高市早苗の発言 (憲法調査会)
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○高市委員 政治の基本機構のあり方に関する調査小委員会における調査の経過及びその概要について御報告申し上げます。
本小委員会は、これまでに計五回の会議を開き、それぞれの回につき、参考人をお呼びいたしました。
まず、二月十四日の第一回の会議では、東京大学教授高橋和之君から、議院内閣制のあり方について、また、三月十四日の第二回の会議では、北海道大学大学院法学研究科教授山口二郎君から、統治機構を再検討する視点について、また、四月十一日の第三回の会議では、京都大学教授大石眞君から、両院制と選挙制度のあり方について、また、五月二十三日の第四回の会議では、大阪大学大学院法学研究科教授松井茂記君から、司法審査制度のあり方について、さらに七月四日の第五回の会議では、高崎経済大学助教授八木秀次君から、明治憲法体制下の統治構造について、それぞれ御意見を聴取いたしました。
各回の会議における参考人の意見陳述の詳細については小委員会議録を参照いただくこととし、その概要を簡潔に申し上げますと、
高橋和之君からは、
現在の日本のような積極国家における政策推進には、内閣が統治を行い、国会がこれをコントロールするという図式の中で政治のリーダーシップが発揮されることが必要であり、そのためには、国民が選挙を通じて、政策プログラムとその実行主体である首相とを一体のものとして、事実上、直接的に選ぶ国民内閣制の導入が有用であるとの意見が述べられました。
その導入に当たっては、
一、国民の多数意思が明確化されるような選挙制度のあり方、
二、多数の支持を受ける政策プログラムをつくり上げるという政党の役割、
三、選挙等において多数派形成を意識し、明確な意思表明を行うことを求められる国民の心構えについて検討を要するとの指摘がなされました。
また、国民内閣制の導入には、憲法改正は不要であるが、参議院は権限行使を自制する等の憲法習律の確立を図るべきであるなどの意見が述べられました。
山口二郎君からは、
我が国の議院内閣制について、
一、与党の暴走と頻繁なリーダーの交代、
二、官僚機構の巨大化に伴う内閣の弱体化、
三、内閣と与党との不透明な関係といった運用上の問題について指摘がなされた上で、
イギリス型議院内閣制のような、
一、内閣と与党の一元化、
二、与党の政権参加を通した政策の実現、
三、政治主導による政官関係の確立を図るべきであり、
その際、制度に合わせた新たな憲法習律等をつくっていくことや、国民主権の観点に立った行政のあり方について考えることが必要であるとの意見が述べられました。
その改革に向けた提言として、
制度の面では、
一、内閣における国務大臣の分担管理原則の克服、
二、政策決定手続の一元化、
三、国会の行政に対するチェック機能の強化が、
また、慣習の面では、
一、政党、指導者、政策を一体のものとして選ぶ選挙、
二、与党の意思決定機関と内閣の重合、
三、与党の所属議員が内閣の一員として政策形成に当たるような党運営、
四、透明で開かれた与党の党首選出等が、それぞれ挙げられました。
大石眞君からは、
一院制では多様な有権者の意思を集約できるかは疑問であり、両院制を維持すべきであるとの認識のもと、両院がそれぞれ独自の機能を果たすことにより両院制を意義あるものとするため、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政の運営に反映することに配慮しつつ、両院組織法をできるだけ異なった原理に基づくものにすべきであるとの指摘がなされました。
その上で、
一、参議院に期待される、衆議院のダイナミズムを緩和するという役割を選挙制度にどう反映させるかが重要であること、
二、参議院の現在の権限を見直し、衆議院が法律案の再議決を過半数で行うことを認めるとともに、内閣総理大臣の指名権は衆議院のみに認めることなどの意見が述べられました。
松井茂記君からは、
八十一条の規定は、事件性、争訟性を要件とする司法権に付随して行使される司法審査権限を確認したものであるが、現状では、違憲判決が少なく、また国民が司法審査を求めることが困難であることもあり、司法審査権限が適切に行使されていないとの認識が示されました。
このような認識のもとで、裁判所は民主政の過程に不可欠な権利を厳格な審査を通じて擁護する責任を有し、一方、そのほかの権利については、全国民の代表から構成された国会によって制定された法律が尊重されるべきであり、これにより国民の権利が侵害された場合には、選挙を通じて是正が図られるべきであるとの、プロセス的な司法審査理論が示されました。
その上で、前述のような責任を踏まえた積極的な司法権の行使がなされるよう、硬直的な最高裁の人事制度の是正、事件性、争訟性要件の柔軟な解釈により、法律の違憲性の確認や執行差しとめのための訴訟提起を容易にすること等を含めた、制度改革と意識改革が必要であるとの主張が述べられました。
八木秀次君からは、
まず、憲法論議は国柄に関する論議でなければならず、明治憲法については、その制定に際して、国柄に関する論議が重視された姿勢に学ぶべきものがあるとの認識が示されました。
その上で、明治憲法体制は、
一、内閣と天皇との関係については、政治の中心の所在をめぐり、その解釈、運用に明瞭さを欠いていた、
二、実際の国政では、首相を中心とした運用がなされたが、首相の統制権は弱かった、
三、天皇を輔弼する機関が割拠していたため、その調整に当たった元老の消滅とともに、実質的な統治の中心が不在となってしまった、
四、天皇は名目的統括者であり、したがって、その政治体制は立憲君主制であったとの意見が述べられました。
また、日本国憲法の定める象徴天皇制は、君主を目に見える統合の象徴とする英国流を取り入れたばかりでなく、明治憲法体制における立憲君主制をも受け継いだものであるとの意見が述べられました。
これらの参考人の御意見を踏まえて、質疑及び委員間の自由討議が行われ、委員、参考人の間で毎回活発な意見の交換が行われましたが、五回の会議を通じての小委員長としての感想を申し上げます。
日本国憲法制定当時に比べますと、国民の政治参加意識、納税者としての権利意識は高まり、さらにはマスメディアの発達により、瞬時に多くの国民が国政に係る情報を共有し、世論が大きな流れをつくる時代となりました。経済情勢や外交問題等、国内外の新たな課題に迅速な対応が必要とされる現代社会において、改めて政治主導という観点から、議院内閣制のあり方や両院制のあり方、国民の参政権を担保する選挙制度と政党のあり方を考えてみる必要性を強く感じました。
さらに、違憲審査制度のあり方についても、民主主義と立憲主義の緊張関係等に留意しつつ、引き続き議論を深めていく必要があると感じました。
また、本小委員会では、明治憲法体制下での統治構造についても調査し、立憲君主制などにも触れたところでありますが、今後の調査においては、憲法の背景にある歴史や伝統をも踏まえつつ、天皇制のあり方等を含め、二十一世紀における政治の基本機構がいかにあるべきかについて議論を深めてまいりたいと考えております。
以上、御報告申し上げます。ありがとうございました。