天笠茂の発言 (文教科学委員会)
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○参考人(天笠茂君) 今御紹介のありました千葉大学の天笠と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日はこのような場におきまして意見を述べる機会を与えていただきましたことを深く感謝申し上げます。また、第七次定数改善の計画の実現に向けて審議を進められております関係の皆様に心より敬意を表したいというふうに思います。
私は、教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議におきまして調査研究協力者の一員でありました立場から、提出されております政府案等につきまして、お手元に資料を配らせていただきましたが、これに基づきながら、五点にわたって意見を述べさせていただきたいというふうに思います。どうぞお手元の資料をごらんになりながらお聞きいただければというふうに思います。
政府案につきまして、幾つか注目すべき点ということで申し上げさせていただきたいと思いますけれども、まず一つ目は、地方分権の精神を生かし、いわゆる護送船団方式からの脱却を目指している点に注目いたします。そしてまた評価すべき点というふうに思っております。学級編制における都道府県の裁量をより認める方針を打ち出したことにあります。
すなわち、都道府県の政策判断を重視する姿勢を示し、必要と判断した場合、義務標準法で定める学級編制の標準を下回る基準を定めることができ、小学校、中学校別、小学校の低学年と中・高等学校別など、地域の実態などに応じて基準を定めることを可能にしております。これまでの学級編制については、統一基準を決めて厳格に運用を図るものでありました。これに対して、都道府県の裁量を認め、国の基準を下回る数を基準として基準を定めることを可能としております。これは、地方分権の精神を生かし、これまで維持してきた学級編制をめぐるいわゆる護送船団方式に風穴をあける措置であると理解しております。
続きまして、第二点目ということになりますが、本政府案は明治以来の学級観、学級担任制を柱とする学校観の転換を図ろうとしている点に注目しております。この点もまた評価できるところだと思っております。
御承知のように、学級担任制は一人の教師が一つの学級の児童生徒の教科指導及び生徒指導のすべてにわたって担当し、一義的に責任を負う教授学習システムであって、我が国の学校において教育組織の根幹をなすものであります。しかし、この学級担任制は、教科指導の専門性の低下、学級間の格差、学級王国化などの問題が生じやすいとこれまでにも指摘されてきました。本法案は、このような学級や学級担任制の改善を促しております。すなわち、学習集団と生活集団の両機能を一元的に果たしてきた学級について、学習集団については形態の多様化を図り、生活集団については学級を重視するとして、学習指導と生徒指導に機能を分化させる考え方を提起しております。
本法案のもとになりました調査研究協力者会議の報告書は、学級の基本的な考え方を次のように述べております。すなわち、「学級は生徒指導や学校生活の場である生活集団としての機能を主とするものと位置づけ、学習集団は、学級単位で学習指導が行われる場合が多いとしても、児童生徒の状況や教科等の特性に応じて多様な学習指導の場が設定できるものであり、学級にとらわれないものとして整理することが適当である。」と、生活集団としての機能を重視し、学習集団については従来の学級にとらわれない多様な編成を求めています。
また報告書は、学級について、学習集団と生活集団の機能を分離するとらえ方を次のように提起しております。すなわち、「一元的な学級の捉え方を見直し、今後、学級は生徒指導や学校生活の場である生活集団としての機能を主としたものとして位置付け、これまで一体のものとして含まれていた学習集団としての機能については、学級という概念にとらわれずに、より柔軟に考えることが効果的と考えられる。」と述べています。このような点からも、政府案には、学級編制の基準のあり方はもとより、学級経営のあり方や指導方法などについての改善、さらに言うならば、これからの学校のあり方にかかわる重要な内容が含まれていると思われます。
政府案は、各学校においては教職員やその他のスタッフの協力のもとに、生活集団としての学級を離れ、必要に応じて自由に学習集団を編成できる方向を示しております。これは、特色ある学校づくりについて、教育課程の編成や教育方法の工夫を組織編制面から支えるものであり、これまでの学級担任制を柱とする学校の教育組織について固定的なイメージの転換を図るものとしてとらえることができるかと思われます。
続きまして第三点目であります。
ところで、学級担任制をとっている小学校では学級の壁を越える取り組みをさまざまに試みてきましたが、学級担任の学級王国意識を十分に払拭できないところがあります。そして、このことが教師間の連携協力や柔軟な学年経営や教科経営の発展を阻んできたことも否めず、この学級王国意識の克服が学校にとって古くて新しいテーマとなっております。
今学校に求められていることは、指導体制の工夫、改善に取り組むことであります。この一環として、これまで授業に余りかかわりを持たなかった養護教諭、学校栄養職員、それに事務職員などを初めさまざまな教職員について、指導体制の一翼を担う一員としてその存在感を高めていくことが課題になっています。学校はさまざまなスタッフに支えられ、それら人々が機能することによってより教育の成果を得ることができるものと思われます。しかし、これまで学校は学級担任や教科担任を中心に組織されてきた歴史を持ち、それ以外の教職員の存在の重要性が広く認められるにはなかなか至りませんでした。
しかし、学校はそれぞれの教職員が連携協力を図ることによって教育の成果も得られるものと思われます。さらに、多様な学習集団の編成や総合的な学習の時間の実施に当たって、校内のさまざまなスタッフの参加、協力が大きな力を発揮し、欠かせない存在になるものと思われます。一方、保護者や地域社会の人々が学校に参加する機会や場をふやし、さまざまな教育活動にかかわりを持つ開かれた学校の名において求められるとしていますが、その実権を握っているのは校内の先生方で教職員の方々であり、そのチームワークの存在であると思われます。
いずれにしましても、今学校に求められているのはチームによる教育ではないかと思っております。お手元の資料の(3)のところになりますが、それぞれの学級担任が自分の学級を守り、その中で教育を進めていけば済むというわけにはいかなくなっております。すなわち、学級担任一人では解決困難な問題も増加しており、学級担任間、教職員間のチームワークが問われております。
学校を取り巻く高度化、複雑化に対応するには専門職としてのチームワークが欠かせなくなっており、学年全体で指導に当たる方法や学級や学年の枠を柔軟にした教授学習組織を編成、運用する方法など、学級担任間の協力のあり方をより洗練していくことが求められております。
お手元の資料で(4)ということになりますが、これに関連して、チームティーチングについて若干述べさせていただきます。
チームティーチングは、授業場面において二人以上の教職員が連携協力して一人一人の子供及び集団の指導に責任を持ち展開を図る指導方法であり、組織であると思います。学級内における教師間の協力や学習形態の工夫を図るとともに、子供たちも学級にとらわれずに適宜移動して学習集団を柔軟に編成するところに、すなわち学習内容、興味、関心などに応じて、学年、学級の枠にとらわれずに適宜柔軟な学習集団の編成を可能にするところに特徴が見られます。
このようなチームティーチングは第六次の改善計画の柱ということになっておりましたが、このような動きというのが学級担任制を取り入れてきた我が国の学校においてもようやく受け入れられつつあるんではないかというふうに受けとめております。今回、政府より提出された法案は、チームティーチングなどの指導体制の工夫改善について、さらに継承、発展を図るものと位置づけることができ、また、チームワークを学校に生み出す上で大きな効果をもたらすことが期待できるものと思っております。
次に、四点目ということになります。
ところで、学級の人数について述べさせていただきます。
この点について学級規模を縮小すれば教育効果が上がるという考え方が社会に広く浸透しているように思われます。しかし、学級規模と教育効果に関する実験的、実証的な先行研究はさまざまな結論を導き出しており、適正規模が明らかにされているとは必ずしも言えない現状にあるかと思います。その意味で一義的に適正規模を求めることは難しい現状にあるかというふうに思っております。
すなわち、従来の研究を要約すると、適正規模なるものは明確にするということは難しいということであって、教師の指導方法などの要因が大きく複雑に変動することですとか、学級規模と教育効果の関係を一律にとらえるということはなかなか困難である、こういうことを申し上げさせていただきたいというふうに思います。
いずれにしましても、一人の学級担任が受け持つ子供の数の多少によって学校教育の教育効果を見定めようとする発想や手法だけでは限界があり、学校の抱えるさまざまな問題を解決することはなかなか現状では難しいかと思われます。その意味で、学校として複数の教師の連携協力によって教育の効果を上げていく発想と方法の開発を通して課題に迫っていくことが妥当ではないかというふうに考えております。また、学習集団を弾力的に編成できることとし、それぞれ教科や教育内容、単元などによって、一斉授業やグループ学習、学級を越えた学習集団の編成など、多様な教育活動を展開することによって成果を上げようとする考え方や方策を選び取る方が賢明な選択ではないかというふうに思っております。
さて、五点目になりますけれども、政府案と比較して野党案の大きな特徴は、四十人ではなく三十人学級を、しかも一律に引き下げて提案しているところにその特徴があるかというふうに思います。また、その意味で、学級担任制のシステムについてはこれを維持していく立場での提案ではないかというふうに思います。したがいまして、学習集団を弾力的に図っていくという、そういう取り組みについては余り強調されなかったのではないかというふうに受けとめております。
これに対して、学級の人数を一律に減らすということでなく、これからの教育の方向を求め、これに見合う条件整備を目指すところに政府案の特徴が見られます。すなわち、今日の学校教育、学校の組織をめぐる課題に対応したものであり、生活集団としての学級と弾力的な学習集団とを活用して新たな時代にふさわしい教育活動を創造していくことを求め、そのための制度的条件の整備を図ろうとするものというふうに受けとめております。
以上、私の意見を述べさせていただきました。今回の政府案はこういった意味で現状の教育課題に対応するものであるというふうに私自身は受けとめております。その意味で、政府案に基づく学級編制と教職員定数の改善が実施されますことを強く期待したいというふうに思います。本委員会におかれましても、このような意見を参考にしていただき本法案の審議を行っていただければ幸いに存じます。
どうもありがとうございました。