能見善久の発言 (法務委員会)
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○参考人(能見善久君) ただいま御紹介いただきました能見でございます。
私は、東京大学の法学部及び大学院で民法を教えております。法人問題も民法とかかわりが深いということで、きょうは意見を述べる機会を与えていただきました。ありがとうございました。
レジュメに沿って中間法人制度についての私の見解を述べていきたいと思います。
初めに、基本的な立場ないし中間法人制度を見る視点ということから始めたいと思います。
レジュメの1のところです。基本的な視点に関しては二つほどここで述べたいと思うわけですが、一つは、団体に法人格を付与することの意味ということから始めたいと思います。
今回の中間法人制度は、非公益そして非営利の団体に法人格を付与するわけですが、そもそもある団体に法人格を付与するということはどういうことなのかということを確認しておく必要があります。それは、法的な意味あるいは法技術的な意味と、もうちょっと社会的な意味というのがあると思います。
法的な意味については、これは改めて言う必要もないくらいですが、一つには、法技術的には法人固有の財産をつくり出して法人の名前で活動ができるようになると。また、多くの場合には構成員に有限責任を求めることになります。
しかし、ある意味でもっと重要なのは、法人格付与の社会的なというんでしょうか、狭い意味での法的な意味に含まれないもうちょっと広い意味です。法人格付与をいたしますと、これによって団体は対内的にも、つまり団体内部でもあるいは対外的にも明確な存在になって、そういう意味でこの団体の活動というものが活性化されると。団体の活動が活性化されることによって、それに伴ってまた社会的な意義というものも高まるのではないかと。要するに、法人格付与の積極的な側面というものを見る必要があるということであります。
団体に対して簡単に法人格を付与するということに対しては、違法な活動に対する隠れみのになるとか、あるいは法人が乱用されるという懸念がしばしば議論されますが、しかしそれはそれで対処する別な方法があると思われますので、それよりも法人格を付与することによって団体活動が活性化し、ひいては社会全体が活性化する、そういうことを強調したいと思います。
第二点目、法人。ここでは非営利ないし公益的な団体を念頭に置きますが、それに対する基本的な視点というものについての確認です。
この非営利団体あるいは公益的な団体に対してどのような政策でもって臨むのか、そういうスタンスの問題です。この点につきましては、私は、公益法人あるいは公益的な団体と中間法人とでは基本的に少し異なる政策というものがあり得るのではないかと考えております。
公益法人については優遇税制が伴ったりいたしますので、団体組織の透明性ですとか、あるいは公益性を認定する場合にはその基準の明確性であるとか、あるいは団体の組織の信頼性といったことが重要になります。したがって、こういった原理にふさわしい法人組織というものが要求されるということになります。
これに対して、社員の共通の利益を図ることを目的とする団体、中間法人、これはちょっと大げさかもしれませんが、憲法十三条の幸福追求権と思想的につながるものではないかというふうに私は考えております。そういう意味で、自己の発展あるいは今の幸福追求のために団体を使ってさらに一層活動を発展させる、そういうことなわけですが、そうなりますと、ここでは自由ですとかあるいは自己決定といったことが基本的な原理として重要になってまいります。したがって、中間法人の組織も、できるだけ自由度の高い、それぞれの団体のニーズを反映できるような柔軟さを備えることが必要ではないかと思います。
次に、「2 中間法人法に対する評価」というところですが、以上のような基本的な視点から今回の中間法人の法案を見ますと、次のような評価をすることができるのではないかと考えております。
第一に、これは民法関係者の間では恐らく異論がないことだと思いますが、今回の中間法人法案によって、今までの法人制度のもとでは法人格を取得したくてもできなかった、そういう団体が法人格を取得できるようになったということであります。
これは、簡単にそこにレジュメに図をつけておいて、かえってわかりにくい図かもしれませんが、往々にしてよく、営利法人、それから他方の極に公益法人、真ん中に中間法人というふうに言われておりますが、実は民法三十四条の公益法人の規定から出発いたしますと、公益法人というのは公益、そこに挙げられている各種の公益事業、公益を追求することと、かつ非営利であるということで、二つの実は要素あるいは軸というものがあります。この図では、非営利、営利の軸を縦軸にとっておりまして、したがって上の方の二つは非営利の団体である。非営利というのは利益を分配しないという意味ですが、下の方は営利の団体で、これは利益を分配する、こういう軸と、それからもう一つは、その事業内容が公益であるかあるいは公益でないか、公益でないという方はちょっと言いにくいんですが、一応ここでは私的な利益を目的とするというふうに言いたいと思います。
こういうふうに切りますと、結局四つの領域ができまして、Aと書いてあるところ、これが現在の公益法人、公益かつ非営利の活動をするというところであります。その対極にある営利法人というのは、利益を分配するし、また事業も通常は単なる公益よりはもうちょっと収益そのものを上げることを目的とする事業ということで、Aの対極にあるCが営利法人というわけですが、しかし営利法人が公益的な活動の方に手を伸ばすことは恐らく許されると思いますので、営利を一応中心に据えながらも公益的な事業、例えば鉄道事業だとかそういったことをすることはできますので、CとDのところも営利法人になる。残っているところが、この図で言うとBになるわけですが、ここが今まであいていた。ここを埋めたというのが今回の中間法人制度だということになります。これが第一点。
それから第二に、これはある意味で今の第一点と重なる点もあるんですが、今回の中間法人制度によって非営利活動あるいは共通の利益を追求するということで共益活動と仮に呼びますが、この非営利活動が社会的に活発になされる、そういう法的な基盤を整備したということが重要ではないかと思います。
これは、今の穴を埋めたということと同じことのようにも思えますが、しかし非営利活動が今後の成熟した社会においてますます重要になる。単なる経済的な利益の追求だけではない。また、公益活動は公益活動で重要ですが、その中間を占める私的な利益を、つまり共通の利益を追求するんだけれども単なる経済活動ではない、そういうものが今後ますます重要になってくる。こういうものの活動のための基盤、法人制度で活動するための基盤を整備したというのが今回の中間法人であると思われます。
それから、三番目に評価の点ですが、今回の中間法人を評価する際の三点目ですが、今回の中間法人制度はそれなりに社会の多様なニーズにこたえるものとなっているということも注目する必要があります。もっとも、この非営利活動というのはなかなか範囲が広くて、いろんなものが含まれます。例えば、業界団体であるとか、あるいは同窓会、あるいは学会、私なども属しておりますが、それからさらに、もうちょっと小規模な、例えば趣味のような団体、クラブ、いろんなものがありまして、これらのすべてのニーズを酌み取ってそれにこたえるというのはなかなか簡単ではありません。
中間法人法案は、一応いろんな多様な団体があるだろうということで、有限責任中間法人とそれから無限責任中間法人、二種類を用意することで対応しようとしております。これ自体いろいろ問題がないわけではありません。私もいろんなところで議論いたしました。特に、例えば無限責任タイプというのが果たして本当に適切かどうか、使えるかどうかといった点については問題がないわけではありませんが、しかし多様性を追求するという視点から、いろんなプログラム、いろんなタイプを用意したということは評価できるのではないかと考えております。
さて、論点、レジュメの3、幾つかの重要な論点についての私の見解を述べたいと思いますが、第一は、この法人制度全体の中で中間法人をどう位置づけるかという問題であります。恐らくこれが理論的に一番重要かもしれません。中間法人は、先ほどの図にありますように、単純ではありませんけれども、営利法人と公益法人の間に挟まれている。中間法人というのはその両者、公益法人あるいは営利法人とどういう関係にあるかという点です。
最初に、公益法人との関係について見ますと、二点ほど指摘したい点がございます。第一は、この中間法人は社員の共通の利益を追求するということを目的としているものですが、現実にはかなり広い範囲のものをカバーするという点であります。共通の利益が中心に据えてあれば、例えば公益的な活動をすることも可能になります。例えば、環境保護ですとか地域の美化活動だとか、こういうものは公益活動のある種の典型だと思いますが、これも団体の構成員が自分たちの共通の利益の追求としてこれを行うということであれば中間法人として設立することもできると考えられます。
もっとも、後でもう少し詳しく触れますが、公益活動を永続的に、かつ確実に行うのに中間法人が適した組織かどうかというのは別な問題であります。公益活動を行う団体に対しては、恐らく市民全体が関心を持ち、市民は団体の中身、そういった公益的な団体の中身についても知りたいと考えるでしょうから、そういう意味ではそれに対応した規定などが今必要になります。しかし、中間法人制度が、これはさっきの共通の利益を追求するという団体ですので、そこまで徹底して市民一般に対する情報開示をするという形の団体にはなっておりません。
第二に、この公益法人と中間法人の組織法的なレベルからの比較なんですが、端的に言いますと、中間法人と公益法人を含めて広く非営利法人制度というのを考えるべきなのか、それとも中間法人と公益法人とを一応区別するのが適当なのかという問題であります。
今回の中間法人制度は、一応現行の公益法人制度を所与の前提として、後者の立場、つまり中間法人と公益法人というのを一応類型として二つ組織法的に分けたというものであります。個人的には前者の立場、すなわち全体として非営利法人制度というものを考えて、法人格付与は比較的簡単に準則主義ですべていく、そして公益法人についてはさらにどこかで公益性を認定する、非営利法人全体の上に部分的に公益法人制度が乗っかると、そういう制度も考えられます。現に、ドイツなどはそういう制度をとっております。
ただ、よく考えてみますと、この方法には問題がないわけではありません。すなわち、こういうふうにして準則主義で簡単に一応非営利法人というものを設立いたしますと、後で公益性を認定する必要が出てまいります。どこがするかは一つの問題ですが、それはともかくとして、仮に課税庁などが、税務当局などが税の優遇措置を与えるというので、どういう団体ならば適しているかという判断をして、まず公益性を認定するといたします。そのときに、何を判断するかが問題なんですが、本当にその団体が公益活動を実際に行っているかどうか、つまり事業の内容について判断するならば私はあり得る制度だと思いますが、それに加えてさらに公益性が認定されるためには、この種の団体にはある種いろんな組織法的な手当てをしなくてはいけない。もうちょっとはっきり言いますと、税制適格要件というものを加重して、この団体はこういう制度を備えていなくてはいけないとか、いろいろ要件を加重することが考えられます。これを認めますと、事実上、課税庁のレベルで組織法的には非営利法人一般とは別の公益法人というものをつくり出すことになりまして、これは私は余り適当ではないのではないかと考えております。
こういうことをするよりは、組織法一般のレベルで、公益を目的とする公益法人にふさわしいタイプと、それから私的な共通の利益を追求する中間法人とを分けた方がよろしいのではないかというふうに考える次第であります。そして、中間法人は公益法人よりはずっと緩やかな自由度の高い制度にする、それが望ましいのではないかと考えております。
営利法人との関係については一言だけ述べておきたいと思いますが、この中間法人という制度が営利法人あるいは営利活動の目的でもって乱用されることはないだろうかという心配が時折議論されます。しかし、この中間法人制度は、営利を目的とする、あるいは利益を分配するための制度としては極めて不便なものでありまして、形式的には中間法人の社員は利益の分配請求権がありませんし、営利活動にはそれほど向いた制度ではありません。したがって、乱用の心配が全然ないわけではありませんが、そのことを余り強調して中間法人制度にきつい規制をかぶせるというのは適当ではない、現在、法案として出ている程度の規制で十分ではないかと思われます。
あと幾つか論点がありますが、時間の関係もありますので少し省略いたしますが、「営利・非営利・公益の関係」については今まで述べてまいりましたので、これは省略いたします。
「組織変更ないし転換」について一言だけ述べますと、これは非常に一つの論点になっておりますけれども、今までの公益法人というものが、仮に寄附であるとかあるいは税の優遇制度によって蓄積されてきた財産がそのまま中間法人に引き継がれるということになりますと、中間法人はいつでも解散することができますし、解散をいたしますと、その段階での財産がいろんな人に帰属いたします。そういうことで単純に移行させるというのはなかなか難しい。もちろん、それは政策的にはあり得る制度だと思いますけれども、この中間法人制度そのものの中でやるのがいいのかどうかということについては多少議論が必要だろうと思われます。
あと一言だけ。「今後の課題」についてでありますが、先ほど既に触れましたが、中間法人というタイプ、自分たちの利益を追求するタイプと公益的な利益を、あるいは公益活動をしていくタイプとで法人制度として分けた方がいいのかどうかというのがまず最大の問題であります。これについては先ほど触れましたが、周辺的な関係、例えば公益をだれがどういうふうに認定するのかといった点と関係いたしますので、そういうことを見据えながら今後議論していく必要があるというのが一つです。
それから、公益活動全体あるいは公益法人制度全体についての見直しというのが極めて重要であると。これはいろんなところで議論されておりますので、後でまた御質問があればお答えしたいと思いますが、基本的にはこの公益活動というのは、今後恐らくその公益活動に投入する財、人的なあるいは財政的な財というものは、資源というものは限られている。そうなりますと、どういうような公益活動にそれを投入するのかというのが極めて問題となってまいります。恐らくある種の競争原理、競争原理だけではだめだと思いますが、ある種の競争原理を導入することが必要ではないかと考えております。
そういう観点からいたしますと、公益法人というものは、確かにきちっとしたものができなくてはいけないんですけれども、余り厳しく締めつけるよりは、多少は今の自由な競争を許すような枠組みを提供した方がいいのではないかという点を考えております。
ちょっと時間を過ぎたかもしれませんが、また御質問があったらお答えしたいと思います。
以上でございます。