リチャード・クーの発言 (予算委員会公聴会)
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○クー公述人 いつごろ日本の財政を再建の方向へ向けるべきかという御質問だったと思いますが、私は、まず、日本のバランスシートの全体の状況は、あと二年ほどすれば大分改善に向かうのではないかという気がしております。
この試算については、お配りしました資料の四ページ目に、今の日本のバランスシートの状況と、それから埋めなければいけない過剰債務を埋めるのにあと何年かかるかという試算を載せておりますが、それによりますと、一応使える数字が一九九七年までしかないのですけれども、そこから五・八年、つまり二〇〇三年のちょっと手前までというくらいの計算になります。
このくらいになると、大分バランスシートはきれいになるはずで、一九七〇年から八六年までの平均値ぐらいには戻る。それよりもいい企業もたくさんあれば、それよりも悪いのもたくさんあるわけですけれども、平均的には、平時の世界、バブルになる前の世界のバランスシートに戻るのではないかという気がします。
したがって、その辺からこのような議論が出てきてもいいのではないかと思うわけですが、ただ、実際のところ、経済というのは生き物ですし、ここでもまたちょっと景気の減速が見られているということで、今から二〇〇三年でこうしようとかいうのを決めるのはちょっとどうかなと。やはりその時点での病人の回復ぐあいといいますか、脈拍から体温まで調べて、そこで判断されるのがいいのではないかという気がします。例えば、その時点での金利がどういうふうになっているのか。本当に回復して民間の資金需要が回復してきておれば、その時点で金利はかなり上がってきているはずであります。
そういう状況があれば財政再建に向かっても大丈夫ということになると思いますが、ここで一つ気になりますのは、過去十年間のバランスシート調整というのが多くの企業にとって余りにも苦しい経験であったということから、今かなり設備投資等は出ておりますけれども、そういう企業の経営者の皆さん、絶対借金やらない、もうあの過去十年間の苦しみは二度と味わいたくない、孫の代まで借金は許さぬと言っているくらいキャッシュフロー経営にこだわっております。
最近、本屋に行きますと、キャッシュフロー経営という本がいっぱいあふれております。キャッシュフロー経営というのは、自分たちにあるキャッシュフローの中で設備投資をやる、お金を借りないという考え方でありますが、これは貯蓄率の低いアメリカでは当然なことだと思いますけれども、これだけ貯蓄率の高い日本で企業がみんなキャッシュフロー経営をやってしまったら、いつになっても民間のデフレギャップが埋まらない、いつになっても財政支出が必要であるという大変な事態になります。今はまだバランスシートが壊れていますから彼らに支出を期待するのは不可能なわけですけれども、バランスシートがきれいになっても企業がキャッシュフロー経営にこだわってしまったら、これは日本の財政にとって大変な問題になります。
それを解除する、そういう事態に陥らないようにするためにも、ここではちょっと別の意味ですけれども、構造改革、規制緩和で、バランスシートがきれいになった企業が、どうしてもこれは投資しないと大きな損をするだろうと思うくらいのビジネスチャンスをつくっていく、そのような規制緩和、投資環境の改善というのがぜひ必要ではないか。
したがって、財政で景気を下支えしなければいけない、早くバランスシートをきれいにしなければいけないというのは当然ですけれども、それと同時に、バランスシートがきれいになった企業が投資をしたくなるような、お金を借りても投資をしたくなるようなビジネスチャンスをつくっていくということをぜひ同時進行させていただいて、それがだんだん軌道に乗ってきたところで財政再建に向かう、このような順番でやるべきではないかという気がします。
そういうシグナルを実際にマーケットが金利上昇で送ってきた暁には、私は日本で最大の財政再建論者になろうと思っておりますが、今はそういう状況ではない。恐らく、最低一、二年は今みたいな状況が続くのではないかという気がします。