永田勝也の発言 (経済産業委員会環境委員会連合審査会)

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○永田参考人 早稲田大学の永田です。よろしくお願いいたします。
 産業構造審議会並びに中央環境審議会の場で、本法案の基礎となる議論をさせていただきました。それに関与した者といたしまして、このような場で発言させていただく機会をいただきありがとうございます。
 まず、自動車のリサイクルをめぐる状況、特に循環型社会へ向かっての動きについてお話をさせていただきます。
 二〇〇〇年、循環型社会形成推進基本法あるいはグリーン調達法を初めとする六つの法律の制定、改正が行われまして、循環型社会元年と記憶されることになりました。自動車リサイクル法案につきましては、こうした中で検討された最初の個別製品に対する法制化であるという点は重要なことだというふうに認識いたしております。
 まず、この循環型とはという点について述べさせていただきます。お手元に資料を配付させていただきましたが、図の一、一ページ目でございます。循環型のイメージということで、私なりの整理したものを挙げさせていただきました。
 循環型社会、一般的な理解では、いわゆるサステーナブルソサエティー、持続的発展が望める社会というのが一番妥当な言葉だろうというふうに思っています。すなわち、社会の入り口での物質資源あるいはエネルギー資源の使用の削減、また有害物質の使用の回避、あるいはそれを循環体系の中で使って拡散の防止を図るということ、また出口ではこうしたものの排出を可能な限り抑えるというのが循環型社会の基本であろうかと思います。
 こうした流れの中での社会全体としての効用の拡大、あるいはこれは製品個々においても同じような考え方ができるわけでございまして、製品の機能を高める、あるいはそれに使う資源量を減らすということが重要な視点だろうというふうに思っております。
 端的に言いますと、大量生産、大量消費、大量廃棄ということからの脱却でありまして、また、同じ効用ならそこで使用する資源や有害物質の使用を可能な限り抑制することを目標とする社会であるということが言えるのではないでしょうか。社会の内部では、リユースやリサイクルのさまざまな取り組みが多重、多層に組み合わされて効果的に行われることになると思いますが、これはあくまでも手段でございまして、さきに申し上げた目標というものとはまた異なるわけで、この手段を使って目標を達成するということを考えていかなくちゃいけないんだろうというふうに思っています。一般に言われていますように、大量生産、大量使用、大量消費、大量リサイクルということであっては循環型と呼べないということになろうかと思います。
 一方で、さきに触れましたような法律を含めまして、循環型社会の構築に向けての我が国の法体系、これは図の二の方で示させていただきましたが、このようなたて糸、よこ糸のマトリックス構造で表現するのが一番適当かというふうに思っております。詳細は省略いたしますが、製造から廃棄・リサイクルにわたる軸を持つたて糸としての個別製品に対する法律、それからよこ糸としてそれぞれ、製造、流通・販売、廃棄・リサイクルの局面に主眼を置いた法律が組み合わされておりまして、効果的な体系を構築しているものと判断しております。
 循環型社会の構築に当たりましては、これまで廃棄物のリサイクルとか処理といった点に軸足を置いておりました対応から、より上流サイドの製品の設計や生産までを含めた包括的な対応が有効でありまして、また重要であるということが指摘されておるわけでございます。こうした点について、まだまだ十分とは言えないかもしれませんが、我が国の法体系は、基本的にはその体制を持っているということが言えるのではないでしょうか。
 たて糸の個別製品に対する法律というのは、よこ糸の各施策を連携させて、それぞれのよこ糸の意図する循環型への対応を促進させ、相乗効果を生み出すように意識して構築していく必要があろうかというふうに思っております。
 このような法体系は、製品連鎖、プロダクトチェーンの中で循環型社会の構築を目指すものとしてOECDで議論されておりますインテグレーテッド・プロダクト・ポリシー、IPPと呼ばれておりますが、これにも合致しておりまして、また先取りしたものとして評価できるのではないかというふうに思っております。
 また、循環型社会の構築に向かっての我々の行動規範といたしましては、将来へのツケ回しをしない、あるいは将来予見されるような懸念に対してあらかじめ手を打つという未然防止の思想が大切でございますし、また一方で、共創、コークリエーションなんて英語で訳す方もおられますが、自立した関係主体がともに参加、協働して新たな関係や価値観をつくって問題を解決していこうという思想というふうにも理解することができますが、この点が非常に重要なのではないかというふうに思っております。
 法案の必要性については、二点に分けて議論できるかと思いますが、まず一点は、緊急かつ短期的な視点であり、また、言いかえれば廃棄物の視点でございます。
 先ほどの話にもございましたように、最終処分場の逼迫、これはかなり深刻な状況に至っております。ASRのシュレッダーダストの問題の根本的な解決が求められている。このためには、処理過程でのリユースやより高度なリサイクルの促進が重要であります。
 また、最終処分費の高騰あるいは鉄スクラップ価格の低迷等によりまして逆有償化が進展をしており、こうした処理費用が使用済自動車の引き取りの際に十分に反映されていない、あるいはユーザーから受け取った費用が本当に必要とするところに回っていないという御指摘も受けております。こうした流れの中で、既存のリサイクル体系が機能不全に陥ったり、あるいは崩壊の危機にあるのではないかということも言われておるわけでございます。
 さらに、フロンやエアバッグの回収・処理という新しい課題も発生しまして、上記のような状況がより一層加速されております。
 このような状況から、処理ルートの入り口での不法投棄、あるいは処理ルート内部での不法投棄や不適切処理の増大が懸念されておりまして、既存のリサイクル体系の信頼性の向上も求められているところでございます。
 また、中長期的な視点あるいは循環型社会へ向かっての視点という点で見てまいりますと、市民の環境意識の高揚を背景とした循環型社会への変革の中で、さきに述べましたような原則に適合した対応が求められております。廃棄物としての処理・リサイクルの適正化のみでなく、循環型社会の目標に向けて、製品連鎖の上流での対応も加速させる永続的な取り組みが可能なシステムの制度化が必要なのではないでしょうか。
 使用済自動車の廃棄・リサイクルの過程では、基本的には適正処理ルートへの誘導、これは入り口でございまして、内部では適正処理の推進、リサイクルの高度化、さらに出口ではASRの最終処分からの脱却というのが重要な視点だろうというふうに思っています。上流側の対応としては、三Rに代表されます循環型社会に適合した物づくりの推進が重要であり、こうした対応を実現するには、関係者の役割分担や義務づけ等が求められ、また、費用徴収や支払いのあり方に関しましても明確化が必要だというふうに判断しております。これが法制化につながるということになろうかと思います。
 法制化に当たって配慮すべき事項ということで一言述べさせていただきますが、まず第一に配慮すべき人たちというのは、関係主体として最も人数の多いユーザーだろうというふうに考えております。
 さきに述べましたような使用済自動車への対応と同時に、循環型社会の構築に向けてのユーザーの役割といたしましては、適正処理ルートへの使用済自動車の引き渡しと処理費用の負担、並びに環境配慮製品の購入の視点が重要であろうかと思います。現状の抹消登録システムでは、正直者が損をするというような体制になっており、適正に処理ルートに引き渡した者が報われるシステムへの改善が必要であります。
 また、こうしたことに対応しやすいシステムとすることが求められるのではないでしょうか。幸いにしまして、家電等の一般耐久消費財とは異なりまして、自動車には登録制度や車検制度があります。この点を有効に活用していくことが重要かというふうに思っております。また、費用の徴収に当たりましては、対応のしやすいという点から、排出時点よりも販売時点にそれを求めるのが適切だろうというふうに思います。
 一般廃棄物の有料化の進展にも見られますように、廃棄物処理には費用がかかって、その負担に関しましては支払いの用意のあることが市民の意識として定着しております。ただし一方で、その費用に関しましては合理性、すなわち納得のいくものかどうかということが重要視されております。また、環境配慮製品の購入の視点からは、その費用の明示ということも重要でございます。さらには、循環型社会への変革に適合した体制整備に寄与する費用設定のあり方になっているかどうかという点も問われているかと思います。
 二番目に重要なのは、適正処理の役割を担っていただく解体業や破砕業の方々でございます。
 家電とは異なりまして、使用済自動車のリサイクルに当たっては、既存のリサイクル体系が存在します。その最大限の活用が、社会コストミニマムで循環型の構築に寄与すると考えられます。また、こうした体制の構築が、今後の循環型社会へ向かう取り組みにも大いに力を発揮するものと考えております。
 そのためには、必要なところに適正な費用が充てられ、また、環境配慮に努力した業者が報われるシステムでなければなりません。これには、既存体系を動脈態様に戻し、ビジネスとしての高度化、健全化を図っていくことが望ましいというふうに思っております。こうして適正処理やリサイクルの実施の責任を果たしていただく。また、静脈でのリサイクルの実態を的確に製品設計等に反映させていただくような製造者との情報交換も重要であろうかというふうに思っております。
 役割として見た場合には、最も重要なのが輸入業者を含めた製造業者であります。
 リサイクル・イニシアティブに定めました二〇一五年の目標の達成を目指しまして、さまざまな局面、場面で中心的な役割を果たす必要があろうかと思います。OECDのEPRでの議論では、こうした中心的役割を、最終責任あるいは一義的責任、明示的責任という言葉で表現しております。
 ASRや指定回収物品、フロン類の引き取り・処理システムの整備等の実施責任に加え、新たに今般構築されるシステムの健全な機能の維持、目標が達成できるよう、総括的な責任を有するのが製造事業者の役割であろうというふうに考えております。これには、最後のA3の表で示しましたようなさまざまな付加的な役割が加わってくる。特に先ほどの話もありました、廃棄物の物流管理として重要なマニフェストシステムの構築、あるいは費用収受の仕組みの実現、費用に係るリスクの負担、リサイクルの高度化、関係者の取り組みを促進する各種情報提供システムも含まれるかと思います。さらに、最も重要なのは、三Rに配慮した製品の開発、提供ということでございます。
 このほか、関係者といたしまして引き取りを行う者にも、ユーザーの費用の支払いの確認や次工程への使用済自動車の適正な引き渡し、リサイクルされたかどうかの確認等が求められます。加えて、上の方に書きましたように、国、地方自治体の役割も重要かというふうに思います。
 今後の課題といたしましては、自動車リサイクルを進めるに当たって、引き続き検討していかなきゃならない課題を幾つか挙げさせていただきます。
 まず、先行実施されるフロン回収・破壊法への対応です。それから、離島問題への対応、あるいは放置自動車への対応、さらに、海外への中古車やリサイクル部品等も含めた全体としての使用済自動車のフローの把握、あるいはリサイクル率のモニタリング方法の確立、加えて、ASRのリサイクル技術、特にケミカルあるいはサーマルリサイクル技術の位置づけでございます。また、既存の不法投棄されたりあるいは野積みされております車両につきましても、法制度の施行の前にこれを片づけていかなくちゃいけないものと思っております。また、現状のタイヤやバッテリーのリサイクルシステムとの連携強化を図り、これを一体的に解決していくということも求められようかと思っております。
 循環型社会を実現していく、実態として動かしていくのは、市民と動脈あるいは静脈にかかわる事業者であります。この両輪の関係がうまく機能するよう、国や地方自治体はサポートをしていかなければなりません。今般の法律をジャパン・モデルとしてその優位性を欧州の制度と比較するなら、先ほど申し上げた共創の思想に基づき、自立した関係主体がパートナーシップを組むシステムとなっていること、また、廃棄物としての処理・リサイクルのみでなく、より上流の物づくりへの効果的なフィードバックを意図したこれからの循環型社会の構築にも資するシステムになっている点を強調してよかろうかと思います。
 終わりに当たりまして、図二の下の方にも示しましたように、循環型社会の構築は、ここに掲げたような法律だけで実現できるとは考えておりません。さまざまな制度の中、社会システムの中で配慮がされることが望ましいというふうに思っております。
 以上で私の発言を終わりにさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115404086X00120020604_006

発言者: 永田勝也

speaker_id: 27841

日付: 2002-06-04

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会環境委員会連合審査会