨に言っている業者も実はあるというのが実態でございます。
こういったものをこれからしっかりと緊急的に対策をとっていかなければいけません。特に保管されているものは、ダイオキシン換算で約二トン相当、二千キロ相当になります。これは、先ほど言いました三キロの七百年分に相当する。要するに、毎年出ているダイオキシン類、ごみ焼却場で大騒ぎしていますが、それの七百年分相当のPCBが保管されているという現状を放置しているわけにいかないということでございます。これはもう前から私どもがしきりに言ってきたことですが、なかなか対策が進まなかったということでございます。
先ほど来御紹介がありましたように、処理技術はかなり進んできておりますし、いろいろな信頼できる技術ができてきております。高温焼却技術も、住民は怖がる部分があるんですけれども、十分信頼できるレベルに来ておりますので、これも活用して、対象物の量や濃度等に合わせて技術を選択する。例えば、高濃度のものは化学処理をして、低濃度の、布であるとか木にくっついたようなもの、紙にくっついたようなものは場合によっては焼却をするといったような使い分け、あるいは残ったものを最後は焼却するとか、いろいろな組み合わせを考えて対応をとるのがいいのではないかというふうに思っております。
また、処理後の基準、これは通称卒業基準というそうですが、これは、日本は世界的に大変厳しい基準が旧厚生省あるいは環境庁で、現在の環境省で決められておるんですが、実は、処理の基準の中でも、非常に厳し過ぎる部分と少し緩過ぎるのではないかと思われる部分があります。
それは、PCBとして考える場合とダイオキシンとして考える場合が少し整合性がとれていない。あるいは排水基準なりその他の基準、廃棄物の溶出基準等も、ダイオキシンの基準とPCBの基準は全く整合性がとれていないという状況でございますので、この辺についてはきちっと整理をしていく、処理を進めながらでもいいとは思いますが、何とかしてきちっとしていく必要があるというふうに思っております。
そういうことを進める上でも、この法律が提案されたことは大変意義深い、何年間も私どもで言ってきたことがやっと実現してきたというふうに思っております。
三番目の法案に対する意見でございますが、三十年近く放置してきた行政の責任というのは非常に大きいというふうに私は思っておりますが、これが今これからスタートするということで、過去の責任追及ということではありませんが、やはり国民にそのツケを回し過ぎないようにきちっとしていく必要があるというふうに思います。当然国は、ある程度の責任を持って資金も出してやることが必要だとは思いますが、十分、税金を使っているんだという意識でやっていただきたいというふうに思っております。
法律そのものは全体的にはかなりよくできていると私は思っておりますので、法案には基本的には賛成という立場でございますが、できれば幾つかの注意点を附帯決議等でつけていただければありがたいというふうに思っております。
特に、最初の段階では、目的のところに、「国民の健康の保護及び生活環境の保全」と書いてございまして、これはよくあるフレーズでございますが、実はPCBの場合、先ほど来御紹介がありましたように、世界じゅうを汚染しておりまして、特に海洋哺乳類等に大変深刻な影響を与えております。こういった野生生物、生物多様性の保護という視点がこの法律に全くないというのは、今の時代に少しおかしいのではないかということを私は感じております。
それからもう一点、資金の出捐について、基金出捐ですが、拡大生産者責任というのがOECDで議論されておりますが、PCBを製造した者の負担を、これは国が協力を求めることになっておるわけですけれども、どのぐらいの協力を得られるのか、これは相当国民負担に転嫁されるおそれがあるので、それなりの相当額をきちっと要求すべきである、負担させるべきである。
それから、PCBを使用した製品を製造した者というのがございまして、私がこの委員会の前にいただいた資料では、重電メーカー、いわゆる発電所とか変電所を持っている、あるいはその機器をつくっているところというようなのが例に挙がって、例なのかどうか、それだけが書いてございますが、実はPCBを使用した製品をつくった者はたくさんおるわけで、この範囲も極力広げて、製造者責任の範囲を明確にして広げて、国民負担を減らしていくべきだというふうに私は思っております。
それから、先ほどのお二人の方々もおっしゃっておりましたけれども、この問題をスムーズに解決するためには、やはり周辺住民あるいはNGOの理解を得ることが極めて重要でございます。
法案によりますと、第五条に、国民、事業者等の理解を深めるよう努めなければならないという非常にあいまいな書き方がしてございますが、私は、この問題については、住民参加あるいはNGO参加という言葉が必要なのではないか。その参加の中でリスクコミュニケーションをしてやっていく。
これは、オーストラリアなどでもそういう事例がございますし、特に、安全の確認の仕方を住民の意見を入れてやっていく。しかも、オーストラリアの場合は測定値を翌日公開しているんですね。そういう形でやることで非常に信頼度が得られるようになっている。そういったことも含めて考える必要がありますし、その中で、自治体の役割というのをもう少し明確にしてよろしいし、その自治体の職員の研修等も非常に重要だというふうに思っております。
また、自治体は、中小事業所の所有分あるいは分散型用途、例えば、一部は家庭用品あるいは事務機器の古いものの中にまだ入っておりますので、そういったものも把握するとなると自治体の役割が非常に重要でございますので、そういったことも自治体の役割としてきちっと明記しておく必要があるのではないかというふうに思います。
それから、もう一点重要なことは、技術のことですけれども、技術はかなり信頼できるものができているということを申し上げましたが、それは処理能力のことでございます。しかし、その能力というのはPCBの分解率で表示されておりますので、PCBの分解途中のもの、あるいはほかのものに変換されたものも、トータル、わからないものも出てくるおそれがあるというのが住民の不安でございます。
その住民不安にこたえるには二通りございまして、一つは、仲間の塩素化合物の合計をはかって管理する。そういう有機の塩素化合物というのが何もありませんよというのを管理する。それは、一つは、今ここに書いてあるSNVOXという、VOClでもいいんですけれども、塩素はClというんですが、これで管理をするということが一つ。もう一つは、毒性で、バイオアッセーで直接管理をするというのが、これは化学的というよりは、住民理解という意味でも、私はそういった新しい指標も含めて副生成物管理をする必要があるというふうに思っております。
それからもう一つは、処理能力だけではなくて、先ほど来あった、事故や災害等のときに安全な装置であるのかどうか。ところが、今までの処理技術の評価は、ほとんどが処理能力、あるいはどこまできれいにできるかということで評価をされているんですが、火災とか震災があったときに、あるいは腐食とかその他で漏れたりこぼれたときに危険度がどのぐらいなのかというあたりの評価が、実は必ずしも十分ではないのではないかというふうに私は思っております。
といいますのは、大変心配しておりますのは、もし全国何カ所かでやったときに、一カ所でも事故を起こしたらば、原子力発電所のようにすべてがとめられて、すべてが不信感に陥ってしまって、すべてPCB処理がとまってしまうおそれがある。ですから、どこも事故を起こしてはならないという前提で処理をするとなると、実は、今ある化学処理の中に若干不安なものが幾つかあります。その点について、やはりもうちょっと何かきちっとすべきであるというふうに思っております。
それから処理の順序等も、地域の特性に合わせたり、あるいは対象物の多さ、PCBの含有量だけではなくて、今現在ほっておくと廃棄されてしまうようなものを優先する必要もあるのではないかというふうに思っております。
その他、時間も参りましたが、最後の方ですが、廃棄物として埋められたもの、あるいは汚染した土壌についての問題、それから事業団の経費が、特殊法人で公的資金で行われるとなると、競争がないので、つい多少、むだ遣いと言うと失礼かもしれませんが、非常に高額になってしまうおそれがあるということで、環境省や会計検査院の検査だけではなくて、第三者からのチェックを受けるようなシステムが必要ではないかというようなことも考えております。
それから、その他の意見として、カネミ油症患者さんという大変深刻な、人体実験をしたような事例がございます。これは、本当にしっかりとした調査とか支援が必要ではないか。あるいは、PCBの代替物としてポリフルオロカーボンや六弗化硫黄等が現在温暖化等で非常に問題になって、環境中寿命が数万年というようなものがいまだに使われ、回収義務づけがされていないというふうな状況で、PCBほど毒性はありませんけれども、こういった負荷をきちっと管理していくべきではないかというふうに思っております。
以上が私の公述でございます。どうもありがとうございました。