保岡興治の発言 (憲法調査会)

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○保岡委員 地方自治に関する調査小委員会における調査の経過及びその概要について御報告申し上げます。
 本小委員会は、これまでに計五回の会議を開き、それぞれの回につき参考人をお呼びしてまいりました。
 まず、二月二十八日の第一回の会議では、筑波大学教授岩崎美紀子君から、地方分権改革と道州制、連邦制について、また、三月二十八日の第二回の会議では、東京大学大学院法学政治学研究科教授森田朗君から、市町村合併を初めとする分権改革の課題について、また、五月九日の第三回の会議では、東京大学教授神野直彦君から、地方自治と地方財政について、また、六月六日の第四回の会議では、鳥取県知事片山善博君から、地方分権を実現するための諸課題について、さらに、七月十一日の第五回の会議では、三重県知事北川正恭君から、三重県における生活者起点の観点からの取り組みについて、それぞれ意見を聴取しました。
 各回の会議における参考人の意見陳述の詳細については小委員会議録を参照いただくこととし、その概要を簡潔に申し上げますと、
 岩崎君からは、
 機関委任事務制度廃止等を柱にした前回の地方分権改革後の課題として、税財政面での権限移譲、自治体の広域化、市民社会の自治への参加等があるとの指摘がなされた上で、諸外国の基礎自治体のあり方を類型化しつつ、我が国では、社会サービスを提供する能力が持てるように、基礎自治体を再編して規模を拡大した北欧型の制度を目指すべきであるとの意見が述べられ、
 また、道州制、連邦制を採用する場合の課題に言及した上で、我が国では、憲法の改正が必要な連邦制を導入せずとも、執行における地方の裁量を認め、かつ、中央の決定に対し地方が影響を及ぼす制度を整えることで分権を図ることが可能であるとの意見が述べられました。
 森田君からは、
 地方分権推進委員会による改革では、地方分権一括法により機関委任事務の廃止等一定の成果があった、しかし、財政面の改革には不十分な点もあり、地方財政が危機に瀕していることから、今後は、地方への税財源の移譲等を進めていくべきであるとの意見が述べられました。
 また、現在の行政サービス水準の維持や住民の生活圏の変化、人口減少、高齢化社会への対応などの要請から市町村合併を推進する必要があり、その際、一律的な合併推進や数値目標的な市町村数のひとり歩き等は避けるべきであり、個々の自治体の事情に応じたきめ細かい対応が必要であるとの意見が述べられました。
 そして、国主導の現在の合併推進策は地方自治の理念に反する、合併は地方のコミュニティーを破壊する等の批判に対しては、今次の合併推進は、個々の市町村の観点からだけではなく、地域や国全体の観点から推進されなければならないので、地方自治の理念を尊重しつつ、国や県もその調整を行う必要があるという反論が述べられました。
 さらに、合併が進んでいった後の市町村と都道府県のあり方にも慎重な検討が必要であるとの意見が述べられました。
 神野君からは、
 大正デモクラシー運動やシャウプ勧告といった過去からの教訓、及びヨーロッパ地方自治憲章の制定等のように、グローバル化が進む一方でローカル化が進行している近年の諸外国の動きにかんがみると、地方分権を進めるためには、地方への税財源の移譲、地方政府間の財政格差を是正するための制度が不可欠であるとの意見が述べられました。
 そして、今後の我が国の課題としては、さきの分権改革による機関委任事務の廃止によって地方に多くの行政任務と決定権が与えられたものの、課税権についてはいまだ十分に与えられていないという事態を解消するため、個人所得税と消費税を地方に移譲することにより、地方に課税権や決定権がない集権的分散システムから、地方が課税権や決定権を有する分権的分散システムに移行させることが重要であるとの意見が述べられました。
 片山君からは、
 知事としての経験を踏まえ、地方分権を実現するための主な課題として、
 自治体が多様性、地域性を持つ組織等を設けられるように、地方自治法の画一的な規定を改正すべきである、
 独立行政委員会は専門性、当事者能力を欠き十分に機能していないので、民主主義的な要素を注入すべく、委員を公選にする等の方法を考えるべきである、
 多様で自主的な地方議会のあり方を認めるとともに、サラリーマン等の生活に密着した者がその身分のまま議員になれるようにすべきである、
 地方財政は、公共事業等のハード面の政策を重視するか、人材の充実等のソフト面の政策を重視するかという自治体の政策選択に対して中立であるべきである、
 都道府県税を安定的なものにするため、法人事業税に外形標準課税を導入するか、あるいは、法人事業税を国に、個人所得税を地方に移譲する等の対策を立てるべきであるとの指摘がなされました。
 北川君からは、
 これからの行政は、税金を納める側の立場に立って、その満足を第一に考える生活者起点の理念が重要であるという認識を前提に、三重県ではその実践として、請求を受けてから意思決定がなされた結果のみを情報公開するのではなく、政策形成過程をもみずから積極的に情報提供しており、民間企業の経営手法に倣ったニューパブリックマネジメントを導入し、業績評価型行政の実施、予算主義から決算主義への転換等を行っていること等について、知事の経験を踏まえて説明がなされました。
 さらに、今後我が国は、集権官治、官僚が治めるという意味だと思いますが、集権官治から分権自治へ転換して、各地方の特色を生かしたモザイク国家を目指し、地方の発展を図るべきであるとの意見が述べられました。
 これらの参考人の御意見を踏まえて、質疑、委員間の自由討議が行われ、委員、参考人の間で毎回活発な意見の交換が行われましたが、そこにおいて表明された意見を小委員長として総括するとすれば、日本国憲法において制度的に保障されている地方自治を今後さらに充実させるためには、現在進められている地方分権改革を一層推進する必要があり、これに対しては、国から地方への権限移譲のみならず税財源の移譲が不可欠であるということは、委員及び参考人に共通した認識でありました。
 また、市町村合併のあり方や今後の都道府県のあり方、さらに道州制の導入を検討する必要性など、統治構造全般にわたり多くの意見が述べられました。
 今後は、これらの指摘を踏まえ、二十一世紀における我が国の国家像をにらみつつ、地方自治制度を一層充実させる観点から、さらに議論を深めていきたいと考えております。
 以上、御報告申し上げます。

発言情報

speech_id: 115404184X00520020725_012

発言者: 保岡興治

speaker_id: 16198

日付: 2002-07-25

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会