港徹雄の発言 (経済産業委員会)

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○港参考人 おはようございます。港でございます。
 本日、私は、中小企業が今日直面しております困難な状況を生み出しました原因を明らかにしまして、この長期不況から脱却するための私なりの具体案を御説明させていただきたいと思います。
 中小企業が長期にわたって呻吟しております経済の混迷の原因は、根本的には、情報技術革新がもたらした産業経済システムの転換に伴う摩擦にあります。それが過去の誤った景気判断に誘導された不適切な経済政策によって増幅された結果であるというふうに考えております。
 情報技術革新は、グローバルなレベルで高密度な情報を瞬時に伝達できるようになり、取引コストを大幅に縮減させるとともに製品の標準化を進行させております。このことは、経済の効率性を飛躍的に高めるなどさまざまなポジティブな効果を持ちますが、同時に、次のような意味で日本企業にネガティブな影響を与えております。
 まず第一に、日本産業の国際競争力の源泉でありました日本型下請生産システムが持っております優位性を情報技術革新が崩しているということであります。にもかかわらず、情報革新時代に対応した競争力のある新たな日本型産業システムが確立されていないということであります。
 第二に、情報技術革新によって市場機構の有効性が増大するようになり、一部には、古典的経済学が想定したような完全競争市場というものが実現されつつあります。その結果、価格競争が支配的になり、企業のマージン率が非常に低くなっております。その結果としてデフレ圧力を強めております。
 第三に、情報技術革新によって、企業規模の拡大による規模の不経済性というものが縮小しております。そして、生産の集約化、大規模化が引き起こされているのであります。このために、中小企業はその存立基盤を脆弱化させております。
 このような産業システムの転換に伴う大きな摩擦があり、また、その転換のプロセスや新しい産業社会へのビジョンが明確にされてこなかったことが、長期にわたる経済混迷の根本的な原因であると考えられます。加えて、一九九〇年代における経済企画庁の景気判断の誤りが不適切な経済政策を誘導させ、倒産、リストラの増大によって消費マインドが冷却し、さらに不況が悪化するという悪循環に陥らせております。
 また、技術の標準化による生産の海外移転が不況を一層悪化させておりますが、製品輸入の拡大が国内の生産者に大きな打撃を与えているということは事実であります。しかし、製品輸入の増加率は、一九七〇年代あるいは八〇年代の方がはるかに高かったわけであります。
 また、最近の円安水準は、海外投資や輸入増大に一定の歯どめをかける効果をもたらしております。にもかかわらず、空洞化懸念が強いのは、これは、輸入がふえているからとか、あるいは生産が移転しているからということとともに、国内の市場が非常に縮小している。国内の市場が非常に縮小している状況で輸入が増大するということがこういう痛みを伴っているわけでありまして、この空洞化の問題も、言いかえれば国内経済の問題であるわけであります。
 以上の景気認識のもとに、経済と中小企業経営を再生させるためには、まず、企業家や消費者の冷却した心理を改善させ、将来に対する確信、コンフィデンスを強めることであると考えます。かつて、中小企業者を鼓舞した七〇年代の中小企業ビジョン、そういうビジョンが中小企業庁によって打ち出されましたが、近年では、こうした明確で説得力のあるビジョンが残念ながら見出されておりません。
 次に、消費マインドの悪化は、先行きに対する不安感と物価の先安期待によって引き起こされております。したがって、まず、先行きに対する不安感を解消する必要があります。
 現在の雇用情勢のもとでは、失業は最大の不安要因であります。しかし、もし失業者に新しいビジネスを始めるという創業の機会が大きく示されていれば、失業は新たな挑戦の機会というふうに受け取られることも可能であります。このためには、雇用政策と創業支援政策とを一体化させ、減少しつつある日本の自営業者の数を大幅にふやすことが必要であります。
 実際、日本でも、一九二〇年代の大不況の折には、造船工業等で大量の解雇が発生したわけでありますが、そうした労働者、技能者の多くは新しい家内工業的なビジネスを始めたわけでありまして、そういうものが日本の中小下請企業の原形を形づくったわけであります。しかし、今次不況を顧みますと、失業率の増大にもかかわらず創業の増加が見られないということであります。
 一方、英国では、一九八二年から、失業者が創業する場合に、失業保険給付にかわって一週間四十ポンドの手当を一年間にわたって支給するという企業開設手当、エンタープライズ・アローアンス・スキームというものを導入しました。この制度によって最盛期には年間十万以上の自営業が創業され、自営業者の総数は、一九七九年の百六十二万から八九年には三百二十一万と倍増しております。
 中小企業の新陳代謝というものは経済の活力の源泉であります。したがって、構造的にどうしても脱落する中小企業は出てくるわけでありますが、それにかわる新たな中小企業をいかに創出するかということが最大の課題であるわけです。
 ところが、今日の日本は、事業閉鎖が開業を大きく上回っているという状況があるわけでありまして、こうした状況を打破して起業が促進されなければなりません。しかし、従来の経済産業省の創業支援策は、どちらかというと、二十一世紀の日本産業の成長を担うような知識集約型のいわゆるベンチャーに偏ってまいりました。いわばタイの一本釣りというような政策であると言えると思います。しかし、大企業の従業者が離職をして創業するということには大きなリスクと決断を必要とします。したがって、なかなかベンチャーの創業というものが促進されていないのが現状であります。
 日本の自営業者は、一九八三年には六百九十一万人でありましたが、九八年には五百九十四万というふうに百万近くも減少しているわけであります。タイでなくても、たとえアジやイワシのような自営業であっても、こういう自営業を大量に創出するということが日本産業の活力維持にとって非常に必要であります。
 こういうふうな意味で、先ほどから申しておりますように、雇用政策と創業支援政策を一体化するという施策が考案される必要があるというふうに存じます。また、先ほど申しました物価の先安期待による買い控えを解消するためには、デフレスパイラルを断ち切る大胆な政策が考案される必要があると存じます。
 次に、金融の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
 イギリスでは、新規開業企業の五年生存率が平均三〇%であるのに対して、信用保証制度を利用して開業した場合には、それが五九%、倍近くまで高まっているという研究がございます。あるいは、信金中央金庫総合研究所の調査では、最近の調査ですが、望ましい中小企業振興策の第一位に信用保証条件の緩和が挙げられております。このように、中小企業にとって重要な意義を持っております信用保証制度をさらに効率化させ、新たな枠組みが創出されなければなりません。
 こうした信用保証制度の新たな枠組みと申しますのは、その効率性、費用効果を高めるような制度、すなわち、現在一律に保たれております保証料率の多様化が検討に値すると思います。現在は一般貸し付けの保証料は一律〇・七%であると存じますが、こうした一定料率では、その保証料以上に経営内容が悪い中小企業が申し込むというようないわば逆選別が生じるわけでありまして、代位弁済率が保険料率を上回って何倍にもなってしまうというようなことが起こるわけでございます。したがって、中小企業の経営内容、倒産確率に応じたランクづけをして料率を変化させるという必要があります。
 例えば、担保力は十分ではないんだけれども、経営内容は良好で倒産確率が低い中小企業の場合には〇・二%程度まで料率を下げる、逆に、経営内容が悪い、倒産確率の高い中小企業の場合には五%程度の保証料を徴収する、こういうふうなことも考えられるのではないかと思います。たとえ五%の保証料を徴収しても、二〇%、三〇%というような高利の商工ローンで融資を受けるよりもはるかに金融費用は少なくて済むわけでございます。
 このように、非常にマクロ、ミクロの両面から中小企業政策の新たな枠組みを考えることが長期不況から脱出するための方途であると私は考えるわけであります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 港徹雄

speaker_id: 2057

日付: 2002-03-15

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会