今井澄の発言 (厚生労働委員会)
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○今井澄君 確かに、今、大臣が言われたように、今の年金制度はそういう面では非常にもらう人にとってはうまくできている。特に低所得の人にとっては大変うまくできている。だけれども、本当にそれだけでやっていけるか、若い世代の理解が得られるかということが実は今問題だと思うんですよね。また、本当の低所得者に対しては、これは社会保険方式をとるとらないにかかわらず別途これは対策をしなきゃならない。これは医療でも介護でも年金でも何でも同じだと思いますので、それはそれとして、基本的な考え方をどうするか。
今、経済財政諮問会議から社会保障個人会計なんというとんでもない考え方が出てきている。あれは納税者番号制を入れるための打ち上げ花火だという話もありますが、私は、医療や介護に関してはこれは助け合いの精神で、お金を掛けたけれども戻ってこない、サービスをもらわない方が幸せという保険だと思うんですが、年金はやっぱりそうはいかないと思うんですね。やっぱり掛けた金が戻ってこないというのはどうもうまくないので、私は非常に難しいと思います。実現可能性はともかく、さっき申し上げました方法論も含めて、このスウェーデン方式、今後検討をするということをぜひ皆さん方もテーブルに上げていただければと思います。
さて、本来やりたかった医療があと十分ちょっとしかなくなっちゃって質問を大幅に削らなければならないのであれですが、今度この医療保険改革も非常に透明にやっていただきたいと思います。
そういう意味ではスタートはよかったと思うんですね。厚生省試案が出、それに対して坂口メモも出、それで一応まとまって、今度はあっちこっちからいろんな意見が出、これが後どこでやられるかが私ども一番心配なんですね。
この際、我々も今、二年前に改革案の中間報告を出していますし、これから鋭意出していきますので、やっぱり国会の場なり、そういう与党だけで決めるなんてことのないように、まして一定の圧力団体のもとで与党で決めるなんてことがあったら我々としてはもうこれは断固闘わざるを得ないということを最初に申し上げておきたいと思います。
さて、私は、基本的に今、経済財政諮問会議とか総合規制改革会議とか、あるいは産業構造改革・雇用対策本部とかいうところから出されてきているのをそれなりに、今の医療改革が進まないことへのいら立ち等、一般の人の意識を反映したものとして非常に重く受けとめたいと思いますが、しかし、なかなかその中には医療というものを、聖域だと私は全く考えませんけれども、ちょっと御理解が足りない面があるような気がして、その面でも坂口厚生労働大臣がその都度新聞に不快感を表明したとか、越権ではないかとかいった、それなりにチェックをしていただいているのを私は応援したい気持ちで拝見しております。
しかし、最近も経済財政諮問会議の牛尾治朗さんほか三名、四名の方の意見書が出ましたね、十月九日付で。そこの中の「Ⅱ「改革試案」に対する評価」の「(2)「改革試案」は国民の「痛み」が先行している」というところに、負担に伴う価値ある医療の確立に向けての考え方、具体的方針を明示せずに、痛みの側面だけを前面に押し出している感が否めないと。これは深刻に受けとめるべきだと思いますね。ついきのうですか、経団連と日経連の合同部会でもそういうことが出ております。
私たちはこの人たちの立場に立って言おうとは思っていないんですけれども、経済界からも反発が出ている。まして患者さんを直接扱っている医師会、歯科医師会初めその他あらゆる医療関係団体からも、痛みだけ、これはお金の面ですけれども、そういうことで改革の中身がないということになっています。
そこで、私はきょう幾つも質問してきて、これだけで一時間以上やりたいと思ったんですができないので、実は医療費の効率化ということについて今いろいろなことが言われているわけです。老人医療費だけでやるのか、管理枠を、あるいは若者にもふやすのかどうかということがあるんですが、基本的な考え方をしっかりしない限り、これまでと同じように診療報酬点数なり総枠予算なりでやろうとすれば反発を招くだけなんですよ。必ずすり抜けるところが出てくるんです。私は医療現場にいたからよくわかります。どんな改定をしようと、どんなにやろうと、必ず抜け道はあって、その中で、患者さんに支持されてちょっとプラスアルファをして経営を安定させる病院もあるし、患者さんの利益を無視してあくどいことをやって利益を得るところもあるし、何とかなるんですね。
そこで、実はどういうふうにすれば医療費は本当にやむを得ない医療費だけにできるのか、むだな医療費がなくせるのかということについて、私も参議院に当選させていただいて以来ずっとやってきました。それで、私はいつも我が長野県が一人当たり老人医療費一番低いですよということを自慢げに、なぜかということで議論を予算委員会の場でもここでもさせてきていただきました。
ついおとといですか、医療費マップが配られました。私も今、壁に張ってありますけれども、皆さんのところに配られたと思いますが、御承知のとおり西高東低ですね。西の方が真っ赤、それで北海道が真っ赤で、長野県とか阿部委員長の山形県とか前の中島委員長の山梨県とか、低いわけですよ。
何で同じこんな狭い日本の中でこんなことが起こるのか。これは高齢化で補正しても同じことなんですよね、高齢化率で。あと確かに風土病もあるかもしれません。風土病とは言いませんけれども、私が専門にやってきた肝炎に関しては西高東低です。これはもう地域的なことがあるのでぜひ取り組んでいただきたいと思いますし、最近の厚生省の御尽力、努力は多としますが、それをのけても、何で地域差が出るかということは実は医療費のむだがどこにあるかを解析する上で非常に重要なポイントだと思うんですね。
一つは、老人医療費がなぜ高いかということでやってきました。最近、「医療費の地域差」という本が地域差研究会というところから出ました。東洋経済新報社、ちょっと高くて三千六百円なんです。この研究会の主宰者が、実は先ほどちょっと御紹介いたしました、あのエイズの郡司メモで悪名高くなった郡司篤晃君、私の大学時代の同級生であります。今は聖学院大学の教授です。九月十一日発行なんですね、最新のものです。
彼は、これまで医療費の低い、例えば長野県はどうかと。一方で平均寿命が長いじゃないかということで、予防活動をやったとかですね、我々予防活動やりました、あるいは家が広くて家へ帰れるんだとか、いろんな社会的要因とかいろんな分析がありましたが、これは純粋近代経済学分析なんです。中を読んでみてもよく理解できないんです、いろいろな数式が出てきたり表が出てきたり。レセプトをもとに分析しているんです。このレセプトというのがまたインチキでして、レセプトを通すためにレセプト病名というのをつけるわけですよ、レセプト病名というのをつける。だから、病名と医療費が適正かなんて判断できないんですね、だから非常に問題だと思うんですが。
ただ、がんについての医療費分析、私、びっくりしました。がんに関してはレセプト病名というのはないんですよ。CTを撮った、脳腫瘍の疑い、こういう病名はつけますよ。だけれども、それはオミットしますからね。がんはほとんど間違った診断はまずないだろうと考えていい。
ところが、そのがんの医療費が北海道が高いんですよ。何でですか。それで、私は二、三、地元の人にも聞いてみたり、この本をじっと読んでみました。わかりました。要するに、彼は結論的にこういうことを言っているんですね。これは老人医療費だけの問題じゃないんだと。今、医療というのは公定価格で点数が決まっています。公定価格が決まっていて価格競争ができない状況の中で、だけれども患者はどこの病院でもかかれるというフリーアクセス、非常にいいものだと言われている。言われているんですが、そのフリーアクセスのもとで、情報の非対称性ということはあるけれども、患者が自由に病院や医者を選べるということで、基本的に競争原理が働くんだ、市場が成り立っているんだという前提でやっているけれども、全然それがおかしいことになっているんです。
どうなるかというと、病院もどんどんどんどんふえてきた、医者もふえてきた、患者さんが来ないとやっていけないからどうするかというと、設備投資をするんですね、広い意味で、職員を雇うことも含めてでもいい。設備投資をすると、そのコストを回収しなきゃならない。コストを回収しなきゃならないから収入をふやさなきゃならない。患者さんがふえただけではだめで、一人当たりの患者さんにちょっとずつ乗せるんです、初めは良心の痛まない範囲で害のない検査や薬を。そのうちに苦しくなってくると、背に腹はかえられずで、害があろうがなかろうが点数を上げる。そのために実は出来高払い制というのが実にいい仕組みになっているんだ。
そして、その結果、その病院はどうなるかというと、経営が楽になるかというとますます苦しくなる。要するに、地域の中で競争ということが行われているということで、かえって医療費が上がってだれも得をしていない。患者さんも余分な治療をされたり余計な検査や薬をもらう、そして医療機関の方もやればやるほど苦しくなる。どこにお金が行っているかというと、きのうの夕刊に出ていました、医療機械屋さんとか、あるいは薬屋さんとか、あるいはお金を貸す銀行屋さんとか、そこへまたもってきて株式会社を入れて株主にまで配当をしようとする。どこか間違っていませんかということなんですね。
しかも、もう一つこれを読んでおもしろかったのは、むだな医療費は、医師がむだをつくっている部分が七割だ、だけれども患者がつくっている部分が三割ある。共同でやらない限りだめだということですね。
それともう一つ、北海道でなぜそうなるか。現場でいろいろ聞いてみますと、確かに北海道は人口だけじゃなくて病院が札幌集中なんですね。非常に競争が激しい。内地からまで患者を集めて老人病院が広がったことは有名ですよね。サービス競争をするわけです。そこで、そのコストを穴埋めするために少しずつ点数を上乗せするわけです。
私は十四年間審査委員をやっていたんですが、どうも調べてみると都道府県単位で医療費の高低が決まると。もう少し低いレベルで、二次医療圏とか市町村で比較しても余り差がなくて、都道府県ごとの差が出る。なぜか。これは審査会にあるんじゃないか。社会保険と国保と二つ審査会が都道府県ごとにありますね。私も十四年間国保の審査委員をやりました。
北海道の審査は、恐らく札幌で厳しい競争の中でちょっとずつ上乗せをしている医療機関の先生方が集まって審査会が構成されている。そうすると、悪意でなくても、まあ医療というのはこんなものだというおのずと高いレベルの意識が形成される。そうすると、北海道の道東であれ道北であれ、過疎の地であっても札幌基準の審査というか、このぐらいが標準の医療だなというふうなことでお金が支払われる、審査が行われる。
考えてみますと、長野県の私どもは、私ども国保、地域医療の大先輩、リーダーである吉沢国雄先生、浅間総合病院の院長、その後の後の院長の倉沢隆平先生、もう徹底的にむだな薬は使うなということを言われました。その浅間病院でも私の行った諏訪中央病院でも、全国レベルでも医薬品の比率は低いんですね。外来では患者とけんかですよ。腕を出して待っている患者に注射はしない、帰れと言って、なぜ注射が必要ないか、毎日そんなことをやってきたわけですよ。そういう国保の病院が組織立って運動をしていた。
ひょっとすると、それも地域の医師会の先生とも常日ごろ勉強会をやっていますからそういう雰囲気ができたのかもしれないということもありますと、彼が提案しているのは、やっぱりインセンティブを与える方向にしなきゃならない、もうこれは定額払いしかないと。フリーアクセスについても、情報を幾ら公開しても患者さんが完全判断できるかどうかわからないからゲートキーパーをつくる必要がある。言ってみれば、家庭医のような問題ですね。
私はそれは非常に大事なことだと思うんですが、いかがでしょうか。