武者小路公秀の発言 (憲法調査会)

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○武者小路参考人 とても大切な御質問で、私なりにお答えさせていただきたいと思います。
 このダーバンの会議には、日本国を代表して外務省の丸谷政務官が御出席になり、それで発言をされました。その御発言については、幾つかNGOで不満なところもございましたが、しかし、非常に立派な発言で、その趣旨の一番中心にありましたのが、先ほど申しました人間の安全保障ということでございました。人間の安全を保障するために日本はあらゆる努力をするし、ほかの国にも努力するように呼びかける、そして、人間の安全を保障するということは、その人間の中でも一番安全が脅かされているマイノリティーとか、ダーバンで問題になっている人々の安全を守るということが一番大事なんだという御発言がございました。その御発言、まさにこれは一つの国家理念というふうに受けとめることができると私は思います。
 その場合、日本のODAも、ODAというのは、何か当然の義務ということではなくて、しかし当然の、国家理念から流れ出てくる行為である。つまり、和をもってとうとしとするということで、違った国で、違った境遇の中で暮らしている、そして非常に難儀をしている人たちが安心して暮らせるようにする、そのために欠乏と恐怖を免れるように努力をするということは、これは日本の国家の理念としてとても立派なものではないかと思います。
 しかし、この国家理念は、実は日本が苦労してきたことと関係がある。つまり、日本も植民地支配の対象になりかけて、ならないために一生懸命日本人だけで固まった、そして一生懸命固まって日本も周りの国を植民地化してしまった、そういう悲しい現実があるわけです。
 日本だけが植民地支配をしたんじゃなくて、日本が植民地支配の対象になりそうになったことに対する反応としてそういうことになってしまったというその歴史の流れの中で、日本は被害者でもあり加害者でもある。ある意味では、人種差別というものを国際社会で初めて問題にしたのは、国際連盟で日本が人種主義の問題を最初に出した、それだけ日本も人種主義の対象として苦労したことがあるわけです。
 ですから日本は、もらったり上げたり、歴史の中で起こった植民地支配の問題を清算するために補償を必要とするということは、私はとても大事だと思います。それはしかし、当然の義務ということではなくて、和をもってとうとしとし、そういう和によってつなげられるような世界をつくっていく、そのために金持ちが金を出す、そういうことではないかと思います。
 補償というのは、ただ金の問題ではなくて、昔の歴史が悪かったということ、それを正直に認めることで前に進むということであって、別にただ悪かったというだけのことではない。しかも、この場合には、実は日本よりもはるかに悪い国々がたくさんあるということがある中で日本の補償ということも出るわけで、それで初めてバランスのとれた歴史を理解して、一歩前進する。そして、みんながお互いに諸国民の間の平和に生きる権利を認め合う、そういう和の世界をつくっていく、これが日本の国家の理念であるということができれば、日本はすばらしい国になるわけです。
 ただ日本のための平和だけを守るとか、憲法の制約で日本はこれができないとか、そういう形の問題では全くなくて、世界を平和にしていく、そういう問題が日本の国家理念、課せられている問題ではないかと思います。

発言情報

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発言者: 武者小路公秀

speaker_id: 17559

日付: 2001-11-29

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会