荒木襄の発言 (国土交通委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○荒木参考人 本日は、自動車損害賠償保障法、いわゆる自賠法の改正に関しまして、私ども日本損害保険協会に意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 私ども日本損害保険協会の会員であります各損害保険会社は、自動車損害賠償保障法に基づく自賠責保険の契約あるいは保険金のお支払いを取り扱っている事業者でございます。本日は、この事業者の立場から、自賠法の改正について考え方を述べさせていただきます。
 なお、私は、社団法人日本損害保険協会の専務理事を務めております荒木と申します。よろしくお願いいたします。
 自賠責保険は、先ほど倉沢参考人もおっしゃいましたが、昭和三十年に制度が創設されましてから、保険料の六〇%を政府に再保険する仕組みとなっております。
 このような仕組みが導入された理由は二つございまして、まず、当時の保険会社の担保力、資金力にかんがみまして、新しいこのような強制的な保険の導入に当たって、過半を占める六〇%を政府が再保険として引き受けるということによりまして、制度の安定を期したということがその第一点であります。すなわち、リスクヘッジという観点であります。
 第二点は、自賠責保険の公的な性格にかんがみまして、被害者保護の観点から、再保険という手法を通じまして、政府が事業の運営、とりわけ適正な保険金の支払いを確保するということに関与をする仕組みをつくる必要があったということであると思います。
 しかしながら、現在におきましては、昭和三十年当時と比較いたしますと、保険会社の担保力は格段に向上いたしておりまして、総資産で比較いたしますと約三百倍以上になっております。
 また、自賠法に基づきまして共同プールという組織がございまして、各保険会社がこのプールに参加しておりますので、このプールの中でそれぞれの保険会社の損益は平準化されている。もし支払い困難に陥った保険会社がある場合には、その他の保険会社においてその負担を行うということになっております。
 それからさらに、保険業法に基づく損害保険契約者保護機構というものが創設されておりまして、ここにおいても、自賠責保険の保険会社が破綻をした場合の補償を一〇〇%行うという仕組みが既にでき上がっております。
 こういう三つの観点から申しますと、リスクヘッジとしての再保険の役割は、極めて少なくなったといいますか、必要性が乏しくなったと言えるかと思います。したがいまして、民間でできることは民間でやるという規制緩和の基本的な考え方に即しまして、政府再保険を廃止していただきたいということをかねがね要望してきたわけであります。
 私ども業界としては、平成十一年の二月に政府再保険廃止の要望を提出いたしました。その後、この政府再保険問題を中心といたしまして、自賠責保険制度全般にわたって、我々業界を含めまして、政府の規制改革委員会あるいは関係省庁、被害者の団体、有識者や専門家の方々におきまして、幅広い論議が行われました。
 この論議を踏まえまして、平成十二年三月に、政府の規制改革三カ年計画の最終年度に向けた再改定の中で、自賠責保険の再保険については、次の五条件の実現の方向を確認した上で行うことが閣議決定を見たわけであります。
 その五つの条件といいますのは、被害者保護の対策が充実されること。政府保障事業を維持すること。現在、政府再保険の運用益を活用して、政府が被害者保護対策事業や事故防止対策事業を行っておりますけれども、政府再保険廃止後も、これらの政府の事業のうちで必要不可欠なものは継続をするということ。四点として、自動車ユーザー等へのメリットがあること。五番目に、合理的な範囲内のコストによる制度改定であること。以上五点を確認する必要があるということであります。
 この示されました方向性を踏まえまして、政府再保険廃止後の被害者保護対策を中心に、関係当事者間で鋭意検討が進められたわけであります。
 私ども業界といたしましても、もちろん、自賠法の目的であります被害者保護の機能というものは引き続き重要であると考えております。政府再保険制度を廃止した後におきましても、再保険制度にかわる、適正な保険金支払いの確保ということを実現するための仕組みが整備される必要があるというふうに考えている次第であります。
 昨年末に、次を骨子とする被害者保護対策を講じることによりまして、政府再保険を廃止することで、関係当事者間の協議がまとまったわけであります。
 骨子といいますのは、一つは、死亡あるいは重度後遺障害のような一定の事案については、行政府がその届け出を受けて、保険金の支払いについて個別の点検を行う。二番目は、専門の有識者によって保険金支払いに関する紛争を解決する仕組みを自賠法の中に位置づけまして、行政府がその公正な運用を確保するために必要な監督を行うということ。三番目に、保険会社は、保険金の支払いに関して、被害者あるいは被保険者に対して積極的に情報開示を行うということであります。
 現在御審議いただいております自賠法の改正法案は、私ども業界の長年の要望でございます政府再保険の廃止という規制緩和を実現していただくと同時に、関係者間で論議を重ねた結果であります被害者保護のための必要な措置を明確にしていただいた内容となっております。
 損保業界としては、これまでも、保険金支払いの審査体制の強化を初め、例えば、近年その問題が明らかになってまいりました高次脳機能障害問題の認定システムを確立するということを始めております。また、事故の発生状況の分析体制を強化するということで、専門家による委員会を発足させております。また、被害者に対する保険金請求手続を支援する業務も実施をしております。等々、自賠責保険による被害者保護の充実にこれまでも取り組んでまいりましたが、改正法が施行されました後は、改正法案に示されました新たな紛争処理の仕組み、あるいは被害者に対する保険金の支払い基準に関する情報提供の充実等、制度改正の実施に積極的に御協力申し上げて、強制保険としての自賠責保険が果たしている被害者保護の役割が、前進することはあっても決して後退することはないということで、努力をしてまいりたいと考えておるところであります。
 今回の制度改正に合わせまして、保険業界としても、業務全般の簡素化と効率化に取り組みまして、自賠責保険の運営に必要な経費の縮減に努めてまいりたいと考えております。また、お預かりした保険料の運用に関しましても、保険会社の運用分がこれまでの四割から十割に拡大されることでありますので、運用のさらなる効率化に取り組んでいく所存でございます。
 つきましては、改正法が早期に成立し、平成十四年度から政府再保険が廃止されることを強く要望するものであります。
 以上、私の意見を申し上げまして、御参考に供したいと思います。
 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115104319X01820010605_004

発言者: 荒木襄

speaker_id: 13231

日付: 2001-06-05

院: 衆議院

会議名: 国土交通委員会