鈴木彰の発言 (予算委員会公聴会)

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○鈴木公述人 大変御苦労さまです。
 私、全労連に所属をしております鈴木と申します。このような形で発言の場を与えていただき、大変感謝をしております。
 私たち労働者、国民は、二十世紀末の十年間、財界、大企業が行ってきた激しいリストラ、合理化という問題、これに対する政府と行政による後押しという問題、こういう戦後かつてなかったような状況のもとで、大変な辛酸をなめてきたという思いがしております。そういう意味で、残念ながら、私は、政治的にも経済的にも中立の立場で発言というわけにはなかなかいかないかと思いますけれども、お許しいただきたいと思います。
 二十一世紀最初の二〇〇一年度予算、ぜひともこれまでの状況を正して、人と企業と行政がお互いに信頼をし合って、共同して新世紀に臨むものになるように、ぜひともお願いをしたいというふうに思います。
 一つ目、財界、大企業が行ってきたことについて触れたいと思うわけですが、バブル崩壊を契機にしまして、それまでの労使間の慣行だとか、あるいは労働法規を踏みにじってしまうレベルの勢いで、リストラと人減らしと働くルールの破壊ということを推し進めました。それは、職場と地域にいわば失業地獄というふうに言わなければならない実態を招いています。
 総務省の労働力調査による完全失業者、一九九九年に三百十七万人となっております。十年前の百四十二万人から毎年十八万人ずつふえて、二・二倍にふえた勘定になります。この三百十七万の失業者の中の非自発的離職者は十年前の三倍の百二万人、三十歳未満の青年の完全失業者は百二十三万人、これらがリストラ、人減らし、あるいは新規採用凍結ということのすさまじさを物語っていると思います。
 東京の春闘共闘が都内十七カ所の職安前などで実施したアンケートには、六五%の人々が解雇などによって失業した、あるいは雇用保険給付が終わってもまだ二七%が一年以上仕事を探している、七八%が四十歳以上という高齢層なのに高年齢ほど仕事がない、仕事を探しながら貧しくなっていく、生活できない、保険が切れたら自殺せざるを得ない、こういう深刻な実態と、就職口を何としても確保してほしい、雇用保険給付を延長してほしい、失業中の税金は免除してほしいなどの切実な要求が寄せられております。
 こうした失業地獄は、雇用そのものを不安定にしているという問題があると思います。九九年までの十年間で、パート労働者は六百二万人から千百三十四万人に、毎年五十三万人ずつふえて二倍になりました。労働者全体が六十三万人ずつふえたうちの八四%はパート労働者の増加だったわけであります。
 また、同じこの失業地獄は、職場を無法地帯にしているという問題も生み出しています。お手元に全労連の「働くみんなの要求アンケート」というものの集約結果をお配りさせていただいておりますが、収入が減った人四五%、疲労を訴える人が八七%、七割近い労働者が生活難を訴えている。さらに重大なことでありますけれども、半分以上の労働者が法律違反のサービス残業、ただ働きをしているということがここに物語られています。逆らえば失業だ、こういう状況を背景にして職場が無法地帯になっているという状況であるわけです。
 二つ目の問題として、これらに対して公正であるべき政府はどういう態度をとってきたかという問題をお話ししたいと思います。
 財界、大企業の雇用破壊と、申し上げましたような働くルールの破壊を、政府は取り締まったとは言えない。それだけではなくて、以下のような四つほどの内容でそれをむしろ後押ししたのではないか。
 第一点は、労働基準法を初め労働法制の規制緩和と改悪を繰り返しました。金融再生法、産業再生法、民事再生法、会社分割法、こういうものを次から次に制定して、財界、大企業のリストラ、合理化を積極的に支援したと言わざるを得ません。それが労働者にもたらした雇用破壊、賃金破壊、労働条件破壊の実態は、今お話ししたとおりであります。
 第二に、政府は、社会保障充実のためというふうに、結果的には偽ったことになりましたが、導入をしました消費税と、膨大な国債発行、これらによって、ゼネコン奉仕型の公共事業や不況対策あるいは銀行への税金投入、こういうものに力を入れてこられました。
 導入初年度に五兆円だった消費税は、十年後の九九年には三倍近い十三兆円に膨張しましたが、逆に、当時四二%だった法人税率は、九九年までに四回、一二%にわたって減税をされて、今三〇%。法人税納入の主役である大企業は、九〇年当時十九兆円であった法人税を、九九年には半分の十兆円に節約することができるようになっています。金融産業の場合は、超低金利で、毎年五兆円近い利子所得を結果的には手に入れた、その上で七十兆円もの税金投入を受けていこうというふうにしています。
 こうして、結果的に、資本金十億円以上の大企業、六千社ほどありますけれども、この六千社だけでその内部留保を八八年の七十四兆円から九九年の百五十四兆円に、ほぼ倍増をさせております。
 第三でありますが、政府は、この施策の財源を調達するためにも、八八年に社会保障財源の二四%を負担していた国庫負担を、今一九%まで削ってまいりました。八九年に労使三十五兆円であった社会保険料の負担額を、逆に一・六倍の五十五兆円に拡大をしてきました。
 職場での賃金・雇用破壊で苦しむ勤労者世帯の可処分所得は、これらの結果、八九年の月四十二万円から四十八万円に、十年間かかってわずか一四%の伸びに抑えられております。
 さらに、今、高齢者の介護保険料、医療費負担、年金の賃金スライドの停止、雇用保険料の引き上げ、合計三兆円もの新しい負担が家計にのしかかろうとしています。とりわけ、受け取り予定の年金を一方的に数百万円から一千万円以上削減した昨年の年金改悪は、国に対する労働者、国民の信頼を足元から揺るがす状態を生み出しているというふうに思います。
 第四でありますけれども、政府は、労働者、国民の批判に耳をかさないで、これらの施策を盛り込んだ予算をこれまでも成立をさせてこられました。今も与党の皆さんは、財政の使い方をめぐる疑惑が深まっている真っただ中で、それを解明しないままに従来型の公共事業による大企業後押しの予算の審議を最優先するということを主張しておられます。
 しかし、文字どおり急浮上いたしました米原子力潜水艦事故は、国民の命に危害が加えられてもなお政府はアメリカの大統領に抗議さえしない、森首相は、脱税疑惑のゴルフ場に閉じこもってしまってかけゴルフに興じていたなどという無責任な疑惑を国民の中にさらしているわけであります。それは、KSDの疑惑、機密費の疑惑と相まって、この政府に本当に予算を任せていいんだろうか、国民の命と国の政治を預けておけるんだろうかという疑惑をあふれさせているわけであります。このような疑惑の究明、責任の追及ということは、予算審議の前提条件にさえなっているのではないかというふうに思うわけであります。
 以上の状況把握を申し上げました上で、三番目でありますが、これらの状況の上でのことを申し上げたいと思います。
 財界、大企業のリストラと政府による後押しということが進められましたけれども、それらは、結局、大企業の利益は増加をさせましたけれども、その経営あるいは物づくりというものを破綻させ、GDPの六割を占める個人消費を低下させ、結局は戦後最悪、最長の深刻な不況のもとで日本経済そのものを行き詰まりに追い込んでいるというふうに言わざるを得ないと思います。
 この局面を打開するには、財界、大企業の強行してきた今までのやり方を社会的に規制するとともに、政府による四つの後押しを根本から改める、そして国民と政府、行政との信頼関係を取り戻す、これが必要だと思います。そのためには、暮らしと営業の破壊の中で懸命に生きてきた労働者、国民の切実な要求をよく聞いていただきたい。そして、十分に審議を重ねて生活と福祉を優先する予算に組み替えていただく必要があると思います。
 最後でありますけれども、私は、労働者の立場からの要求を中心にして、具体的かつ最低限の予算組み替えの要求について申し上げたいと思います。
 一つは、働くルールを回復させ確立するという方向を促進する予算を組んでいただきたい。雇用を拡大していただきたい。
 全労連と国民春闘共闘委員会は、この春から、賃金の底上げあるいは解雇の規制、サービス残業の一掃という三つの課題を掲げて署名運動に取り組んでおります。署名用紙をお手元にお配りいたしましたけれども、これをごらんいただくとお気づきになると思いますけれども、一方的な賃金引き下げや差別待遇をしないでほしい、一方的な解雇を規制してほしい、ただ働きやサービス残業をやめてほしい、これらはすべて既に法律が禁じているものばかりであります。
 実は、この三つの課題はいずれも、この間、財界と大企業が結果的に踏みにじり、そして政府、行政もこれに力を貸して破壊をしてきた働くルールをぎりぎり最低限のレベルで回復させたいというものであって、ぜひともここにおられる皆さんの御署名もいただきたいところであります。
 これらの課題を財界、大企業への社会的規制の基礎に据えて、緊急地域雇用特別交付金制度の拡充、解雇規制、労働時間短縮、サービス残業根絶そして雇用拡大、改悪雇用保険法の四月実施の中止まで含めた適切な改善と、新卒失業者への失業手当の給付などなどの措置を具体化していただきたいというふうに思います。
 これらは、日本経済の行き詰まりを打開する上でも大きな効果を発揮するものだと思います。例えば、完全失業者の三分の二に当たる二百万人に仮に年収五百万円の雇用を確保できれば、年十兆円の賃金所得が生まれます。これは直接二百万人の暮らしを支えるし、税金や社会保険料の収入も拡大するし、消費購買力も拡大をいたします。下手な不況対策よりはよほど効果があるわけであります。
 二つ目に、浪費型の公共事業の削減と消費税減税、社会保障の拡充をぜひとも行っていただきたい。
 二〇〇一年度政府予算案は、巨額の国債を発行し、ゼネコン奉仕型の巨額の公共事業費を浪費するという従来型の域を出ていない。そのために、長引く不況の基礎にある個人消費の拡大への対策がほとんどない、不況を一層深刻にする予算案である、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
 押しても押してもだめなときには引くものであります。財政再建に向かって借金と公共事業を大幅に抑えることを基本に、食料品非課税など消費税の減税、老人医療改悪や年金改悪を中止する、基礎年金の国庫負担割合二分の一を即時実施する、無年金障害者を直ちに救済する、国庫負担の拡大による介護保険制度の緊急改善を行う、確定拠出型年金の導入をやめるなどなどを予算化していただきたいというふうに思います。社会保障の拡充に本腰を入れることも、下手な税金投入よりも効果的な不況対策であります。政府、行政が暮らしと営業を守る姿勢を明らかにして、政府に対する信頼をかちとること、このときこそ、労働者、国民は自己防衛のかたい殻を破ってその消費購買力を真っすぐに発揮することができるのではないでしょうか。
 三番目であります。内閣官房機密費、防衛費などの大幅な削減をお願いしたいと思います。
 KSD、機密費疑惑の徹底究明の世論を予算審議をおくらせるものだというふうにねじ曲げて予算審議最優先というのは、やはり誤りではないかというふうに思います。どんな予算を組んでみても、それが政府の無責任、無能力というふうなことで運用されたり、党利党略、私利私欲のために使われてしまったのでは、労働者、国民は到底これを納得するわけにはいかないからであります。納得でき信頼できる予算をつくる、そのためにも、予算の使い方にかかわる自民党、連立与党の皆さんの金権腐敗の疑惑をあくまでも解明していただきたいというふうに思います。
 与党の皆さんが唱える予算審議最優先論は、森首相の首のすげかえなどを視野に入れて事態収拾を図るために、その前に大急ぎで予算を成立させてしまうのだという疑いを私たちに抱かせてしまいます。しかし、今国民が疑惑の究明を求め、退陣を迫っているのは、ひとり森首相ではなくて、自公保連立内閣そのものなのでありますから、与党の皆さんはこの疑惑を解明しないままここを素通りするというわけには決していかないんだというふうに思います。
 それらのことも解明をしながら、国民と合意形成のできる、暮らしと福祉を優先する予算をぜひとも確立していただく、そのために審議を尽くしていただきたいということを申し上げて、私の発言といたします。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 鈴木彰

speaker_id: 6536

日付: 2001-02-27

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会