リチャード・クーの発言 (予算委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○クー公述人 日本の株価が飛躍的に上がることはないのではないかという御指摘だったわけですけれども、まず、私、野村証券のチーフエコノミストとして全世界の外人投資家に日本の説明をして、あわよくば日本の株を買ってもらうというのが本業なわけですけれども、海外の投資家が日本の株を買っている理由は幾つかありますが、もしも、先ほど御指摘された株価収益率、PERみたいなものだけ見ていれば当然買えないわけであります。でも彼らは買っている。どこにあるのかといいますと、それは、一つはやはり為替なんですね。
 円はやはり非常に強い通貨であるということ。日本の貿易黒字、一月はちょっと赤字になっておりましたけれども、全般で見ればまだ世界最大の貿易黒字国であるということで、円はずっとここ三十年間強かった。ちょっと若干弱い振れはありましたけれども、基本的には非常に強い通貨であるということ。そうすると、やはり円の資産を持っていなければ大きな流れに乗りおくれるのではないかという気持ちを持っている外人投資家は非常に多い。そういうところから見ますと、では、円の資産を持つのに、株を買うか債券を買うか。債券の利回りは何と一・四%ですから、これは幾ら何でも買えないのですね。そうすると、ちょっとでもおもしろい株を買いましょうということで、かなり株式投資に入ってきているのではないかという気がします。
 確かに、トヨタとGM、フォード、クライスラーと比べると御指摘のような数字になるのですけれども、ただ、アメリカでも、IT関連ですとかそういうところではかなり、トヨタ以上に株価を説明できないPERがついたこともあるわけで、必ずしもPERだけで投資家が判断しているわけではない。
 まして日本の場合は今、実際の実力、技術力に比べてかなり株価が安いのではないかという、オールドエコノミーですね、どうもマスコミはニューエコノミーばかり注目しておりますけれども、実はオールドエコノミーの外人持ち株比率、特に、いい企業は急激に上がっております。彼らは、そういう意味では、まさにバーゲンセール、つまり、今だれも見向きもしていない、持ち合いの解消でかなり一時的に供給過剰になっている株をしっかりと買い集めているわけで、そういうのを見ていますと、もう少し日本の機関投資家の皆さん、個人投資家の皆さん、頑張ってほしいな、やはり一番いいところをまた逆張りの外人にとられていってしまうのかなと。そういう話を海外でしているのもこの私ですので、ちょっと何とも言えないのですけれども。
 ただ、最近は、国内で一生懸命こういう話をしましても、やはり余りにも、特に機関投資家の皆さん、この資産価格の暴落で体力がなくなってしまった。株を買うというのは、どうしてもリスクをとれる体力が必要であります。ある程度下がってもそれを受け入れられる体力がなかったら株などを買ってはいけないわけで、そういう状況に今、多くの日本の投資家の皆さんはないので、結局、幾ら外交をやって勧めても、なかなか買っていただけない。そうすると、海外に言って買ってもらって今の株価を支えるしかないということになるわけで、そこはちょっと残念だなという気はします。
 実際に日本の企業で頑張って構造改革も進めているところはたくさんありますから、そういうところをもっと日本の投資家も見直していただきたいなという気がします。
 政策という点で一言つけ加えさせていただきますと、この点では、やはり為替レートというのは非常に注意していただきたいと思います。
 もしも日本の株式市場を日本の投資家が支えているのであれば、円安というのは一つ大きな選択肢であります。ここで円安にして、輸出から、先ほどお話ししましたデフレギャップを埋めていく。これは今、アジアの国々がみんなやっていることで、彼らはもともと大きな貿易黒字がなかったものですから、一部貿易赤字になっていましたから、通貨をうんと下げて、それで今、彼らのバランスシート問題は、輸出という形で解消に向けて動いているわけでありますが、日本の場合は、もともとがすごい貿易黒字なので、その選択肢がないのですね。それで円が強かったわけですけれども。
 ここで円安に持っていこうということになりますと、日本の株式市場、何が起きるかわからない。もちろん、外人が売る前にぱんと円を下げてしまって、向こうが朝起きたときにはもう円安だったということであれば売るチャンスを奪い取るということもできるかもしれませんが、これだけ景気が低迷していて企業収益もぱっとしない、構造改革もおくれている日本の株を外人が買い続けた非常に大きな理由はやはり為替レートでありますから、安易な円安政策というのは要注意ではないかという気がします。
 今のアメリカの財務長官オニール、また、その前のルービン、サマーズ、みんな強いドルを望むと言っておりました。なぜ彼らはそういうことを言っていたかというと、アメリカは今金融市場を外国の資本で支えてもらっている。言ってみればちょっと日本に似たような状況があるわけです。そうすると、彼らが一番恐れているのはアメリカ売りであります。つまり、弱いドルを望むなんて一言言ったら、恐らくドルは大暴落してアメリカ経済はめちゃくちゃになるだろうという危機を彼らは感じ取っているので、実際は恐らく彼らは弱いドルを望んでいるんだと思いますが、そういうことは一言も言わない。
 日本に関しても、日本は、全体は黒字なんですけれども、株式市場という一番重要な心臓部、これを外人に支えてもらっているという状況では、安易な円安政策は非常に危険ではないかという気がします。

発言情報

speech_id: 115105262X00120010227_032

発言者: リチャード・クー

speaker_id: 25070

日付: 2001-02-27

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会