磯野啓の発言 (経済産業委員会)
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○磯野参考人 磯野でございます。
まず、私が社長を務めております帝国石油株式会社につきまして、手短に御紹介申し上げます。
当社は、昭和十六年に、太平洋戦争が始まる直前に、石油資源の確保が喫緊の重要問題となりましたことから、帝国石油株式会社法に基づきまして、半官半民の国策会社として設立されました。戦後の昭和二十五年に帝石法が廃止されまして、民間会社として再出発をいたしまして今日に至っております。設立以来約六十年間でありますが、この間、戦争あるいはオイルショックなど、エネルギー業界を取り巻きます環境が大きく変化する中で、一貫して我が国の石油開発の最前線で事業を行ってまいりました。
この間、国内では開発の軸足を石油から天然ガスに移しまして、現在の収益源の柱は国内の天然ガス事業となっております。本年中に全長約千百キロメートルに達する予定の新潟から関東甲信地方に延びますパイプラインネットワークを建設するなぞ、安定的かつ効率的な天然ガス供給システムの構築によりまして、沿線の都市ガス事業者やそのほか大口需要家に、新潟県で生産いたします国産天然ガスを供給しております。
海外では、昭和四十一年以来数多くのプロジェクトを手がけてまいりましたが、現在では、コンゴ、エジプト、ベネズエラなどで原油、天然ガスを開発、生産しておりまして、来年には、マレーシア、アルジェリアで天然ガスの生産が開始される予定であります。
本日は、長年石油開発の実業に携わってきた立場から、石油公団の廃止に当たりまして、民間企業の側としての所感を率直に申し上げさせていただきます。
これまでの石油開発政策の議論をいろいろ拝聴する中で、今や石油は地上でいつでも買えるコモディティーとなったというようなお話もあったかと思います。しかしながら、昨今のOPECの影響力復権、カスピ海周辺等で見られるような、メジャー等欧米企業のエネルギー支配に向けた積極的な戦略展開、それから中東原油への依存を回避したいアメリカのロシアへの急接近等々を見ますれば、石油はまさしく政治性、戦略性を有する物資であることは間違いなく、むしろ、近ごろその性格を再び強めてきているのではないかというふうに考えております。
我が国のエネルギー資源のほとんどは輸入に依存しておりますし、また、アジアというくくりで見ましても、近年急速に経済発展を遂げつつある中国を初めといたしまして、アジア地域全体の域外依存度が高まっておりますことから、エネルギーセキュリティーの確保は極めて重要性が高いことに変化はありません。したがって、今後も自主開発原油の確保は基本的施策として促進すべきものと存じます。そのためには、国の政策的支援、特にリスクマネーの供給は不可欠であります。欧米メジャー等、国際開発企業との競争が激化する中で、後発の宿命を背負った我が国の民間企業はまだ経営基盤が脆弱でありまして、残念ではありますが、巨大なリスクを負う体力や資金調達力を備えていないのが現状であります。
これまでの石油公団が担ってきました石油開発支援につきましては、自主開発原油の増加について一定の役割を果たしてきたものの、その運営等については十分でないという御批判があったことも事実であります。特殊法人改革の動きの中で、廃止もやむを得ないのかもしれません。
しかし一方で、開発政策が必要であることにはいささかの変わりもございません。石油・天然ガス開発に特有なリスクマネーの供給、産油国へのアクセス、技術開発とその活用、情報の収集、分析への支援といった諸機能は何らかの形で維持存続することは、自主開発の推進に不可欠と存じます。
一方、民間企業側も、これまで国の支援を受けながら十分な成果を上げていないことを重く受けとめねばならないと思っております。過去の取り組みに関しまして反省しなければならないと思っております。
当社といたしましても、海外の過去の石油開発事業の実績は、収益面では決して芳しいものではありません。国による支援が七〇%まで可能だということで判断が緩んだとは思っておりませんが、結果的に成果が出ていないのは確かでございまして、反省いたしております。
また、いわゆるナショプロは、多数の関係者が少しずつシェアを持つ形によりまして、責任の所在が不明確になるという問題があったという感もぬぐえません。
当社の場合、これらの過去の反省に立ちまして、平成十二年八月の石油審議会の中間報告より一年ほど前に、海外事業戦略の抜本的な見直しを実施いたしました。具体的には、それまでは、探鉱プロジェクトを中心として世界じゅうにビジネスチャンスを求めてきた方針でありましたが、これを大きく転換いたしまして、海外事業での経験、ノウハウの蓄積を最も有効に生かすべく、南米及び北アフリカに重点地域を絞りまして、事業形態も探鉱だけではなく、サービス事業、資産買収、ガス開発事業など多様なタイプの事業を組み合わせながら、海外における事業基盤の確立を目指しているところであります。
実際に、ベネズエラにおきまして八年間オペレーター企業として操業を行ってきた中で、確かな手ごたえを感じ始めております。その経験から、産油国に根を張るためには単に投資をするだけではだめでありまして、操業現場を持ってオペレーターシップをとることによりまして、産油国側の雇用の創出等を通じまして現地政府等に十分認知されることが、次の案件獲得のために非常に重要だと感じております。
また、技術力は、優良プロジェクトへの参加や事業採算の改善の面でも重要でありますが、特にオペレーターとして認知されるために不可欠な要素であります。石油公団に蓄積された石油開発技術の活用ができるということは大きな力にはなりますが、一方、同時に、総合技術である石油開発技術力を涵養するためには、操業現場の経験を積むことができるオペレータープロジェクトをふやしていくことが技術力の向上に有効であると考えております。
例えばベネズエラの例をとりますと、この地域を真のコアエリアにしていくためには、既発見未開発油田の買収なぞの形で、生産のアセット、資産を手に入れることから出発していかなければなりません。そのためには巨額の資金調達を行う必要がありまして、国による債務保証制度による支援が不可欠となります。これは当社に限らず、石油開発業界に共通した現状でありまして、債務保証制度の存続は各社の共通関心事でございます。今回の法案でその保証限度額が六〇%から五〇%に下がったことは残念ではありますが、制度として残していただいたことは大変ありがたいことだと感じております。
以上のように、官民ともに反省すべき点は正し、真摯に努力を重ねていくべきでありますが、民間企業側には、海外での開発事業に取り組んでいく強い意欲がございます。技術力も備えております。ただ、いかんせん、海外企業と対等に競争していくためには政策支援による後押しが必要でありますので、そこのところはぜひ御理解をいただきたいと存じます。
また、私のこれまでの経験からしまして、世界に伍して開発事業を展開していくためには、我が国にも、ある程度の規模と総合力を有し、国際的にも認められるような中核的企業グループが必要だと認識しております。そして、そうした提携なり統合といったプロセスは、あくまでも民間企業がそれぞれの戦略に基づいて自主的に行うことが効果的であり、その結果として、多様な形で自立性を備えた、より力がある企業グループが形成されていくことになるのではないかと考えております。
最後に、石油開発企業の上下流での統合という御意見がございますが、私個人といたしましては、開発業界の現状にかんがみ、まずは上流部門での水平連携または統合を模索して、上流部門での力をある程度つけるということが先決であると考えております。また、そうした形ができたときにも、できるだけ多くの民間資金を開発事業に呼び込んで、民間企業の活力を引き出していくことを念頭に置いた支援のあり方を追求していくことが肝要であると考えます。
以上でございます。(拍手)