松浪健四郎の発言 (憲法調査会)
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○松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。
私は、基本的人権について述べさせていただきたいと思います。
一九四八年に制定された世界人権宣言は、次のような文章で始まっています。「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」、こうあるわけであります。そして、日本国憲法は、第十一条で基本的人権の原則規定を設けておりますし、九十七条では、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、」「過去幾多の試錬に堪へ、」云々とあります。
私は、この基本的人権の問題、これは極めて大切な問題である、こういうふうに認識するものでありますけれども、きょう新聞を開いてみますと、このような記事がありました。田中眞紀子外相は、「国会での質疑の際の報道各社のカメラ取材を規制するよう、代理人である弁護士を通じ衆参両院事務総長らに文書で要請した。」これは個人的な一挙一動がねらいで、追っかけ取材は人権侵害に当たる、こういう抗議である、このように思います。そしてまた、きょうの新聞広告に大きく、「野放しだった「凶暴男」を「人権のカベ」で無罪放免するのか」、このように報道されておりました。
このような、毎日のように新聞に人権の問題が報じられておりますし、また、せんだっては、ハンセン病患者、元患者らに対する熊本地裁の判決、これは明らかに人権侵害についてのものであった、こういうふうに認識いたしますし、北海道のあるふろ屋さんでは、外国人お断りというポスターを張って外国人を締め出すというふうなことも大きな問題になったのは、皆さん御案内のとおりであります。
そしてまた、大きなニュースとして報じられたことに、ネパールの王室でのあの問題がありました。あの問題は、報じられるところによりますと、王子のフィアンセがカーストの低い女性であったがために結婚の反対をされてあの事件を生んだ、こういうふうに報じられております。ヒンズー教徒のカーストの問題、これは私たちはどうすることもできませんけれども、今もヒンズー教徒の中に大きく横たわっている問題であるのは事実であります。
そして、一九七八年にアフガニスタンで革命が起こりました。以来、紛争は今も、ずっと二十数年間続いてまいりました。最初はイデオロギー対立のように映りました紛争でありましたけれども、今日の紛争は、やはり民族対立の様相を呈しております。しかし、よく見ますと、その民族も、ヒンズー教徒のようなカーストではありませんけれども、歴然とした差別があります。
このような差別が今もあって、そして不幸にも大きな紛争を生み、国連もどうすることもできない状況にある。このことを大変残念に思いますけれども、世界の人々はこの紛争の問題も何ら手をつけることができないでいる。これだけ基本的人権、世界の人々が理解しているにもかかわらず、どうしようもない。また、他人事である、こういうふうにとらえている一面もあるような気がしてなりません。私たちが幾ら人権運動をやっても、また国連がそのことを唱えても世界に徹底することができない、このことを大変残念に思うものであります。
そして、昨日の夕刊によりますれば、オウム真理教は、団体規制法は違憲であるということで、きのう初めて司法の判断が出されました。そして、団体規制法の限定運用も指摘されたところでありますけれども、これも基本的人権の問題、そして、憲法第二十条の信教の自由、これらの問題をもはらんでおります。私たちは、いろいろな法律の中において、基本的人権の問題をもっと真摯に考えていかなければならないということを毎日のように教えられているわけであります。
そして昨日、文部科学委員会では、学校教育法の一部を改正する法律案など教育三法が通過いたしました。ここで問題になりましたのは、社会奉仕体験活動、自然体験活動、これらは極めて強制的であって、国連の子ども権利条約に違反するし、子供の人権を無視するものであるという意見が一部の議員から提案されました。これが本当に人権無視になるんだろうか、それとも高い教育効果をねらった法改正であるのか、議論が沸騰いたしましたけれども、いずれにいたしましても、私たちは人権というものを無視することができないでいるわけであります。
昨年の暮れに、人権教育・人権啓発を推進する法律が成立いたしました。私もこの法律の提案者でありました。これは、いまだに人権教育、人権啓発が十分ではなくて、全国的に差別が横たわっておる、いろいろな差別がある、身体障害者に対しての差別、またエイズの人々に対する差別、そして部落の出身者に対する差別等いろいろな問題があるがゆえに立法的措置を講じなければならないという視点で、この人権教育・人権啓発を推進する法律が生まれたところであります。
そしてまた、この前は、人権擁護推進審議会は、仮称人権委員会というものをつくるべきだという答申を出されました。これは憲法第十四条と深くかかわるものでありますけれども、これも、差別を受けた人たちをどのような形で救済していかなければならないかという大きな問題を抱え、それに対応しようとする委員会であります。強い調査権を持つ委員会にし、政府から独立したものにしようとする考え方が横たわっております。これも、基本的人権の問題が我が国にあっては十分国民の中に理解されていない、そういう発想のもとで設けられるんだ、私はこのように思います。
そして、部落解放同盟の人たちは、ずっと部落解放基本法の制定を強く望んでおります。この人たちの言い分は、いまだに自分たちは差別をされている、大変つらい思いをしておる、憲法第十一条が生かされていない、第十四条が生かされていないという強い思いであります。もちろん、これらの考え方を補完する意味で、また補遺するためにたくさんの法律がつくられてまいりました。しかし、本当に十分であるのか、このことを我々国民はもっともっと真剣に考えていかなければならない問題だ、こういうふうに思います。
当調査会にありましては、この基本的人権の問題について、さらに深く調査を進めていく必要がある、このように強く思うものであります。
そして、もう一つの大きな問題は、公の問題と個の問題であろう、こういうふうに思っております。これらの問題についても、本調査会ではさらなる調査を進めていく必要がある、このように認識するものであります。
いずれにいたしましても、この調査会の果たしてきた役割、今までの役割は大きなものがあったということと、それを運営されてまいりました会長に敬意を表して、私の報告とさせていただきます。ありがとうございました。