2002-03-28
衆議院
畠山襄
憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会
畠山襄の発言 (憲法調査会国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会)
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○畠山参考人 本日は、この小委員会にお招き賜りまして、大変光栄でございます。お役に立ちますかどうか自信もございませんけれども、務めさせていただきたいと思います。
それで、意見の中には個人的な意見にわたる部分もあろうかと思いますが、今、小委員長からお許しをいただきましたように、忌憚のない意見ということでお許し願いたいと思います。
それでは、座ってやらせていただきます。
「国際社会における日本のあり方に関する件」ということで、自由貿易協定の問題を中心にというのがいただいたテーマでございまして、まず、憲法調査会の小委員会様がこの自由貿易協定問題を取り上げていただきましたその炯眼に深く敬意を表させていただきたいと思います。
それで、自由貿易協定、先生方は先刻御存じのことではありますが、念のため、どういうものであるかということをこのレジュメに従って説明させていただきたいと思います。
この「定義」のところでございますけれども、このレジュメをつくりました後で、事務局の方から、「自由貿易協定について」といういい資料もお配りいただいているようでございますので、簡単にさせていただきたいと思いますが、大ざっぱに申し上げまして、自由貿易協定は、バラッサという学者が定義したところによりますと、五つございます。
第一が、自由貿易協定、フリー・トレード・アグリーメントと呼ぶものでございまして、これは、メンバー国の間の関税、それからその他の非関税障壁を全く撤廃しようというものでございます。それが典型的な自由貿易協定であります。
それから、その次の段階に進みますと、関税同盟といいまして、この関税同盟は、そのメンバー国の対外的な関税を統一するものでございます。
それで、(2)の方に「典型的な例」とございますけれども、自由貿易協定の典型的な例は、北米自由貿易協定、いわゆるNAFTAでございます。アメリカ、メキシコ、カナダで構成しているわけでございますけれども、その間の関税は原則ゼロにする、その間の輸入制限は原則行わないということでございますけれども、対外的なアメリカの関税、メキシコの関税、カナダの関税、こういうものはばらばらでございます。
それに対して、関税同盟の典型的な例がEUでございます。欧州連合でございますが、この欧州連合の対外的関税は統一されております。
自動車の例で申し上げますと、例えばアメリカの関税は二・五%ぐらいであります。それに対して、カナダの関税は六%ぐらいであります。メキシコの関税が二〇%ぐらいで、みんなばらばらであります。ところが、EUの関税は全部、ドイツであろうとイギリスであろうとフランスであろうと一〇%というふうに統一をされておるということでございます。
それで、第三段階に進みますと、これが共同市場というものになります。共同市場の中では、生産諸要素、例えば労働でございますとか資本でございますとか、そういう貿易財などの生産諸要素の移動を自由にしようというものでございます。先ほど申し上げましたように、EUが関税同盟の典型的な例ではございますが、しかし、九二年以降のEUは共同市場に移行をいたしました。だから、この共同市場の例もEUになるわけでございます。
それから、第四の形が、このバラッサの分類によりますると、経済統合でございます。経済統合は、マクロ経済政策を統一しようというものでございます。さすがのEUも、ここまではまだ来ておりません。だから、今、マクロ経済政策まで統一して運用している共同体はないと思いますので、典型的な例はまだない。
それから、最後の段階が完全な統合であります。これは、政治統合もやっちゃおうというような感じであろうかと思います。
バラッサの分類でいいますとそういうことでございまして、典型的な例は、先ほど申し上げましたように、自由貿易協定の例で申し上げますと北米自由貿易協定であり、それからアジアで、ASEANのASEAN自由貿易地域というのができておりますけれども、それなどが典型的な例でございますし、関税同盟の例は、EUのほかで申し上げますと、南米はブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで構成しておりますメルコスールというのがありますが、このメルコスールも代表的な例でございます。
そこで、FTA、自由貿易協定は自由化を推進する一つの手段でございます。一つの手段でございますが、それとWTOとどういう関係になるのだということについて申し上げたいと思います。
WTO、世界貿易機関はガットの後身でありますけれども、これは多国間で自由化を推進するということでございまして、昨年十一月の九日から始まりましたドーハの閣僚会合で、この次のラウンドをスタートすることが決定したわけでございます。ただ、これは、中国、台湾の加盟がこの間実現しまして、今、百四十四カ国が加盟いたしております。非常に多数の国がやるわけでございます。そこの合意を得ながら進めていくというのがWTOでございますし、前回のウルグアイ・ラウンドの結論に基づいて詳細なルールが決まっておりまして、それに従って自由化を推進していこうというのがWTOでございます。
それに対してFTAは、さっきも申し上げましたように、単なる二、三カ国、あるいは多いときでEUのように十五カ国とか、そういうのが加盟をして、その間でだけ関税を免除し、輸入制限を免除していく、こういうものであります。したがって、FTAの問題は、メンバー国を優遇する、逆に言えば非メンバー国を差別するということでございます。この差別的な側面というのが問題であります。
したがいまして、WTOの基本的な精神であるところの自由、無差別のうちの、この無差別というものに少なくとも精神は抵触するわけでございます。したがって、WTOルール上は、厳格な条件を設けまして、その条件に適合すればFTAは許してあげるという建前になっております。
その条件というのは二つ三つございまして、一つは、実質上すべての品目をカバーしなくてはいけないということでございます。だから、貿易をやっております品目の中には工業製品もあれば農産品もあればいろいろあるわけでございますけれども、そのうち工業製品だけ自由化しようとか、そういうことは許されないわけでございます。実質的にすべての品目をカバーしなくてはいけないということが一つの条件であります。
それから第二の条件は、FTAの関係に入る前と後とで対外的な障壁を引き上げてはいけない。だから、メンバー国の間で関税をゼロにするかわりに、例えばメキシコでいえば、FTA発足後は自動車の関税を、今二〇%なのを、対外的に、日本も含めた対EUとかそういうところに対しては二五%に上げるとか、そういうことをやっちゃいけないということであります。
それから第三の条件は、自由貿易協定の関係に入るわけでございますけれども、そうすると、原則すべての品目について、先ほど申し上げたように、輸入制限なり関税を撤廃しなくちゃいけないわけですが、それに経過期間を設けることがあるわけですが、その経過期間は十年を超えてはならないということであります。
そういう条件のもとにWTOはFTAを容認しておるということでありますが、ただ、それが建前になっていると先ほど申し上げました理由は、実は、WTOの審査は、物の貿易の方で申し上げますと、ガット二十四条でございますけれども、この二十四条をパスしたFTAなり関税同盟はいまだないという状況であります。提出しても、審査がたなざらしになっていたり、両論併記になっていたり、未提出だったり、そういう状況でございまして、いわば判例が確立していないというのが実態でございます。
以上が「自由貿易協定とは何か」というところでございますが、次の「FTAの拡がり」というところへ入らせていただきます。
すなわち、FTAが最近大変広がってまいりました。後で申し上げますように、数がふえてまいったわけでございます。それは何が契機であったかということでありますけれども、私の見るところ二つありまして、一つは、一九九〇年に、当時ウルグアイ・ラウンドの最中でございましたけれども、ウルグアイ・ラウンドのブラッセルでの閣僚会合というのがございました。これは、当時外務大臣であられた中山会長も外務大臣として参加しておられたと記憶しておりますけれども、その会合が実は失敗に終わったわけでございます。そこでウルグアイ・ラウンドの決着をつけようということであったわけでございますが、そうなりませんでした。
このガットのラウンドが失敗したので、多国間の作業は難しいじゃないか、だから、同じ自由化を推進するにしても、自由貿易協定の方でいこうやというふうに思った、そういう関係国が多かったのではないかというのが第一点であります。
第二点は、九二年に、先ほどちょっと触れましたけれども、それまでECと言っておりました欧州共同体がEU、欧州連合に切りかわるわけで、それまで欧州は、関税同盟ではありましたけれども、共同市場にはまだなっていなかったわけでございます。それで、生産諸要素の移動などは自由になっていなかったし、例えば域内の流通規制なんかも残っておりました。ところが、この九二年から域内の流通規制を撤廃し、労働の移動も原則自由にし、共同市場にしていこうじゃないかということになったわけでございます。これが当時、九二年ですから、EC92と言われておりました。
それに対して、日本もアメリカも、これはフォートレス・ヨーロッパをつくるものである、欧州の要塞をつくるものであって、ブロック経済化につながる、けしからぬ話だといって、私も現役で通産省でやっておりましたので、声高にそういうことを言っていたわけでございます。ところが、それにもかかわらずEUはでき上がりました。EC92は完成して、共同市場が誕生したわけでございます。
それでアメリカが態度を変えました。自分たちも自由貿易協定の方でいこうということになりまして、当時既に折衝に入っておりましたメキシコの加盟を温かく迎えるようになり、そして、九四年一月からNAFTA、北米自由貿易協定が発足するわけでございます。
そういうことで、アメリカもFTAになびきまして、その同じような時期に、アジアの方も、これでは自由貿易協定をやらざるを得ないということで、それまでは自由貿易協定でなかったASEANがAFTA、自由貿易協定をつくったということでございます。
それで、現在はどういうことになっているかというと、世界じゅうで効力を発揮している自由貿易協定の数が、ダブっているのをジェトロで調整して勘定してみますと、百三十八でございます。百三十八個も自由貿易協定が世界にあるということでございます。
そのうちどういうものがあるかということは、資料の三枚目におつけしていると思いますが、「世界主要国・地域のGDPと加盟する自由貿易協定」、これは世界の主要三十カ国を上から順に並べたものでございます。そのうち、自由貿易協定のメンバーであるという国は、右側にその自由貿易協定の名前が書いてあるわけでございます。以下、自由貿易協定と申しますときは関税同盟も含めて申し上げたいと思いますけれども、そういうことで、ドイツはEUに入っている、英国はEUに入っている、カナダはNAFTAに入っている、ブラジルはメルコスールに入っているというようなぐあいでございます。
そして、ここで影がついているのがありますが、五つであります。日本と中国と韓国と台湾と中国香港。この国あるいは経済、台湾とか香港は国ではないというふうに考えますと、経済と呼んだ方がいいかもしれませんけれども、この五つの経済が、自由貿易協定を発効させているものにはまだ入っていない。
日本は、御案内のとおり、この間、一月十三日に小泉首相が訪シンガポールをされまして、その折に、ゴー・チョクトン首相とサインを交わされている。この日本・シンガポール経済連携協定というものは国会に提出をされているわけでございまして、御審査をいただくことになるんだと思いますけれども、そういう意味ではまだ発効はしておりませんので、この影は落とせないでおるわけでございます。
すぐ容易にお気づきでありますように、日本、中国、韓国、台湾、中国香港というのは、いずれも、英語で言えば極東地域にあるわけでございます。この地域にある五つの経済体が自由貿易協定に手を染めていないだけであって、世界主要三十カ国、いかに主要であるかというのは、この三十カ国のGDPを足し上げますと、下から二行目に出ておりますように、世界のGDPの九一%を占めてしまうわけでございます。その中で自由貿易協定に手を染めていないのは、この五つの経済体だけである。台湾と香港を除きますと、結局日本、中国、韓国だけである、こういう状況になってきているわけでございます。
のみならず、既存の自由貿易協定、例えばNAFTAでございますとかあるいはEUでございますとか、そういうものが拡大を始めております。
それで、NAFTA、北米自由貿易協定は、今度は二〇〇五年までにFTAA、米州自由貿易協定になろうということで、中南米を入れてしまおう、合計三十四カ国で自由貿易協定をつくろうということになっております。そうなりますと、ブラジルとかアルゼンチンとかそういうところまで入って統合されていくわけでございます。
それからEUの方は、ポーランドとかハンガリーとかチェコとかブルガリアとかルーマニアとか、ああいう旧共産圏の国々とトルコを含めて、今十三カ国が加盟の申請をしてしまっているか、しようとしているわけでございます。そうしますと、今十五カ国ですから、これができ上がった暁には二十八カ国ということになってくるわけでございます。
そういうことで、既存のものも拡大しておりますし、それから新たな自由貿易協定という動きが高まっております。
最も特筆すべきは中国であります。中国は、昨年の十一月四日、朱鎔基首相がASEANに呼びかけまして、そして中国とASEANの自由貿易協定を今後十年以内に完結すべく交渉に入ろうという合意に達しました。それから、アメリカとシンガポールも今交渉中でございまして、妥結の日も近いと言われております。それらに限りませんけれども、そういう状況でございます。
ここでシンガポールとアメリカがもし自由貿易協定を締結しますと、アメリカも、これは私の個人的な観測でございますけれども、ほかのASEAN諸国とも自由貿易協定を結ぼうという動きになってくると思います。中国がASEANと自由貿易協定を結び、仮にアメリカがASEANと自由貿易協定を結ぶ、その中で日本がそれにおくれをとるというようなことがあると、これは一大事だと私は個人的に考えているわけでございます。
それで、三番目の「日本の立場」というところに入らせていただきますけれども、日本の立場は、二、三年前までは、言葉遣いは悪くて恐縮でございますが、WTO一辺倒でございました。大ざっぱに申し上げればそういうことで、WTO以外のことには関心を示さず、その理由は、先ほど申し上げたように、FTAというのは非メンバー国を差別する、したがって、ガットの一大原則である自由、無差別のうちの無差別という原則に反する、したがってよくない、やがてブロック経済につながるじゃないか、したがってWTO一辺倒でいくんだということでございました。
しかし、そのために問題点が生じました。
第一の問題点は、国際的な孤立であります。
これは個人的な体験で恐縮でございますけれども、一九八九年だったと思いますが、モントリオール・コンベンションというのがございまして、これは、実は例のオゾン層保護のためのフロンの規制に関する条約でございます。名前は違う名前でございますけれども、実質はそういうものでございます。その条約の第一回正式会合が行われました。それで、私は当時通産省の基礎産業局長か何かをやっておりまして、外務省の政務次官がおいでになるまでの間、代表みたいな格好で現地に行っておりました。
そうしますと、これは条約実施のための第一回会合でございますので、国連側でおつくりになった実施規則のようなものを提案されました。ただ、国連でございますから出席者は三百人ぐらいおるわけでございまして、国連の担当理事の方は、提案されて、さあ友邦国と相談していらっしゃい、こう言われたわけでございます。夕方また会いましょうみたいな話だったわけでございます。
友邦国と相談と言われて、アメリカはカナダと相談する。EUはEUで集まって相談する。中国は、当時グループオブ77というのがまだ非常に盛んなころでございまして、そういう方々と一緒に相談をなさる。あぶれたのが日本と韓国とロシア、そのときちょっとロシアは中途半端な時期にありまして、この三つでございまして、そういうこともございました。
したがいまして、申し上げたい点は、自由貿易協定で結ばれておると、その他の関係でも、これは経済問題と関係のない話ではだめだと思いますけれども、国際経済と関係のある話であれば、非常にツーカーにつながる仲になるということでございます。したがって、国際的に孤立をする傾向になってきた、これが第一であります。
それから第二は、FTAがあれば実現ができたであろうことが、当然ですけれども実現できておらないということであります。
その第一は、国内の構造改革であります。
御案内のとおり、国内の構造改革を実施しますためには、国内的に相当な抵抗があるわけでございます。その抵抗を、言葉は悪いですけれども、例えばFTAによる約束があるんだから仕方がないんだと言いながら推し進めていくということがEUの知恵であったわけでございます。
EUの主要国の一つでありますドイツの経済省の次官が、退任後でありますけれども、ジェトロの招きで日本に来まして講演をしました。その際にまさにそういうことを言っておりまして、構造改革を推進する際に、EUはどうやっているかというと、構造改革でつらい決断をしたのはEUなんだ、おれたちではないと。そういうふうにして、端的に申し上げれば、EU委員会を悪者にして、個々の国のリーダーはその構造改革を進めることができたんだということであります。
それから、メキシコの経済大臣も言っておりましたのは、構造改革を国内的に決定して推進しようとしても、反対が強まると、国内だけの意思決定にとどまれば少し後退せざるを得ない。しかし、それがFTAという形で外国との約束になっておれば歯どめがきく、後ろへ戻れない、そういうことも言っておられました。
それから、FTAありせば実現できたであろうことの第二は、新分野の実験であります。
例えば、WTOの中で競争と貿易、独禁法とかそういうことでありますけれども、そういうことを決めていくのは、今、この百四十四カ国の中ではなかなか難しゅうございます。しかし、FTAの中では、場合によっては競争と貿易ということを規定ができるかもしれない。そういうことでありまして、FTAという形で新分野を実験できる。そして、あちこちのFTAで競争と貿易というのができてくれば、それをWTOの中へ高めていくことができるということであります。
それから、FTAありせば実現できたであろうのにということのもう一つは、FTAがあれば、そんなにWTOの自由化に反対するのであればFTAのルートで行くもんねと言って、WTOの作業を逆に推進する圧力にも使えるということであります。
時間もありませんので、これぐらいにFTAありせば実現できたであろうのにということの御説明を終わります。
第三点目の、FTAがないために生じた問題点は、日本経済が受けている実害であります。
この例を申し上げますと、メキシコでございますけれども、メキシコ市場へ日本企業がどこの国の企業と競合して進出しているのかといいますと、アメリカとヨーロッパの企業であります。大ざっぱに申し上げれば、ASEANや中国の企業と競合しているわけじゃないわけであります。
ところが、そのアメリカの企業は、NAFTAのおかげで関税ゼロでアメリカの産品をメキシコへ輸出できるわけであります。それからヨーロッパは、EUとメキシコが二〇〇〇年七月から発効させました墨EU自由貿易協定のおかげで、EUの産品も関税ゼロでメキシコへ出るわけでございます。ところが、日本の産品は関税がかかるわけでございます。
ちなみに、メキシコの平均関税率は一六・二%であります。これは、必ずしも日本からのが全部一六・二%かかるということではありませんで、平均一六・二%でありますし、それから部品その他について特例もありますので、一六・二%を個々の品目について払っているということではございませんけれども、そういう実害が生じているわけでございます。
それで、これは貿易面の実害だけにとどまりませんで、例えば投資を行っても、その立ち上がった工場の少なくとも当初段階は部品を輸入していくわけでございますね。その部品を輸入する際に、アメリカの部品は関税ゼロ、EUの部品は関税ゼロ、ところが日本の部品には関税がかかるということですから、投資もやりにくいということになってくるわけでございます。
そういうFTAがないための弊害が出てまいりました。そこで日本は、FTAももう一つの選択肢にする。ここに書いてあります、「FTAでWTOを補完する重層体制」というものに徐々に移行を二、三年前から始めたわけでございまして、ここにございます対シンガポールは、先ほど申し上げましたように、包括的経済連携協定というものを結びまして、国会で御審査をいただくことになっております。
それから、メキシコでございますけれども、もう一つの資料に出ておりますように、二段目でございますが、「日本と諸外国とのFTA研究・交渉状況」というのがございます。その右側に出ておりますように、中段から下でございますけれども、「二〇〇一年六月に小泉総理とフォックス大統領との間で、産学官からなる共同研究会の設置に合意。」ということでございまして、共同研究会を六回やる予定でございますが、今その四回までを終了しておるということでございます。
先日私は、たまたまでございますが、メキシコへ参りまして、フォックス大統領にも表敬訪問をいたしました。その際に、フォックス大統領それからカスタニェダ外務大臣、デルベス経済大臣、それぞれお目にかかりましたけれども、これらの方々が口々におっしゃっていましたのは、この十月にメキシコがAPECの首脳会議の主宰国になるわけでございます。そこで小泉首相ともまたお会いする機会があるので、それまでの間にこの研究を終えて、そして、そのときに交渉に入ることを決定したいということを言っておられました。シンガポールも、最初この研究で入って、やがて交渉に行ったわけでございますので、そういうふうにやりたいということを言っておられまして、来年秋遅くにでも交渉の決着をしたいということを言っておられました。
それから、ASEANでありますが、ASEANは、そこにございますように、この間の小泉総理のASEAN訪問の折に、日本・ASEAN包括的経済連携構想というものを提案されまして、そして、その専門家会合が一月と、それからついこの間三月二十一日、二十二日に行われまして、今研究が進んでいるところでございます。
それから、その次韓国でございますが、韓国とは、一月二十五日に、民間のビジネスフォーラムというものが前向きな結論を出しまして、それを受けて三月二十二日、小泉総理が訪韓されました折に、金大中大統領との間で、産学官から成る共同研究会の設置に合意をしておられるわけでございます。そんな状況に今なっておるということでございます。
それで、最後でありますが、簡単に、今後の残された課題といいますか、これを推進していく際の課題について触れさせていただきたいと思います。
第一の課題は、申すまでもなく農産物の取り扱いでございます。
農産物につきましては、先ほど申し上げましたWTOの規定のFTAを認めるときの条件の、実質的にすべての品目をカバーしなくちゃいけないというところがかかわってくるわけでございます。したがって、まず農産物は全体適用除外にしましょうということはWTO上許されない、これが第一点であります。それから、実質的にすべての品目をカバーというのはどういう意味だということについては、判例が先ほどのような状況ですからございませんけれども、一応の解釈は、輸入の九〇%以上をカバーするということではないかというふうに言われております。
したがいまして、小委員長、ちょっと農産物の関係の資料をお配りしてもよろしゅうございますか。